福岡県福智町、センター計画とりやめ、自校・親子継続へ
福岡県福智町、センター計画とりやめ、自校・親子継続へ
福岡県福智町の中川眞佐美さんからの投稿です
前略
九州、福岡県からお便りいたします。
私の住む福智町は、2006年3月、近隣の三町が合併してできた、人口2万6千足らずの小さな町です。三町とも、
かつて旺盛を極めた炭坑の町であり、炭坑の閉山とともに、急速に町の経済は悪化、いずれも、財政再建団体を経験してきました。
今、自慢できることとしては、世界最高齢の皆川ヨ子さんは、福智町の人です。また、遠州七窯のひとつ、上野(あがの)焼も、
福智町にあります。
そして今、また別の意味で、いいお知らせをお伝えできます。学校給食のことです。
町には3つの中学校と5つの小学校があります。
合併する前の金田町に金田中学校と金田小学校、方城町に方城中学校と伊方小学校と弁城小学校、
赤池町に赤池中学校と市場小学校と上野小学校です。
金田町は、いずれも自校炊飯、方城町は隣接した中学校と小学校のすぐ隣に小さな給食センターがあり、渡り廊下を伝って、
子どもが給食を取りに行っており、少し離れた小学校にはトラックで輸送していました。赤池も方城と同じ様子でした。
どの施設も老朽化しているとはいうものの、当面不自由はありませんでしたが、合併を機に、三町合同の2500食規模の給食センターをつくり、
各校に運搬するということが分かりました。
少し以前から話し合いがされていたようですが、正確な情報は、私と友人がふたりで学校教育課長にお話をお伺いしたのが初めてで、
2月2日のことでした。
「3月議会にかけます。用地も決定しています。合併特例債を使います。将来、人件費が削減されます」
と、待ったなしの状況でした。私たちも大勢の方々にあって反対の声を伝えました。PTAの会長さんたちも、
保護者の人々を中心に有志の会を作って署名を始められました。私たちもその署名を持って、労働組合、農業関係、商工会等に協力を求め、
快く受けていただきました。何日か経って、教育委員会から、センター構想を取りやめるという声明が出されました。
議会では、町長が、「給食センターがグラウンド整備に引っかかる市場小学校については、老朽化も進んでいるので、
同規模のセンターを少し場所を移して建てかえ、他の地区は、現状維持とします。親子方式で運んでいるふたつの小規模小学校(上野と弁城)
については、給食室を設置する方向で検討します」とお答えになりました。
1カ月と少しの取り組みでしたが、住民の力で、センターをストップ、給食室の設置という回答を得たことは、とても大きいと思います。
私は、今回、初めて、学校給食について勉強し、また、食育基本法もダウンロードし、政府の方針なども知りました。私は、
1957年生まれで、小学校の頃は、校舎の1階に給食室があり、全校生徒360人分を作っていました。中学では給食はありませんでした。
学校から離れたところに大規模なセンターが建ち始めたのは、昭和40年代でしょうか、たぶん、高度経済成長と歩調をあわせるように、
自校調理がなくなり、食の合理化、効率化が進んでいったように思います。それから40年ほど経ち、
老朽化したセンターを建てかえる時期を迎え、さらなる大型化か、
それとも自校調理に戻していくかの道を選択するときが来ているのだと知りました。私の住む福智町は、後者を選びました。何もしなければ、
あたりまえにセンターが建っていたと思います。まだ、主流ではないけれども、箱物を建てる、大型化する、といったやり方と反対の方向で、
国民が動き出しているのかも知れません。
学校給食ニュースのサイトからは、たくさんの情報をいただき、本当に助けられました。今回の私たちの経緯をお伝えできたら、
とPTA連合会の会長さんの了解を得て、私個人が報告をさせていただきます。小さな町の取り組みですが、
同じような状況でがんばっておられる方々がたくさんおられることを知り、何か参考になれば、と願っています。
なお、給食運営委員会が設置されるようですので、何らかの形で参加していくことが大切だと思っています。やはり、
キーワードは住民自治だと感じました。
4月16日 中川眞佐美 草々
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■参考資料 署名用紙
