時事情報 1998年 衛生管理・食中毒関係
●金属探知器導入
1月21日付けの読売新聞によると、長野市教委は、市内3給食センターに金属探知器を2台ずつ配置し、金属混入のチェックを開始した。
長野市では、昨年末から給食のパンやワンタンから鉄くぎなどの異物混入が連続して発生していたため、
年末の18日より汁物調理を中止するなどの対応をしていた。(学校給食ニュース10号 1999年3月)
●大阪市、異物混入事故データを公表
98年12月19日付の毎日新聞によれば、大阪市では298小学校で、14万食の学校給食を自校方式で配食しているが、
98年4月から9月までの6カ月で異物混入が約100件起こっている。業者納入のパン、米飯、牛乳に由来するものが63件、
自校でつくる副食によるものが、4月から10月末の7カ月で40件。発生件数は横ばいだという。(学校給食ニュース9号 1999年2月)
●調理員からO-157で給食中止
9月18日付け東京新聞によると、東京都中野区の区立北中野中学校で、調理委託会社の調理員から病原性大腸菌O-157が検出されたため、
9月16日の給食を急きょ中止した。9月7日の検便による結果が16日になって分かったというもの。中野区では、
9月より調理の民間委託を数校試験導入したが、その矢先の出来事。(学校給食ニュース7号 1998年11号)
●1197人発症の食中毒
9月13日付け福島民友によると、福島県本宮町と大玉村の小中学校で児童生徒教職員1197人が腹痛、下痢、
吐き気などの食中毒を発症した件で、福島県生活衛生課は、原因菌、原因食不明のまま本宮方部学校給食センターの学校給食が原因と発表し、
行政指導を行なった。(学校給食ニュース6号 1998年10月)
●職員がO-157感染で給食調理中止
9月11日付け北海道新聞によると、北海道小樽市の市学校給食オモタイ共同調理場で施設管理をしている男性職員から、
病原性大腸菌O-157菌が検出されたため、11日から16日までの給食調理を中止し、二次感染などを調べるという。男性職員は、
健康状態に影響のない健康保菌者で、7日の定期検診で検便を行ない、10日午後にベロ毒素が確認された。小樽市保健所は、
10日に調理場内の消毒、男性職員の家族ならびに他の職員の検便を行なった。市教委は、児童生徒の安全面に配慮した措置というが…。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
●堺市懇話会、民間委託の提言
8月19日付け朝日新聞他によると、
O-157集団食中毒後の学校給食のあり方を検討してきた堺市の学校給食懇話会は調理の民間委託などを提言した。
より豊かで安全な給食を実施するための投資を優先するという…。(学校給食ニュース6号 1998年10月)
●乾燥ワカメでO-169集団食中毒
小松茂さん(学校給食情報ネットワーク、兵庫県洲本市)
1998年4月、大阪府堺市と兵庫県洲本市で、相次いでO-169集団食中毒が発生しました。いずれも事業所給食が発生場所であり、
しかもその調理は給食産業大手の神戸に本社を持つウオクニが受託していました。
このほど明らかになった概要によりますと、原因食材は乾燥ワカメとほぼ断定されています。
兵庫県の行った細菌検査でワカメより当該菌が検出され、しかも両事件の患者便、食材ワカメより検出された菌のDNAパターンが一致しました。
私の調査をあわせて一連の経緯を報告します。
洲本市の事故では、食材のほとんど全ては淡路島内で調達されており、唯一ワカメのみがウオクニ本社から供給されていました。
洲本市の当該調理場で働いていた調理員の話しでは、非常に品質の悪いワカメであり、「あまり使いたくなかった」食材の一つであったそうです。
淡路島はご存知の通り、鳴門ワカメの産地であり、非常に品質の良いワカメが日常的に消費されています。しかし当該ワカメは、
少し火を通しすぎるとずるずるに溶けてしまい、歯ごたえも無く極めて低品質であったとのことです。
当日、乾燥ワカメをざるに入れてボウルで戻し、戻ったワカメに熱湯をかけた上で和えて供したとのこと。熱湯の量が不足していたため、
加熱不足で菌が残存したものと思われます。加熱に絶えられない粗悪なワカメであったための調理方法が、食中毒を引き起こしたと言えます。
このワカメは中国から輸入されたものであり、加工処理の際に使用した原水がO-169に汚染されていたものと考えられています。
カイワレダイコンの種子からO-157が検出されたこととあわせて、病原大腸菌のいくつかの種は、
