学校給食ニュース
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2001年夏期学校給食学習会レポート

本レポートは、全国学校給食を考える会事務局団体の大地を守る会会報に掲載されたものです。

全国学校給食を考える会・大山

○月○日:チェプオハウ、アマムイペ、イモシト、牛乳
△日△日:すいとん、かんパン
×月×日:ビビンバ、とうふチゲ、チヂミ、コチュジャン、牛乳
 東京都八王子市内のある小学校給食の献立の一例である。チェプオハウとは鮭の全てを使って作った鮭汁であり、 他の料理も伝統的なアイヌ料理である。アイヌの人たちが「神の魚」と呼ぶ鮭を使ってのアイヌ料理を通じて、子どもたちはアイヌ文化と触れる。 さらに、鮭を飼育・観察し近くの川に放流することを通じて、生命、文化、環境問題にも触れることをねらいにしている。
 すいとんは、食材も調味料も戦時中のものにならって作り、すいとんの他には、かんぱんだけという献立により、 栄養価だけでなく量の不足も空腹感とともに体験学習する。さらにお年寄りを招いて、直接、戦争中の話を聞くことで、 平和の尊さについて考えることをねらいにした献立である。
 またお隣の朝鮮半島の伝統的な料理を通じて独自の食文化や日本の文化との関わりを学んだり、 カルシウムを多く含む献立で丈夫な歯を作るために必要な栄養素を学ぶといった授業も行っている。
 この実践例は、2001夏期学校給食学習会で発表された。夏期学校給食学習会は毎年夏休み中の3日間、全国から多くの栄養士、調理員、教員、 保護者を集めて行われる。
 その初日に発表されたこの事例発表では、ビデオを通じて、鮭に感謝して余すところなく使うアイヌの伝統料理を大切そうに食べる子どもたち、 最初、「えーっ!これだけ!」、「おいしくなーい!」といっていたのに、お年寄りから戦争中の話を聞くにつれて、 質素なすいとんをいつくしむかのように口に運び、同時に平和のありがたみを考えていく生き生きとした子どもたちの姿が映し出された。

 これは学校給食がまさに教育であることを示す実践例である。学校給食法の第二条に学校給食の目的として、1: 食事についての正しい理解と望ましい習慣を養うこと、2:学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと、3:食生活の合理化、栄養の改善、 および健康の増進を図ること、4:食糧の生産・配分および消費について正しい理解に導くこと・・・とある。つまり、 学校給食は子どもたちの身体を育てるだけでなく、心も育てるという意味で、学校教育のひとつとして位置付けられているのである。
 学校給食の生きた教材としての可能性として、地場型学校給食の取り組みがある。地元の農家の野菜を学校給食に導入するだけではなく、 栄養士が毎日配達される野菜の生産者の顔写真を廊下に掲示し、「給食だより」で野菜の説明や生産者の努力などを紹介する。 また教師も生活科や社会科の授業の中で生産者を訪問したり招いたりする。その結果、野菜の残菜が低下し、 子どもたちが畑を荒らすこともなくなったという。この小学校の子どもたちは、給食を通じて余りあるほど多くのものを学んでいる。
 生きた教材としての学校給食の可能性は、工夫のできる余裕のある学校給食にこそ存在する。それは、栄養士、調理員、教員が、子どもたちが「食」 を通じて多くのことを考えられるような工夫ができる余裕のある学校給食である。しかし、今、そういった学校給食は失われつつある。 1985年の文部省の合理化通知以降、学校給食にも経済効率性が求められ、多くの学校給食が民間企業に委託されている。 調理現場が民間企業に委託された場合、法律の定めるところでは、栄養士は調理現場に入ることができなくなり、 それどころか指示書というマニュアルでしか委託企業の従業員である調理員に指示をしてはいけなくなる。 そのようなコミュニケーションが分断されたところでは工夫のできる余裕のある学校給食は不可能であり、 学校全体で取り組む教育としての学校給食の実現は難しくなる。行財政改革の中で民間活力導入が叫ばれる中、 なんでもかんでも民間企業に委託してよいのだろうか? 少なくとも学校給食が教育のひとつに位置付けられている以上安易に民間に委託できるものではないのである。
 先に献立を紹介した八王子市では進みつつあった民間委託化が中止された。それには、民間委託化したところで、 むこう数十年はコストの削減につながらないという試算結果によるところもあるが、給食に携わる人々が教育としての学校給食を実践し、 その重要性を訴え続きえてきた地道な運動の成果でもある。

 子どもたちにとって大切な教育としての学校給食を脅かす問題は民間委託化だけではない。 放射線照射食品や遺伝子組み換え食品の恐れのある食材の問題、食材の大量購入による冷凍食品や加工品への依存の問題、 環境ホルモンなど有害物質溶出の恐れのあるプラスティック食器の問題など枚挙にいとまがない。その問題のいくつかは、 今年の学習会でも取り上げられ、参加者は専門家による講演に熱心に耳を傾け、また積極的な質疑応答を繰り返した。学習会の参加者の多くは、 学校給食を取り巻く問題をしっかり見極め、子どもたちのための学校給食の実現をめざして自ら活動している。
 皆さんはご自分のお子さんがどんな給食を毎日毎日食べているのか知っていますか?また知ろうとしていますか?

2001夏期学校給食学習会
8月2日(木)
「民間委託住民訴訟について」
講師:菅野 庄一 氏(市川民間委託住民訴訟弁護士)
「民間委託反対運動の現場から」
講師:植村 秀樹 氏(市川民間委託住民訴訟原告)
講師:小林 茂 氏(八王子市立小学校調理員)
8月3日(金)
「食品衛生から見たプラスティック食器の安全性」
講師:植田 新二 氏((財)化学物質評価研究機構 高分子技術部)
「水道水フッ素化と学校給食」
講師:南雲 明男 氏(フッ素を考える新潟連絡会幹事・上越市立城北中学校教諭)
「子どもたちの生存基盤を確保するということ-身近な事例から-」
講師:里見 宏 氏(健康情報研究センター代表)
8月4日(土)
「心とからだを育む学校給食-学校給食は食と農の結節点-」
講師:根岸 久子 氏(農林中金総合研究所)
「かけがえのない生命―自分と地球の未来を見つめて―」
     講師:小松原みち子氏高槻市桃園小学校栄養士)
「食教育とティームティーチング―学校給食を生きた教材として―」
      講師:中島登美子氏(美方郡温泉町立温泉中学校教諭)

全国学校給食を考える会とは・・・
1980年設立。設立以来、大地を守る会が事務局団体を務め、 子どもたちのための学校給食の実現をめざして学校給食に関する様々な問題に取り組んでいる。 本文で紹介した2001夏期学校給食学習会報告集は来年2月に発行予定。

 

[ 01/12/31 集会案内 ]


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