環境ホルモンにどう対処するか~提案
環境ホルモンの問題は、日々新しい情報が登場し、なおかつ、詳しい因果関係などは明確になりにくい状態にあります。その中で、
私たちが子どもたちやその次の世代の未来を守るにはどうすればいいのでしょうか。
学校給食の現場でできること、地域の運動としてできること、社会の問題として取り組むことがあります。
(学校給食の現場で取り組むこと)
食材を選ぶこと。
残留農薬の可能性が高い輸入農産物ではなく、地場の生産者と提携したり、低農薬・無農薬の有機野菜を選ぶなど、素材を工夫することができます。
包装資材から塩ビなどを減らしていくこと。納入業者との間で話し合い、包装資材の簡易化などに努力することができます。また、缶詰などは、
業者にコーティングが何でできているのかを問い、ビスフェノールAが溶出しないよう求めたり、残留検査を求めることができます。
合成洗剤から石けんに切り替えること。環境ホルモンの候補となる化学物質は、次々に登場します。
これまでも安全性や環境への不安が指摘されている合成洗剤をやめ、石けんに切り替えることができます。
ごみの総量を減らす努力をし、特にプラスチックごみを減らす。
(地域の運動としてできること)
ポリカーボネート製食器の使用を中止し、
プラスチック製食器からより安全性の高い陶磁器、木製食器などへ変更する。これは、まず、給食の現場、学校や父母から声を上げ、
地域に訴えながら取り組むことが大切です。
地域によっては、ポリカーボネート製食器を中止しながらも、メラミンやポリプロピレンなど他のプラスチック製食器に替えるところも出ています。
しかし、プラスチックは、総じて陶磁器などよりも低い温度で作られるため、原料物質の溶出が多くなります。また、
主原料物質だけでなく多くの添加剤が使われており、その実態は明らかにされていません。運動の際に注意が必要です。
次に、ごみ焼却などごみ処理の方法を考え、ダイオキシンの発生を抑える。学校の小型焼却炉はもちろん、自治体ごとにごみ処理方法は異なります。
ごみ処理の実状を把握し、改善を求めることが必要です。また、これらのことは教材としても活用できるはずです。
(社会の問題として取り組むこと)
アメリカでは、アメリカ環境保護局が6万種類の化学物質に対しホルモン作用があるかどうか調べつくす計画を打ち出しています。そして、
まず生産量の多い1万5千種の化学物質を予備的に分析し、1999年の夏には予備分析を終了させるとしています。
また、食器などのプラスチック製品に対してはすでに添加剤などを明らかにするよう法的な整備は整っています。
アメリカやヨーロッパのいくつかの国では、プラスチック製品の添加剤など原料を明らかにするような食品衛生上の法整備がなされていますし、
塩化ビニールについては早くから規制があり、生産量やプラスチック全体にしめる塩化ビニールの比率がかなり低くなっています。
一方、日本では、環境庁をはじめ各省庁が環境ホルモン対策の研究調査予算を元に行動計画を打ち出していますが、
政府としての方針がばらばらな感は否めません。
まず、なにより情報の公開が必要です。プラスチックの添加剤に何が使われているのか、それは環境ホルモンの可能性があるのか、
メーカーや関係行政に対して情報開示を求めることが、対策の近道です。これは、学校給食の現場からでもできることでもあります。
現実には、どの取り組みも様々な難関があるかも知れません。しかし、まずなにより子どもたちや自分たちの生命のために、
「疑わしきは使用せず」を大前提にして、ひとつずつ取り組むことが必要です。
夏期学習会の中で、日本大学生物資源化学部教授の片瀬隆雄さんは、
「20年前に市民運動が提起していたPCBやBHCなどの影響を受けた子どもたちが、今、大学生になっている。今、
環境ホルモンの運動をやっているが、今時点での状況が現実になって現れるのは20年先です。今、対応をすれば、
20年後は少しはましになっているかも知れない。人間は知恵があります。明るく、元気に、問題の解決に努力しましょう」とおっしゃっていました。
環境ホルモン問題は、一気に解決できることではありません。ひとつずつ確実に取り組みを広げましょう。
(学校給食ニュース5号 1998年9月)
[ 98/12/31 環境ホルモン ]