学校給食ニュース
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学童保育所での給食実施 福岡県穂波町

学校給食全国集会 結果報告
2002年2月25日開催しました

事例発表:学童保育所での給食実施について
福岡県穂波町職員労組書記長 森田雪(もりたきよむ)さん


 穂波町で昨年とりくみました、学童保育所における給食の実施についてご報告させていただきます。私は単位組合で役員をしていますが、 現場の個別事例は分かりません。それを前提にお聞きください。2002年3月末で国・地方の債務が666兆円になります。 近年の長引く不況で国や地方自治体の財政も破綻に近づいています。財政の硬直化が年々深刻になる一方で、行政に対する住民の要望は複雑化、 多様化し、行財政に対する住民の関心も強まっています。穂波町においても同様です。穂波町は、福岡市・北九州市までそれぞれ車で40分、 人口約27000人、町立小学校5校、中学校2校あります。小学校5校全校で学童保育所を設置しています。給食は小中ともに直営・自校方式です。 調理員は正職員19名に臨時職員がいます。
 財政面からみて、今日人件費が問題にされています。とりわけ、学校給食の夏休み、冬休み、春休みの3期の問題がクローズアップされています。 そのような状況下、町当局はすでに民間委託した学校給食調理場の視察やセンター化に向けた見学が行われています。
 私は、以前議会事務局におり、労組として議員さん達との人脈があります。 議員さんから民間委託や給食センターについて教育委員会のあらゆる会議での話題が多く、各委員も関心を持っていると教えて頂きました。行政が、 現実として人件費をコストという観点から施策の議論をしがちになっています。
 夏休みの問題については、労組としても以前から課題にしていました。近年厳しくなった公務員をとりまく環境で、 学校給食現場がまっさきに問題になります。そこで、この指摘を受け、教育委員会や住民の皆さんにきちんと提案できることをしようと議論しました。
 その中で、3つの方法が検討されました。
 1:町立保育所の調理を手伝う
 2:老人向け配食サービスの調理を手伝う
 3:学童保育所の夏休み期間に給食を実施する
 これらを検討しましたが、町立保育所、老人向け配食サービスについては、夏休み以外は対応できないため、 学童保育所の案にしぼって考えることにしました。
 現業職員全員に集まっていただき、これについて説明しました。
 まず、学童保育所がフルタイム実施されている時期と学校が休みで給食調理業務を行なわない時期は当然一致します。そしてこのことの実施は、 住民福祉の向上につながります。さらに、調理員が各校で対応でき、本来の業務ができます。
 この提案に対しては、現場では新たな業務が増えることに対する異論もありましたが、結果的には賛成の声が多く、実行することとしました。
 この提案に先立って、組合として学童保育所の実態を調査しました。すると、私たちが考えていたように、 手作りの弁当を持ってくる子どももいますが、ほか弁、パン、カップラーメンを持ってくる子どももいました。中には何も持ってこず、 学童の先生がみかねて何かつくったり、パンを買って渡すというような実態が浮かびました。
 この実態と調理員の賛成を得て、町当局に提案しました。提案は、1999年です。それから、2001年まで当局は回答を引きのばし、 まったく後ろ向きの姿勢でした。組合としては実現を願い、福岡県の自治労県本部に問い合わせをしました。全国初かなと思っておりましたが、 もちろん、そうはいかず、先進地の照会依頼をしましたところ、九州にはなく、山口県萩市が実施されていたため、 2001年2月27日に視察に行きました。
 萩市では、私が頭で思い描いていたそのものが実践されていました。この学童保育所での給食実施については、保護者、子ども達からも好評であり、 穂波町での実施に自信をつけることができました。
 これをふまえて当局と再度交渉し、町長の同意を得て実施への方向が決まりました。実施を具体化するためにアンケートをとるよう当局に要請し、 学童保育所利用の保護者に意見を求めたところ、8割前後の保護者から希望がよせられました。
 2001年6月議会で、町長が表明、補正予算が提出され、可決されました。
 これをうけて、調理員との具体的な協議に入り、中学校調理員を含めたローテーションを組むこと、調理器具の購入は必要最小限とし、調理室、 家庭科室の器具を使うこと。メニューは過去の評判がよかったものの中から調理員が選び、できる限り手作りする。 検食と保存は通常の学校給食と同様にする。料金は1食250円を目標として、米飯で行う。パン、牛乳は使用しない。 1週間ごとに給食日数の希望をとり、料金は前払い、取り消しは認めない。余剰金がでたら返還する。今年度(2001年度)実施期間は、 夏休み初日の7月21日から8月31日のうち土日、盆前後、研修日を除いた23日間とすることを決めました。
 5校のうち、2001年に実現できたのは2カ所です。これにかかった補正予算は、追加の器具など約25万円で済みました。なお、 食費の250円は、萩市の例を参考にしました。
 食材の購入は、調理員が自分たちで買い出しに行きました。
 1校は、余裕教室、もう1校は別棟で学童保育を行っており、給食は余裕教室にて提供しました。
 実施結果ですが、250円に対し、131円で実施することができました。残金は全額還付しました。これを踏まえて、町当局に申し入れし、 来年度以降の実施と未実施校中2校の実施に向けて、今回給食を実施した2ヶ所の保護者へのアンケートをとるよう求めました。なお、 残る1校は改築中です。実施したが学童保育所の保護者へのアンケートはほとんどが高い評価を示していました。
 子どもは6~7割が好評でした。食べ残しはまったくありませんでした。通常の学校給食とは違い、学童保育は、 評判のよかったものをメニューにしたこと、通常の学校給食では量の関係で冷凍食品を使うこともありますが、 できるだけ手作りしたことがこのような結果になったと思います。
 また、当初弁当を持ってきた子どもも、まわりが給食を食べているため、親にせがんで給食を食べたいとして、 ほとんど給食を選択するようになりました。
 今回の取り組みでは、学童保育所の設置背景が、従来からの共働き家庭だけでなく、不況による新たな共働き家庭の増加と女性の社会進出、 母子家庭、父子家庭の増加があります。子ども達を取り巻く社会不安も増加しており、家庭や地域の子育て機能が低下しているからこそ、 学童保育所の必要性があると思います。
 本来であれば、夏休みぐらいは母親がつくる弁当を持ってきて食べるということが理想だろうと思います。しかし、現実は、 弁当を持ってきている子どもが多いとは言えません。理想と現実には差があります。 そこに学童保育所での給食提供の役割があったのではないかと思います。
 今回の学童保育給食は、より手作りのものを提供した結果、食べ残しがなくて好評だったということがありました。これは、 コストを抑える民間委託、あるいは、一カ所で何千食もつくる給食センターの合理性など、食べ残しを増やす「効率・簡素化・コスト論」ではなく、 「自治体直営による自校方式」をめざすべきだという一定の方向性を示されたのではないかと考えます。
 今回の実施は夏休みだけですが、冬休み、春休みについても要望があれば対応を考えようと思っています。もちろん、現場の声も大切です。 冬休みは年末年始を除くと実効性がなく難しいかと思っており、春休みが今後の課題です。
 今後は、全カ所実施とともに、地場農産物を活用し生産者と連携したり、保護者と子ども達とのふれあいクッキング、昼食などを実施し、 多様な食育効果を検討する必要があると思います。

