学校給食ニュース
委託・合理化 | カテゴリ別記事一覧 | 時系列記事一覧 | トップページ |

民間委託と給食システム

はじめに

 給食実施方式には、調理場型式としての「自校」と「センター」の違い、運営としての「直営」と「民間委託」、食材購入方法としての 「共同購入」「個別購入」、さらには栄養士の定数基準による配置、未配置の場合などがあります。また、ランチルームの設置や食器なども自治体、 学校により違ってきます。
この問題と、調理の民間委託問題を取り上げます。

民間委託について
今、学校給食現場は、「合理化」の名の下で、調理の民間委託が進められています。
各自治体は、行政改革を果たすため「人件費」の抑制にやっきになっています。
そこで、直営調理員の「人件費」と調理の「民間委託」とを単純に比較し、コストが削減されると導入をはかります。
しかし、コスト論は、地域によってはあきらかに論理が破綻しています。また、この民間委託導入にあたって、自治体、議会などでの議論には「教育」 の観点が含まれていません。
民間委託には、様々な問題があります。
なにより、教育としての工夫の余地がせばめられることが大きな問題です。
民間委託について整理し、各地の事例を集めています。

●自校方式とセンター方式

 各学校に調理場があり、学校で調理する自校方式と、いくつかの学校、学区をまとめ一括して調理し、 学校に配送するセンター方式があります。1964年に共同調理場(センター)への補助金導入が開始され、85年の合理化通知の後、 センター化が進められました。96年5月現在、全国で2733のセンターがあり、そのうち30が1日1万食を超える給食を作っています(図1)。
 センター方式は、一度に大量の給食を作らなければならないため加工食品に頼らざるを得ないとか、配送を必要とするため調理時間が短く、 届けられた給食も冷めてしまうなどの構造的な問題を抱えています。センターによっては、工夫を凝らして取り組むところもありますが、 自校方式に比べ、食材など工夫の余地が少ないのも実状です。
 また、自校方式では、栄養士や調理員が学校にいて、子ども達とふれあうことができますが、センター方式では難しくなります。
 近年いくつかの自治体では、センター方式をやめ、自校方式に戻したところもあります。しかし、 センター方式を取り入れる際に出された文部省の補助金は、自校方式に戻す際に出ることはありません。 このため自治体にとっては自校方式に戻しにくくなっています。
 97年9月22日に保健体育審議会(保体審)の答申がなされました。その中で学校給食の項には、 「学校給食を活用した食に関する指導を一層充実する観点から、学校栄養教職員が個々の給食実施校に配置され、これにより、 児童生徒の実態や地域の実情に応じて、豊かできめ細やかな食事の提供や食に関する指導が行われることが望ましい。したがって、 このような食に関する指導等が可能となるような単独校調理場方式への移行について、運営の合理化に配慮しつつ、 児童生徒の減少等に伴う共同調理場方式の経済性や合理性と比較考慮しながら、検討していくことが望ましい。」とあります。この答申は、85年の 「合理化」通知とセンター化に出される補助金が今日的な意味を失っていることを示しています。また、 自校方式であっても民間委託がすすめられていることには注意が必要です。

1

●直営と民間委託

 学校給食は、教育の一環であり「設置者」の責任で実施されます。公立の場合は市町村などの自治体、私立の場合は学校の運営母体です。 公立で話をすすめますが、直営方式は、献立作りから食材購入、調理まですべてを自治体の職員が行います。栄養士が献立を作り、 調理員が調理します。民間委託(業者委託)とは、この中で調理、運搬、食器洗浄、ボイラー管理などの仕事を民間業者に委託することです。
 調理の民間委託の場合、法律上、公務員である栄養士は民間企業の調理員に対し直接的な指示を行うことはできません。 当日の調理について栄養士は、受託会社に対し「指示書」という文書が出せるだけです。調理過程、調理後のチェックはできますが、 それも受託会社との決められた形であり、直営方式で見られるような栄養士と調理員の直接的なやりとりの中から生まれる工夫とは質的に異なります。 また、食材購入から献立づくり、調理、後かたづけと、直営の場合、一貫して行えるため、子どもたちの状況把握や、学校行事、 地域行事との取り組みが行いやすいですが、民間委託の場合、それらに制限が出てくる場合もあります。それに、自校方式の調理員のように、 子どもたちとの直接交流による教育効果も望めません。
 直営でも自治体常勤職員である調理員を減らし、パート職員化することがあります。パート労働化の場合も問題があります、 大量調理という一般にはない調理技術や衛生管理知識が欠けていることが多く、その知識、技能を得るための時間もありません。そのため、 正規の調理員に負担がかかり、質的にも不安が生じます。
 図2の通り、調理員の正規雇用からパート化への流れがすすんでおり、民間委託も96年度で全体の7%と増えています。2

●個別購入と一括購入

 食材を調理場ごとに購入する個別購入と、いくつかの調理場の食材をまとめて購入する一括購入があります。一括購入は、 大量購入になるためコスト削減が考えられます。しかし、大量生産物である加工食品への依存や、食品添加物の問題などを生むことがあります。 生鮮品なども事前に発注し、大量に揃えなければならないため、地域の材料を使用することが困難だったり、 急な献立の変更ができないなど工夫の余地が小さくなります。また、一括購入は、ひとつの食材で食中毒が起こった場合の被害範囲が大きくなります。

●栄養士の配置~定数基準ほか

 学校栄養職員はすべての調理場に配置されるわけではありません。学校栄養職員(栄養士)は、 都道府県により各市区町村の定数が決められており、定数分については、都道府県から人件費が出されます(県費職員)。 定数を超える学校栄養職員を採用する場合、市区町村が独自の予算で採用することになります。そのため市区町村によって異なりますが、 すべての調理場に栄養士が配置されているわけではありません。学校給食センターの場合、基本的に学校栄養職員が配置されていますが、 自校方式の場合、数校に1校程度ということも一般的です。その場合、学校栄養職員は複数の学校調理場の献立づくりが必要になり、 学校栄養職員の負担になるため、市区町村単位での統一献立を組むなど調理場ごとの食材購入や献立づくりに制限が出てきます。
自校方式で民間委託されると、その調理の管理が必要になるため、一般的に学校栄養職員が配置されます。 近年、学校栄養職員は、 正規雇用職員ではなく、非常勤雇用されるケースも増えています。県費職員と市区町村独自採用職員では、行う仕事が同じであるにもかかわらず、 待遇に違いがでるなど、正規雇用の場合でも制度上の問題が指摘されています。
学校栄養職員は、学校の中で子どもたちに食の大切さを伝えることができる専門的な知識を持った数少ない存在です。しかし、 学校の中での位置づけが明確でなく、学校の中の理解がなければ、子どもたちへの食を通じた教育がなかなか実を結びません。各学校栄養職員は、 学校の中で献立表や子どもたちとのふれあいの中で工夫しています。
なお、栄養教諭制度が学校教育法等の改正によりスタートしました。今後、栄養教諭による食の指導などが行われることになりますが、 実際の採用等については、今後の国や都道府県の対応次第です。 この項全面改定:2004年9月。

学校給食ニュース0号 1998年2月。

 

[ 98/12/31 委託・合理化 ]


Copyright 学校給食ニュース desk@gakkyu-news.net (@を大文字にしています。半角英数の@に変更して送信ください)
Syndicate this site (XML) Powered by Movable Type 5.2.9

バナー バナーは自由にお使いください。