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遺伝子組み換えとは
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
遺伝子組み換え食品とは
●遺伝子組み換え食品
この遺伝子組み換え技術は、医薬品の分野で、微生物に大量に医薬成分を作らせるなどの目的で使われていました。
遺伝子組み換え技術の食品への応用は、2種類あります。ひとつは、遺伝子組み換え微生物を利用して酵素などをつくらせ、
食品添加物として利用する方法です。
チーズを作るときにミルクをかためるキモシン、でんぷん分解酵素のα-アミラーゼ、ビタミンの一種リボフラビンなどがあります。
もうひとつは、遺伝子組み換えした作物を食べるものです。
誰もが知らないうちに食べる可能性がある食品に応用されたのは、1994年、アメリカで発売された日持ちするトマト(フレーバーセーバー)
が最初でした。その後、特定の除草剤をかけても枯れない性質をもった大豆やトウモロコシ、ナタネ、昆虫が葉っぱなどを食べると、
その昆虫を殺してしまう性質をもったトウモロコシやジャガイモ、ワタが開発され、生産されています。
●日本に入ってきた遺伝子組み換え食品
1996年8月、厚生省・食品衛生調査会は、農薬メーカー3社から申請されていた遺伝子組み換え作物について、
「安全性評価指針に適合している」という答申を出しました。その結果、遺伝子組み換え食品が海外から輸入され、
私たちの食卓にのぼることになったのです。
現在輸入される作物としては、大豆、ナタネ、トウモロコシ、ジャガイモ、それに、綿実油に使われるワタがあります。
組み込まれた遺伝子は、大きく分けてふたつあります。ひとつは、除草剤耐性をもつもの、もうひとつは、殺虫タンパクをつくるものです。
(除草剤耐性)
たとえば、農薬メーカーの日本モンサント社は、同社の主力製品である除草剤ラウンドアップをかけても枯れない大豆、ナタネを開発しています。
ラウンドアップは、「根まで枯らす」ほど強力な除草剤で、大豆畑にまくと、雑草とともに大豆も枯れてしまいます。ところが、
除草剤耐性遺伝子を組み込んだ大豆は、ラウンドアップをかけられても枯れることはありません。生産者は、安心して(?)
ラウンドアップを使うことができます。
そして、日本モンサント社は、除草剤ラウンドアップと、除草剤耐性大豆をセットで販売できるというわけです。
同じように他の農薬メーカーでも、除草剤耐性のナタネ、トウモロコシを開発しています。
(殺虫性)
文字通り、虫を殺す植物にしてしまうことです。植物のすべての細胞に、昆虫を殺す毒素(タンパク質)を作り出させ、
葉や根や茎など植物体を昆虫が食べると死んでしまいます。そこで、殺虫剤などがいらなくなるというふれこみです。
ジャガイモやトウモロコシ、ワタなどに応用されています。
公的には、「害虫抵抗性」と表現されますが、そんなにやさしいものではないので、「殺虫性」という表現にしました。
また、除草剤耐性と殺虫性のふたつの遺伝子を組み込んだ複合的な遺伝子組み換え作物も開発されています。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
遺伝子組み換え食品の問題点(古い)
●遺伝子組み換え食品の問題点
●安全性の確認があいまい
遺伝子組み換え食品を流通させるときに、厚生省の安全性評価指針(ガイドライン)に適合しているかどうかを、メーカーが「確認申請」
します。この申請をもとに、食品衛生調査会で確認をするのですが、このときの「確認」とは、メーカー側が出してきた資料をチェックするだけです。
しかも、「実質的同等性」といって、遺伝子組み換えをした作物、たとえば大豆が、大豆の形や栄養成分のままなら、「実質的に同等」だから、
チェックする必要があるのは、組み込んだ遺伝子がつくるタンパク質などについてだけでよいという方針なのです。
虫が食べると死ぬトウモロコシと、虫が食べても死なないトウモロコシが「実質的に同等」だから、問題ないというのはとても不思議なことです。
これによって、食品添加物の承認時に必要な安全性試験さえも行なわれません。
●アレルギーの不安
除草剤耐性や殺虫性は、その性質を持つタンパク質によって生まれます。つまり、遺伝子組み換え作物には、
これまで人間が食べたことのない新しいタンパク質が入っています。
急性毒性の試験や、人工胃液による消化試験はされていますが、長期的な試験や人体試験はもちろん行なわれていません。
アレルギーの可能性を指摘する声があります。また、長期的に食べ続けた結果、人体にどのような影響があるのかは分かっていません。
●未知の有害物質の可能性も
遺伝子組み換え技術は、とても歴史が浅く、まだよく分かっていない部分もたくさんあります。まったく種が違う生物の遺伝子が、 遺伝子上のどこに組み換えられたのかすら分かりません。だから、その作物に予測のつかない物質ができる可能性もあります。
1988年から89年にかけて主にアメリカで起こった大規模な食品公害事件は、
昭和電工が遺伝子組み換え技術で改造したバクテリアに作らせたトリプトファン(アミノ酸)製品を食べたことで、
死者38人を含む推定6000人が健康被害を受けました。これは、
遺伝子組み換えによって発生した未知の不純物によるものではないかという指摘があります。
また、同じ理由から、作物に含まれる栄養成分が変化される恐れも指摘されています。
●抗生物質耐性遺伝子
遺伝子組み換えでは、組み換えが成功したものを選び出すための目印として抗生物質耐性遺伝子など
(最近は除草剤耐性遺伝子も使われることもあります)が一緒に組み込まれています。抗生物質の液にさらすと、
遺伝子組み換えがうまくいかなかった細胞は死んでしまいますが、組み換えがうまくいっている細胞は、抗生物質耐性遺伝子も入っているので、
抗生物質が効かずに生き残るから、選び出せるのです。
遺伝子組み換え作物に組み込まれた抗生物質耐性遺伝子が、腸内の細菌に取り込まれて、抗生物質が効かなくなるという可能性もあります。
この点の安全性は、確かめられていません。
●環境や生態系にあたえる影響
殺虫性の作物を食べた昆虫が死ぬことは、その昆虫を含めた生態系に影響が起きます。昆虫をエサとする他の昆虫や、
鳥はエサがなくなります。また、昆虫以外にも影響が出るという研究報告もあり、遺伝子組み換えによる環境への影響が心配されています。
除草剤耐性大豆の隣に植えたふつうの大豆が花粉を通じて交配し、ふつうの大豆も遺伝子組み換えになってしまうことや、
近縁の草などに除草剤耐性が生まれてしまうことも考えられます。
遺伝子組み換えが、他の化学物質などと違うのは、遺伝子組み換えされた作物が一度自然環境中に出てしまうと自己増殖するため、
もし何か問題があっても完全に回収することは不可能ということです。組み換え植物は、他の植物と同様に野生化しますし、
花粉は近縁種と交配することがあります。さらに、組み換え遺伝子が、ウイルスなどによって取り込まれることなど、
長期的に自然界に与える影響ははかり知れません。
●家畜に与える影響
トウモロコシや大豆(カス)などは、家畜のエサとして利用されます。家畜は、 人間と違ってトウモロコシを多量に食べさせられたりしますので、遺伝子組み換えの影響は人間よりも大きいと考えられます。また、肉や牛乳、 卵に影響がでるのかどうかも分かっていません。
●分別されていません
遺伝子組み換え作物と、ふつうの作物は見た目では区別がつきません。タンパク質や遺伝子を分析してはじめて分かります。ただ、
種子メーカーが、生産者にきちんと種子使用料を徴収するために栽培される畑ははっきりと区別されています。ところが、
いざ収穫して流通される段階になると、ほとんどの組み換え作物とふつうの作物は混ぜられ、分別されません。
※その後、分別して流通、販売する大豆、トウモロコシなどが出回りました。
●表示がされません
日本では、現在、遺伝子組み換え作物はふつうの作物と
「実質的同等性」があるとして表示されていません。どんなに不安があっても、表示されないために、遺伝子組み換え食品は、
知らず知らずのうちに食卓や学校給食に使われています。
※その後、表示制度がはじまりました。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
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表示制度について(古い)
●表示はどうなるの?
