有機農産物の使用実態および導入希望調査報告
有機農産物の使用実態および導入希望調査報告
(紙版ニュース2010年11月号掲載より)
全国学校給食を考える会は、2010年の夏期学校給食学習会(7月29日、30日)の参加者に対し、
「有機農産物の使用実態調査および導入希望調査」アンケートを実施しました。121人の栄養教諭・学校栄養職員、
調理員の方々から回答が寄せられています。
食育基本法や有機農業推進法ができたことで、
有機農業の教育力を活かそうと学校給食に活用したいという生産者や学校関係者の声を以前よりも耳にするようになりました。特に、
地場産給食の推進が食育推進基本計画で数値目標となったことから、地域の中で生きものと共生し、安心できる有機農業が求められています。
その一方で、学校関係者、学校給食関係者の有機農業についての理解が不足している、あるいは、
生産者がどのように学校や学校給食に接点を持てばいいのか分からないという課題も聞かれます。
有機農産物の定義についても、JAS法での「有機JAS」規格に定められた「有機農産物」もあれば、有機農業推進法にみられる
「有機農業にとりくむ生産者の生産物」、さらには、「環境保全型農業」などで農薬や化学肥料を無くしたり減らしたりした「特別栽培農産物」
といったものもあります。
そういった課題や導入についての現在が、アンケートを通じて浮かび上がったようです。
学校給食と有機農業については、学校給食ニュース
2010年7月号の特集で「有機農業から考える、学校給食と生きた教材 いのち、地域から生物多様性、地球温暖化問題まで」
としてまとめています。ご参考ください。
皆さまは、学校給食と有機農産物の取り組みをどのように考えていますか?(学校給食ニュース編集)
「有機農産物の使用実態調査および導入希望調査」を実施した理由
全国学校給食を考える会 会長 五十嵐興子
学校給食は調理業務の民間委託化や大型センター化、弁当持参も選択できる業者弁当の導入、
委託炊飯にみられる手作り給食の後退など多くの合理化施策を跳ね除けることができないままにいます。しかし、
学校給食に有機農産物を導入することで、地域の活性化に貢献し、「子どものための安全でおいしい手作り学校給食や教育としての学校給食」
の実現ができる考え、表記の調査を実施しました。
(設問1、2、3のねらいはここにあります)
子どもたちは地域の有機農産物を学校給食で食べることや、農業に従事する人や農作業を身近に目にすること、
農作業の体験学習をすることで、農産物が土の中で育つ「生物」であることに気づきます。
学校給食の食材として使うことで調理法や味を体験し、食べることで成長や健康に深くかかわっていることを理解します。
地元の食材を地元の学校給食調理員が調理することで、その地域の食文化として受け継がれます。地域が元気をなくしている今は、
学校給食ば食文化を伝える担い手です。
有機農産物を学校給食で使うことで、野山や水の中に棲む生き物や、野菜くずや落ち葉・稲わら・ 鶏糞などで熟成された堆肥を混ぜた田畑の中に棲む生き物など、多様な生物と人間が共に暮らしていることを学びます。 このことが豊かな自然環境の保全につながることを子どもに伝える食農教育のチャンスです。
地域では、「生産者が労力を費やしてできたものを家族や子どもに食べさせたい」「より安全なおいしいものを作りたい」
「地域自給で学校給食の食材を賄えないか」「農業で暮らしていけないか」という意識や期待が生まれ、地域と学校の関係が密になります。
地域の有機農業の自給率が向上することで、生産者の生活が安定すれば、
地域で育つ子どもたちは大人になっても地域で暮らし続ける希望を見出せます。
学校給食で有機農産物を使うことで、安心・安全な給食が確立すると共に、地域農業の活性化の受け皿になると考えています。
「調査結果から思うこと」
「設問4 学校給食で有機農産物をつかっていますか」
では121施設中、「現在使っている」が25施設で20.7%の回答でした。
「設問5 学校給食で有機農産物を使っていない」施設
86施設中、「機会があれば使ってみたいと思っている」は84施設で97.6%でした。
「設問13 学校給食の献立を作るときに考慮していること」では、「食の安心・安全」が75.2%、「衛生管理」が62.0%、「旬」
が58.7%でした。
この結果だけで、「学校給食に有機農産物を使うことで、安心・安全な給食が確立できる」と結論づけることには無理があります。
しかし私は期待をしたいと思っています。
「設問9 有機農産物を現在使っている、過去に使ったことがある施設で使うきっかけ」を聞いたところ、「栄養教諭(士)・
調理員の要望」が54.8%と回答がありました。
「設問11 どこから購入しているか」では、個人農家48%で、次に農協や生産者団体40%でした。
「設問12 現在使っている価格」は高いが32%、普通48%、安いは8%でした。
学校給食の調理現場と農産物の生産現場との協力や努力に支えかれて、現在使っていると考えます。
「設問6 過去に使っていたが現在は使っていない理由」では、「欠品が困る」「価格が高い」が挙げられています。
「設問7 使ったことのない理由」では、「安定供給ができないと心配がある」「費用の問題」「有機農産物の購入方法がわからない」
「従来の業者との調整が困難」などが挙げられています。「現在使っている」施設ではこの点をどうクリアーしているか、
今後再調査したいと思っています。
「設問12 現在使っている施設では有機農産物の安全性」が高いと76%の回答がありました。
設問8の回答結果からも、有機農産物の導入が安全な学校給食確立になり、教育素材として役割を果たし、
民間委託反対運動のエネルギーとするために、今後有機農業について繰り返し学習会をもつたいと考えています。
学校給食での有機農産物の使用実態調査および導入希望調査結果
学校給食での有機農産物の使用実態調査および導入希望調査結果- 201.0 KB
[ 10/11/27 食材など ]