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牛乳について考える1

学校給食に関する出来事で2000年にもっとも新聞などをにぎわせたのは、「牛乳」 についてでした。雪印乳業の食中毒事件以降、注目を集めた牛乳。静岡県の函南町にある函南東部農協の牛乳処理工場に協力していただき、 牛乳の基本的な知識を整理しました。

【牛乳と牛乳のようなもの】

 白い飲みもの、牛乳。学校給食で出されているのは「牛乳」です。雪印乳業の食中毒事件で最初に問題になったのは「低脂肪乳」でした。 これは「牛乳」ではありません。牛乳と牛乳・乳製品を使った飲みもののについては、 厚生省の乳等省令や公正競争規約で種類の定義が決められています。

牛乳(成分無調整牛乳)…牛からしぼった生乳を加熱殺菌しただけのものです。なお、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8% 以上というきまりがあります。

部分脱脂乳…生乳の乳脂肪分を遠心分離器で一部分とりのぞきます。脂肪分が牛乳より少ないですが、カルシウム、 タンパク質などの成分はほとんど牛乳と同じになります。

加工乳…濃厚牛乳や低脂肪乳などの商品名で売られています。生乳、牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、バターなどの乳製品が原料で、 牛乳に比べて乳脂肪分をふやしたり、乳脂肪分を減らすなどの加工処理が行われます。無脂乳固形分8%以上というきまりがあります。

乳飲料…コーヒー牛乳やフルーツ牛乳などの商品があります。生乳や牛乳、乳製品を主原料にして、乳製品以外のものを加えたものです。 なかには、カルシウムやビタミン、鉄分などを加え、見た目に白い牛乳のような乳飲料もあります。乳固形分3%以上というきまりがあります。

 では、「牛乳」という商品名(表現)は定義上の「牛乳」だけに認められているのでしょうか。不思議なことに、乳脂肪分3%以上、 無脂乳固形分8%以上で、生乳が50%以上含まれていれば加工乳や乳飲料でも商品名に「牛乳」とつけるることができます。また、 コーヒー牛乳などの「色物」乳飲料については、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上であれば、生乳が50%入っていなくても商品名に「牛乳」 の文字が使えます。
 また、「ミルク」「乳」の文字については、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上で使えることになっています。(公正競争規約)
 なお、これらの表示は、製品に必ず記載されています。「種類」のところにあたりますので、スーパーなどでいろんな製品を見比べてみてください。

 


 

 

●脱脂粉乳+バター+水=牛乳?
 生乳から水分を抜き取ったものが「全粉乳」、生乳から脂肪分を取りわけ、水分を抜き取ったものが「脱脂粉乳」です。じゃあ、 全粉乳を水に溶いたり、脱脂粉乳と乳脂肪の固まりであるバター、それに水を加えたら牛乳になるのでしょうか。
 牛乳は、牛の乳を搾ったものを加熱殺菌しただけのもので、水や添加物を加えると、牛乳ではなくなります。 このように脱脂粉乳+バター+水でできたものは「還元乳」と呼ばれます。
 果汁の飲み物には、搾っただけの「ストレート」と、一度濃縮させたものを水で戻した「濃縮果汁還元」の2種類があります。しかし、牛乳の場合、 この「還元乳」を「牛乳」や「成分無調整乳」として販売すれば、処罰の対象になります。かつて全酪連のいわゆる「水増し牛乳」事件は、 まさしく生乳に粉乳と水を加えて調整していたもので大きな事件になりました。
 その一方で、加工乳や乳飲料の中には、「牛乳」「ミルク」などの表示はないものの、あたかも牛乳のように販売されているものがあります。
 学校給食に使用される「牛乳」は、加工乳や乳飲料でないため、基本的には本物の「牛乳」として安心できますが、 家庭などでこれらの牛乳のような飲みものを飲むことはあろうかと思います。牛乳と牛乳のようなものの違いについて知っておくことは大切です。