■質問:鳥取県米子市、2001年夏よりなかよし学級という学童保育をはじめました。米子市は学校給食センター方式ですが、 食器をどうするかということで、弁当箱で作っています。穂波町では食器をどうされたのでしょうか。また、調理員の方の感想などを教えてください。 米子市では、最初反対もありましたが、やってみたら調理員もやりがいを感じ、やってよかったという意見も多くありました。

●答え:食器は、学校給食用のものを使いました。材質は、アルマイトです。感想ですが、最初は反対意見がありました。協議を重ね、 危機感をもって取り組みました。その結果、配膳等で子どもと直接ふれあえ、おいしかったという子どもの言葉を聞いて、 やってよかったと思っています。(穂波町の調理員が回答)

■質問:千葉県柏市からです。事前のアンケートはしましたか?学童保育給食の実施について結果の反応で、 子どもが6~7割評価ということですが、残りはどうでしたか?

●答え:事前のアンケートは、希望が7~8割。農村部では希望が少なく、住宅地では希望が多いという結果になりました。 農村部では1割程度の希望でした。アンケートの取り方や私たちの意図の問題もあったかと思います。事後のアンケートのうち、 子ども達の評価についてですが、アンケートの取り方は、「とてもおいしかった・おいしかった・ふつう・あまりおいしくなかった・ おいしくなかった」という質問で、「あまりおいしくなかった・おいしくなかった」という回答はほとんどなく、「とてもおいしかった・ おいしかった」が6~7割で、「ふつう」をいれると9割となり、通常の学校給食に比べればよかったと言えますし、 食べ残しがなかったことがそれを裏付けています。量についても聞きましたが、「多かった・ちょうどよかった・少なかった」については、 「ちょうどよかった」が6割、あとは個人差だと思います。料金については、保護者にアンケートを取り250円については、 適当だという回答が多かったです。

■質問:福岡県久留米市からです。女性の社会進出というところから考えるとすばらしい取り組みだと思います。調理員の夏休みについて、 久留米でも議員から質問があります。その意味でもこの取り組みを広げていくことが必要だと思い、手法をもっと聞きたいと思います。 予算が2校実施で25万円ということですが、3カ所増やすとこの予算は増えていくのでしょうか。また、この予算は、 必要に応じてまた組まれることがあるのでしょうか。

●答え:25万円の中身は調理器具です。大半がガスレンジの代金です。給食室の回転釜では大きすぎますので、 人数に見合う調理器具を購入しました。また、調味料、水道光熱費が予算として支出されました。人件費はかかっていません。 今後必要になる予算としては、ガスレンジなどの新規購入ぐらいでしょう。当面は、これ以上の追加予算措置はありません。 平成14年度の実施に向けて必要な予算計上がされると思います。

■質問:富山県高岡市職です。夏期休業中の清掃や補修などの作業はどのようにして対処しましたか?また、調理員何人で、 ひとりあたま何日出て、何食作りましたか?

