学校給食全国集会 基調提案
学校給食全国集会 レポート 1
2003年2月24日開催
今年も、学校給食全国集会が開催されました。参加者は、調理員、栄養士、保護者を中心に700名。今年の集会は、
総合学習と食を軸とした教育について、小学校の教員をされている善元幸夫さんにお話しをいただきました。また、
各地の学校給食を使った教育の実践活動報告や、民間委託の議論を行いました。民間委託問題では、
はじめて委託会社の元調理員の方に登場していただき、体験談を語っていただきました。
民間委託で経費節減のために委託会社の調理員が厳しい状況に置かれていることを知ることができました。
学校給食ニュースでは、3月号、4月号を通して集会のレポートをお届けします。
今号は、基調提案と善元幸夫さんの記念講演です。(学校給食ニュース2003年3月号)
■基調提案
●はじめに
本集会は今回で20回を迎えることができました。
学校給食を効率化優先の合理化の対象とした、1985年の『文部省合理化通知』に対して、「教育」
としての学校給食のあり方を幅広い見地で討議を行い、提示しようと呼びかけ、全国から集い交流を積み重ねて成果を上げてきました。
全国学校給食を考える会、日本消費者連盟、日本教職員組合、全日本自治団体労働組合の各主催団体では、これまで積み上げてきた経験を生かし
「教育」としての学校給食の充実と、地域にねざした食生活・
食文化形成に向けていかに取り組んでいくかという問題意識のもとに開催をしてきました。特に今年の集会は「生命の授業」「健康学習」「食の授業」
などをについて学習を行うとともに、各地での学校給食に対する民間委託攻撃やさまざまな動きに対して、保護者、市民、栄養士、教員、
調理員が共同した対抗運動のネットワーク作りを進めることとしました。
●私たちを取り巻く状況
多くの自治体では行政改革や地方財政難を理由とした、公共サービスの切捨て合理化が進行するのと相まって、学校職場では調理員の削減、
不補充や民間委託などが進められ、特に正規職員の給食調理員はここ数年減少が続き、その代わりにパート、
臨時職員などの非常勤(不安定雇用労働者)の調理員や民間業者が増え続け、給食現場では
(特に多くのセンター職場では正規職員より不安定雇用労働者が多く職場環境に問題が生じています)大変厳しい状況にあります。
このような民間委託化の流れは、文部省通知と相まって市場原理・小さな政府論など、経費節減のみを優先させたコスト論に基づき、
給食の質の向上や、教育としての視点でなく、人件費削減=民間委託という構図のもと、ほとんどの場合、
調理員の人件費などの経費削減効果のみが強調され、行政側からは教育としての学校給食のビジョンが示されていないのが大きな問題となっています。
これは、給食づくりに誇りを持って取り組んでいる労働者だけではなく、保護者、
そして子どもたちの給食に対する期待を裏切ることにしかなりません。
異物混入が今日なお多くの学校給食において発生が報じられています。学校職場には実験用の危険物などもあり、
そして施設そのものが開放的であるので、安心で安全な給食の提供と、安全な教育環境の整備に向けた管理体制について、
学校全体で取り組むことが求められています。
雪印乳業中毒が発生してから2年が経ちましたが、無許可添加物の使用、食品偽装表示事件、
残留農薬問題など多く発生して企業モラルが問われています。牛乳の中毒事件の以後、
雪印を初めとする牛乳に対する不信は現場にも混乱を生じ影響を受けました。これからも牛乳には牛乳のすばらしさと価値がありますが、
学校給食としての牛乳、健康な牛から衛生的に搾乳された、安心して飲める良質な牛乳について考えていかなければなりません。
環境ホルモンや遺伝子組み換え食品、アレルギー物質などの給食の安全性を脅かす問題が相次いで表面化しています。
99年6月に厚生省から市販弁当に「DEHP」(フタル酸エステル類)が多く検出され、
原因と見られる塩化ビニル製手袋の使用について禁止する通達が出されました。食器についても、最近多く使用されている、
ポリカーボネート食器の材料であるビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の一種であるとして社会問題化しています。
環境ホルモンの人体への影響については解明されていないことが多いことから、引き続き調査研究が重要としながらも、
これまで私たち四者共闘は食器や食材について「疑わしきは使用せず」を基本として此れまで対応してきました。
食器の交換については、調理員の安全衛生の観点から調理場の施設改善を伴い、調理場の施設改善や自治体の財政負担が増すなど困難な問題もあり、
自治体の判断に委ねられているのが現状です。現在使用している食器の安全性の確認や、
有害物質の溶出しない安全な食器の検討が重要になっています。
遺伝子組み換え食品については、まだ多くの問題が解決していません。国内においては民間企業が自主的に努力していますが、
国としての対応は後手にまわり不安を訴える声は高まる一方です。人体への影響と危険性が指摘されているなかで、
ヨーロッパでは表示の義務づけなど厳しい制限を課しています。これまで地場の食材を使用する取り組みを進めてきた地域では、
結果的に安全性を実証してきました。こうした取り組みは学校給食が直営で運営され、
給食に携わる様々な役割をもつ人たちによる交流があってこそ実現できるものです。
国内で初めて牛海綿状脳症いわゆるBSE(狂牛病)の発生が確認されて以降「食」混乱をしました。あわせて、
私たち給食職場にも大きな影響を与えました。「食」に対しては正しい知識と対策を講じながら進めていかなければなりませんが、
ことは牛肉にとどまらず、食材については顔の見える食べ物が一番安心でき、
しかも人間の健康にも地球の環境保全にも適していることを改めて教えてくれました。
地場産食材を使用した地産地消や郷土料理の紹介やランチルームの整備など食事環境の改善などを図るとともに、地域の特性生かした
「顔の見える関係」での食材を利用した食教育が一段と注目をされています。改めて食と農のあり方「日本の農業」
の将来も含めて考えなければ成りません。
●むすび
私たち学校給食職場を取り巻く状況は、
民間委託攻撃を初めとするさまざまな合理化提案や行政サービスを民間企業への開放を推進するためとした、「行政サービス・
アウトソーシング推進計画」や広域化に伴うセンター化やPFI手法の導入(民間活力の導入)
や児童生徒数を算定基礎とする交付金化する見直しなどの多くの問題で日常的に厳しい状況にあります。
また、近年食生活を取り巻く社会環境が大きく変化し、個々人の食生活の多様化が進んでいるなかで、朝食の欠如、
孤食などの問題が指摘されています。いま学校教育において望ましい食習慣の形成・食生活の定着をはかる必要があります。
子どもの食環境や健康状態は悪化の一途をたどっていますし、日本の食に対する有り方も危機的状況です、
安心で安全な学校の給食を中心とした取り組みを通じて、本当の食のあり方を考えようではありませんか。
今こそ多くの仲間、保護者、栄養士、教員、調理員が交流して、これまで私たちが積み上げてきた経験を生かし「教育」
としての学校給食の充実と地域に根ざした食生活、食文化の形成に自信と確信をもって取り組んでいかなければなりません。
[ 03/02/24 集会案内 ]