きわめて乾燥に強い性質を有していると言えるでしょう。
なお、本件の調査の過程で、堺市の対応が極めて不誠実であったことも特筆しておかねばなりません。
当初は食中毒事故の発生そのものすら公表しようとせず(別添新聞報道の日付けを参照してください)、その後も情報公開に極めて消極的でした。
96年のO-157食中毒事故発生時の不手際と言い、行政姿勢そのものに大きな欠陥があるのではないかと疑わざるを得ません。
ともあれ、いわゆる「乾物」であっても、集団給食の場での取り扱いは、生鮮食品と同様の注意を要求されるものであることを、
本件は示していると考えます。
以下、厚生省資料
(中川智子衆議院議員を通じて入手)
病原大腸菌O-169について
1 特徴
・病原大腸菌の中で、毒素原生大腸菌(ETEC)に分類される。
・ETECが感染すると、菌は小腸上部で増殖し、水様性の下痢を起こす。下痢の持続時間は約30時間くらい。いわゆる「旅行者の下痢」
の主な原因であり、水や食物による集団発生のあることが知られている。
2 O-169による食中毒事件発生状況
平成10年 4件、 781人
平成 9年 8件、3357人
平成 8年 4件、 188人
3 乾燥ワカメから検出された件
堺市の事業所で毒素原生大腸菌O-169を原因とした集団食中毒が発生し、その後、兵庫県でも同様の事件が発生した。両自治体の疫学調査より、
共通食材としてワカメが疑われ、その後の兵庫県の行った細菌検査でワカメより当該菌が検出された。
なお、国立感染症研究所の行った、両事件の患者便、食材ワカメより検出された菌のDNAパターンが一致した。
兵庫県の調査によると、原因は調理段階での加熱を含む衛生管理が不十分であったことにより、食材に付着していた菌が残存し、
食中毒発生につながったものと推測される。
(事例1)
(1)発生年月日 H10/4/7
(2)発生場所 大阪府堺市
(3)患者数/摂食者数(死者数) 762/2,035 (0)
(4)原因施設 事業所給食
(受託給食事業者:ウオクニ)
(5)原因食品 キュウリとワカメの酢味噌和え
(事例2)
(1)発生年月日 H10/4/13
(2)発生場所 兵庫県洲本市
(3)患者数/摂食者数(死者数) 17/56 (0)
(4)原因施設 事業所給食
(受託給食事業者:ウオクニ)
(5)原因食品 磯煮(ワカメ)
◆食中毒から発表まで
(新聞報道を素に時間を追ってまとめました~編集部)
6日:大阪府堺市の機械メーカー・クボタ堺製造所にある従業員食堂で病原性大腸菌O-169による集団食中毒発生。
16日にかけて759人が発症し、146人が医師の診断を受ける。食堂営業は、神戸市の「ウオクニ」。
13日:洲本市の事業所社員食堂で病原性大腸菌O-169集団食中毒発生。16日にかけて30名が発症。
15日:堺保健所にクボタ堺製造所従業員の家族から通報、食中毒が発覚。
18日:兵庫県生活衛生課、洲本の食中毒でウオクニを営業停止処分。21日まで。
18日:兵庫県生活衛生課、洲本の食中毒をマスコミ発表。
20日:クボタから保健所へ通報。
20日:堺市が「クボタ」従業員食堂の食中毒事故をマスコミ発表。
20日:堺市「クボタ」従業員食堂を営業停止処分。26日まで。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
●食中毒
6月6日付け中日新聞によると、富山市と周辺6町、1村の小中学校で、961人の食中毒が発生。原因は、3日の給食で出された牛乳によるもの。
製造した「富山牛乳」では、数日前から原乳貯蔵タンクの冷蔵設備が故障し、予備機を使用していたが、
適切な温度管理になっていなかった可能性があるとのこと。食中毒の時期になってきました。
この事故のように調理現場では対処できない事故も起こりやすくなります。仕入先や流通ルートなど、調べることは、安全性の確認とならび、
教材としても活用できます。地域や学校で取り組んでみたらいかがでしょうか。
(学校給食ニュース4号 1998年7月)
●広域食中毒事件発生
冷凍ケーキのサルモネラ菌で1159人が発症
3月の終わり、年度の学校給食も最後というところで、残念なことに広域に渡る食中毒が起きてしまいました。
簡単にまとめますと、ニュース1号でもお伝えしましたが、3月12日から13日にかけて東京都昭島市の3中学校(昭和中、清泉中、拝島中)
の657人が食中毒症状を訴え、28人が入院しました。その後、3月16日または17日の給食で、神奈川県秦野市南小、相模原市新磯小、