【牛乳の殺菌方法】

●殺菌方法
 牛乳は牛の乳です。もともとは、母牛が子牛に直接飲ませるもの。 搾りだしてしばらくしてから飲むことは本来の自然状態ではありえません。だから、搾りだしてから時間とともに少しずつ品質は劣化します。 牛乳は栄養たっぷりの液体です。それは細菌にとっても栄養がたっぷりということです。乳酸菌のようないい菌も、 食中毒を起こすような菌も繁殖しやすい液体です。そこで、牛乳については、 まず原料の生乳について総菌数1ミリリットルあたり400万以下の基準があり、また、殺菌後は5万以下になるように食品衛生法にもとづいた 「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で定められています。また、殺菌方法についても「62~65度で30分間加熱殺菌するか、 またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」と定められています。そして、 殺菌後は1ミリリットル中に5万以下の菌になることが求められます。
 牛乳の殺菌方法は、大きく4つの方法があります。その中で、日本でもっとも多く採用されているのは超高温短時間殺菌法(UHT)です。

低温保持殺菌法(LTLT)…いわゆる低温殺菌で、62~65度・30分の殺菌を行います。
高温保持殺菌法(HTLT)…75度以上・15分以上で殺菌を行います。
高温短時間法(HTST)…72度以上・15秒以上の殺菌。世界的に一般的な方法です。72度15秒が主流ですが、80~85度・ 10~15秒の殺菌方法もあります。
超高温短時間殺菌法(UHT)…日本で一般的な方法です。120~130度・2秒の殺菌をします。150度・1秒の殺菌もみられます。

●ホモジナイズ
 この殺菌の前処理として、均一化(ホモジナイズ)を行うことがあります。 生乳には脂肪の粒が入っています。これを脂肪球といいます。生乳を静かに容器に入れて置いておくと、やがて上の方にクリームの層ができます。 ホモジナイズとは、この脂肪球をこわして小さくする工程で、これによってできた牛乳は置いていてもクリームが浮き上がったりしない、 均一なものになります。
 超高温短時間殺菌の牛乳の場合には、必ず、この処理をしてあります。これは、均一化することで、牛乳の殺菌処理がやりやすくなるからです。
 一方、低温殺菌の場合、ホモジナイズをしてあるものとしていないものがあります。ホモジナイズをしない理由に、 できる限り生乳に近い状態でパック詰め(瓶詰め)して届けるという目的があります。また、ホモジナイズをしない牛乳は、殺菌してあっても、 静かに容器に置いておけば、クリームが浮き上がり、上の方は濃い牛乳、下の方はあっさりした牛乳になるため、 使い分けなどもできるというメリットがあります。そのかわり、飲むためだけならば、 よく振ってから飲まなければ場所によって味が違うことになります。

●殺菌方法による栄養の違い
 日本で一般的なUHTと近年増えつつあるLTLTについて比べてみると成分的な差はありません。 しかし、高温をかけるUHTの方は、カルシウムやタンパク質が熱変成を起こすことが知られています。また、ビタミン類は、 UHTの方が10~20%ほど少なくなります。

●殺菌方法による味の違い
 日本で一般的な超高温殺菌の味に慣れていると、はじめて低温殺菌牛乳を飲んだとき「あっさりしている」「コクがない」 という感想を持つ人が多いようです。これは、高温殺菌の牛乳には色が変わるほどではなくても高温のためにいわゆる「コゲ」臭が牛乳につき、 これがコクとして感じられるのではないかと言われています。低温殺菌の方が、もとの生乳により近く、本来の風味があります。

●なぜ日本でUHTが主流なのか
 もともと牛乳を飲む習慣がなかったところに牛乳の文化が導入され、また、栄養改善の目的で牛乳の飲用が進められた経緯があります。そのため、 かつては衛生管理上、生乳の品質に不安があり、より滅菌に近いUHTを殺菌方法として採用したようです。また、UHTの方が、 短時間に連続して大量に処理できるため乳業メーカーの経済性からもUHTが選ばれてきたと考えられます。
 一方、世界的には低温殺菌が主流ですが、これは、背景に牛乳の文化があると考えられます。よく刺身にたとえられますが、 刺身を熱で殺菌して食べることはありません。それと同様に、牛乳はより搾りたてに近い状態で飲んだ方がおいしく、 最低限の加熱にとどめて風味を損なわないようにしたいという考えに根ざしているようです。

