学校給食ニュース
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兵庫県西宮市、民間委託ではない「基本方針」

兵庫県西宮市、民間委託ではない「基本方針」


学校給食ニュース2003年1月号より

 

 兵庫県西宮市では、財政削減に関して、民間委託ではなく直営のまま取り組むことを方針にかかげました。 これについて同市のホームページや基本方針文書、関係者のインタビューなどからまとめました。

 兵庫県西宮市は、阪神大震災以降、市の財政が厳しい状況にあります。
 そこで、西宮市では、2001年7月に「西宮市学校給食検討委員会」を設置し、今後の西宮市の学校給食のあり方について、
 1:食事内容
 2:食に関する教育
 3:安全・衛生管理、食事環境
 4:効率的な運営について検討してきました。
 2002年2月に「西宮市学校給食検討委員会」の答申が出され、それを受けて2002年9月に西宮市教育委員会は、「西宮市学校給食基本方針」 を正式に決定しました。
 それによると、4:の効率的な運営について、他の自治体で一般的な民間委託ではなく、直営で財政削減の方向をつくるとしています。

●西宮市の学校給食データ

 全小中学校で自校直営方式。
 小学校42校23,411人、中学校20校10,095人、養護学校
1校58人の計63校33,564人(2001年5月現在)。
 献立は、統一献立で、食材も(財)西宮市学校給食会による一括購入を行っています。
 食材は、原則として食品添加物を含まず、可能な限り国産で遺伝子組み換えではないものとしています。米飯給食は、業者委託炊飯で、 炊き込みご飯などは自校炊飯となっています。2001年には、週2.76回が米飯給食となっています。
 食器はポリプロピレン製。調理場は、新設、増設時にドライシステム化しており、ウェットシステムもあります。
 栄養士は県費職員のみです。

●民間委託の問題点に配慮し、直営を原則選択

「検討委員会」答申によると、
「(前略)
 西宮市の極めて厳しい財政状況の中で、先に述べたように給食内容の一層の充実を図り、施設設備の整備を進めるための財源を確保することは、 非常に難しい状況にある。一方、西宮市の学校給食は、直営による単独校調理場方式で実施しているが、それに要する市負担経費は、 12年度決算額でみると、教育費約192億円のうち約12%にあたる約23億4千万円を占め、そのうち人件費が約21億円で約90% を占めている。
(中略)
 経費的な面からの試算によれば、現在の一般職員、嘱託調理員制度を前提とする限り、調理業務の民間委託が最も効果的であると考えられる。 しかしながら、給食実施方法の変化に対する保護者の不安、 短期的な試算では民間委託の効果が少ないとの意見や一部自治体では民間委託が必ずしも低コストに結びつかず、 児童生徒数が減少しているにもかかわらず、経費が逓減しない状況なども見られることを考慮すると、 これまで安全でおいしい給食を安定して供給してきた直営方式の中で人件費を削減する方法を検討されたい。なお、見直しにあたっては、 国が検討している「公務員制度改革」の動向に留意することも必要である。
 調理員の人件費については、他市に先駆けて嘱託調理員制度を導入したことにより、効率化が図られてきたところであるが、 前述のとおり給食関係経費に占めるウエートは非常に大きい。また、税を納めている者としての市民感情を踏まえるとともに、 昨今の極めて深刻な経済・財政状況の中で、安全でおいしい学校給食の維持向上を図っていくには多大な経費を要することを勘案すると、 人件費の削減によって必要な財源を確保することが、よりよい学校給食を推進していくための必須条件と考えられる。

 人件費の削減の方法としては、調理員退職者の嘱託調理員等での補充、給食数や実態に即したより効率的な配置基準への改正、 長期休業中の勤務及び代替調理員制度の見直しなどを行い、調理業務を民間委託に近い経費で運営できるようにされたい。また、このことによって、 学校給食の質や安全性が低下することがないように十分に配慮する必要がある。

 平成15年度から、この新体制に移行できない場合には、調理業務の民間委託の導入を検討されたい。

 調理業務の民間委託については、学校給食の質や安全性の低下を危惧する意見もあるが、他都市の事例から、 責任を持って適正に業務を遂行できる実績のある業者を選定するとともに、その実施状況を点検できるシステムを整えることが必要である。また、 適宜競争入札を行うなどして、適切なコストが維持できるよう運営しなければならない。

 なお、このような効率化について、一部の委員から反対の意見がある」
 との答申を示しています。

 これに対して、「西宮市学校給食基本方針」では、
「調理員の退職者を嘱託調理員等で補充し、配置基準を給食数や調理作業の実態に即したより効率的なものに改正するとともに、 三季休業中の勤務条件や代替調理員制度等を見直すことにより、人件費を削減し、 民間委託に近い経費で運営するための新しい調理体制に平成15年度から移行できるよう取り組む」
 として、民間委託を前提にしない方針を明記しています。
 今後、調理体制についての協議や議会での議論が行われることになるということです。

●まとめ~注目される西宮市の動き

 行政改革の流れから、「給食検討委員会」などが設置され、その結果として調理の民間委託方針が出されることが多くなっています。すでに、 東京都八王子市が、調理の民間委託試行後に、再協議を行ない、直営継続を決めるなど、 必ずしも民間委託がコスト削減につながらないという認識が広がりつつあります。その中で、直営での方向性を探る西宮市の取り組みは、 注目に値します。

●補足

 この他にも、西宮市では、選択給食の充実や給食残量を減らす取り組み、食物アレルギーへの対応のあり方、栄養職員の配置、未配置の問題、 ランチルームや施設設備、自校炊飯問題などについても方針を出しています。
 給食費について、現在の食材費のみの保護者負担から、光熱水道料の一部などを保護者に追加負担してもらうことが可能かどうか、 今後研究するとしています。
 同市のホームページには、学校給食のページがつくられています。
 学校給食検討委員会の答申についても、同ホームページから見ることができます。(2002年12月現在、 基本方針については掲載されていません)
 また、毎月の献立なども掲載しています。
 http://www.nishi.or.jp/~gakkou/gakuho/

(学校給食ニュース2003年1月号)

 

 

[ 03/12/31 委託・合理化 ]


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