和食と牛乳と学校給食についての疑問、みなさんはどう思う?
和食と牛乳と学校給食についての疑問、みなさんはどう思う?
(学校給食ニュース編集責任者 牧下圭貴)
こんにちは。編集責任者の牧下です。いつもならば記事にする内容かも知れませんが、学校給食に関係する読者の皆さんに聞きたいことがあって「投稿」します。
新潟県三条市が完全米飯給食、和食推進の方針から、牛乳と学校給食の分離を打ち出し、2014年12月から4カ月間、牛乳を中止、牛乳なしでの学校給食を試行しました。
この試行は予定通り終了し、それを受けて、2015年9月からは、牛乳飲用と学校給食の分離で行うという基本方針となりました。
食育基本法ができて10年、米飯給食推進、地場産食材活用が進められ、和食がユネスコの無形文化遺産になりました。ますます、学校給食での「和食」の導入が求められるような社会状況になっています。
三条市の試行を、その一環として捉えるととても先進的かつ貴重なものであると思います。
三条市では、国の学校給食実施基準にある摂取基準に沿って、牛乳がなくても各栄養素やカロリーが不足しないよう、あるいは、基準を満たすよう取り組みました。
牛乳は、日本人に不足しているカルシウムの供給源です。それだけでなく、調理施設設備、調理時間、調理員、給食費(食材費)などで制約の多い学校給食において調理がいらない手軽な食品として、カルシウムだけでなく、ビタミン、たんぱく質、カロリー等を担う役割もあります。
三条市では、試行として施設設備等を変更することなく、牛乳抜き給食を実施したため、食材と献立で、ご飯の量を増やす、乳製品を多くする、いりこ粉を多くするなどして栄養素を満たそうとしました。
そこで、インターネットやメディアの報道や意見をみてみると、いりこ粉が多いとか、シチューなど乳製品入りの献立は和食なのか、といった意見がありました。
学校給食摂取基準は、「日本人の食事摂取基準(2010)」(厚労省)に対して、エネルギー(カロリー)は1日の3分の1、各栄養素も3分の1ぐらいとなっています。これは、3食のうちの1食というところからでしょう。しかし、マグネシウムは1日の50%、一部のビタミンは40%となっています。カルシウムは、計算すると45~55%ぐらいの設定です。
つまり、学校給食は、献立上、カルシウム等の一部の栄養素について、1食で1日の半分の量をとることが求められています。特にカルシウムについては、「学校給食のない日はカルシウム不足が顕著であり、カルシウム摂取に効果的である牛乳等についての使用に配慮すること。なお、家庭の食事においてカルシウムの摂取が不足している地域にあっては、積極的に牛乳、調理用牛乳、乳製品、小魚等についての使用に配慮すること」(学校給食実施基準の一部改正について、文科省平成25年1月25日)としています。
牛乳抜きの学校給食を行う場合、この「摂取基準」が問題になります。
カルシウムなど1日の3分の1を上回る栄養素を前提にすると、献立は、その栄養素が満たされることを考える必要に迫られます。「和食」といっても、通常の献立とは異なってくるのが当然です。
そこで質問です。私は栄養の専門家ではありません。
和食中心の学校給食と、文科省の「摂取基準」は矛盾しませんか?
学校給食での摂取基準を「日本人の食事摂取基準(2010)」の3分の1を基本として、その上で不足しがちな栄養素についての情報提供を行えば、献立の幅は広がると思いませんか?
戦後70年、学校給食法ができて60年、国産牛乳が学校給食に安定的に供給されるようになり50年となります。学校給食が教育を目的とした「生きた教材」であることは変わっていませんが、その求められる役割や機能については、ずいぶん変化したと思います。「摂取基準」のあり方について、皆さんはどう思われますか?
匿名でも良いので、栄養教職員、調理員、教員、栄養のご専門等、お立場をつけてご意見をいただけませんか?