【牛乳の衛生問題】

 牛乳の安全性、衛生面については、大きくふたつに分けて考えられます。ひとつは、酪農家が牛を育て、乳を搾り、牛乳工場に運ばれるまで。 もうひとつは、牛乳工場で殺菌などの処理をして容器に詰め、販売し、消費者が飲むまでです。
 まず、搾って牛乳工場に運ばれるまでですが、生乳の受け入れにあたっては、乳等省令をもとに、細菌数の確認、乳脂肪分など成分の確認、そして、 抗生物質反応の確認をします。抗生物質の反応を検査するのは、牛の体調が悪く投薬をしたときなど、 投薬終了後3日間は乳を出荷しないことになっていますが、牛の乳は毎日朝晩搾りますので、万が一混入することのないようにするためです。 これは酪農家ごと、搾るたびに調べています。
 次に、殺菌後の検査ですが、脂肪分、無脂固形分や細菌数、大腸菌群の有無について確認します。また、官能検査として風味を確かめます。
 なお、この細菌数の検査には約18時間ほどかかるため、製造後早くても翌日にしか店頭に並ぶことはありません。学校給食の牛乳でも同様で、 パック詰めした翌日、細菌数検査が終わってから配送されます。
 牛乳そのもので衛生上問題になるケースとしては、保管や配送などの際に温度管理が適切ではなく、温度が高くなって菌が繁殖し、 乳酸発酵で酸味がしたり、そのほかの菌で異臭がする場合が考えられます。また、瓶などの場合で、洗浄時の塩素が残留し、 牛乳ににおいが移って異臭が起こるなどの事例がありました。
 なお、牛乳についての衛生基準は他の食品よりもはるかに厳しく、生乳段階、殺菌後の段階で菌数、抗生物質などの検査が毎日行われています。 牛乳・乳製品の事故が起こるたびに、酪農家が「自分たちは衛生面をきちんとしているのに、どうして工場などでこのようなことが起こるのか」 と怒りを見せますが、これは、生乳段階で抗生物質反応などが発見されると、単に買い取りを拒否されるだけでなく、損害賠償を要求されるなど、 厳しい衛生管理を求められており、それに対応している自信があるからです。ですから、牛乳は、牛乳工場での「ごまかし」 や配送時の温度管理ミスなどがない限り、基本的には安全性が高い食品です。

 

【牛乳加工場見学】

●丹那牛乳~函南東部農協
 函南東部農協は静岡県函南町丹那にあります。この周辺は丹那盆地として標高が高く、土地がやせているため野菜や米、 果物などの生産に適していません。そのため古くから酪農が盛んで100年を超える歴史を持っています。函南東部農協の生産物は、牛乳・ 乳製品が中心になっています。
 今回、「丹那牛乳」を生産する函南東部農協に取材をお願いしたのは、 牛乳処理工場が低温殺菌と日本で一般的な超高温殺菌の両方を取り扱っていることと、生産者と近く、消費者団体との古くからの付き合いがあり、 取材の目的をお話しして快諾していただけたためです。お話しは、製造部長の橋本正雄さんにうかがいました。
 まず、はじめに取材先の函南東部農協牛乳処理工場(以下、丹那牛乳)について紹介しましょう。
 丹那牛乳の工場は、函南町の丹那盆地の中心部に位置します。丹那盆地は、温暖な静岡県の中では標高が高く、土地がやせているため、 古くから野菜や果物などの農作物よりも酪農がさかんでした。酪農の歴史は古く100年を超えるといいます。現在、 丹那盆地には45軒ほどの酪農家がいます。丹那牛乳は、1955年(昭和30年)に創業しました。 それまで酪農家は大手の乳業メーカーなどに生乳を販売していましたが、買ってくれるときと買ってくれないときがあったため、 生産者団体である農協で生産者が中心となって自分たちの生乳を自分たちで加工して安定的に販売するためにできたといいます。また、 1981年に消費者団体から低温殺菌牛乳を作って欲しいとの要望があり、取り組みをはじめました。
 学校給食については、現在県内東部を中心に133校に直接配送しています。給食センター方式の学校でも、 牛乳だけは直接学校に配送しているとのこと。そのため、給食センター方式の方が配送先が多くなり、 実際には学校給食関連だけで140カ所以上に配送しています。この学校給食用牛乳は、いずれも紙パックの製品で、低温殺菌ではありません。
 丹那牛乳は、消費者との交流もあり、見学会が行われます。その回数は、小学校の社会科見学を含め年間約150回! 「2~3日に1度は誰かを案内しています。なかには、牛乳をおさめていない学校からも社会科見学したいと言われて案内することもあります」 と橋本さん。丹那牛乳には牛乳工場の各工程を2階からガラス越しに見学できるコースがつくられていて、作業中でも、衛生面に影響なく、 いつでも見学できるようにしつらえてありました。