福智町小・中学校の学校給食に関する請願書
福智町の子ども達の健やかな成長を願い、
常日頃より深いご理解と誠意を持って町政推進にご尽力くださっていることに心から敬意を表します。
さて、今年度中の完成を目指して建て替えられている市場小学校には、従来合った給食調理室を併設せず、合理化を図る観点から、
給食センターの統一の方向で福智町教育委員会での協議が進められていることを知りました。
「食」に関する直近の状況としては、国政においても「食育」の重要性が語られ、昨年の六月には「食育基本法」が制定され、そのなかでも、
学校給食が重要な役割を担っていることが明記されています。
学校給食の意義は、子どもの成長と命を保障することです。食べ物は命をいただくということから感謝して食べること、
食べ物の命が自分の体の健康につながっていること、食は命をはぐくむものであるということを学習する場となっています。それだけではなく、
調理場で働く人達との毎日の会話やふれあいを通して、また、地場産業の活性化にもつながる地場農産物を使用することで、
生産者や調理者と顔の見える関係の中で子ども達に「食」の大切さ、人とのつながりの尊さを実感し、学ばせることができると思います。つまり、
給食は教育の一環であり、地元の産物を使用することや、調理員とのふれあいで、社会との関わりを知る学習の場だと言えます。
このような「食」を通じた教育としての意義は、単独校方式の給食によってこそより充実されることは明かです。
また、アレルギー児の割合も年々上昇していると言われています。単独校方式の給食の実施によって、
アレルギー症状を持つ子ども達に関する情報を、学校長、担任教師、栄養士、調理師、保護者、医師など、子どもと給食に関わる人々が共有でき、
子どもを守る取り組みが可能になります。
旧三町合併協議会での学校給食に関する調整内容でも、「調理方式等は、当面現行のとおりとする。但し、児童・
生徒の教育面等を視野に入れて考慮し、新町において単独校方式に向けて検討する」と記されております。
センター方式による大量調理や、各学校への時間をかけての配食では、食教育の観点も欠如することから、すべての子どもを育み輝かせる、
全校単独校方式の給食を実現してくださるよう切望いたします。
請願項目
一、福智町に、全小・中学校を対象にした給食センターを新設するのではなく、単独校方式の給食を実現させてください。
二、一項目の早期実現が困難な場合、当面は、現状を維持することをしてください。
署名(住所、氏名)
二〇〇七年二月二十三日 「福智町小・中学校の単独校方式給食を求める保護者会」
代表(各校8校 代表者名記載)
福智町々議会議長
小松春義 殿
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■資料 結果報告のチラシ
署名にご協力ありがとうございました。
福智町の学校給食は、8校ひとまとめのセンター方式ではなく、
現状維持となりました
川土手に菜の花が咲きそろい、冬を置き忘れて春がやって来たようなこのごろです。皆さまには、
その後お変わりなくお元気にお過ごしのことと存じます。
さて、この度の福智町小・中学校の学校給食に関する請願署名では、ご多忙な中でのご協力、本当にありがとうございました。
福智町教育委員会が、給食センターの全校統一化を検討しているということを知ってから、署名提出期限まで、
わずかな日数しかないという条件の中でしたが、皆さま方の迅速な行動によって、予想以上にたくさんの署名を集約することができました。
2月26日、福智町々議会事務局に、請願署名の提出をするための準備を整えていましたが、2月23日、教育委員会の会議により
「諸般の状況を考慮し、慎重審議の末、給食センター方式ではなく、現状維持とすることにいたしました」という報告が各学校にありました。
子どもや教育をとりまく状況は、まだまだ多くの課題を抱えていますが、これからも、常に子どもたちを中心に据えて、
考え合っていけることを願っています。
署名へのお礼と、今後のさらなるご協力をお願い申し上げて、給食センターに関する経過のご報告とさせていただきます。
福智町小・中学校の単独校方式給食を求める保護者会
[ 07/05/09 投稿 ]