よろしくお願いします。
メールでは、 desk@gakkyu-news.net 迷惑メール防止のため、@ の字は全角文字で掲載していますので、@を半角文字に変えてから送信してください。 facebookの https://www.facebook.com/gakkyunews にてビジター投稿やメッセージをいただければ幸いです。
三条市、牛乳停止試行期間中の給食について (PDFリンク)
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(学校給食ニュース紙版2015年11月号に掲載したご意見等)
■長野県朝日村 小学校栄養教諭 杉木悦子さん
○今まで通り、ほぼ毎日、学校給食では、飲用牛乳を飲む方向で取り組むことが良いと思います。週の中で、平均して、カルシウムが摂取ができればいいので、牛乳は、毎日でなくてもよいし、運用は自由にできていると思います。お茶・ジュース・豆乳・ヨーグルトドリンク等々可能です。
理由
【健康面から】
①成長期の小中学校の子どもが、カルシウム不足で、飲み物として牛乳が飲めるので、摂取しやすい。この時期必要なカルシウムの3分の1から4分の1が200cc(1本)からとることができる。
これは、学校給食でのカルシウム摂取の保障にもつながる。
②新鮮な牛乳が地域から届き、完全な地産地消の一品であること
③牛乳に含まれる栄養素は、カルシウムだけでなく、タンパク質、脂質、ビタミン共に良質な栄養素であること。(牛の乳であるため)
④牛乳のカルシウムは、他の食品に比べ吸収率が高いため。
⑤カルシウムは、海藻・小魚・野菜などからもとれることも学びながら、日常の食事に取り入れていく教育も大切である。
【良質な農畜産物を国産で生産するために】
①酪農家は、年々減ってきており、地域の酪農家からの乳製品の供給が減ってきている。良質な乳製品を日常化するためには、地域の酪農の物を食べ続けることが必要であると思う。
②乳幼児など良質な乳製品を必要とするので、乳幼児の成長を保障するためにも、地域の酪農の物を食べ続けることが大切であると思う。母乳の代わりのものはとくに必要であると思う。
これは安心安全な乳製品を国民が食べられるような政策が必要であると思う。
農産物の自給率を上げながら、自給率100%の乳製品を目指す政策の中で、皆が考えて行くことが大切でと思います。
■東京都の元学校栄養職員 五十嵐興子さん
食文化としての和食の伝承のために
私が学校給食の栄養士を退職して6年以上経過しています。在職30年以上、そのほとんどの間私は毎食牛乳をつけていました。
【牛乳をつける訳】
栄養基準量を確保しやすく、限られた給食費に収まります。乳業メーカーから納品された牛乳をそのまま提供する(調理場内で調理・加工をしない)ことで食中毒の心配がありません。またパン給食と異なりご飯を炊くことで増える作業量を少しでも抑えられます。さらに牛乳を飲むための食器は必要ありません。
※補足;米飯給食導入初期(1975年)頃の食器はご飯にも汁物にもサラダにも使えるカップと深皿、おぼんでした。
※補足;今では深皿、パン皿、茶碗、サラダボール、どんぶりと料理内容にあった食器がそろっていますが、それでも汁椀があるところはまれです。
米飯給食月1回の導入初期には「五目御飯と牛乳、くだもの」といった献立で、汁物の代わりに牛乳を飲ませていました。平釜で米を湯炊きし、炊きあがった白飯をたらいに移し、お釜を洗って五目ごはんの具を調理し、白飯に混ぜるだけでやっと給食時間に間に合わせることができました。その後炊飯器が導入され米飯給食が週1回実施されるようになりました。そして「おでんに茶飯、牛乳、くだもの」「きのこご飯とさんまの生姜に、ごま和え、牛乳、くだもの」といったお釜をフル回転する献立ができるようになりましたが、牛乳はつけていました。
米飯給食が導入されてしばらく経った頃、私は「にぎりずしを食べながら牛乳を飲む子どもの話」を耳にし、「学校給食の影響だ」といわれ身のすくむ思いがしました。「学校給食を通して望ましい食事のあり方を学ぶ」とか「日本の食文化をつたえる」と言っていた一方で、何を食べるにも牛乳を飲むという食事のありようを子どもに身につけさせたことを知り、子どものことを中心に考えていなかったことに気づきました。
学校給食で作る汁物はだし汁150ccに野菜等100gを加える具だくさんの汁物です。この汁物と牛乳をご飯給食につけると、食事全体の量が多く小学校の小さな子どもの胃袋におさまる量ではありません。栄養を確保することも大切ですが、子どもの食べきれる量や個人差にも配慮が必要です。