●牛乳の距離
 橋本さんに丹那牛乳の一番の特徴は何かと聞いたところ「酪農家と牛乳工場の距離がとても近いことです」との答えが返ってきました。 たしかに一番近い酪農家は牛乳工場から100メートルも離れていません。牛乳工場が盆地の中心部にあるため、 どの丹那盆地周辺のどの酪農家からも近くになるのです。
 また、函南東部農協以外でも御殿場や三島、伊豆といった酪農家から生乳が届けられますが、いずれも函南町の周辺です。
 先日、ある首都圏の牛乳処理工場を取材したときには、その処理工場の周辺酪農家だけではなく、 北海道をはじめ関東のいくつかの県から生乳が定期的に届けられているとのお話しでした。
 それに比べれば、たしかに丹那牛乳はとても酪農家と牛乳工場の距離は本当に近いのですが、それが一番の特徴になるようなものなのでしょうか。
「牛乳は生鮮品です。新鮮な搾りたての生乳は、新鮮なうちに工場に運び入れて、新鮮なうちに製品にした方がいいのです」と橋本さん。
 現在は、冷蔵技術や配送便の技術が進んだため、北海道の生乳を首都圏で殺菌し、パック詰めして出荷するなど、乳を搾ってから殺菌、 パック詰めするまでに長い距離を旅することが多くなっています。資料などを読んでいても「品質にはほとんど変化がありません」とあります。 しかし、実際には、丹那牛乳のような地域密着の場合、搾乳から殺菌までに1日か2日しか時間がかかりません。丹那牛乳の場合、 最大で1.5日ぐらいだといいます。それに対して、遠距離の場合3日以上かかることもあります。
「1ミリリットルに3万以下の一般生菌数というのが丹那牛乳の生乳受け入れの目標値です。たとえば、今日搾乳して3万だった生乳と、 3日前に搾乳して冷蔵保存し3万のままだった生乳があるとします。検査しても菌数は同じ3万です。ところが、 その菌がいる牛乳には変化が起こっています。3日間の間に、菌は分裂し、死に、老廃物を出します。毒素を出していなくても、変化は起きています。 だから、生乳が新鮮であり、殺菌までの時間が短ければ短いほどよいのです。安全性だけでなく、新しい方が風味もよいです」 と橋本さんが説明します。
 さらに、「搾りたての生乳には、自己殺菌作用があります。いわゆる免疫的な効果です。免疫力の弱い生まれたばかりの子に授乳するため、 ある程度の免疫的効果があるのだとされています。ただ、生乳の場合だいたい24時間ぐらいしか効果は持続しないため、 できるだけ早くその後の殺菌をしたほうがいいのです」と、新鮮は安全につながることを強く訴えます。
 余談になりますが、子牛を産んだばかりの母牛が最初に出す「初乳」は生乳として出荷せず、子牛に飲ませるそうです。というのも、 子牛に免疫力をつける意味もありますが、初乳は熱に対する抵抗性がないため、加熱すると凝固してしまうからだとか。 一口に牛の乳と言ってもいろんな性質があります。