●答え:同じ意見が調理員より出ました。組合としては8月31日まで学童給食を実施したいとしていましたが、調理員からは、 2学期前のしばらくは清掃、準備等が必要ということでした。
未実施期間としました町主催の研修日については、盆の前後が子どもの出席が少ないので、その間にしてもらうよう町に要請しました。機器整備、 清掃、準備については、ローテーションを組んで学童給食をやっているので、それ以外の人は、自分の職場の通常作業をやりました。実施校は、 なかなかたいへんでしたが、通常業務に比べれば食数が少ないので、調理時間、片づけ時間が短くて済みます。そこで、 学童給食を終えてから通常業務を行い、学期前後業務が通常3日で終わることは5日で、というように対応してもらいました。 
学童給食の食数は、だいたい70食前後です。少ないと40食ぐらいでした。

■質問:長野県の調理員です。学童給食をやった場合、夏の暑い時期、万が一食中毒が起きた場合、責任はどうなるのか。また、 アレルギーなどの除去食は対応されていますか。また、通常の調理マニュアルに沿って野菜のすべて熱を通すとか、 食器の熱消毒などをやっているのでしょうか。131円という値段を出すことで、 普段の給食費が高いのではないかという問題がでるのではないかという一点。自費負担が多いため、 学童には公務員の子どもや先生の子どもしか学童にはやれないという声があるのですが、 さらにこのサービスによってサービスの不均衡があるのではないかと思いますがいかがですか?

●答え:食中毒の問題ですが、実施にあたって内部でも外部でも指摘がありました。検食、保存食は通常の学校給食通りにやりました。 アレルギー対応は、実施していません。調理員にもプライドがあります。通常と同様に衛生面に気をつかってやりました。 131円は牛乳を提供していないことなどがあり、比較できないと思います。牛乳を提供しないことについても特別な声はありませんでした。 サービスの不均衡という声は今のところありません。

■質問:沖縄県からです。栄養士は関わっていますか?栄養士は食養構成に基づいて献立をたてます。栄養士としては、 残食がなかったというのは気になります。
給食の場合栄養価を気にするため、残量があります。また、子ども達が好きなものだけをつくるわけにもいきません。

●答え:献立作成に栄養士は関わっていません。今年度は第1年次の取り組みということもあって、メニューは子どもが好きなメニューで選び、 カロリー面などは考えないことにしました。今後より検討が必要です。

■質問:広島県東広島市職労です。学童保育への夏休み給食を当局と交渉しましたが、住民サービスの不均衡でけられてしまいました。 穂波町でも3年前に提案ということでしたが、アンケートの結果で実施されたのでしょうか。それとも、他の、 住民からの要請などがあったのでしょうか。交渉の経緯や実現への方策を教えてください。

●答え:サービスの不均衡については、そもそも学童保育所の設置は、それ自体学童保育所を利用する子、しない子があります。また、 学童保育所の給食に新たな助成があれば不均衡になるかもしれませんが、食材費は保護者負担ですし、学童保育所での給食が不均衡なら、 学童保育所の設置自体が不均衡になると考えます。町長は、夏休みぐらい親が弁当を作るべきだと難色を示してきました。 ならばなぜ夏休みぐらい親が学童保育所に預けず、面倒をみないのか、実際に学童保育所が必要になる背景を考えれば、 学童保育所の給食もその延長にあるのではないかという話をして、また、アンケートの結果をみても、支持があるということで交渉し、 合意を得ました。

■意見:世田谷区の栄養士です。この話には納得がいきません。私たちは子ども達のための学校給食の実現を目指して全国集会をやっています。 調理員の仕事の未来をどうするかという話になっているのではないかという気がします。世田谷区でも、 学校給食の調理員による保育所のお手伝いがはじまりました。調理員はほとんど休めない状況で、休んでも代替がこない状況です。 大きな仕事は夏休みしかできません。そういう時にしか休めない状況で保育所のお手伝いがはじまるというのは矛盾を感じます。 民間委託が進んでいく中で、調理員としてどう考えるかということは分かりますが、本来の学校給食を考えることが必要ではないかと思います。 地方と都市部の差はあると思いますが、学校給食を民間委託にしない方法を学校給食の面でどう考えるかということが大切ではないでしょうか。 そうでなければ、このような取り組みも、やがて民間委託になってしまうのではないかと思います。 学校給食はいかにあるべきかを考えていきたいと思います。

●答え:今の意見は当然ありました。自分たちの都合のいい理屈をつけて、子ども達を利用して身の保全をはかっているのではないかと。ただ、 基本的には労働組合としては調理員の身分を守り、民間委託とセンター化を阻止したいというのが使命だと思います。 新たな労働強化にはなっていますが、社会的にみて、調理員の夏休みの状況を説明しうるかというと難しいものもあります。この不況下、 やむをえず共働きという状況もあります。学童保育に預けざるを得ないという状況です。私自身も学童保育に子どもを預け、 安心して働けるという時期がありました。経費をかけず、住民福祉に寄与できるのであれば、出発点がどうあれやっていいのではないかと思います。

 

[ 02/02/25 栄養職員・調理員 ]


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