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放射線照射スパイス・ハーブを認可する動きが高まっています

この食材を使わずに学校給食がつくれますか?
それとも、子どもたちに食べさせますか?
放射線照射スパイス・ハーブを認可する動きが高まっています


 内閣府の原子力委員会に2005年12月、食品照射専門部会が設置されました。
 2000年(平成12年)12月に全日本スパイス協会が、香辛料94品目の害虫駆除、病原菌の殺菌、 完全滅菌を目的とした放射線照射の認可を求める申請を原子力委員会に提出しました。それから5年後になって、突然、 「原子力政策大綱において、現在、我が国においては馬鈴薯の発芽防止を行うための食品照射が認められているのみであり、 社会への技術情報の提供や理解活動の不足等のために活用が十分進められていないことが課題として指摘された」 (食品照射専門部会の設置について 平成17年12月6日 原子力委員会)として、 食品照射に関する現状等について調査審議を行うとしています。
 議事録や資料を見るとあきらかに、この「香辛料」認可申請を想定したものとなっており、これを皮切りに、 食品への放射線照射を普及させようとするためのものです。
 2006年6月現在、毎月1回のペースで7回の食品照射専門部会が開かれており、 早くも食品照射の意義について報告書のまとめに向かっています。この報告書はまとまると原子力委員会に提出されます。
 それを受けて、おそらく、厚生労働省・農林水産省から内閣府の食品安全委員会に諮問され、食品安全委員会での検討の上で、この「香辛料」 への放射線照射の道が開かれる可能性があります。

■申請されている「香辛料」 の一覧
アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アムチュール、アンゼリカ、アナトー、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金、ターメリック)、 エシャロット、オレガノ、オールスパイス、オレンジピール、ガジュツ、 カショウ、カッシア、カフィアライム、カモミール、ガランガル、 ガルシニア、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェイ、クチナシ、クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケーパー、コショウ (胡椒)、ゴマ(胡麻)、コリアンダー、サフラン、サッサフラス、サボリー、サルビア、サンショウ(山椒)、シソ(紫蘇)、シナモン、 ジュニパーベリー、 ショウガ(生姜)、スターアニス(八角)、スペアミント、セージ、セロリー、ソーレル、タイム、タデ(蓼)、タマネギ (玉葱)、タマリンド、タラゴン、チャイブ、チャービル、ディル、トウガラシ(唐辛子)、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニラ(韮)、 ニンジン(人参)、ニンニク(大蒜)、ネギ(葱)、ハイビスカス、バジル、パセリ、ハッカ、バニラ、パプリカ、パラダイスグレイン、 ヒソップ、フェネグリーク、ピンクペッパー、ペパーミント、ホースラディッシュ、ホースミント、ホメグラネート、マスタード(辛子)、 マジョラム、ミョウガ(茗荷)、メース、ヨモギ(蓬)、ユズ(柚子)、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、レモンピール、 ローズ、ローズマリー、ローズヒップ、ローレル、ロングペッパー、ワサビ(山葵)
( )内は、編集で独自に入れたもの。全日本スパイス協会が2000年に申請したリスト94品目。ただし1品目は後日削除されたとのこと。 どの品目かは不明。

■放射線照射食品とは
 食品に放射線をあてることで、放射線の作用によって食品や食品についている虫、菌などの遺伝子(DNA)の一部を壊し、 細胞死をおこさせるなどしたものです。
 食品についている虫や寄生虫を殺す(殺虫)、病原菌や腐敗菌を殺す(殺菌)、ジャガイモやタマネギが発芽できないようにする(芽止め) などの目的があります。
 放射線をあてますが、あてた食品が放射能(誘導放射能)をもたないように、コバルト60、セシウム137からのガンマ線、 10MeV以下の電子線、5MeV以下のX線のみが使われることになっています。

