食器の種類
●アルマイト
アルミニウムの表面に酸化膜をつくり、耐久性を増したもの。
軽くて割れず、積み重ねてもかさばりません。耐熱性が高いため高温殺菌が可能で衛生的な管理ができます。
油脂の吸着や化学物質の溶出の恐れがないということで広く使われてきました。
熱伝導がよいため、熱いものを入れると持てなくなり、犬食いの原因にも。また、触感が冷たく、作業時には高く大きな音が出やすいことや、
割れないけれどへこみなどが起こりやすい欠点があります。耐久性は優れています。
調理器具にはアルマイト製もありますが、日常の食器としてはほとんど使いません。
●ステンレス
鉄とクロムの合金。アルマイトより重く、外力に強い。表面の光に耐久性があり、
磨けば元の輝きになります。それ以外は、アルマイトとほとんど同じ特徴と問題点を持ちます。耐久性はアルマイトよりも優れています。
●プラスチック
ポリプロピレン、メラミン、
ポリカーボネートはいずれもプラスチックです。
プラスチックは、原料となるモノマー(単量体)をたくさん結合(重合)させて大きな分子(ポリマー)に変えて作られます。
プラスチックの名前にポリエチレンやポリプロピレン、ポリカーボネートなど「ポリ」がつきますが、
これはポリマーすなわちたくさんつながっているという意味です。
プラスチックの多くは、150度から200度程度の比較的低い温度で製造されます。
一般に料理を盛りつけるなど使用条件よりも離れた温度で製造された方が、溶出などの危険が少ないと言えますが、
プラスチックは強化磁器などの1300度とは比べものにならないほど低い温度で製造されます。
また、プラスチックは、製造工程で様々な触媒などを使い、添加剤も使われます。
主に使われる添加剤には、
可塑剤(柔らかくする)
安定剤(熱や紫外線からの劣化を防ぐ)
界面活性剤(静電気を防止したり、曇り止めのため)
難燃剤(燃えにくくする)
着色剤、充填剤、発泡剤などがあります。
プラスチックは、その性質上、原料のモノマーや添加剤などが溶けだす恐れがあります。添加剤などは種類だけでも1,000を超えており、
人体や環境に対し作用がよく分からない物質や人体に危険な物質も含まれています。いくつかの物質については、
用途に応じ溶出量の規制が決められています。
97年10月に大阪市などの調査により(株)
オーエスケーが製造販売した抗菌剤入りポリカーボネート樹脂製の子供用の茶碗等食品用器具から主製造原料(モノマー)のビスフェノールAが、
材質試験をした結果、基準値の500ppmを超えて検出されたとして、大阪市が回収命令を出した事件は記憶に新しいところです。なお、
溶出規制は2.5ppmとなっており、この食器でも溶出試験をしたところ、範囲内で問題ないというのが厚生省の見解でした。
プラスチック製品は一般に油となじみやすく、油汚れが落ちにくい素材です。そのため、石けんではなく合成洗剤の使用をもたらします。
また、プラスチックは埋め立てても分解しないものが多く、焼却すると発熱量が高いため炉を傷めたり、有害物質を発することがあります。
プラスチック製品は性質上、細かい傷が付きやすく、耐久性はよくありません。
★ポリプロピレン
軽くて割れにくく、積み重ねてもかさばりません。また、
熱伝導が悪いため、食器が熱くなりにくく扱いやすいという特徴をもちます。そこからランチ皿などに使われています。
欠点として、ポリプロピレン自体が油を吸着することと、油になじむため、油汚れが落ちにくい素材です。また、添加剤が溶出し、
使われていた酸化防止剤BHTの溶出では大きな問題になったことがあります。現在、BHTはほとんど使われていませんが、
他の酸化防止剤や添加物などの問題は残ります。
ポリプロピレンは熱に弱いため、殺菌保管庫の温度設定を低くしなければならず、衛生管理に不安が残ります。
また、表面に傷が付きやすく、黒ずんでくるため漂白剤を使うことになります。
★メラミン樹脂
