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茨城県龍ヶ崎市 新設給食センター民間委託問題を考える

茨城県龍ヶ崎市

経費節減にはならないのになぜ?
新設給食センター民間委託問題を考える


龍ヶ崎市学校給食の現状
 茨城県龍ヶ崎市は、人口約7万人、小学校12校、 中学校5校があります。学校給食は、小学校1校を除く16校の約8800食を市中心部にある給食センターで実施しています。
 現在の給食センターは、1985年に操業し、現在、27人の正規調理員と16人の臨時職員で調理をしています。
 龍ヶ崎市は、首都圏のベッドタウンとして人口が増加しており、学校の新築などがあり、現状のセンターでは対応しきれないとして、 近隣に第2給食センターを建設していました。このセンターは、1999年4月より稼働し、中学校分の3500食をつくることになっており、 現在の給食センターの調理員合計43名を振り分ける形で調理を行う予定でした。
 ところが、98年11月、調理員と市当局の恒例交渉の中で、第2センターについては、調理業務を民間委託すると発表しました。 6月から検討をはじめ、10月はじめに方向を決定したとのことです。
 それにより、現在の臨時調理員16名は、3月末をもって解雇する方針となりました。

4カ月間の実施延期
 これに対し、自治労龍ヶ崎市職員労働組合は、1月末から直営の必要性を訴える請願署名をはじめ、2万を超す市民分を含む3万の署名が集まり、 市教育委員会に提出されました。しかし、2月24日の定例教育委員会で、20分程度の審議の後、不採択となりました。 傍聴した学校給食を考える市民の会メンバーは、「子ども達の教育環境を考えての議論や意見はほとんどなかった」と語っています。
  市議会分へは、市民29,114名にのぼる署名が集まり、議会へ提出されました。
 2月28日には、学校給食を考える龍ヶ崎市民の会や幼稚園長などと共同で集会を開催しています。そして、翌3月1日に市議会が開会、 民間委託予算を含む99年予算案が可決されました。
 請願については、9日に開かれた文教福祉委員会での審議となりましたが、他の案件のために審議されず、 かわりに民間委託実施を4カ月以上延期することになりました。結局、請願は不採択となり、 4カ月以上の実施延期のみが17日の市議会で決議されました。
 その結果、3月末で解雇される予定だった臨時職員16名は、4カ月間契約が延長されることになりました。

疑問の多い民間委託決定
 龍ヶ崎市が決定した第2センターの民間委託化にはいくつかの問題があります。
 まず、その決定過程に大きな問題があります。98年6月から市当局で検討し、10月に方針を出しているとしていますが、 教育委員会や学校給食センター運営委員会もこの方針を知らず、決定手続きが明らかではありません。
 行政改革の一端という、調理の民間委託で必ず持ち出される理由についても、当の行政改革懇談会で方針の報告や議論はされていません。 「市長の方針」というだけで決められているようにも見えます。
 次に、経費節減についてですが、この方針が示された98年12月市議会では、教育長が「5年後、10年後の経費節減のため」と説明し、また、 99年3月市議会では、「2、3年後の経費節減」としています。
 実際に、臨時職員16名の解雇による予算の削減は、年2,000万円であり、委託費として計上されているのは、5,225万円。これだけで、 3千万円強の負担増となります。
 民間委託は、年々委託経費が高くなったり、追加設備コストが高くなり、長期的にみて経費節減にならないことは、 すでにいくつもの地域で明らかになっています。
 それなのに、なお、委託当初から3千万のコスト増を見込んでいることに大きな疑問を感じざるを得ません。
 経費節減についての根拠がないことは、市当局自身も把握しており、民間委託する理由がどこにも見あたらないのです。
 もちろん委託業者は決まっていませんが、もし、議会で民間委託が決まった場合、市当局はどうするつもりだったのでしょうか。 すぐに決まるような状態になっていたのでしょうか?

市民の声はどこへ
 3月26日付読売新聞によれば、4カ月間の再契約を行ったある臨時職員は「市の仕打ちはひどいが、 子どもたちのことを考えると慣れた私たちが給食をつくるしかない」と語っています。一方、市長は、4カ月後には民間委託を予定通り行う方針です。
 市職員労働組合では、「センターから単独調理への移行や、カフェテリア方式の導入など、学校給食をよくしていく取り組みに対して、 今回の民間委託は逆行しています。当面は、直営維持を訴えていきたい」と引き続き運動を展開します。
 4カ月以上の延期とは、1学期中は民間委託しないということです。この期間には、市議選があり、議会もあります。
 龍ヶ崎市の市民は、今、子ども達と地域にとってどのような学校給食が望ましいか、考え、行動する時を迎えています。
 

 

(学校給食ニュース11号 1999年4月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]


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