2001年2月19日 学校給食全国集会報告 摂津市の民間委託を阻止
2001年2月19日 学校給食全国集会報告
■摂津市の民間委託を阻止■
前野真澄さん、小堀裕二さん
摂津市職員労働組合・調理員
■調理員としての取り組み(前野さん)
保護者、市民、栄養士、教員、
調理員がひとつになり、民間委託をはねのけることができました。この取り組みを報告します。
摂津市の学校給食は、加工品を使わない手作り給食です。1997年にはアルマイトから磁器食器を全校に導入しました。
米飯給食も週2回から子ども達からの増やして欲しいとの要望に応え、週3回に増やしました。アレルギー食の対応は88年からで、
無農薬野菜などの取り組みも行っています。
調理員は、非常勤職員を導入せず正規職員43名でがんばっています。
夏休みなどの3期中は、校庭の草取り、学校の窓の清掃、ペンキ塗りなどの学校環境をよくする業務を行っています。また、
警備員がやっていた警備業務のうち、毎日調理員が交代で職員室に座り、電話の応対などもやっています。これは、
調理員の方が学校の内情をよく知っているので警備員よりも連絡がスムーズに取れると保護者、市役所からも信頼されています。
取り組みとして力を入れているのはふれあい料理教室と給食ポストです。
ふれあい料理教室は、夏休み期間中に保護者と子どもとで各校1回行っています。献立は、子ども達に好評だったものを取り入れます。
家庭科室で行い、保護者には実際の給食での衛生管理についても体験してもらいます。
給食ポストとは、各学校12校に設置しているもので保護者や児童が調理員にあてて手紙を入れます。
味について、献立について、感想や要望があります。また、中には、好きな人ができたとか、個人的な内容のお手紙も入るようになります。
多い学校では1日に50通にもなります。
このほか、給食については、たとえば、うどんが子ども達の配膳のあとも温かく、のびていないかを確認に行きます。
子ども達もそれに反応してくれます。5年生のあるクラスでは、調理員に一緒に食べて欲しいと呼びに来てくれます。準備しておいてくれます。
今は週に2回、教室で料理や食材などの話をしながら給食をいただいています。これが、私たちができるふれあいのひとつだと思い、
がんばっています。
市民に対しては、給食フェアを開催しました。当日は300人の市民が参加し、
学校給食情報ネットワークの小松茂さんに給食についての講演をしてもらい、市民に試食を味わってもらってアピールしました。
民間委託の話が出てからは、市民、保護者、栄養士、教員、調理員らによる「学校給食を考える会」ができ活動をはじめました。
2000年12月には、学校給食ニュースの牧下圭貴さんに講演してもらいました。約200人の人たちが立場をこえて議論をしました。
これらにより、市民、保護者、教員、栄養士、調理員が一緒に民間委託に戦うことができました。
■民間委託阻止までの経緯
現在の調理員の配置基準ですが、
調理員が休むときにはパート職員が入ることになっています。ただし、米飯給食のときのみで、週2回のパン給食のときは入りません。
昨年、行財政改革で調理の民間委託が打ち出されました。10月20日のことです。そこでは、
「2001年3月31日付け退職者2人の補充は業務委託の結論を待って考えていきたい」とされていました。
11月9日の市職員組合と当局の交渉により12月中旬をめどに引き続き交渉することになっていましたが、
当局からは民間委託のどこに問題があるのかとの発言があるなど厳しい状況でした。
調理員を中心に3万枚の個別チラシを配布し、市民にも呼びかけました。市民からも反対の声が上がり、「学校給食を考える会」が結成され、
委託反対の運動が広がりました。
当局と市職員組合との協議は結局12月25日まで再開されませんでしたが、12月29日の年内最終回答で、「退職者2人の補充は、
これまでの学校給食調理員退職者と今回の学校給食調理員をもって補充したい。平成13年度の民間委託はしない」という回答を得ました。
