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食品表示が変わりました。

食品表示が変わりました。
すべての食品に産地表示が必要です。
解説と課題

2017年9月1日に、食品表示制度が変更され、「すべての加工食品に原材料の産地が表示されます」(消費者庁)となりました。これまで生鮮食品や米、一部の加工食品のみ表示義務がありました。今回、移行期間は2022年3月末までありますが、ようやくすべての食品について産地表示が行われます。2015年に食品表示制度が一元化され、食品衛生法(厚生労働省)、JAS法(農林水産省)、健康増進法(厚生労働省)で扱われてきた食品の表示制度の担当が、消費者行政窓口である消費者庁のもとで統一して扱われることになりました。その後、少しずつ表示制度が見直されており、今回は、消費者からの長年の要望だった原産地表示が広く扱われるようになります。すべての食品で産地を見て選ぶことがかなりできるようになります。

現代社会において、加工食品が生活の中に占める割合は確実に多くなっています。また、日本は食料自給率が低く、輸入食品の割合が多いのも特徴です。
その中で、学校給食では地場産、国産を食育の観点から「生きた教材」として使うことが求められています。実際に、生産者の顔が見える、地域の暮らしや社会、環境などを学ぶなど教材としての可能性は高く、安全性や信頼性の面でも望まれています。
しかし、実生活においては、輸入品、加工品を手に取ることが多くなります。学校給食を通じた食育とともに、加工食品など市販の食品を選ぶ力を身につけることも大切です。スーパーやコンビニエンスストアなどで売られている弁当やお総菜、加工食品、米、野菜、魚や肉などの生鮮品には「表示」がされています。この表示の意味を正しく知って、栄養面だけでなく、安全性、味、環境保全や地球環境の持続可能性、地域のことなど、いろんな視点から食品を選べるようになることが必要です。食品の表示については、学校でも社会でも学ぶ場はほとんどありません。「消費者の知る権利」=「消費者教育」が圧倒的に不足しています。
表示を正しく知らないと、間違った理解をしてしまうこともあります。よくある話ですが、ペットボトルのお茶などには、たいてい酸化防止剤(褐変防止)として「アスコルビン酸ナトリウム」が入っており、表示は「ビタミンC」となっています。これは、飲む人の健康に寄与するためのものではなく、製品の品質を保ち、見栄えをよくするための食品添加物です。添加がいけないということではなく、知っていないと「誤解しがち」な表示です。

でも、もし同じ価格のペットボトルのお茶で
A 原材料名:緑茶(日本)/アスコルビン酸ナトリウム
B 原材料名:緑茶(日本)/ビタミンC
と表示されていたら、どうでしょうか? このふたつはまったく同じものですが、Bを選ぶ人が多いのではないでしょうか?
分かりやすくするために「ビタミンC」と記載されているのかもしれませんが、食品メーカーは、どちらか表示を選択できるならば、当然、「ビタミンC」を選ぶと思います。
そういう消費者が正しく理解していないことを受けた「まぎらわしさ」が食品の表示にはみられることもしっかり知っておく必要があります。

そこで、今回は、新しくなる食品表示の解説とともに、いくつかの間違いやすいポイントや表示制度の問題点を明らかにしたいと思います。

■原料原産地表示の義務化
対象となる食品は、すべての加工食品ですが、外食や容器包装に入れずに販売する場合、作ったその場で販売する場合などは対象外です。また、加工食品そのものが輸入品の場合(輸入された状態で販売する場合)、原料原産地表示の対象外となります。
ただし、輸入食品の場合には、輸入元の「原産国名」の表示があります。
義務表示は、「1番多い原材料」のみです。原材料の表示方法は、全体に占める重量の割合が多い方から順番に並べることになっています。その最初に書かれる原材料のみが原料原産地の義務表示となります。
表示方法としては、国別重量別表示、製造地表示、又は表示、大括り表示の4種類が認められます。
消費者庁のパンレットを元に記載してみると