初出記事が古いため、情報が現状と合わなくなっていることがあります。
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●海外の動き
遺伝子組み換え食品についての表示は、EU(ヨーロッパ連合)が「遺伝子組み換え原料を含む」という表示を義務づけています。アメリカ、
カナダなどは、栄養成分が違ったり、アレルゲンが存在する場合のみ表示することになっており、また、アメリカでは「遺伝子組み換えではない」
という表示をする場合には、あわせて「遺伝子組み換えをした食品と比べて安全というわけではない」という表示を求められています。
現在、世界的な食品基準などを定めるコーディックス委員会でも、遺伝子組み換え食品の表示議論が行なわれていますが、
アメリカなどとEUとの間で、表示の必要性に対して意見が分かれています。
●日本の動き
日本では、食品の表示については、「食品衛生法」(厚生省)、「JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)」
(農水省)があります。
厚生省は、国が安全と認めたものに表示義務づけすることはできないとしています。
農水省は、食品表示問題懇談会で表示の必要性の有無から議論しています。
8月27日に開かれた第11回の懇談会では、事務局から表示案のたたき台が2案出され、10月9日まで一般からも意見募集をしていました。
最終的に、表示必要、不要を含めた意見は1万を超えているそうです。今後、このたたき台について議論される予定です。
この他、97年の12月に、設置されていた衆議院の消費者問題特別委員会遺伝子組み換え食品の表示を考える小委員会が「表示は必要」
という意見をとりまとめて親委員会に提出しています。厚生省も、食品衛生調査会総会で表示問題特別部会の設置を決め、
遺伝子組み換えに限りませんが、食品表示全体を見直す動きを見せています。
●市民の動き
遺伝子組み換え食品の表示を求める署名数は、これまでに、厚生大臣あてで120万人以上、
農水大臣あてで100万人以上が出されています。また、地方議会からの意見書は、厚生大臣あてに1100通以上、
農水大臣あてに1000通近くが提出されています。
地方議会数は総数3300ですので、この数はかつてないほど多いものです。
国会での請願署名は関連委員会のいずれも採択できませんでした。
しかし、この数の重みからか、農水省、厚生省が当初見せていた表示は不要という強気の発言が徐々にかわりはじめています。
さらに、市民の声を大きくすることが、適正な表示をもたらす原動力になることは間違いありません。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
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学校給食での遺伝子組み換え
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●もう、学校給食に使われています
今のところ、遺伝子組み換え作物を生産しているのは海外だけです。日本では、トマト、大豆、ナタネが、生産可能な状態になっています。
しかし、実際の作付けは行なわれていません。
輸入されてくる遺伝子組み換え作物は、大豆、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、ワタです。
これらがどのような食品になるのかを見てみましょう。
※トマトは日本では生産可能ではなくなりました。また、
遺伝子組み換え作物は国内では商業生産されていません(2005年12月現在)
★大豆…
日本の自給率は、わずかに3%程度です。大豆は、白目と黒目があり、遺伝子組み換えされているのは今のところ黒目大豆だけ。アメリカでは、
今年作付けされた大豆の約40%が遺伝子組み換えのものだといいます。
黒目大豆は、主に大豆油、醤油、豆腐に使われます。味噌は、一般に白目大豆を使うことが多く、
遺伝子組み換え大豆を使用していない可能性が高い大豆加工品ですが、黒目大豆が使えないということではないので注意は必要です。
もちろん、大豆油を使う加工食品やマーガリン、マヨネーズなどの製品、大豆タンパク、大豆レシチン、きなこなど、
大豆を利用する加工食品はたくさんあります。
★トウモロコシ…
トウモロコシには、様々な品種があります。その中でも今のところ遺伝子組み換えされているのは生食用ではない品種です。ちなみに、
日本では生食用は自給率が高く、加工用はほぼ100%輸入に頼っています。
その多くは家畜飼料として使われますが、食用にもなります。トウモロコシでんぷんのコーンスターチ、コーンフレークや、コーングリッツ、
コーン油などとして加工され、さらに、スナック菓子や、安価なラクトアイスなど、いろいろな加工食品に入っています。
子どもとは直接関係ありませんが、日本のビールにはコーン・スターチ入りの銘柄がいくつもあります。
★ナタネ…
今の日本ではほとんど栽培されていないナタネ。もちろん、ほぼ100%
が輸入です。97年度でカナダのナタネ作付け中3分の1が遺伝子組み換え作物だということです。
主にナタネ油として使われます。マヨネーズや揚げ油、サラダ油として使われています。そのため、加工食品にも多く含まれます。
★ジャガイモ…
日本の植物防疫法によって、ジャガイモがかかる特定の病気が発生している地域からは生のジャガイモを輸入することが認められていません。
そのため、アメリカなどから生のジャガイモが輸入されてくることは、今のところありません。
そのため、遺伝子組み換え作物が混入したジャガイモは、冷凍したり、フライドポテトに加工して輸入されます。
ジャガイモもまた、フライドポテトやコロッケをはじめ、加工食品として広く使われています。
※遺伝子組み換えのジャガイモは海外でもほとんど生産されなくなりました。
(2005年12月現在)
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
これからでも遅くない~取り組めること
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・地域の対応を調べる
地域の子どもたちが食べている学校給食の現状はどうなっているでしょうか。教育委員会などで調べることはできます。また、
調理現場で調べることもできます。
遺伝子組み換え作物を原料としているかどうか、調べることが第一歩です。
先にご紹介した安全食品連絡会のような方法や、地域で活動している川越の例のように、方法はいくらでもあります。
・仲間を増やし、議会に要請を
すでに全国の3分の1の自治体が、表示を求める請願を国に対し出しています。そこで、地方自治体に対して、
学校給食での遺伝子組み換え原料不使用を意見書採択するよう働きかけることは次の一歩としての運動にもなります。
・国産をめざそう
今のところ、遺伝子組み換え作物はすべて輸入で、それを国内で加工して利用されています。つまり、今ならば国産原料を使うことが、
そのまま遺伝子組み換え食品を使わないことになります。
この点から、地場型学校給食を取り入れることは理想的な対応です。地域の生産者と運動の輪を広げることもできます。
今のところ安心な国産農作物ですが、すでに組み換えされたトマト、大豆、ナタネは種子が販売されれば栽培が可能になっています。
今のところ種子メーカーは様子を見ているというところです。メーカー、生産者に働きかけて、国内での生産を阻止する運動が必要です。