■日本では士幌町農協のじゃが芋だけ
 日本では、北海道士幌町農業協同組合に放射線照射施設がつくられ、1972年にジャガイモに限って認可され、 1974年から現在まで30年以上にわたって毎年約8000トンが全国に出荷されていると見られています。 (同農協の出荷量は生食用約4万トン。うち1月~4月出荷分とされる)
 この目的は、ジャガイモの発芽防止です。春先以降の発芽を抑制することができれば、流通しやすく、売りやすくなるからです。
 食品衛生法に基づく規定によって、「食品を製造し、又は加工する場合は、食品に放射線を照射してはならない」「食品の保存の目的で、 食品に放射線を照射してはならない」と禁止されています。その上で、例外的に「食品の製造工程又は加工工程において、 その製造工程又は加工工程の管理のために照射する場合」と、「特別の定めをする場合」は照射可能とされています。製造・加工工程の管理とは、 異物混入検査や食品の厚さの確認などで、食品の吸収線量が0.10グレイ以下とされています。
 士幌町農協のジャガイモは、「特別の定め」のケースで、
 対象品目:ばれいしょ、目的:発芽防止、使用線源:コバルト60(ガンマ線)、吸収線量150グレイ、再照射:禁止とされています。
 また、容器包装に入った場合、放射線照射食品には、「放射線を照射した旨」の表示義務があります。
 さらに、放射線照射施設には、都道府県知事による営業許可が必要です。もちろん、放射線源となる放射性物質(この場合コバルト60)は、 簡単に手に入るものではなく、原子力発電所にてつくられるものです。国家管理されている物質です。
 食品衛生法の規定では、ばれいしょ一般の発芽防止に放射線照射ができることになっていますが、過去30年間、士幌町農協以外では、 ジャガイモの発芽防止に放射線照射を行おうと考えたところはないようです。
 表示については、「義務」表示であり、実際に箱には「ガンマ線照射済、芽止め、じゃがいも、日付」のスタンプが押されています。しかし、 箱から出されて小分けされてからは表示義務がないため、照射食品であることは分からなくなっています。
 また、この士幌町農協のジャガイモについて、それが照射されたものかどうかを検知するための検知技術は未完成です。

■放射線照射食品の簡単な歴史
(世界の歴史)
 アメリカの陸軍で第二次世界大戦中に研究がはじめられ、1963年にアメリカ陸軍向けのベーコン、小麦、 その後ジャガイモに照射が認められました。しかし、その後、実験の結果問題があるとして使用が禁止されます。
 その後アメリカでは、1972年に宇宙飛行士向け食品に照射が認められ、1985年には一般向けの豚肉、86年に香辛料、果物、野菜など、 92年に鶏肉、99年に牛肉、家禽類に認められました。この99年の牛肉類は、病原性大腸菌O157対策です。
 なお、NASAはその後、宇宙飛行士が照射食品の特有の臭い(照射臭)によって食欲を落とすため、 ほとんどの食品について食品照射をとりやめました。
 このほかの国では、EUが99年スパイス・ハーブ類を統一許可品目にします。オーストラリアとニュージーランドも2001年に香辛料・ ハーブ類、03年に熱帯果実を許可します。
 2003年現在、中国、アメリカでのスパイスや肉類、野菜類を中心に約30万トンの照射食品が流通していると見積もられています。

(日本の歴史)
 日本では、1968年から「ばれいしよ(発芽防止)、タマネギ(発芽防止)、米(殺虫)、小麦(殺虫)、ウィンナソーセージ(殺菌)、 水産ねり製品(殺菌)、みかん(表面殺菌)」についての研究が行われ、1974年から士幌町農協の照射ジャガイモが販売されます。
 その後、タマネギについても認可される見通しでしたが、安全性に疑問の残るデータが出されるなどしてそのまま認可の動きが止まりました。
 士幌町農協の照射ジャガイモについては、東京都、神奈川県などいくつかの自治体では、当時の消費者からの反対運動を受けて、 流通しなくなりました。そこで、学校給食会で斡旋されることになり、1975年から1978年まで流通していました。 そのことが1978年になって明らかになり、反対運動が起きて学校給食では使われなくなりました。
 日本国内では、士幌町農協のジャガイモだけですが、これまでに、国内でベビーフード用の原料に放射線照射されていた事件や、 中国でカナダ産ホッキ貝が放射線照射され日本に輸入されて一部流通していた事件をはじめ、 輸入健康食品や海産物などで放射線照射による食品衛生法違反がみつかっています。

