陶磁器とアルミナについて
陶磁器の原料となるアルミナの安全性についてご質問をいただきました。
現段階(99/6)での事務局の考え方をまとめました。
学校給食食器として使われるポリカーボネート製食器。そこから出るビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌かく乱物質)であり、
ごくごく微量でも長期的にみて人体や環境に影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
そのため、全国でポリカーボネート製食器を見直す動きが出ていますが、強化磁器や地元漆器に切り替える自治体が増えています。しかし、
なかには、メラミン製やポリプロピレン製といった、ポリカーボネート同様プラスチック製食器に代替するケースもあります。
プラスチックのメラミン製食器は、安全性に問題のあるホルムアルデヒドの溶出が考えられ、各地で大きな切り替え運動を起こしました。
ポリプロピレン製食器も、かつては、添加剤として使われていた酸化防止剤で、安全性に問題があるBHAが溶出したことがあります。現在は、
改良型ポリプロピレン製食器が使われますが、プラスチック製品そのものが、原料素材のほか、多くの添加剤をつかって作られており、
その中身がよく分かりません。また、陶磁器などにくらべて原料素材や添加剤が溶け出しやすい性質をもっています。
それでは、陶磁器の安全性ですが、一般に陶磁器の安全性は非常に高いと考えられます。それは、
歴史的に長い期間人類が使用しているという点もありますが、成形時に1000度を超す高い温度をかけるため、
ふだん使用する温度との間に大きな差があり、素材などの溶出が考えにくいこと。また、素材が、珪素やアルミナの混合物(粘土)
といったものであることからです。
その上で、食品衛生法のもとで厚生省は、「ガラス、陶磁器、ホウロウ引き製器具容器」に対して規格を決め、
カドミウムと鉛の溶出に対する規制を行っています。
さて、アルツハイマーとアルミニウムの関連性があるのではないかという指摘がかつて一部の研究者から出され、
WHOなどは因果関係を否定していますが、そのようなところから、
陶磁器の原料に使われるアルミナについても安全性についての疑問が出されることがあります。
アルミナは、化学記号Al2O3で、酸化アルミニウムともいいます。自然界には珪素とともに粘土や岩石などとして多く存在しています。
アルミナは、非常に安定した物質で、酸やアルカリに溶けにくい性質をもっています。このアルミナを電気分解してアルミを生成するのですが、
陶磁器では、アルミナのまま使用します。
陶磁器のアルミナについて溶出試験やそのデータは残念ながら見つかりませんでした。しかし、アルミナは、アルミニウム単体ではないこと、
食品など自然界中には、仮に陶磁器から溶出するとして考えられる量よりはるかに多くのアルミニウムが存在していることなどから考えて、
陶磁器に含まれるアルミナについて問題視する必要はないと考えます。
陶磁器については、メーカーに素材やうわぐすりなどの原料と製造工程についてきちんと説明していただいた上で、 食品衛生法で指摘されているような鉛やカドミウムといった重金属に対する溶出試験が行なわれている製品であるかどうかを確認することでよいと思います。
むしろ、導入にあたって、学校給食で使用する以上、子ども達の使いやすさや、割れたときの破片の形状、
洗浄などでの割れや欠けが起きにくいこと、耐用期間はどれくらいか、耐用期限が迫ったときに割れやすくならないかなどについて、
慎重に検討することが大切だと考えます。
(学校給食ニュース99/6号)
[ 99/12/31 食器 ]