・表示を求めよう
安全食品連絡会の調査からも、表示がないから調べられない、という声が多く出されています。
現在の農水省表示案などでは、タンパク質や遺伝子の違いが最終製品に残るかどうかで「表示する」「表示しない」
を区別するという方向性が出されています。しかし、私たちが知りたいのは、遺伝子組み換え原料を使っているのか、不使用かということです。
そのためには、まず、生産地である輸出国が分別することと、国内に上げる水際で検査を行なう体制を整えることが必要です。
私たちが望む表示になるよう運動を広げましょう。
また、川越の例をとるまでもなく、加工食品については、なかなか調べるのが難しいため、
学校給食ではできるだけ調理済み食品などを使わない取り組みをすすめることも必要です。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
安全食品連絡会が行なったアンケート
安全食品連絡会(兵庫県伊丹市)は、97年に遺伝子組み換え食品の学校給食での利用状況を教育委員会に対しアンケート調査しています。 以下、このアンケート結果報告をご紹介します。
「学校給食と遺伝子組み換え食品に関する 教育委員会へのアンケート結果報告」
1997年11月30日
主旨:安全性に疑問の多い遺伝子組み換え食品が、表示もされずに、私たちが知らずに食べさせられていることについて強い懸念をもっている。
とくに、成長期の子どもたちの口に入ることの影響は大きい。そこで、学校給食における遺伝子組み換え食品の利用状況を兵庫県、大阪府、
和歌山県の市町の教育委員会宛にアンケートをとり、今後の対策を考えることとした。
実施期間:1997年10月29日~11月13日
対象:兵庫県下59市町、大阪府下44全市町、
和歌山県下2市、合計105市町
回収:兵庫県=9市+7町(16市町)、
大阪府=9市+3町(12市町)、
和歌山県=2市、
なお、東大阪市は回答しないとの連絡があり、意見のみ記載。計30市町(回収率29%)
内容:
1 貴市では遺伝子組み換え食品について関心をもっておられますか。
もっている=26(87%)、もっていない=3(10%)、
もっているといないの中程=1(13%)
2 遺伝子組み換え作物、食品について安全だと思っておられますか。
思っている=0、思っていない=4(13%)、
疑わしい=8(27%)、わからない=17(57%)
3 貴市の学校給食の食材の中に遺伝子組み換え
食品が入っていますか
はい=0、いいえ=4(13%)、わからない=26(87%)
4 学校給食から遺伝子組み換え食品を取り除くことは可能ですか(複数回答あり)
可能=2(6%)、一部可能=5(15%)、むずかしい=20(61%)、無回答=6(18%)
理由 可能…その旨の表示があれば。
一部可能…単品のトマト、ジャガイモ、トウモロ
コシは避けることができるが、大豆、
ナタネ油等は難しい。
むずかしい…表示の明示がされていないから。
5 遺伝子組み換え作物・食品にその旨の表示が必要と思われますか
思う=27(90%)、思わない=0、分からない=0、無回答=3(10%)
理由 使用する、しないの選択を可能にする。
表示されれば取り除くことは可能。
6 意見、希望など
◆情報を流してほしい。◆安全性が確保できるかが心配。◆安全性が十分確認されていなければ、消費者の選択可能なように表示してほしい。
◆早急に表示義務づけが必要。◆使用したくない者にとっては無視される行為。◆物資納入業者に使用しないよう要請する(守口市)。◆まだ、
研究段階の遺伝子組み換え作物は、環境への影響や人体への安全性がきっちり把握されていないと思う。◆自然にさからい、
利益ばかりを追う農業のやり方に疑問とこわさを感じる。
考察
1 遺伝子組み換え食品に「関心をもっている」の回答が84%と多かったが、「関心をもっていない」が3市町もあったのは残念である。
2 安全性についての考え方は「わからない」が54%もあり、「疑わしい」と「安全とは思っていない」を合わせた46%を上回った。
もっと自主的に学習していただきたい。
3 遺伝子組み換えの食品が入っているかどうかの質問には「わからない」が87%もあった。調査、情報収集の努力が不足しているように思う。
「入っていない」と答えた3市町は無責任すぎる。
4 学校給食から遺伝子組み換え食品を除きたくても、表示がないので不可能との回答が多かった。「物資納入業者に使用しないように要請する」
と答えた守口市を習ってほしい。
5 組み換え作物・食品の表示については、88%の市町が必要との回答であった。
6 民間団体には回答しないという市(西宮市)があり、公僕意識が薄く、お上意識が強すぎる。
市民と行政と共に考えて学校給食をより安全なものにしたいと思っているのに残念である。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
埼玉県川越市の例
遺伝子組み換え食品を考える市民の会によると、
97年4月に教育委員会に対し遺伝子組み換え食材を学校給食に使わないで欲しいという要請をしたところ、その時点ですでに豆腐については、
分別証明書を取り寄せて変更していました。栄養士などからの働きかけもあり、平成10年度には、
遺伝子組み換え食品としての疑いがある食材に対してはそれぞれ対応しています。
具体的には、平成10年6月現在で、
豆腐…納入業者より遺伝子組み換え大豆を使用していないという証明書を提出。
味噌…同上。
醤油…組み換え大豆が混入する可能性があるため、平成10年度2学期より組み換えをしていない大豆を原料とした醤油に移行。
きなこ…平成10年度から国内産の大豆を原料としたものを使用。
ナタネ油…平成10年6月から遺伝子組み換え原料ではないという証明書が提出されたものを使用。なお、
ノルマルヘキサンを使用しない圧搾方式で絞った油。
冷凍カットポテト…平成10年より国内産のものを使用。
でんぷん…以前から国内産。
冷凍ホールコーン…平成10年度から納入業者より遺伝子組み換えではないという証明書を提出させた。
クリームコーン缶…組み換えではないという証明書を提出。以前から使用しているもの。
ホールコーン缶…同上。
肉・牛乳…飼料の中に遺伝子組み換え作物が入っている可能性があり、証明書を提出させることが困難な状況である。調査を依頼中。
液卵…国内産(茨城県、大阪府)の卵を使用しているが、飼料の中に組み換え作物が入っている可能性があり、証明書を提出させることが困難な状況。
調査を依頼中。
冷凍食品など…遺伝子組み換え食品を使用していないという証明書を提出させることが困難な状況である。としています。
さらに、川越市教育委員会は、8月18日現在で、遺伝子組み換え食品に関する規格並びにメーカー指定の変更についてという書面の中で、
コーン缶、トマトケチャップ、ピューレ、油、味噌、醤油、大豆煮豆、ボイル大豆、冷凍コーンについて、「遺伝子組み換え原料を使用しない」
という規格を入れています。チルドスライスポテトについては、国内産指定をしています。
遺伝子組み換え食品を考える市民の会、名和雪子さんによると、「川越市は、小中学校ともにセンターなので、
加工食品の利用がどうしても多くなります。この加工食品の原料についてまでは今のところ対処ができていません。栄養士さんはがんばっていますが、
これは、川越市学校給食のシステム的な限界です。本当に遺伝子組み換え食品を学校給食から完全に排除するためには、