以上のことから完全米飯給食では牛乳は家庭で飲んでもらうことがよいと考えます。どうしても学校で飲ませたいならば、学校で子どもが口にできるものは水道水だけなので、給食時間以外の中休み時間(2校時と3校時の間の休み時間)もしくは5校時終了後に飲むことが、良いのではないでしょうか。
世界無形文化遺産に「和食」が登録され、地域で取れた食材を使った食文化としての和食の継承を学校給食が担うことには大いに期待しています。是非一汁ニ菜の食事形態が子どもたちに定着するよう食器を揃え、地域で取れた食材や和食にふさわしい栄養基準量に改定し、施設設備を改善し、十分な給食費・調理員の数を確保してほしいと願っています。
■福岡市、元学校給食調理員 山野さん
学校給食ニュース9月号で提起された和食と牛乳の摂取問題について一筆。
「学校給食摂取基準」の3分の1への平準化に賛成です。これまで、無機質類やビタミン類など、一部栄養素が、4割~5割強の目標設定になっていることについて、家庭の食生活での3分の2摂取が難しいとの見解から学校給食での2分の1摂取になっているものと思われます。
しかし、今後、学校における食育の中心を学校給食の教材化を進め、家庭、地域との連携を進めていく中で、その推進とともに、家庭における食生活のあり方も含めて、連携できる情報提供で家庭での役割分担もスムーズになっていくと思います。学校給食をパイプに、よりていねいな情報発信により、家庭の役割と重要性の認識を深めるとりくみにも広げていくべきだと思います。
給食も家庭の食生活も、和食主流となっていけば、魚嫌いやみそ汁苦手も減ってくると思います。朝食もご飯、みそ汁の和食に戻ってほしいと願っています。
米は、日本で唯一、自給できる主食です。
パン食中心の朝食を和食に戻せば、バランスの良い食生活でバランスのよい栄養摂取ができると思います。
それは、日本の農業の未来にもかかわってくると考えます。
最後に、栄養摂取基準量は、1日単位を至上命令でなく、1週間、あるいは、月平均して摂取できればよしとするゆるやかな運用にしてほしいと思います。数値にとらわれすぎて、逆に、適量、組み合わせににムリが出て、子どもたちにとっておいしい、楽しい学校給食を阻害しているのでは…と思うこともあります。よろしくお願いします。
■東京都 学校給食と関係のない一般市民
私は給食関係者ではなく栄養の専門的なことは解りませんが、牧下さんが提案されたように<学校給食での摂取基準を「日本人の食事摂取基準」の3分の1を基本として…>に概ね賛成です。ただし<栄養素についての情報提供を行なえば、献立の幅は広がる>か、については具体的な想像ができません。牛乳アレルギーのある児童生徒のことも考慮に入れると、「摂取基準」を補うために牛乳を使うのは控えた方が良いのではないかと思います。
先日、偶然テレビで三条市の給食を取り上げた番組を見ました。ニュース9月号掲載の牧下さんの投稿に記されていたような経過と結果を映像で報じていました。「おや?」っと思ったのは「牛乳飲用と学校給食の分離」と言いつつも、給食と一緒に牛乳を配っておいて、給食を食べ終わったらすぐに飲んでいたこと。これで「別にドリンクタイム(牛乳飲用時間)を設定し」たことになるのでしょうか? これは「給食時間の直後に…」(ニュースvol.174/9-10p) という例そのままなのですが、この「例」そのものが、どう考えても給食時間内にしか思えません。形式的に「ごちそうさま」をするでもなく、定められた給食時間が終わってからでもないのですから。
給食に牛乳が出されるようになったのは、酪農振興策のひとつとして、ときいたように記憶しています。しかし、貿易交渉のたびに翻弄される酪農家の状況を考えると牛乳の消費がますます少なくなったら大変…などと思ってしまいます。いっそ、牛乳を出す時に酪農や農業全般・食糧自給と貿易問題を学習するようなプログラムで「食育」をするというのはいかがでしょうか。牛乳好きな者としては、給食で悪者扱いされている牛乳がちょっと気の毒な気もします。義務ではなく、おやつの時間(三条市のいう「ドリンクタイム」)に選んで飲める何種類かの飲み物の内のひとつにラインナップする、くらいの自由度のある供給の仕方を考えられないものかと思います。
■いろんなご意見
以下は、学校給食ニュース9月号の投稿を読んだ読者が、給食に関心ある友人たちに「全国学校給食を考える会というところからの問い合わせです。「和食、牛乳、給食」に関してどう思うか意見要望などあれば教えてください」という形で、投稿とは関係なく意見を集めてくださったものです。そのため、最初の投稿の主旨を必ずしも反映させたものとはなっていませんが、給食の牛乳に関するいろんな意見ということでそのまま掲載させていただきます。
(杉並区保護者)
牛乳反対です。和食に合わないし絶対に子どもにはキツイです。
