学校給食ニュース
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民間委託の論理と問題点

【民間委託の論理】
 
 なぜ、全国の自治体がこぞって調理の民間委託を導入しようとしているのでしょうか。行政改革を求められた自治体は、「人件費の削減」 を行政改革の指標と目標にしています。人件費を削減する上で、学校給食調理は格好の「民間委託」しやすい業務と見なされています。そして、 学校給食調理員を削減して民間委託にすれば、「コストは削減できる」としています。
 しかし、この「コスト削減」論は仮説です。もし、自治体が調理の民間委託を検討するのであれば、きちんと比較して試算結果を公表すべきです。 さらに、コストが削減されるとしても、民間委託と直営調理の利点・欠点を整理し、削減したコストに見合うかどうかを検討する必要があります。
 これまでの民間委託導入では、調理員削減=民間委託導入=コスト削減とされてきました。しかし、 きちんとした試算結果や効果については公表されていません。
 
  行政改革の必要→人件費の削減→調理業務の民間委託→コスト削減
 
コスト削減は仮説です

→検証されているか?
→削減コストは、教育費予算や自治体予算全体のどの程度か?
→民間委託は、教育としての学校給食にとって最善の方法か?


【民間委託の問題点】
 
衛生管理上の問題
病原性大腸菌O-157など、従来では考えられなかった厳しい衛生管理が要求されています。また、大規模調理は、 一度食中毒を発生させれば大規模化するというリスクを負っています。学校給食についても、平成9年の保健体育審議会答申で、 食材の一括購入や統一献立、センターなど、大規模被害につながる大規模化よりも、食材の個別購入、調理場ごとの献立、 自校方式調理が望ましいことを指摘しています。また、近年、工場でつくられた加工食品による大規模食中毒事件が発生しており、 加工食品だからと言って安心できないことを改めて知らされました。
そんな中、HACCPのような徹底した衛生管理が学校給食の現場でも求められています。HACCPの是非はともかく、 一般的な衛生管理はHACCP以前の問題として必要不可欠です。とりわけ、調理者の衛生管理教育や技能の修得は必須とされています。その中で、 パート職員中心となる民間委託は直営調理員による調理よりも潜在的リスクは高いと言えます。
 
責任の分散による問題
学校給食についての最終的な責任は、自治体の長を筆頭に、教育委員会の責任者、学校長、センター責任者です。これは、直営であっても、 民間委託であっても変わりません。ただし、民間委託の場合、仮に何らかの事故があった場合、児童生徒への責任は自治体ですが、 自治体側は民間委託業者に対し、契約違反や衛生管理上の問題として責任を追及することになります。この責任構造の複雑化は、一方で、 衛生管理などについての曖昧さ、甘さを生む温床になりかねません。
 
栄養職員の業務の煩雑化
民間委託業者に対し、指示書、中間検査、 最終検査などを行うのは現場の栄養職員です。栄養職員は、調理業務や調理現場に立ち入ることができないため、 かえって衛生管理や調理が献立通りに行くよう、直営の時よりも細かな文書作成や管理を要求されます。 栄養職員に求められる食指導や学校給食を通じた教育にかけられる時間が減っていくことは避けられません。
 
教育への主体的な関わりの問題
合成洗剤から石けんへの切り替えや、環境ホルモン問題が出てきたときの食器改善、遺伝子組み換え食品への対応など、直営調理員は、 学校教育に携わる職員として、積極的に質の向上に取り組んでいます。また、残食などについても調理の工夫により、 残食を減らすなどの日常的な取り組みがあります。これらについて、調理部門を委託業務として請け負った民間委託業者は、責任も権限もありません。 つまり、教育としての学校給食の向上に、民間委託業者が直接関与することは考えられまん。むしろ、たとえば、 合成洗剤から石けんに切り替えるなどの場合、契約事項の変更として、委託料の値上げが必要となります。

[ 00/12/31 委託・合理化 ]


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