センターを自校方式にあらためるなど、給食システムを変えるしかありません。遺伝子組み換え食品問題は、
学校給食のあり方そのものも問いかけています」と話していました。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
各地の事例
各地の事例
神奈川県座間市…給食での不使用を盛り込んだ意見書採択(97年6月)
神奈川県藤沢市…教育長が給食食材納入業者への不使用通知(97年6月)、コーンスターチ、大豆製品、大豆油を切り替え。
神奈川県大和市…米ぬか油に切り替え、醤油を有機大豆産に、豆腐、味噌は業者に確認。
山梨県甲府市…大豆油から米ぬか油に。豆腐、味噌、醤油は切り替え。
東京都町田市…市議会で学校給食での不使用を盛り込んだ請願採択(97年9月)。
東京都日野市…市議会で学校給食には可能な限り使用しない方針の請願採択(97年12月)
東京都練馬区…区議会文教委員会で給食に組み換え不使用の請願採択。
東京都世田谷区…教育委員会が納入業者に使用の有無について情報提供を求めた。
奈良県橿原市…市議会で学校給食での不使用を盛り込んだ国への意見書採択(97年3月)
また、自校式の学校などでは、 栄養士の裁量で遺伝子組み換え作物ではない原料や国産の原料に切り替えるなどの取り組みが行なわれています。
(学校給食ニュース7号 1998年11月)
[ 98/12/31 遺伝子組み換え ]
時事情報1998 地場型を中心に
●群馬県が県産品使用拡大への取り組み
群馬県の調査によると、学校給食(保育園、幼稚園含む)の県産農産物取り扱いは、豚肉、牛肉、卵では7割を上回っていたが、
農産物ではすべて5割を下回り、特に、野菜、果物、芋類はとても低いことが分かった。原因として、「流通ルートが分からない」という声が多く、
県、生産者、JA、流通業者が一体となって流通の確立を行なうための研究を本格化するという。(上毛新聞 3月30日)
(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●高知県春野町の農家女性グループ
高知県春野町では、専業農家の女性グループが、地元の栄養士とともに地場産農産物を学校給食に使用する取組みをすすめている。
給食に使う野菜の種類、量を調べ、地域で提供可能な種類、量を検討し、現在では月に平均6回ほど学校給食に使用している。
地場産米飯の取り扱いや児童の農業体験、高齢者と連動して自家菜園野菜を学校給食に使うなど多彩な取組みを検討、実行している。
(日本農業新聞4月24日)(学校給食ニュース3号 1998年6月)
●福岡県が県産米使用
福岡県は、米飯給食を実施している県内すべての小中学校に県産米を導入し、60kgあたり500円の奨励金を交付して普及を図っている。
品種は県が育成した「夢つくし」で、使用予定量は3,800トン、対象児童生徒数は409,443名。(流通サービス新聞4月14日)
(学校給食ニュース3号 1998年6月)
●地場産給食
5月14日付け日本農業新聞によると、高知県大豊町は、町内産アイガモ農法米を全小中学校の給食に採用。週3回の米飯給食とは別に月2回実施。
本年度は補助金がつかず、3倍程度の仕入れ値になりますが、環境保全など教育を目的に導入を決定したとのこと。地場産米を使用するだけでなく、
その栽培方法まで考えての導入ですので、教材としての価値も高いと考えられます。(学校給食ニュース4号 1998年7月)
●日本一の学校給食をめざして
6月14日付け南日本新聞によると、鹿児島県肝付郡高山町で、子どもたちに日本一の学校給食を食べさせようという運動が始まっている。
小学校6校、中学校4校の800食を、自校方式及び親子方式からひとつのセンター方式に切り替える議論の中で、
結果的にはセンター方式への移行が決まったが、同時に食材を可能な限り町内で入手することと、野菜などを地元農家と契約して有機栽培にすること、
教材として活かすことなどが決められた。その結果、町ぐるみで給食についての関心が高まり、将来は「学校給食ブランド」
を売り出し町おこしをしようという話も出ている。(学校給食ニュース5号 1998年9月)
●和光市の地場型学校給食
7月30日付日本農業新聞によると、埼玉県和光市では1990年より市内の小中学校全11校(約5500名)に対して、
学校給食で地場のジャガイモ、タマネギ、ほうれん草など年間15種類を使用している。農家26戸で構成する農産物直売組合と市の担当者、
栄養士が年に1回出荷調整を行い、月ごとに各栄養士が発注する方式。使用比率は給食野菜の1割程度。児童の農業体験など交流も深まっている。
記事の中で、問題点として同じ規格の野菜をそろえる難しさが指摘されていました。給食の調理現場と、野菜の生産現場がより交流を深め、
規格のあり方などを検討することで農薬の削減もはかれ、教育教材としての力も高まります。このような取組みが持続、
拡大されるようがんばりましょう。(学校給食ニュース5号 1998年9月)
●98年産政府米は学校給食のみ
11月10日付の日本農業新聞によれば、食糧庁は、98年産の政府米を来年1月から学校給食用としてのみ販売することを決定した。
97年産米は一般消費者向け「たくわえくん」限定とし、在庫となっている96年産米以前を業務用にする方針。
食糧庁が販売時に用途を限定するのははじめて。(学校給食ニュース8号 1998年12月)
●鹿児島県は県内産米を全量導入
10月27日付の南日本新聞によると、鹿児島県は来年度から県内の米飯給食実施校888校(小・中・高)
全校で使用する米を従来の政府米から県内産自主流通米に切り替えることを決定した。政府米の位置づけが「備蓄運用」性格のものとなり、
安定供給がはかれないこと、値引き措置が2000年度以降廃止される予定であることなどを受けて、JA、食糧事務所、県、
県学校給食会が協議した結果。県産「かりの舞」の新米をJA県経済連が県学校給食会に供給するとしている。価格は日本体育・
学校健康センターが提示する政府米価格に合わせるという。
県内農業振興などの側面が強調されているが、地元の米を給食に使うことは教材として大きな意味があり、食や農業、
地域環境の面で教育への活用が望まれる。(学校給食ニュース8号 1998年12月)
●北海道江別市は市内産減農薬米使用
11月10日付の日本農業新聞によると、北海道江別市では、市内28校の小中学校で来年度より米飯給食用の米を地元産減農薬米「ほしのゆめ」
に切り替えることとした。政府米助成がうち切られたことを受けての対応。自主流通米より割高になるが、その増分は市と地元のJAが負担する。
(学校給食ニュース8号 1998年12月)
●郷土食~マツタケご飯
10月19日の信濃毎日新聞コラム「斜面」では、長野県下伊那郡豊丘村の小中学校3校、870人に対し、
毎年郷土食としてマツタケご飯が出ていることを紹介。17kg、
約20万円のマツタケを学校給食で食べさせることができるのは産地だからであるが、このことにより、「一生“マツタケの村”
の誇りを持ち続けるだろう」とし、学校給食で地元産のものを使うことで地域の産業や人々、郷土に目を向けさせ、
地域に根ざした教育ができることを指摘している。(学校給食ニュース8号 1998年12月)
●埼玉県、地場産米に全量切りかえ
98年12月2日付の日本農業新聞によると、埼玉県学校給食会は、12月より公立小中学校の給食に使う米を全量、
埼玉県産の自主流通米に切りかえた。品種は、コシヒカリと朝の光。従来、地域ごとに地場産米を使用しており、
