衛生管理からみた理想の学校給食
これまで述べてきたことをまとめる意味で、衛生管理や食中毒の面から見た、ひとつの理想の学校給食を提案してみます。
栄養士が、地域の食材を含め幅広い食材から選択でき、
調理前から調理後まで適切な温度管理ができる設備があり、
栄養士、調理員が、学校給食の特性に合わせた衛生管理知識を持ち、
衛生的に調理できる給食室の設備と構造があり、
調理後、温かいものは温かく、冷たいものは冷たいまま配膳でき、
食事にふさわしい状況で子ども達が食べることができ
給食を通して食中毒や衛生管理についての知恵を身につけること
言い換えると、
自校方式で、食材購入は個別であり、栄養士が配置され、直営で正規の調理員が配置され、冷蔵庫、温蔵庫などがあり、適切な設備になっていて、
調理室と併設された食堂があり、学校ぐるみで食教育を行なう給食です。
●自校方式
センターでは、作ってから食べるまでの時間がかかってしまいます。小規模で、学校の中にある自校方式は、食中毒の危険性を回避する上で、
センターに勝ります。
●直接購入
原材料の一括購入は、万が一食中毒菌が混入していた場合、大規模な被害につながります。また、大量加工製品は、添加物などの心配もあります。
栄養士が地域や学校の特徴に合わせ、食材を選び、献立をたてていくことは、衛生管理の面だけでなく、学校給食の幅を広げます。
●栄養士の配置
自校方式直営の学校には、栄養士が配置されていないことがあります。
専門職として学校栄養士の配置は必要です。
●直営で正規の調理員
学校給食の衛生管理は、最終的には調理員の経験と技能が頼りです。「基準」では、
パート職員も含めてできるだけ全員に衛生管理に関する研修機会を設けることとあり、これはぜひ実行して欲しいことですが、パート職員に、
常勤の調理員と同じだけの経験と技能を求めることには無理があります。また、
自治体によっては正規調理員に対する研修の予算をつけないところもあり、早急な対応が必要です。
民間委託の場合、業者に対し衛生管理の徹底や教育の徹底を求めることになっていますが、委託調理の現場ではほとんどがパート雇用であり、
チーフとなる業者社員を含め、人が代わりやすいという報告もあります。
衛生管理の上で、常勤の正規調理員はより明確な位置づけが必要です。
●設備と食堂
限られた設備で栄養士と調理員は工夫を凝らしていますが、限界はあります。衛生管理の上でもドライシステムの導入や設備の増設、
調理室に隣接した食堂の設置など、子どものための経費は惜しまないで欲しいものです。
ちなみに、97年9月に保健体育審議会(保体審)が出した答申では、「学校給食を活用した食に関する指導を一層充実する観点から、
学校栄養教職員が個々の給食実施校に配置され、これにより、児童生徒の実態や地域の実情に応じて、
豊かできめ細やかな食事の提供や食に関する指導が行われることが望ましい。したがって、
このような食に関する指導等が可能となるような単独校調理場方式への移行について、運営の合理化に配慮しつつ、
児童生徒の減少等に伴う共同調理場方式の経済性や合理性と比較考慮しながら、検討していくことが望ましい。」とあります。
もし、センターが老朽化したり、改築するという状況にあるならば、衛生管理の面も含め、自校方式への移行を地域の運動として盛り上げましょう。
●食教育
教職員、養護教員を含め、栄養士、調理員が、それぞれに食材や、食品加工、調理、手洗いなどのひとつひとつの意味を自覚し、
その意味を子ども達に伝えること。菌の恐ろしさだけでなく、合わせて共生している意味、添加物、消毒液などの問題などを伝え、
選び行動する力をはぐくむ手助けをすること。
学校給食にはそれだけの可能性が込められています。
そして、学校ぐるみでの食教育が、なによりも食中毒予防につながるはずです。
(学校給食ニュース2号 1998年5月)
[ 98/12/31 衛生管理 ]