国別重量別表示
名称 ウインナーソーセージ
原材料名 豚肉(アメリカ産、国産)、豚脂肪…

製造地表示
名称 チョコレートケーキ
原材料名 チョコレート(ベルギー製造)、小麦粉…

又は表示
名称 ウインナーソーセージ
原材料名 豚肉(アメリカ産又は国産)、豚脂肪…
※豚肉の産地は、平成○年の使用実績順

大括り表示
名称 ウインナーソーセージ
原材料名 豚肉(輸入)、豚脂肪…

一番多い原材料が生鮮食品の場合、その産地が表示されますが、3カ国以上の場合、たとえば、「豚肉(アメリカ産、国産、その他)といった表示が可能です。
この表示順も重量別なので、
A アメリカ産、国産
B 国産、アメリカ産
C 国産、アメリカ産、その他
では、国産の比率が異なり、
Aでは国産は1%~50%未満
Bでは国産は50%以上
Cではアメリカ他の輸入品よりも国産の方が多く入っているが比率は不明
となります。
これは、「又は表示」の場合も同じです。ただし、「又は表示」の場合少ない方の使用割合が5%未満の場合には例えば「アメリカ産又は国産(5%未満)」といった表示が求められます。
「大括り表示」の場合に「輸入」とあるのは、3カ国以上の輸入原料が使われていて、国産は入っていないことを意味しています。2カ国までは、又は表示か、並べての表示となります。

一番多い原材料が加工食品の場合、表示の意味はより複雑になります。
表示方法としては、その加工食品の製造地の国別重量順表示が基本で、加工食品の原料となった生鮮食品の産地を表示することも可能になります。
消費者庁のパンフレットをもとに記載してみると

製造地表示の国別重量順表示
名称 チョコレートケーキ
原材料 チョコレート(ベルギー製造)、小麦粉…

加工食品に使われた生鮮食品の産地を表示
名称 チョコレートケーキ
原材料名 チョコレート、小麦粉
原料現産地名 ガーナ(カカオ豆)、インドネシア(カカオ豆)

となります。この2つの表示は同じ商品(チョコレートケーキ)で、ガーナとインドネシアのカカオ豆を原料に、ベルギーで製造されたチョコレートを主原料とするチョコレートケーキです。ただ、どちらかを表示すればいいので、ちょっとまぎらわしいですね。

こんな例を考えてみましょう。
日常的によく食べられているだろう「食パン」を例にして考えてみます。

名称 食パン
原材料 小麦粉(国内製造)、バター…

名称 食パン
原材料 小麦粉、バター…
原料現産地名 アメリカ(小麦)

このふたつは同じ商品の表示の違いになります。
アメリカから輸入された小麦を国内の製粉業者が小麦粉にして、それを使ってパンを焼いたから、こういう表示になるのです。
この場合、原材料は「国内製造」であることは分かっても、その原料の小麦が輸入品であることは分かりません。
たとえば、ポストハーベスト農薬(収穫後農薬)が残留していることからそれを避けようとして国産小麦のパンを選ぼうと思ったら、

名称 食パン
原材料 小麦粉、バター…
原料現産地名 国内(小麦)

と表示してある食パンを探す必要があります。

でも、
名称 食パン
原材料 小麦粉(国内製造)、バター…

だと、ちょっと間違って手に取りそうです。正しい知識がないと誤解してしまうかも知れません。

このほかにも、複雑な表示の可能性として、消費者庁が示している事業者向けのQ&Aから必要部分だけを抜き出してみましょう。魚肉ソーセージ、かまぼこなどの「魚肉」の例です。

Q:原材料を「魚肉」等と括って表示している場合、原産地表示はどのようにするのですか。

A:
1 魚肉練り製品等は、冷凍魚肉すり身や鮮魚を主原材料として製造されます。冷凍魚肉すり身や鮮魚を使用し、「魚肉」等と表示した場合の表示方法は以下のとおりです。

2 鮮魚のみで製造した魚肉練り製品等の場合
《例1:原料原産地名の事項欄を設けて表示する場合》
(魚肉が全て国産の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉、でん粉、食塩、…
原料原産地名 国産(魚肉)

《例2:原材料名に併記して表示する場合》
(魚肉が全て国産の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉(国産)、でん粉、食塩、…