地場産米比率は6割程度だったという。さらに、99年4月から埼玉県産小麦を使ったうどんの供給を開始するという。今後、
野菜の供給も予定される。(学校給食ニュース9号 1999年2月)
●山梨県上野原町で、地場野菜供給
98年11月29日付の日本農業新聞によると、山梨県上野原町では、地元の農家グループ16人が「JA上野原町地元農産物販売推進部会」
をつくり、上野原小学校に毎日850食分の野菜を供給している。野菜は15種類ほどで、低農薬、有機肥料での栽培。
(学校給食ニュース9号 1999年2月)
[ 98/12/31 地場産・産直 ]
時事情報 1998年 環境関係ほか
●日量100kgを堆肥化
99年1月18日付の静岡新聞によると、静岡県田方郡韮山町の学校給食センターでは、
これまで生ごみとして焼却処分してきた給食の残さいを隣接する残飯処理施設で堆肥化する取り組みをはじめた。3小学校、
4幼稚園分の1,500食を作っているセンターでは、毎日70kg~100kgの残食と野菜くずが出るという。処理システムでは、
12時間の乾燥と3週間の発酵をへて堆肥化される。学校の花壇などの他、活用方法については課題としている。
(学校給食ニュース9号 1999年2月)
●堆肥化から野菜生産まで
98年11月20日付の産経新聞によると、東京都府中市では、99年4月から、生ごみを堆肥化し、地元農協が購入して野菜生産を行ない、
地域に野菜を供給する事業を開始する。給食センター、自校方式調理場4校、保育所15カ所の生ごみを、山梨県の業者が収集し、堆肥化、
府中市の農協などが堆肥を買い取り、野菜生産し、地元産野菜として学校給食などに活用するという。年間の総排出量が369トン(97年度実績)
あり、コスト削減にもなるため、今後拡大の方針。(学校給食ニュース9号 1999年2月)
●日野市が水田を守る政策
9月17日付け朝日新聞によると、東京都日野市は、
2000年度より市内の農家が生産する米の約半量にあたる20トンを毎年買い入れることにした。災害時の備蓄や学校給食用として利用する予定。
市内の稲作がこれ以上減少すると、水田と農業用水が荒廃し、市の緑が失われるために実施を決めた。なお、日野市は、
自然環境を保全するなどの目的で農業基本条例を定めている。(学校給食ニュース7号 1998年11月)
●残食利用の養豚
10月6日付け山形新聞によると、山形県鶴岡市では、学校給食の残食・魚市場のあらなどを利用して養豚飼料とし、
豚を肥育して市の学校給食センターで豚肉として使用するリサイクルシステムの実証試験を開始した。リサイクル事業の一環として、市が「エコ・
ピッグシステム計画」を構築、山形大学農学部に研究委託していたが、さる10月15日、16日に学校給食に初登場。市では、
来年以降の具体的な商品化などについて今後検討する。(学校給食ニュース7号 1998年11月)
●学校の生ゴミを堆肥販売
10月13日付け東京新聞によると、東京都豊島区では、
区内小中学校や区庁舎などから出る大量の生ゴミを肥料会社で成分調整した上で有機肥料として区内での販売を開始した。
区のオリジナル商品として区内循環をめざす。(学校給食ニュース7号 1998年11月)
●学校での塩ビ不使用努力要請採択
6月18日付け読売新聞などによると、東京都北区議会は、
6月17日の本議会で学校など公共施設が塩化ビニール製品を使わないようにするよう区に対し努力を求めた陳情を採択した。
政府に対して塩ビ製品の生産や使用抑制に関する意見書の採択は、多くの自治体で行われているが、自治体に対しての陳情採択は全国ではじめて。
このような動きが全国に広がるよう、環境ホルモンと合わせて運動を作っていきましょう。(学校給食ニュース5号 1998年9月)
●鹿児島県のゴミ焼却対策
6月6日付け南日本新聞によると、鹿児島県内96市町村のうち、61市町村の公立学校で学校でのゴミ焼却を中止しており、
対策をはじめているのが11市町村、24市町村が学校でのゴミ焼却を継続するということが県教委の調査で分かった。県教委では、
97年9月に公立学校での原則焼却中止を通知しており、県立学校90校は98年4月で焼却を中止している。
(学校給食ニュース5号 1998年9月)
●配送車に天然ガス車導入
大阪府泉佐野市の泉南陸運事業協同組合は市内の小学校・幼稚園への給食配送用に天然ガス車7台を導入し、新学期より運行をはじめた。
環境保護の視点から。(流通サービス新聞4月24日)(学校給食ニュース3号 1998年6月)
●学校焼却炉の使用取りやめ
福岡県北九州市では4月1日に市教委が焼却炉の廃止を打ち出した。これに先立ち、西小倉小学校では昨年夏に自主的に焼却炉を廃止し、
紙のリサイクルに取り組んでいる。(西日本新聞4月14日)(学校給食ニュース3号 1998年6月)
●生ごみ発酵処理機普及拡大へ
世界遺産に指定されている屋久島でも、焼却炉の代替として学校給食調理場に生ごみ発酵処理機が導入された。また、メーカーのひとつでは、
自治体と連動して住宅地に処理機を設置し、各家庭から設置場所(ごみ集合場所)に持参し、直接処分する実験もはじまった。
(日刊工業新聞 3月24日)(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●東京都羽村市で、紙パックから瓶牛乳に
「羽村の学校給食を考える会」では、牛乳の紙パックを瓶にかえるよう一昨年に運動を開始、12月に市議会で誓願が採択され、
この新年度より瓶牛乳となった。(朝日新聞 4月2日)(学校給食ニュース2号 1998年5月)
●たい肥を野菜にして給食利用
東京都北区では、96年度までに全小中学校に生ゴミ処理機を導入、できたたい肥を群馬県甘楽町の有機農業研究会が使用し、
さらにその野菜を一部北区の学校給食に取り入れている。ゴミの分別や食べ残しの減少、理科の授業への応用などの効果を上げている。なお、
甘楽町と北区は姉妹都市として、交流を深めている。(読売新聞 2月23日、日本農業新聞 3月1日)(学校給食ニュース1号 1998年4月)
●使い切れずに有料回収
東京都台東区では、小中学校4校に導入しているが、たい肥を利用しきれずに業者に有料で引き取ってもらっている。そのため、
微生物により分解して下水に流す消滅型の導入を検討。文京区でも同様に98年度から消滅型を導入するという。(東京新聞 2月28日)
(学校給食ニュース1号 1998年4月)
[ 98/12/31 環境関係 ]
学校給食が与える影響の大きさ
はじめに
現在の学校給食は福祉ではなく教育として行われています。1954年に制定された『学校給食法』の第2条(目的)
は次のように学校給食のあるべき姿を示しています。
第2条 学校給食については、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
一、日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと。
二、学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと。
三、食生活の合理化、栄養の改善及び健康の増進を図ること。
四、食糧の生産、配分及び消費について、正しい理解に導くこと。
学校給食の目的がはっきり示されているにも関わらず、学校の現場、学校給食の予算などを決定する行政、そして地域で、学校給食は「雑務」
「単なる子どもの昼食」「予算削減対象」と捉えられがちです。
一方、日本人の食生活を考えると、高度成長期後、「飽食の時代」と言われ、摂取カロリーは増えましたが、かつて成人病と言われた「生活習慣病」
