石けんとは
動植物油脂とアルカリ成分(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)で中和された脂肪酸エステルの総称が「石けん」です。
石けんは、原料油脂の組成によって、性質が微妙に異なってきます。例えば、ヤシ油ならば、水溶性に優れ気泡力がある石けんができますが、
洗浄力は若干劣ります。牛脂ならば、洗浄力が強く、水溶性が劣ります。このように油脂本来の性質が反映するのは、
石けんの化学組成がとても単純だからです。
石けんのにおいが気になるという話を聞きますが、石けん本来のにおいは、原料に由来します。原料を精製するとにおいはなくなっていきます。
石けんは、原料の油と苛性ソーダのみで、温度も80℃前後と家庭で、特に難しい道具もなしに作ることができます。この単純さこそが、
石けんの安全性を保証しているとも言えます。作りが単純なために分解しやすく、また、
界面活性作用もちょっとした条件の変化で失ってしまうからです。
石けんは水に溶けた時の状態がアルカリ性になり、界面活性作用を示します。汚れがひどかったり、ペーハーが変わったり、
石けん成分が薄められたりすると、簡単に分解してしまいます。これが、石けんが合成洗剤と異なる大きな違いです。
逆に、この点が石けんの難しさにもなります。使いすぎるとぬるぬるしてしまいます。また、
合成洗剤では汚れを細かい粒子にしたまま水と一緒に流される「汚れを拡散する」性質がありますが、石けんは汚れを集めてしまうため、一度、
食器や調理器具から落ちた汚れが固まって、再付着することもあります。
石けんは、水道水に含まれるカルシウムなどのミネラルによって金属石けんに変化し、界面活性作用がなくなることもあります。しかし、
ミネラル分の少ない日本の水道水ではあまり考えられません。
また、蒸留水で石けんを使用すると非常に強い界面活性作用を示します。石けんは、とても単純なつくりだけに、使う際の水や汚れ、食器の素材、
温度といった条件に洗浄力が左右されます。うまく使えば、これほど汚れが落ちる洗浄剤もありません。
自分の地域や作業の特徴にあった石けんを選び、工夫することが必要です。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]