戦後酪農広げるためのシステムがそのまま変わらず学校の先生達はムリに飲ます…栄養になると信じてかな? 強制して子ども達に飲ますのはいやです。飲みたいなら家で飲めばいいと思います。
子供は奴隷じゃないし今は牛乳なんてなくてもお茶でいいし、教師も自分の意見言ってほしいです。戦後のすぐのメニュー変えてほしいです。
みんなもう少し考えてほしい。
(名古屋市保護者)
最近、給食の内容が和食の比率を多くしようと改善されているのは望ましく感じます。
しかし和食メニューに牛乳は必要なのでしょうか。栄養面からしてカルシウム摂取は牛乳以外からも取れると思います。昔から牛乳に関しては根強い存在を感じます。そこまで牛乳が必要な理由があるのか不思議に思うこともあります。安価で栄養が取れる食品なのでしょうか。
一度保護者に必要性や牛乳への印象などアンケートをとってみてもいいかと思います。
(杉並区保護者)
牛乳…紙パックにして欲しい。一年生にはビンは重たくて危ない上に、フタがあけづらく時間がかかったりこぼしたりして、かわいそう。産地はできるだけ鳥取県大山、熊本県阿蘇、など、関東近県でないところを選んで欲しい(内部被曝が心配なため)。
給食…給食試食会に6月に参加しましたが、味付けも薄味で、箸も通りやすく、子ども達には食べやすいと感じました。子どもは麦の入ったごはんは、噛んでいると甘くなる、といって美味しくて気に入っています。
給食だよりで子ども達に人気の給食のレシピを掲載し配布していただけると嬉しいです。
(杉並区保護者)
学校給食に牛乳が導入された経緯については、まぁ、当時の栄養状態などあったのかなと推察できるのですが、今は、その頃と状況が変化してきていると思います。牛乳(というか乳製品)はメジャーなアレルギー物質なのだから、たとえ症状が普段には出なくても体調によって受け付けないことってあるかもしれないと思います。そういうものを全員、一律に毎日飲ませるのはいかがかな、と。
後は、食育の観点で、和食や中華に牛乳は合わないんじゃないかと思います。
日本人には、体質的に乳製品が合わないって言われてたりするし(これは科学的にもっと分析・研究されてほしいね)、酪農自体の在り方も考えると (牛へのホルモン剤投与とか)色々考えちゃいます。
(熊本市保護者)
・給食で使う食材をできる限り地元の物を使って欲しい。食べ物は鮮度も大切。鮮度が高い方が生命力が高いはず。生命力の高い物をこれからの子ども達に食べさせて欲しい。
・和食中心の給食で、出汁をしっかりとった給食を食べさせて欲しい。和食中心の給食に変えて欠席者が減ったとか生徒の集中力が増した・落ち着いたとか、先生のチョークのアレルギーが無くなったなどの話しを聞いた事がある(香川県仁尾小学校)。子どもにとっても先生にとってもメリットがある。そのような給食を全国の子どもたちに食べさせて欲しい。
・牛乳に関しては、成長ホルモンの事やアレルギーの事など散々言われている。そういう危険性のある物を子どもに与えるのはどうなのかと思う。家庭の事情で給食でしか栄養を補えない子どももいる。子どもには安心安全な物を与えて欲しい。牛乳は廃止するかせめて選択制にして診断書の有無では無く、もっと簡単に選べるようにして欲しい。
(杉並区保護者)
今年、小学校にあがり初めての給食試食会に参加しました。
保護者の3分の1以上が出席で、関心の高さがうかがえました。
若い栄養士の先生でしたが、出汁をきちんととり、調味料もきちんとしたものを使い、米飯に重きを置いていて、野菜も近郊のものを使う…など色々考えてくださり情熱も感じました。
調理員さんは、民間委託ですが皆さん一生懸命やってくださりありがたいなぁと感じました。
また、器が陶器だったのも安心しました。
杉並区は、親が給食に関心ある人が多いので行政側も応えてくれてるのではと感じました。
牛乳に関してですが、ウチの子は牛乳を飲みとお腹が痛くなるので毎日給食で飲むのは厳しいです。
担任の先生に、相談した所「できるだけ頑張って飲むように」と配慮はしてくれましたが…基本飲ませるのが好ましいという感じでした。
結局、主治医に相談し診断書(牛乳のみNGで、ヨーグルト、チーズはオッケー)を書いてもらい学校に提出しました。今は、水筒のお茶を飲んでいます。
牛乳は、好き嫌いがあり和食にまったくあいません…
カルシウムは、牛乳には(高温殺菌ならなおさら)いわれてるほどなく、他の食材からとることができます。
どうしても、牛乳を導入したいのなら選択制にすれば良いと思います。
ご意見ありがとうございます。引き続き、ご意見をお寄せください。
匿名やペンネームで構いませんが、お立場、エリア(できれば都道府県区市町村名、または、東北、四国等のエリアでも構いません)を教えてください。
[ 15/10/29 投稿 ]