の若年齢化やアレルギー・アトピーの増加、子どもたちの問題行動などが指摘されています。
今、小学校・中学校に通う子どもたちの親は、すでに戦後、高度成長期の学校給食を経験した層であり、子どもたちは戦後の学校給食第2、
第3世代です。
現在の食のあり方に対し、学校給食はどのような影響を与えてきたのか、また、食のあり方が移り変わる中で、 学校給食はどのように移り変わってきたのか。そして、学校給食には、どのような可能性があるでしょうか。
●学校給食が与える影響の大きさ
98年の8月に開かれた「98夏期学校給食学習会」において、農林中金総合研究所の根岸久子さんに『食の嗜好と学校給食』
と題してお話しいただきました。農林中金総合研究所は、1980年と1989年の2回にわたって、学校給食に関する総合的な調査・研究を行ない、
学校給食のもつ社会的な可能性などを提言しています。
ここでは、この調査レポートをもとにして、学校給食が子どもたちの食などに及ぼす影響についてまとめます。
学校給食第二、第三世代へ
今年の人口統計をもとに大まかな推計をすると、戦後の学校給食を受けた、または、受けている数は、全人口の7割を超すほどになります。
また、高度成長期以降の学校給食、とりわけ1976年以後の米飯給食を体験した層でさえ、早くも30歳代となっており、その子どもたちが第2、
第3世代として学校給食の体験をしています。
学校給食がその後の食生活に大きな影響を与えることは、これまであちこちで指摘されていましたが、
その実証はほとんど行なわれたことがありません。農林中金総合研究所の調査は、母親と子ども、学校栄養職員に対して同時に調査することで、
学校給食が想像以上にその後の食生活に大きな影響を与え、国内の農業や外食産業とも関わっていることを明らかにしています。
<家庭と学校給食>
89年の調査を報告するレポートのひとつ『NORICレポート』90.7.26 では、「ゆれうごく母と子の食生活-
学校給食のつよいインパクト-」と題して、学校給食が家庭の食生活に与えている影響を分析しています。
それによれば、「母親たちの62%は、学校給食によって自分自身の成人後の食生活が影響を受けたと考えており、また、90%
がわが子の食生活に学校給食が影響を与えていると回答」しています。
学校給食で覚えたり、好きになった献立を親が家庭で料理したり、子どもが親に対しその料理を求めていることがはっきりしています。また、
学校給食の献立表が、家庭の調理に影響を与えていることもこの調査から明らかになりました。
親の世代が高度成長経済期以降の給食経験層であるため、親と子どもの食に対する嗜好が近づいていることも調査から分かりました。つまり、
若い親の世代ほど、子どもと同じ食嗜好になっており、好きなもの嫌いなものが親子で同じになる傾向が強いということです。
<主食のあり方の移り変わり>
学校給食に米飯給食が導入されたのは1976年のことです。戦後の学校給食はパン給食であり、米飯給食導入後も、
現在にいたってようやく米飯回数がパン回数を上回るようになったところです。
戦後の食糧不足の中で、1950年、アメリカのガリオア資金による小麦の無償配給にはじまった完全給食は、翌年、
ガリオア資金がうち切られたにもかかわらず、一貫してパン給食の道をたどりました。このことが、日本の食生活を大きく変貌させ、
米飯中心の食事からパンが占める割合を高めるにいたったことは、よく指摘されています。
調査からも、朝食には親子ともパンの比率が高くなっており、また、親の昼食としてめん類の比率も高く、ご飯(米)
の比率が下がっていることが分かっています。
さらに、めん類のように単品型の食事を好む傾向にあります。
<外食産業と学校給食>
親子の食の嗜好の一致、および、学校給食で好きな献立と外食でよく食べるメニューとの共通性も調査から浮かび上がっています。
家庭内、学校給食、外食と食のあらゆる面で、食への嗜好が狭い範囲で固定化しているようです。
児童期から青年期の食の訓練が、その後の食行動に大きな影響を与えるものだということを、この調査は裏付けています。さらに、
個々の食品に対する好き嫌い、味付けの濃淡、調味料の選択、献立の組み合わせ、マナー、食器具の選択や使い方、
並べ方などについての影響が大きいことが調査の結果分かっています。また、時々議論にのぼるような、「学校給食は年間190食程度であり、
年間の食事の6分の1に過ぎないのだから、影響はさほどでもない」という論に対しては、学校給食のもつ心理的な影響が強いことを示し、
否定しています。
<学校給食がもたらすもの>
学校給食はその後の食生活に大きく影響を与え、家庭内の食などにも大きく影響します。と同時に、
学校給食もまた社会情勢によって大きく影響されます。魚の煮物などで残食が増える現実の前に、子どもにとって食べやすい給食と、
食べさせたい給食との間に揺れる学校給食現場の苦悩は近年ますます深まっています。
しかし、学校給食が、結果的に日本の主食に米に並んで「パン」をもたらし、ひとつの要因として、日本の農業構造にまで影響を与えていることは、
学校給食の本質的な問題点を示します。学校給食のあり方ひとつで、地域の農業や地域文化そのものにまで影響を与える可能性があります。なにより、
子どもたちにとって、学校給食を通して学ぶものはとても印象深く大きなものであることは間違いありません。
食教育の視点から見れば、学校給食は大きな可能性を持っているのです。
この調査をふまえ、調査者のひとりである荷見武敬氏は、次のように訴えています。
「給食のもつなによりも本質的な存在意義として、それが食=生活と農=生産をつなぐ一番身近な結び目として機能しているということである。
日々の給食の営みそのものが、校区圏という名の地域社会と地域農・漁業(その中核的担い手としての農・漁協)
とを結ぶ架け橋としての意味をもっているといえよう。前にもふれたように、少し長い目で見ると、学校給食は、私たちの食生活=食料消費構造と、
農・漁業生産(農・漁協事業)の在り方を結びつける出発点ともいえる。ここで最初のボタンをかけ違えれば、食と農、
地域社会と地域農業はスレ違ってしまい、とどのつまりには身土不二ならぬ身土バラバラという致命的欠陥を生み出す遠因になりかねない」(
『学校給食を考える』より)
(学校給食ニュース8号 1998年12月)
[ 98/12/31 食教育 ]
事例 中学校における栄養指導のあり方
●事例 中学校における栄養指導のあり方
98年10月31日、新宿区立早稲田小学校において、東京教組98教育研究集会分科会が開かれました。 食教育分科会で墨田区立鐘淵中学校での給食指導実証授業について、同校の栄養職員・新津環さんが発表されました。 ひとつの事例として発表をまとめます。
この給食指導の実証授業は、同校1年生向けに学級担任が栄養職員とともに立案したもので、学級担任の研究授業として行なわれました。
指導案でのテーマは、「豊かな食生活を目指して ~個と固と孤の改善~」であり、「単品しか食べない個食、固定化されたメニューによる固食、
一人で食べる孤食の傾向」を改善をすることが日々の給食の残菜などの問題解決や、食生活に対する意識向上につながるという視点がもたれました。
まず、生徒に対し事前に『朝食調査カード』が配られ、生徒の1週間の朝食の実態について調査しています。この結果を表にまとめ、
朝食を食べない生徒が10%以上いることや、栄養が偏っていることを生徒達に知らせます。
これをもとにして、授業は2時限にわけて行なわれ、それぞれに途中、栄養職員による指導が組まれました。