■問題点はなにか
 内閣府の原子力委員会食品照射専門部会の資料や議事録を見ていると、日本でも「消費者から食の安全面への要望が強まってきている」ことや、 「世界的に食糧需給が逼迫化する恐れ」があること、また、「化学薬剤の使用は制限される方向にある」ことなどから、 放射線照射の意義は高まっており、「2003年時点で、52ヵ国及び台湾で230品目が許可され、 このうち31ヵ国及び台湾で40品目が実用化されている。世界の照射食品量は現在、年間約30万トンに及び、 食品の安全に貢献するものとして実績を蓄積してきている」という認識にあります。
 その上で、「社会への技術情報の提供や理解活動の不足等のために、活用が十分進められていない」という立場です。そして、 安全性についても、現在のところ有害と認められる研究はなく、臭いなどの問題は安全性とは別の問題だとしています。
 しかし、放射線照射食品には他の加工方法ではみられない臭い「照射臭」があり、なんらかの変異が起きていることは明かです。
 放射線照射食品では、脂質が分解されることで2-アルキルシクロブタノン類が生成されます。この物質は放射線照射食品に特有のものですが、 その物質が発ガンを誘発するという実験結果があります。推進側は、この実験と実際の照射食品の安全性には適用できないとしていますが、 その根拠となる実験はありません。
 安全性についての研究が進んでいるとは言えません。「問題ない」と判断されたいくつかの実験結果に対する判断については、 疑問な点が指摘されています。
 そもそも、照射臭などが生まれない限り、照射食品であるかどうかを検知する方法が確立しておらず「表示」がなければ、 再照射などを防ぐ手だてもありません。
 照射に際しては、品質の悪い食品に照射するのではないとしていますが、使い方によっては、 品質の悪い菌に汚染されるなどした食品を流通させるための手段に使われかねないところもあります。
 遺伝子組み換え食品と同様に、安全性についての疑問が解消されないこと、そもそも必要性について疑問が持たれること、 限られた政府や企業などの管理に置かれることなどの問題を抱えています。

■スパイス・ハーブは汚れているのか?
 2000年に全日本スパイス協会が当時の厚生大臣に提出した「放射線照射の要請」を読むと、日本で使われている香辛料の大部分は 「微生物によって汚染され、害虫が混入している」「香辛料は食中毒およびカビ毒の原因食材となる可能性が高い」と、 自らの業界が取り扱っている食品がいかに危険かを強調し、 この汚染を処理する方法として商品価値を下げないもっとも有効な方法が放射線照射であるとしています。
 一方、放射線照射食品の問題に早くから警鐘をならしていた照射食品ネットワークの里見宏さんが厚生労働省に確認したところ、 香辛料での食中毒は日本では確認されていないそうです。
 ここからは想像の域を出ませんが、外食産業、加工食品産業が、食材として香辛料を仕入れる際に、 その食材としての衛生管理を厳しくしており、その菌数の検査に香辛料が合わないことがあるのかも知れません。そのために、 放射線照射をスパイス業界が求めているという見方もできます。
 一方、今回のスパイス・ハーブ類については、すでに海外で流通していることから、 加工食品などを通じて日本に輸入されていることも考えられ、後追いで認可するためのものではないかとの指摘もあります。

■子どもたちに食べさせるか?
 94品目のリストを見れば、ニンニク、ショウガ、タマネギ、ネギ、ニラ、ニンジン、 パプリカなど学校給食でもよく使われる食材も入っています。香辛料なので、乾燥品であると考えられますが、そのまま、「野菜」 としてのタマネギやニンジンが許可されることも考えられます。
 放射線照射食品は、遺伝子組み換え食品などと同様に、食べたからといってただちに健康に害があるものではないとしても、長期に、 どのような影響が出てくるか分からないものです。また、流通上や加工上あるいはそれ以外の「原子力の有効な利用」などの理由で使用し、 普及させようという発想は、そもそも理解できません。
 内閣府原子力委員会食品照射専門部会の動きは急で、研究や検討に時間をかけるような状況ではないようです。
 学校給食を通じて子どもたちの食を担う者として、放射線照射食品の動きを追い、問題点を理解し、行動する必要があります。

●参考資料
「食育!? いちばんヤバイのはこどもなんだぞ」(里見宏2005 ジャパンマシニスト)
「これでも食べる?放射線照射食品」(里見宏2000 ジャパンマシニスト)
「放射線照射と輸入食品 増補版」(里見宏・鮎川ゆりか・久保田裕子・野田克己・浜谷喜美子共著 2001 北斗出版)

●参考ホームページ
内閣府原子力委員会食品照射専門部会
http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/syokuhin/
食品照射ネットワーク
http://www.sih.jp/menu_s.htm

 

[ 06/07/14 農薬・添加物など ]


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