ポリプロピレンとの違いは、ポリプロピレンが熱を加えると柔らかくなるのに対し、メラミンは硬くなることです。また、
重さもポリプロピレンより重く、表面も硬いといえます。重さは、アルマイトの約2倍ほどになり質感はあります。
メラミン樹脂は正しくはメラミン・ホルムアルデヒド樹脂といい、メラミンとホルムアルデヒドを重合してできたプラスチックです。
新しいうちは反応しきらなかったホルムアルデヒドが溶け出します。古くなるとメラミンとの結合がはずれたホルムアルデヒドが溶け出します。
製品によって溶出量にはばらつきがあります。
ホルムアルデヒドは毒性が強く、毒物劇物取締法の「劇物」に指定されています。アメリカでは、ホルムアルデヒドは発ガン物質として指定され、
日本の厚生省でもメラミン樹脂のホルムアルデヒド溶出を規制していますが、その規制はイギリスなどと比べても低くなっています。
学校給食のように毎日熱風消毒をしたり、傷が付きやすい場合には、溶出量が増える結果もあり、不安です。
メラミン食器はあまり温度を上げると劣化が激しくなるため、比較的低い温度での殺菌となり、また、熱伝導率が低いため、
食器籠の中心部には熱が回りきらなかったり、周辺部は熱がかかりすぎて食器が傷みやすいなどの欠点があります。細かい傷がつくため、
汚れによる黒ずみ、漂白剤を使用しなければならなくなる欠点もあります。
ある自校式のメラミン食器使用校を例にとると、毎年の食器更新率は10%から20%になります。また、基本的には3年で更新(更新率33%
平均)することになっていますが、守られていません。
★ポリカーボネート
透明度が高く、耐熱温度が比較的高い素材です。
使用しているうちに細かいひび割れができ、もろくなることもあります。ビスフェノールAが溶出するが、
それ以外ではメラミンなどより溶出しないため、「安全」をうたって近年取り入れられるようになりました。
しかし、ビスフェノールAは「環境ホルモン(内分泌かく乱物質)」であるという指摘がされ、今年になって大きな社会問題となっています。
●陶磁器など
陶器、磁器、ガラス、強化ガラス、などは、日常の食卓で使用されている素材です。
適度な重さ、熱伝導率であり、熱いものは熱い、冷たいものは冷たく、それでも持てないということはありません。
陶磁器やガラス、強化ガラスなどは、1000度を超えるような非常に高い温度で焼かれ製造されるため、溶出がほとんどなく、
安全性が高い素材です。さらに、傷もアルマイトやプラスチックよりつきにくく、耐久性も優れています。
いいことずくめのようですが、欠点があります。それは、割れるということと重く、かさが高い点です。
耐熱強化ガラスや強化磁器などは比較的軽量化がはかられていますが、総じて重くなることは間違いありません。
割れることは、子ども達にとっては大切に扱わなければならず、マナーを伝えるという体験になります。実際、
佐賀県有田で有田焼を食器として導入した時は、破損率が予想よりもかなり低く、1%台を記録したり、子ども達が割れることを前提に扱うため、
かえってていねいに利用するようになったという報告がありました。
長期間使っても傷まないため、破損を除くと基本的にプラスチック食器のような傷や劣化による更新の必要がありません。つまり、
導入当初のコストはかかりますが、導入後の回転コストは安くつきます。
しかし、重い、かさばる、割れるという点は、調理現場の作業性を悪くします。
陶磁器などの和食器には糸底があり、さらにかさばります。一方強化ガラスは、糸底がないため和食器よりもかさばりませんが、
持ち上げにくくなります。また、表面が滑りやすく、割れるとき細かくなるため、子どもにとっては少々危ない面もあります。この点は、
食器籠を増やし、一度に持つ量を減らすなど工夫が必要です。
(強化ガラス食器は、破損時の危険性が大きく、使われなくなりました。 HP移行時追記)
(学校給食ニュース3号 1998年6月)
[ 98/12/31 食器 ]