まず、孤食を実感するために、給食の時間に、ふつうは班で食事をするところを、あえて全員授業と同じように前向きに座らせ、
班での会食との違いを体験して生徒に意見を出させています。ここから、「一緒に食べる」ことが食欲や、
食事の楽しさにつながることを知ることができました。
また、写真を利用して、ひとりで食べている例、会食の例などの人の表情の違いを見せたり、栄養職員がグラフを利用して、
たとえば牛乳を半分残すことでどのくらいの栄養が摂取できないかなどを視覚的に理解させたりと工夫を凝らしています。
「中学校の給食は、小学校よりも5分~10分時間が短いという実態があります。時間がないというのもひとつの理由なのでしょうが、
誤ったダイエットの知識などから、中学生になると牛乳を残したり、ご飯を残す生徒が増えてきます。そこで、成長期の身体にとって必要な栄養が、
たとえば牛乳を半分飲まなくなるだけでどのくらい少なくなるのかを学んで欲しかったのです。この授業で生徒達が一番関心を持ったのも、
この点でした。知ることで、少しでも食べるようになるという実感はあります」と、新津さん。
小学校と違い、中学校の給食指導や食教育は難しいと言われます。
小学生のような集団指導が行ないにくいという側面や、学校自体が給食指導・食教育を軽視したり、
給食そのものを否定しがちな側面があるからです。
しかし、この研究事例に見られるように、適切な給食指導は、子どもたちの成長や食への関心に対し大きな意味を持つことは明らかです。
(学校給食ニュース8号 1998年12月)
[ 98/12/31 食教育 ]
事例 調理員の取り組み
●事例 調理員の取り組み
現状では栄養職員が配置されていない学校も多数あります。しかし、食教育は、栄養職員だけでなく、
学校と学校給食に関わるすべての人ができる可能性をもつものです。栄養職員が配置されていない学校で、調理員が食の大切さを考え、
取り組んでいる例があります。
福岡県立花町の北山小学校は、児童数200名弱、栄養職員は配置されておらず(町に1名のみ)、調理員2名(昨年までは3名、
米飯時のみ現在も3名)の自校式給食を行なっています。調理員の平島コトヱさんにお話を聞きました。
北山小学校では、昨年より調理員によって給食だよりを発行しています。また、職員会議にも参加しており、
栄養職員と連絡を取り合って情報をまとめ、クラス担任に指導を依頼したり、セレクト給食を企画・実施するなどの工夫を凝らしています。さらには、
時間外にPTA役員などの保護者へ学校で栽培した米や野菜を使って調理室で夕食を調理して、学校給食について懇談するなど、
学校給食のあり方や役割について積極的な活動を続けています。
平島さんは、「調理員もただ調理をするだけでなく、学校給食に関わる一員である以上、
学校給食を通して子どもたちや家庭に対してできることをすべき」と語っています。
平島さんたちが発行を続けている「給食だより」をいくつかご紹介します。


(学校給食ニュース8号 1998年12月)
[ 98/12/31 食教育 ]
事例 学校外での取り組み(試食会)
●事例 学校外での取り組み(試食会)
静岡県の富士市学校給食を考える会(代表・小櫛和子さん)は、長年、様々な学校給食に関する活動を続けています。今年の8月、 同回が主催の第10回、夏の調理試食会が開催されました。許可を得て、その報告書を一部抜粋の上転載します。
夏の調理試食会
日時…8月3日(月)午前10時より
場所…吉原公民館調理室
人数…30名
メニュー…ジャージャーメン(みそダレ、ゆでやさい)、
ヨーグルトあえ
主催…富士市学校給食を考える会
協賛…富士市職員組合
参加者の感想
★暑い中、子どもと一緒に協力してできたのでよかったと思います。これからも衛生的な食事を心がけがんばっていきたいと思います。また、
こういう機会に調理員としてではなく、一参加者として参加したいと思いました。
★今日は親子の料理、とても楽しくできました。いつも、いつも、おこってばかりいるので親子のコミュニケーションのためにも、
このような機会がもててよかったです。これからは衛生面に気をつけてお料理したいと思いました。
★きょうは、とてもたのしかったです。おりょうりのおてつだいをします。
★今日、グループ分けして、6人で料理して、とっても楽しかったです。ひとりとかふたりで作るよりみんなで作ったほうが、
すっごく楽しかったです。それから、野菜の切り方とかも上手になって、とってもうれしかったです。
★衛生面にとても気をつけてくださっているくとがよく分かりました。その分手間と時間がとても多くかかる中、
毎日おいしい安全な給食を作ってくださっていることに心より感謝しています。
★毎年、調理試食会、子ども共々とても楽しみにしております。日頃親子で調理などなかなかできませんでしたが、子どももこの会を通じて、
料理の大切さ、食についての話し合いを持つようになり、包丁さばきもとてもじょうずになってきたようです。
★暑い中、子どもたちの熱気とめんをゆでる熱気で汗のでる1日でしたが、
給食を作ってくださる調理員さんたちのご苦労が少しはわかったかと思います。家庭で作るよりひょっとしたら手もかかっているし、
食材の種類も多く、いつまでも自校方式が続いて欲しいです。今日は話題にでませんでしたが、近頃、環境ホルモンが問題になっています。
ゆくゆくは学校給食の食器が陶器のような害のないものに変って欲しいと切に願います。
★毎年、調理試食会でお母さんがたいへんだなということがわかりました。とても楽しかった試食会。
(わたしも大人になったらおかあさんみたいになりたいです)
★はじめて参加させていただきました。学校給食では、O-157対策に細かな配慮をされていることをひとつひとつ目で見知ることができました。
家では衛生面では十分なことができていませんでした。反省です。もやしを水からゆでること、きゅうりの湯通し
(思っていたよりシャリシャリしていた)等、家でもやっていきたいと思いました。
子どもともゆっくり時間をかけて一緒に食事作りをしていけるようにしたいと思います。土、日にはやっていきたいなと思いました。
おいしくいただきました。ありがとうございました。
主催者より
親子の参加者34名と調理員さん8名(男性1名)で行いました。それぞれの立場でのいろいろな感想をありがとうございました。昨年から、
調理前の全員の手洗いや、アルコールでのまな板や調理台の消毒に加えて、今年は、ザルの熱湯消毒もしてからの調理でした。
市立中央病院での給食が民間委託になったため、10人の男性調理員さんが、学校給食を担当することになりました。中央病院では、
ひとりがひとつの料理の流れを全部担当するのですが、学校給食では、大量に短時間に同じものを作るので、その作業に慣れるのが大変だそうです。
女性ばかりの時は、それなりにやっていたそうですが、学校給食では力仕事もけっこうあるので、男性調理員さんは、
あちこちでたよりにされているようです。
このような学校外での給食をめぐる取り組みを通して、学校給食と地域の結びつき、親子の結びつきを深める事例もあります。学校給食は、 食や農、生活について考えるとても優れたテーマであることが、この事例から分かります。
(学校給食ニュース8号 1998年12月)
[ 98/12/31 食教育 ]
民間委託と給食システム
はじめに
給食実施方式には、調理場型式としての「自校」と「センター」の違い、運営としての「直営」と「民間委託」、食材購入方法としての