寒川町小谷小の児童、教職員合わせて419人が食中毒症状を訴えました。
岩手県宮守村の3小学校(鱒沢小、達曽部小、宮守小)でも、66人が食中毒症状を訴え2人が入院。福井県武生市白山小、
白山幼稚園では18日の給食で食べ、17人が食中毒症状を起こし、7人が入院し、
合計で4都県にまたがる1200人弱の患者を発生させたことになります。
原因食材は、学校給食用に3月2日か4日に同一メーカーで製造された「三色ケーキ」というスポンジケーキで、直径7センチのカップ入り。
冷凍状態で出荷され、解凍して食べさせていたものでした。原因菌はサルモネラ菌でした。
この冷凍スポンジケーキは、2月から3月4日にかけて約8万個ほど製造され、岩手から沖縄までの24都道府県に、
主に学校給食用として出荷されたものでした。食中毒の対象となった製品は、2日間の分、13,534個です。
3月20日に大阪府が業者に対し7日間の営業停止と回収命令を出しましたが、多くは給食として使用されていたといいます。
(毎日新聞大阪 3月21日)(神奈川新聞 3月21日)(東京新聞3月21日)(産経新聞 3月21日)(読売新聞大阪 3月22日)
(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●97年度の食中毒10件~文部省まとめ
文部省のまとめによると、小中学校の学校給食で、97年度は10件、3493人の食中毒が発生。そのうち、サルモネラ菌によるものが4件。
鮮度が劣るマグロのヒスタミンによると考えられるものが2件などとなっている。(読売新聞 4月2日)(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●堺市の続報
堺市教委は、ジャムの加熱をやめ、見合わせていたふりかけやデザートを出す、野菜はすべて当日配送にし、見合わせている果物も今後検討する、
米を地場産に切り替える瓶牛乳を紙パックにするなどの方針を発表した。98年度給食より適用。(朝日新聞、読売新聞各大阪版、4月8日)
(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●カイワレ大根とO-157
厚生省は、関東南部と東海地方で97年に発生したO157食中毒について、
神奈川県内の生産業者がアメリカから輸入したカイワレ大根の種子が原因と発表した。農水省とアメリカからは疑問視する声がある。また、この件は、
堺市を中心とするO157の原因食材とは無関係とされている。(朝日新聞 3月31日)(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●富山県高岡市の食中毒
よりよい学校給食をすすめる高岡市民の会より
「3月12日、富山県高岡市内の保育園において腸管出血性大腸菌O26食中毒が発生。4月16日現在、7園131名に上っています。
県健康課発表によると検出された菌のDNAパターンはすべて一致しているが、共通食材等からの菌の検出はないとのこと。
市内保育園児の家庭に逆性石けんを配布、希望者および各施設関係者、業者等の検便を行なうとともに、県・市が
“食中毒防止に関する衛生管理の徹底”通知を再三出しています。
食材の品質などを問題にせず、消毒・殺菌だけで解決するとは思えません。O157事件以来、調理員は検品、洗浄、手洗いに多くの時間をとられ、
休む間もなく疲労困憊しています。なお、発症者を出した保育園などは、私立、公立ともあり、給食が原因となるかどうかも分かっていません。」
※市民の会は、父母を中心に調理員らも入り、教職員や父母への情報発信、行政交渉などを行なっています。
(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●東京都昭島市で集団食中毒
東京都昭島市の昭和中、清泉中、拝島中で、3月11日から13日にかけて生徒教職員約512人が腹痛、下痢、発熱などの症状をうったえ、
12人が入院する食中毒事故が発生。この3校は昭島市学校給食共同調理場で調理されている。昭島市の中学校は自校3校、センター3校で給食実施、
センターでは約2200食をつくっている。小学校は、15校中9校分を中学校の隣のセンターでつくっているが、発症者はいない。
患者からサルモネラ菌の検出があったが、原因食材については、3月19日現在明らかではない。週末と重なったため、
市教委が生徒への連絡などの対応をとらず、批判もある。(学校給食ニュース1号 1998年4月)
[ 98/12/31 衛生管理 ]