学校給食と環境ホルモン
学校給食の現場でも環境ホルモンの問題があります。
(ポリカーボネート)
まず、
問題とされているポリカーボネート製食器から原料のビスフェノールAが溶出します。ビスフェノールAは、
食品衛生法の規格基準で2.5ppm以下の溶出であることとしています。ポリカーボネート製食器の問題で、自治体が
「厚生省の基準を満たしているから問題ない」というのは、この点を指しています。
ビスフェノールAには弱い女性ホルモン作用があります。「その強さは女性ホルモンの1000~2000分の1程度でしたが、
その濃度2~5ppb(1μg/リットル)で、細胞に対するホルモン活性を示した」(※1)ことが分かっています。
リターナブル食器の材質として「ポリカーボネート製容器を調べた検討結果で、未使用品で6ppb(水、85度で30分後)、
15回の洗浄品で6ppb(4%酢酸、95度で30分後、以下同様)、容器の白化がみられる50回洗浄で最大64ppb、
さらに100回洗浄品で180ppbの溶出例があります」(※1)、同様に給食食器の「溶出試験の例として、
油性食品の類似溶剤n-ヘプタンに20度、60分摂食していると約29-39ppb溶出する例があります」(※1)とのことです。
給食食器のように毎日使用するものは、ずっと続けて微量に環境ホルモン物質を取り入れることになります。
(プラスチック)
学校給食では、ポリカーボネート製食器以外にも問題があります。ラップ等や容器として使われるプラスチック製品、
とりわけ塩化ビニール製品の添加剤(可塑剤)として使われるフタル酸エステル類(フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル他)
やアジピン酸エステル類(アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソデシルなど)は環境ホルモンとして挙げられています。これらは、
添加剤といっても使用される割合は高く30%近く配合されていることもあります。
また、発泡スチロールやカップ麺などの容器に使われるポリスチレンからは原料のスチレンモノマーが溶出します。環境ホルモンとしては、
このモノマーが重合したスチレンダイマー(二量体)、スチレントリマー(三量体)が挙げられており、溶出が疑われています。
これらは特に油に溶出しやすい性質があり、
たとえば油製品をラップにかけておくだけでも常温でラップから添加剤が微量ながらも溶出すると考えられます。
プラスチックは意外なところでも使われます。缶詰の内側には金属が溶出しないようエポキシ樹脂でコーティングされていますが、
この樹脂はビスフェノールAが原料なので、当然、ビスフェノールAが溶出します。長い時間保存するものだけに気がかりです。
国内の多くのメーカーでは、市民団体や生協などの要請を受けて、順次、溶出量の少ないものや、
溶出しない別のコーティングに変えることにしていますが、まだしばらくは時間が必要です。
(食材)
食材も、その包装材の多くがプラスチック製品です。また、野菜などによっては農薬の残留が心配されますが、
多くの農薬が環境ホルモンという指摘があります。また、
食品添加物で酸化防止剤として魚介製品などに使われるBHAも環境ホルモンの指摘があり要注意です。
(学校環境、ごみ)
学校環境でも、全校の「消毒」やセンター、調理室などの「消毒」
として、殺菌、殺虫剤が使用されることもあります。その成分によっては環境ホルモンに指摘されるものが入ることも十分に考えられます。「消毒」
とよばれるものは、いずれも農薬と同様の成分ですから、注意が必要です。
発ガン性、毒性が非常に強いダイオキシン類は、同時に強力な環境ホルモン物質でもあります。プラスチックごみの焼却や、
小型焼却炉での低温度の焼却は、ダイオキシンの発生源となっています。すでに、全国で小型焼却炉の使用を中止するようになりましたが、まだ、
自治体によっては対策が遅れ、学校の小型焼却炉がそのまま使用されているところがあります。もちろん、小型焼却炉を廃するだけでなく、
地域でのごみの分別や削減、さらに、ごみ処理施設からダイオキシンが発生しないようにするための構造的な工夫を行なうことが求められますが、
ダイオキシン濃度は焼却炉の周辺がもっとも高いという指摘もありますので、早急な対応が必要です。
(※1)…片瀬隆雄著 プラスチック食器・哺乳瓶・おもちゃ等と“環境ホルモン”『食べもの文化』1998年8月号(芽ばえ社)
(学校給食ニュース5号 1998年9月)
[ 98/12/31 環境ホルモン ]