《例3:魚種を明記した場合》
名称 ケーシング詰特種かまぼこ
原材料名 魚肉(たら(国産)、ぐち、えそ)、種もの(チーズ)、でん粉、食塩、…

《例4:明記している魚種の全てが国産の場合》
名称 蒸しかまぼこ
原材料名 魚肉((国産)(たら、ぐち、えそ))、でん粉、食塩、…

3 冷凍魚肉すり身のみで製造した魚肉練り製品等の場合

《例5:魚肉すり身の製造地を表示する場合》
(一定期間において重量割合の順番が入れ替わる3以上の外国製造の魚肉すり身>国内製造の魚肉すり身の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉、でん粉、食塩、…
原料原産地名 外国製造、国内製造(魚肉すり身)

《例6:魚肉すり身に使用した鮮魚の産地を表示する場合》
(一定期間において重量割合の順番が入れ替わる3以上の外国産の魚類を原料とした魚肉すり身>国産の魚類を原料とした魚肉すり身の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉(輸入、国産)、でん粉、食塩、…

《例7:「魚肉」ではなく、「魚肉すり身」と原材料名表示する場合》
(一定期間において重量割合の順番が入れ替わる3以上の外国製造の魚肉すり身を使用する場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉すり身(外国製造)、でん粉、食塩、…

《例8:魚肉すり身に使用した鮮魚の産地を表示する場合》
(例7の場合で、鮮魚まで遡った産地を表示する場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉すり身(魚肉(輸入))、でん粉、食塩…

4 冷凍魚肉すり身と鮮魚を混合して製造した魚肉練り製品等の場合

《例9:魚肉すり身の製造地と鮮魚の産地を表示する場合》
(アメリカ製造の魚肉すり身>国産の鮮魚の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉、でん粉、食塩、…
原料原産地名 アメリカ製造(魚肉すり身)、国産(たら)

《例10:鮮魚まで遡って産地を表示する場合》
(例9の場合で、鮮魚まで遡った産地を表示する場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉(アメリカ、日本)、でん粉、食塩、…

たとえば、例3の「魚肉(たら(国産)、ぐち、えそ)」は、原材料の「国産のたら」が一番多く、ぐち、えそは国産か輸入かは不明です。例4のようにすべてが国産であれば「魚肉(国産)(たら、ぐち、えそ)」という表記ができます。
数学の公式のように( )の意味を考えないといけませんね。

■これまでの原料原産地表示と新たな追加
これまでは、加工食品については26品目のみが対象品目となっていました。また、表示の基準は以下のリストの1~22までは「製品に占める重量の割合が50%以上の原材料」、23~26までは原産地対象の原材料が指定されていました。今回の改定では、以下のものは従来通りの表示方法が続けられます。

1 乾燥きのこ類、乾燥野菜及び乾燥果実
2 塩蔵したきのこ類、塩蔵野菜及び塩蔵果実
3 ゆで、又は蒸したきのこ類、野菜及び豆類並びにあん
4 異種混合したカット野菜、異種混合したカット果実その他野菜、果実及びきのこ類を異種混合したもの
5 緑茶及び緑茶飲料
6 もち
7 いりさや落花生、いり落花生、あげ落花生及びいり豆類
8 黒糖及び黒糖加工品
9 こんにゃく
10 調味した食肉
11 ゆで、又は蒸した食肉及び食用鳥卵
12 表面をあぶった食肉
13 フライ種として衣を付けた食肉
14 合挽肉その他異種混合した食肉
15 素干魚介類、塩干魚介類、煮干魚介類及びこんぶ、干のり、焼きのりその他干した海藻類
16 塩蔵魚介類及び塩蔵海藻類
17 調味した魚介類及び海藻類
18 こんぶ巻
19 ゆで、又は蒸した魚介類及び海藻類
20 表面をあぶった魚介類
21 フライ種として衣をつけた魚介類
22 4又は14に掲げるもののほか、生鮮食品を異種混合したもの
23 農産物漬物
24 野菜冷凍食品
25 うなぎ加工品
26 かつお削りぶし

さらに、このリストの27番目として、「おにぎり」が追加されました。コンビニエンスストアなどでおにぎりがたくさん売られています。この「のり(海苔)」について、原産地の表示義務が課せられました。これは、重量とは関係なく、表示対象になります。また、海苔の場合、原藻(生のり)→乾燥(干しのり)→加工(焼きのり)となりますが、この原藻の原産地が表示されます。
ただし、「唐揚げ、たくあんなどの「おかず」と一緒に容器包装に入れたものや、巻き寿司、軍艦巻き、手巻き寿司など、いわゆるお寿司に該当するもの」は表示対象外です。のりは、すでに巻かれているもの、食べるときに巻くような包装になっているもののなど、「一般的におにぎりと認識するもの」が対象になります。

