直営の調理員と委託会社の調理員が同じ調理場で働くことはできない
よくある質問にお答えします。
Q:学校給食調理の民間委託では、直営の調理員と委託会社の調理員が同じ調理場で働くことはできないと聞きますが、 その理由はなんですか?
A:公務員調理員と委託会社調理員は同じ調理場で同じ作業はできません。
現在、各地で導入されている学校給食調理の民間委託は、派遣労働ではありません。
労働者派遣法では、現在のところ「物の製造」業務に労働者派遣を行うことができません。
給食調理も、物の製造にあたる行為です。
ですから、いわゆる給食調理の民間委託とは、「業務委託」行為であり、受ける会社(組織)にとっては「請負」事業です。
この場合、請負した(委託された)企業などは、その事業に対して、業務を独立して行ない、自社の従業員を指揮監督します。
この法律的根拠は、職業安定法44条にあります。
「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、
又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」としています。
そして、職業安定法施行規則第4条では、請負についてこのような規定があります。
「労働者を提供しこれを他人の指揮命令を受けて労働に従事させる者は、たとえその契約の形式が請負契約であっても、
次の各号のすべてに該当する場合を除き、法第5条第6項の規定による労働者供給の事業を行う者とする。
一 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。
二 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
三 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。
四 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、
資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、
単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
2 前項の各号のすべてに該当する場合であっても、それが第44条の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、
その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、法第5条第6項の規定による労働者供給事業を行う者であることを免れることができない。
3 第1項の労働者を提供する者とは、それが使用者、個人、団体、法人又はその他如何なる名称形式であることを問わない。
4 第1項の労働者の提供を受けてこれを自らの指揮命令の下に労働させる者とは、個人、団体、法人、
政府機関又はその他如何なる名称形式であるとを問わない。」
この法律と施行規則に準じれば、質問にある、直営調理員と委託調理員が同じ調理場で作業できるか、との問いには、「できない」 となるはずです。
学校給食調理の民間委託は、「調理業務」を委託していることになります。学校栄養士が作成した献立と指示書をもとに、学校
(あるいは教育委員会等)から与えられた食材を使い、指定された場所(調理室や給食センター)を借りて、委託会社が調理するということです。
栄養士(あるいは校長などの責任者)は、中間検査・最終検査を経て、最終的に完成した給食を受領します。
直営調理員と委託調理員が同じ調理場に混在した場合、それぞれ指揮監督者が異なりますし、相互に独立して作業をする必要があります。なにより、
施行規則の第4条2にあるとおり、労働者供給事業の偽装と言われても反論できないでしょう。
学校給食調理の民間委託そのものが、たとえば、施設設備や食材を自治体側が用意し、献立も与えられて作業するなど、施行規則第4条の1-
四に反していると考えられます。しかし、自治体側はこの点について問題ないとして調理の委託を推進しています。
(学校給食ニュース 2003年5月)
[ 03/12/31 委託・合理化 ]