学校給食ニュース
委託・合理化 | カテゴリ別記事一覧 | 時系列記事一覧 | トップページ |

民間委託は誰のため?

 学校給食の民間委託は、誰のため、何のために行われているのでしょうか。
 合理化、行政改革によって押し進められる民間委託は、その実、公務員の削減、人件費の抑制を第一に掲げています。しかし、 人件費を抑制した分の委託費との差額は、様々な試算はありますが、行政の中に占める支出としては決して大きな額ではありません。
 また、中長期的には委託費の方が高くなるのではないかという指摘もあり、現在、いくつかの地域で積極的に試算の取り組みがはじまっています。
 ところで、学校給食調理の民間委託問題を考えるときに、もっとも大切な視点は、他の問題と同様、子どもたちに配慮されているか、 子どもたちの食教育に役立っているかという点です。
 逆説的に言えば、もし、仮に、民間委託することが子どもたちへの配慮となる、または、子どもたちの食教育にとって工夫の余地が大きいのなら、 民間委託でもかまわないわけです。
 この点で、調理の直営方式と民間委託とを比較したとき、民間委託では、直営方式より工夫の余地が狭くなることは間違いありません。
 民間委託と直営方式を単純に比較すれば、

職業安定法44条により栄養士、教員との間でのコミュニケーションや工夫がやりにくくなります。
安い賃金などにより、パート労働者をはじめ、定着率が低くなり、安定した給食づくりには不安が残ります。
調理員の学校行事への参加などが難しくなり、学校で子どもたちに接する人の間に、明らかな格差が生まれます。
調理と学校給食に対する責任体制があいまいになる恐れがあります。

 この他にも違いはいくらでもあります。

 この民間委託と直営方式の差が明らかになるほどに、学校給食における子どもたちへの配慮と工夫が、 果たして現実の環境の中で行われているのでしょうか。
 もちろん、厳しい条件下、日々、 子どもたちのために骨身を尽くして取り組む調理員さんによって学校給食が守られていることは言うまでもありません。
 しかし、配置人員や身分保障など地域的な条件がどのようなものであっても、地域、保護者、調理員、栄養士、教員との間の連携がとれ、 子どもたちへの給食の質をよくする、食教育につなげるという面での話し合いがもたれ、公開され、交流できていなければ、 民間委託と直営の差ははっきりとしてこないことも確かです。
 これは、調理員だけの問題ではありません。調理員、栄養士、教員、保護者、地域がどのような学校給食を行ない、 どのような食教育を考えているのかという問題です。
 調理の直営を守ることが、実は、学校給食の質や工夫や食教育としての幅の広がりを守ることであることを明らかにするためには、 学校給食で行われている取り組みを見つめ直し、改善すべき点は改善し、公開していく、日々の取り組みが一番の近道のようです。
 ある調理員さんの言葉です。
「予算がない、栄養士とのコミュニケーションがうまくいかない、学校が給食に理解をしない、人が足りない…文句を言うのは誰にでもできます。 しかし、今の体制の中ででも、調理員としてできる工夫は山のようにあります。保護者も、地域も、もっと学校給食や調理員に注文していいんです。 『調理員は大変ですね』と言っていただく前に、調理員は職業として誇りを持っているはずなんです。だから、こんな学校給食がいい、 こんな工夫がなぜできないのかを言っていただき、そこからどんな学校給食にしていくのかを考えていかなければならないと思います」

(学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]


Copyright 学校給食ニュース desk@gakkyu-news.net (@を大文字にしています。半角英数の@に変更して送信ください)
Syndicate this site (XML) Powered by Movable Type 5.2.9

バナー バナーは自由にお使いください。