■業務用加工食品
業務用加工食品の表示については、従来の考え方がとられています。
業務用加工食品は、製造業者等が、中間または消費者の最終製品となる加工食品をつくる製造業者に販売するものについては、旧基準・新基準ともに、表示が義務づけられていますが、業務用加工食品を外食事業者に販売する際には、表示の義務はありません。
これは、給食施設、レストラン、対面販売などが表示の対象外となっていることからです。
しかし、表示が消費者の選択の権利のためという本来の考え方からすれば、外食事業者が原料原産地を知っておくことは必要ではないでしょうか。

なお、学校給食の場合、多くの自治体では、加工食品の事業者から製造仕様書の提出を求め、原材料原産地、原料配合、アレルギー表示、遺伝子組み換え作物使用の有無、食品添加物、加工方法などをチェックする体制を整えています。

■原産地表示の課題
今回は加工食品の重量1位のもののみが義務表示とされましたが、任意で重量2位以下の原料原産地を表記することは可能になりました。
たとえば、「イカ入りシューマイ」の原材料に豚肉とイカが多く入っており、豚肉35%、イカ30%だとしても、原産地表示義務は「豚肉」のみになります。イカは対象になりません。せめて2位までは表示させるべきといった議論もありました。複合的な加工食品の場合の2位以下の原料原産地表示は、消費者側から要望を出していかなければ見えないということになります。
また、従来から指摘されていた課題は、今回は残されたままです。
とくに、生鮮品と加工品の区分については、消費者には分かりにくくなっています。生鮮品(農産物、畜産物、水産物)も、産地表示が必要です。
たとえば、カット野菜について、
単品のカット野菜は生鮮食品
複数の野菜をミックスしたカット野菜は加工食品
単品の挽肉は生鮮食品
あいびき肉は加工食品
単品のマグロの刺身(つま付き)は生鮮食品
複数の刺身盛りは加工食品
となります。それぞれ、区分けの理由はありますが、消費者にとっては分かりにくくなります。

■食品表示法のこれから
ここまで、原産地表示について、これからの表示と、課題の一部をまとめました。
ほかにも食品表示には様々な課題があります。最初に酸化防止剤のビタミンCの例を紹介した食品添加物の表示のあり方、遺伝子組み換え食品についても、遺伝子組み換え作物を原料としている食用油などはたんぱく質が入っていないとして表示対象外ですが、消費者の「選択する権利」からすれば全面的な表示制度が必要ですし、混入比率(5%未満)などほかにも課題があります。
また、アレルギー表示については、表示制度の意味を知らないと、原材料の中に、魚エキス(さけ、えび、かにを含む)といった表示は、アレルギー表示制度であるのに消費者側に優良誤認させることにもなりかねません。消費者側が、この表示はアレルギーに関するものという理解をもつことも必要になります。
同様に、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、保健機能食品と、新たな名称の規格が出ています。健康のため、と、いいますが、いずれもそれを表示する食品企業にとっての「付加価値」としての側面もあります。
ひとまず、すべての食品が原料原産地表示対象になったことは一歩前進ですが、複雑化する食品に対し、生活者、消費者として、食品表示をきちんと理解し、自らの食を考えることがますます大切になります。
学校において食に接するのは学校給食です。食の指導の中で、栄養教育には長年取組みが深いですが、現代社会において、表示について学ぶ機会をどのようにつくるのか、学校給食の視点からも、考え、実践していく必要があると思います。

まずは、学校給食関係者が、食品表示について改めて学んでみてはいかがでしょう。

参考資料
消費者庁 食品表示企画 http://www.caa.go.jp/foods/

知っておきたい食品の表示(消費者向け) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syoku_hyou_all.pdf

早わかり食品表示ガイド(事業者向け) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/jas_1606_all.pdf

新たな加工食品の原料原産地表示について(各種情報窓口)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/

食品表示基準一部改正のポイント(平成29年9月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170901_0008.pdf

食品表示基準について(平成29年9月1日)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0002.pdf

食品表示基準Q&A(最新版)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0016.pdf

[ 17/09/29 食の安全性 ]


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