●酪農家と牛乳工場
 先に述べたとおり、丹那牛乳は酪農家が生乳の買い入れを安定させるために自らつくった加工場です。牛は毎日朝夕搾乳します。 夏には乳脂肪が少なく、冬には乳脂肪が多くなり、乳量も季節によって変化しますが、年間を通して乳は毎日出ます。 品種改良によって乳をたくさん出すようになっている乳牛は搾らなければ乳房炎などの病気にかかってしまいます。そこで、 毎日生産した量を安定的に引き取って加工することは酪農家にとって重要なことになります。
 その意味で、丹那の酪農家は恵まれている方です。それでも、この25年で100戸あった酪農家は半分以下になりました。ただ、 牛の数は以前よりやや多くなっています。つまり、大規模化が進んでいるのです。大規模にならなければ経営が成り立たないようになりました。
 その理由はいくつかあります。ひとつは、副収入として子牛や乳を搾らなくなった牛を肉として販売していましたが、 その価格が輸入などによって急落したことです。それにより経済的に苦しくなりました。もうひとつは、牛乳の価格です。牛乳は卵と並んで 「物価の優等生」と言われています。今では、ミネラルウォーターより安い価格で販売されることもめずらしくなくなりました。さらに、 大手乳業メーカーなどが、牛乳では利益が出せないため、加工乳や乳飲料といった原価が低い製品を積極的に販売するため、 本当の牛乳がつられて安くなっている側面もあります。牛乳の価格低下は、生乳の価格低下につながります。
 ただでさえ、休みのとれない畜産業は、次第に追いつめられています。

●低温殺菌部会
 丹那牛乳では、低温殺菌と一般的な超高温殺菌の牛乳を製造しています。丹那牛乳の生乳目標は生菌数1ミリリットル中3万以下ですが、 超高温殺菌の牛乳の場合、現状では5万ぐらいの生乳もあります。それでも公的な基準の総菌数400万以下よりははるかに少ない「きれいな」 生乳です。さらに、低温殺菌の場合にはより厳しい基準が決められています。ひとつには、牧草栽培のときに、農薬の除草剤をまかないこと、そして、 乳脂肪分3.6%以上、無脂乳固形分8.4%以上あり、生菌数3万以下でなければいけないことになっています。現在、 この条件を満たして低温殺菌部会に参加している生産者は12戸あります。
 低温殺菌部会の使っている飼料のうち一番量が多い輸入トウモロコシについては、遺伝子組み換えでないこととポストハーベスト(収穫後) 農薬が使用されていないことが確認されたものを使っています。
 もちろん、低温殺菌部会以外の生産者にも遺伝子組み換えでないもので、ポストハーベスト農薬不使用のトウモロコシを使用をすすめ、 少しずつ切り替えが進んでいます。
 低温殺菌牛乳の方が、より生乳の品質に近いのは、低温殺菌牛乳そのものが消費者との話し合いの中で作られはじめたことと、酪農家が、 自然に近い、安全性のより高い状態の牛乳が欲しいという消費者の要望に積極的に応えようとしているからです。
 なお、丹那牛乳では、低温殺菌の場合、殺菌後の一般生菌数は0~1ケタがふつうで時に2ケタになるそうです。一方、 超高温殺菌の場合も0~1ケタのオーダーがふつうで、3ケタが出るようなときには原因を調べるそうです。 乳等省令では5万以下であればよいとされています。一般の牛乳でも同様で、製造直後はほとんど菌が検出されることはありません。