これについては、運動の成果として一定の評価をしています。しかし、引き続き市民と共に戦っていきたいと思っています。
交渉の中では、私たちは食は教育の一環ということを主張してきました。そして、教育長に12校の給食ポストのすべての手紙を渡し、
読んでくださいとお願いしました。今後も子ども達のことを第一に考え、安全で、おいしい、そして、
ふれあえる給食に取り組んでいきたいと思います。
■今後の展望(小堀さん)
給食ポストには、保護者からもお手紙が入ります。日頃から、できるだけ残さずに食べてと子ども達には伝えていますが、
保護者から給食を通してものを大切にする教育をしてもらっていて感謝しますというお手紙をいただいたこともありました。
学校行事への積極的な参加は、作る人、食べる人の関係を誰が食べているのか、
誰がつくっているのかが学校の中で分かるようにという意味もあります。
民間委託の問題があったとき、直営でなければならないのは、何かについて考えました。
民間委託と言っても、だから質が悪いということはないと思います。本質はコスト論ではないと思います。
なぜ、直営でなければならないのか。
遺伝子組み換え食品や放射線照射食品など食品を取り巻く状況は刻々と変わっています。使わない、作らせない。そのような即座の対応、
いけないと分かればすぐそれを行動に起こす。言われてから対応するのではなく、常に子ども達のことを思い、
即座に対応できるようにすることが直営ならではできるのだと思います。自分自身も生きているのであり、給食問題は環境問題にも、
自分自身の足下さえ見つめ直すものになることです。それを実践するのに直営のよさがあるのではないか。そういう職員でありたいと思います。
常に何をしなければならないのかを考えて、行動していきたいと思います。
■質問
Q:ふれあい給食は、市職だけでやっているのか。教育委員会はどう対応しているのか。食材費はどうか。講師の謝礼はどうしているのか。
A:ふれあい料理教室は、摂津市主催でやっています。調理員が中心で、学校の家庭科室を使います。子ども達、 お母さんは検便を取っていないからです。家庭科室は校長と教育委員会の了解で調理員清掃の上、使用しています。材料費は、 参加者ひとり250円の負担です。調達は給食で使っている業者にお願いしています。
司会:講師料は、3000円から10万円まで幅があります。たとえば全国学校給食を考える会からうかがうときと、 どなたかを紹介するときでも違うでしょうし、そのときごとの相談というところになるかと思います。ただ、運動でやっているときに、 「いくら出さなければ行きません」というものではないと思います。
Q:強化磁器食器導入の経過を少し教えてください。磁器食器検討委員会はどういうメンバーですか。
A:磁器食器導入については、アルマイトから強化磁器です。アルマイトは、私が小学校の頃から使っていたようなものです。
調理員との話し合いで、農水省の助成金がちょうどある時でもあり、アルミのアルツハイマーとの関連も言われたり、
熱いものが持てないというところから、調理員から教育委員会に話を持っていきました。
検討委員会は、調理員各学校1名ずつ、教育委員会、栄養士などです。
強化磁器については、食器かごが1クラス分を子どもが持つには重いということもあり、
子どもが食器かごを持てるように少し高くても軽いものを選びました。
しかし、洗浄などの設備には、お金もなかったので改装できず、守口市など先進事例を見学し、できるところだけ手を加えて取り組みました。
Q:強化磁器は割れると思いますが、そのあたりのコスト面はどうでしょう。
A:磁器食器なので割れます。始業式などで、子ども達に協力をお願いします。そして、もし割れたときには、
子どもに割れた理由を一応書いてもらいます。ただ、「ケガはなかった? 今度は割らないようにしようね」と子どもと話しながら、
大事にしてもらうようにお願いします。教育委員会からは割れると予算がかかると言われますが、こればかりは、割れるものですから、
できるだけ割らないようにするだけです。
[ 01/02/19 委託・合理化 ]