●学校給食の牛乳
 丹那牛乳の場合、133校に牛乳を配送しています。これを量に換算すると1日あたり1万2千キログラム(12トン)になります。つまり、 学校給食がある日と、給食がない日には1万2千キログラムの差が生まれます。そこで、丹那牛乳では、 牛乳などとして出荷できなかった牛乳を全粉乳にします。つまり、牛乳を乾燥させて粉にします。
 もちろん、学校給食のある日、ない日の差でうまれる余り分(余乳)だけでなく、季節や日によって注文の多い少ないがあります。 年間にすると4万5千キログラム分の全粉乳となるそうです。この一部やヨーグルトなど工場でつくられる乳製品に利用されますが、多くは、 販売して、冷凍食品のグラタンやパン、お菓子、ホワイトチョコレートなどの原料になります。
 大きな乳業メーカーの工場などでは、全粉乳だけでなく脂肪分を抜いた脱脂粉乳が余乳対策につくられます。脱脂粉乳の方が、 脂肪分を抜いてあるために品質の劣化が遅く、長く保存できます。
 丹那牛乳では学校給食以外に返品は受け付けず、学校給食の返品分については、配送ドライバーに協力してもらい、マジックなどで分別して、 そのまま工場内の排水設備に廃棄処分しています。「安全性を考えたら、返品分は使えません。というのも、 10度以下という温度管理が徹底している保証はなく、万一病原菌などが繁殖し、毒素が生成されていたら大変なことになりますから」と、 橋本さんは語ります。
 学校給食で牛乳を必要とする日と、しない日があること、消費者が季節によってたくさん牛乳を利用したり、利用しないなど消費に変動がある以上、 全粉乳や脱脂粉乳の生産は不可欠です。そして、これらを使った乳製品を作らなければ酪農家や乳業メーカーが困ることになります。つまり、 脱脂粉乳や全粉乳を使った乳製品=まがいものとするわけにはいかないのです。これは牛乳問題を考えるとき忘れてはならない視点です。
 さて、丹那牛乳が学校に配送している牛乳は紙パックを使用しています。数年前までいくつかの学校では瓶を利用していたそうですが、学校側から 「瓶では重たいので」との理由で、紙パックに切り替えが要請され、今ではすべて紙パックになっています。
 また、丹那牛乳の学校給食用牛乳は一般的な超高温殺菌で、低温殺菌ではありません。そこで、低温殺菌にはできないかどうか聞いてみたところ、 「今のところそのような要望はありません。量的には今の低温殺菌部会だけでなく高い品質の生乳を搾る酪農家がいるので、問題ありません。しかし、 低温殺菌用の第2工場には小さなパックを充填する機械がありません。もし、本当に要望があっても、 この追加設備にかかる費用を考えるとすぐには対応できないと思います」とのことでした。

【牛乳には個性がある】

「牛乳」と一口で言っても、牛乳と牛乳のような飲み物の違い、生産地、酪農家の違い、季節の違い、処理方法の違い、 パッケージの違いなどもあります。
 酪農地帯が近くにある地域では、地場産の牛乳を飲むことができる可能性があります。
 東北のある酪農地帯で、かつて、学校給食にその地域以外から来た牛乳が出されていました。そこで酪農家たちが働きかけて、 地元の牛乳工場でつくった地場の牛乳を学校給食にとりいれることができた例があります。
 子ども達が学校で飲んでいる牛乳の牛はどこで育てられ、どこで処理されている牛乳でしょうか。そして、 住んでいるところから一番近い牛乳工場と一番近い酪農家はどこにあるでしょうか。
 2000年の夏から秋にかけて、牛乳への不信の目が注がれました。しかし、不信の目だけでは、解決は生まれません。また、 HACCPのマークがついているから、公正のマークがついているから、では安全の根拠にならないことを、私たちは学びました。
「牛乳はどれも同じではない」「牛乳には個性がある」
 さらに、「牛乳には牛乳だけでなく、牛乳のようなものまである」このことをふまえて、まず、学校給食の牛乳について調べて見ませんか。きっと、 そこから、牛乳への信頼と対話が生まれるはずです。

補足説明:

公正競争規約
…景品表示法に基づき、公正取引委員会の認定を受けて、業界において設定している自主ルール。飲用乳については、 全国飲用牛乳公正取引協議会(牛乳公取協)による、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」(飲用乳表示規約)があります。 この規約などにもとづいて表示された牛乳の容器には「公正マーク」がつけられています。

品質保持期限・消費期限…かつては製造日表示でしたが、現在は品質保持期限や消費期限表示になりました。 品質保持期限は、期限が切れても急速に品質劣化が進まない品に用いられ、消費期限は、 期限が切れたら急速に品質劣化が進む品に用いられることになっています。一般的に低温殺菌牛乳の消費期限が製造後5日、 超高温殺菌牛乳の品質保持期限が製造後8日ぐらいです。丹那牛乳の場合、低温殺菌牛乳で消費期限7日(製造日を含む)、 超高温殺菌牛乳で品質保持期限8日としています。
 近年、強い殺菌や容器の滅菌によって品質保持期限を12~14日ほど長くした牛乳も一部で売られています。
 これとは別に常温保持可能なLL(ロングライフ)牛乳というのもあり、こちらは、製造後4カ月は品質が保たれるとされています。しかし、 殺菌方法などで牛乳の風味や栄養に問題があるため、このLL牛乳導入時には大きな反対運動が起きました。

[ 00/12/31 牛乳 ]


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