「共同購入」「個別購入」、さらには栄養士の定数基準による配置、未配置の場合などがあります。また、ランチルームの設置や食器なども自治体、
学校により違ってきます。
この問題と、調理の民間委託問題を取り上げます。
民間委託について
今、学校給食現場は、「合理化」の名の下で、調理の民間委託が進められています。
各自治体は、行政改革を果たすため「人件費」の抑制にやっきになっています。
そこで、直営調理員の「人件費」と調理の「民間委託」とを単純に比較し、コストが削減されると導入をはかります。
しかし、コスト論は、地域によってはあきらかに論理が破綻しています。また、この民間委託導入にあたって、自治体、議会などでの議論には「教育」
の観点が含まれていません。
民間委託には、様々な問題があります。
なにより、教育としての工夫の余地がせばめられることが大きな問題です。
民間委託について整理し、各地の事例を集めています。
●自校方式とセンター方式
各学校に調理場があり、学校で調理する自校方式と、いくつかの学校、学区をまとめ一括して調理し、
学校に配送するセンター方式があります。1964年に共同調理場(センター)への補助金導入が開始され、85年の合理化通知の後、
センター化が進められました。96年5月現在、全国で2733のセンターがあり、そのうち30が1日1万食を超える給食を作っています(図1)。
センター方式は、一度に大量の給食を作らなければならないため加工食品に頼らざるを得ないとか、配送を必要とするため調理時間が短く、
届けられた給食も冷めてしまうなどの構造的な問題を抱えています。センターによっては、工夫を凝らして取り組むところもありますが、
自校方式に比べ、食材など工夫の余地が少ないのも実状です。
また、自校方式では、栄養士や調理員が学校にいて、子ども達とふれあうことができますが、センター方式では難しくなります。
近年いくつかの自治体では、センター方式をやめ、自校方式に戻したところもあります。しかし、
センター方式を取り入れる際に出された文部省の補助金は、自校方式に戻す際に出ることはありません。
このため自治体にとっては自校方式に戻しにくくなっています。
97年9月22日に保健体育審議会(保体審)の答申がなされました。その中で学校給食の項には、
「学校給食を活用した食に関する指導を一層充実する観点から、学校栄養教職員が個々の給食実施校に配置され、これにより、
児童生徒の実態や地域の実情に応じて、豊かできめ細やかな食事の提供や食に関する指導が行われることが望ましい。したがって、
このような食に関する指導等が可能となるような単独校調理場方式への移行について、運営の合理化に配慮しつつ、
児童生徒の減少等に伴う共同調理場方式の経済性や合理性と比較考慮しながら、検討していくことが望ましい。」とあります。この答申は、85年の
「合理化」通知とセンター化に出される補助金が今日的な意味を失っていることを示しています。また、
自校方式であっても民間委託がすすめられていることには注意が必要です。
●直営と民間委託
学校給食は、教育の一環であり「設置者」の責任で実施されます。公立の場合は市町村などの自治体、私立の場合は学校の運営母体です。
公立で話をすすめますが、直営方式は、献立作りから食材購入、調理まですべてを自治体の職員が行います。栄養士が献立を作り、
調理員が調理します。民間委託(業者委託)とは、この中で調理、運搬、食器洗浄、ボイラー管理などの仕事を民間業者に委託することです。
調理の民間委託の場合、法律上、公務員である栄養士は民間企業の調理員に対し直接的な指示を行うことはできません。
当日の調理について栄養士は、受託会社に対し「指示書」という文書が出せるだけです。調理過程、調理後のチェックはできますが、
それも受託会社との決められた形であり、直営方式で見られるような栄養士と調理員の直接的なやりとりの中から生まれる工夫とは質的に異なります。
また、食材購入から献立づくり、調理、後かたづけと、直営の場合、一貫して行えるため、子どもたちの状況把握や、学校行事、
地域行事との取り組みが行いやすいですが、民間委託の場合、それらに制限が出てくる場合もあります。それに、自校方式の調理員のように、
子どもたちとの直接交流による教育効果も望めません。
直営でも自治体常勤職員である調理員を減らし、パート職員化することがあります。パート労働化の場合も問題があります、
大量調理という一般にはない調理技術や衛生管理知識が欠けていることが多く、その知識、技能を得るための時間もありません。そのため、
正規の調理員に負担がかかり、質的にも不安が生じます。
図2の通り、調理員の正規雇用からパート化への流れがすすんでおり、民間委託も96年度で全体の7%と増えています。
●個別購入と一括購入
食材を調理場ごとに購入する個別購入と、いくつかの調理場の食材をまとめて購入する一括購入があります。一括購入は、 大量購入になるためコスト削減が考えられます。しかし、大量生産物である加工食品への依存や、食品添加物の問題などを生むことがあります。 生鮮品なども事前に発注し、大量に揃えなければならないため、地域の材料を使用することが困難だったり、 急な献立の変更ができないなど工夫の余地が小さくなります。また、一括購入は、ひとつの食材で食中毒が起こった場合の被害範囲が大きくなります。
●栄養士の配置~定数基準ほか
学校栄養職員はすべての調理場に配置されるわけではありません。学校栄養職員(栄養士)は、
都道府県により各市区町村の定数が決められており、定数分については、都道府県から人件費が出されます(県費職員)。
定数を超える学校栄養職員を採用する場合、市区町村が独自の予算で採用することになります。そのため市区町村によって異なりますが、
すべての調理場に栄養士が配置されているわけではありません。学校給食センターの場合、基本的に学校栄養職員が配置されていますが、
自校方式の場合、数校に1校程度ということも一般的です。その場合、学校栄養職員は複数の学校調理場の献立づくりが必要になり、
学校栄養職員の負担になるため、市区町村単位での統一献立を組むなど調理場ごとの食材購入や献立づくりに制限が出てきます。
自校方式で民間委託されると、その調理の管理が必要になるため、一般的に学校栄養職員が配置されます。 近年、学校栄養職員は、
正規雇用職員ではなく、非常勤雇用されるケースも増えています。県費職員と市区町村独自採用職員では、行う仕事が同じであるにもかかわらず、
待遇に違いがでるなど、正規雇用の場合でも制度上の問題が指摘されています。
学校栄養職員は、学校の中で子どもたちに食の大切さを伝えることができる専門的な知識を持った数少ない存在です。しかし、
学校の中での位置づけが明確でなく、学校の中の理解がなければ、子どもたちへの食を通じた教育がなかなか実を結びません。各学校栄養職員は、
学校の中で献立表や子どもたちとのふれあいの中で工夫しています。
なお、栄養教諭制度が学校教育法等の改正によりスタートしました。今後、栄養教諭による食の指導などが行われることになりますが、
実際の採用等については、今後の国や都道府県の対応次第です。 この項全面改定:2004年9月。
学校給食ニュース0号 1998年2月。
[ 98/12/31 委託・合理化 ]
民間委託の問題点
「合理化」行政の流れ
1985年、文部省は都道府県に対して「学校給食業務の運営の合理化について」を通知しました。背景には、当時の中曽根内閣の「民間活力導入」
がありました。学校給食に関する合理化の内容は、調理場の共同調理場方式への移行、調理員のパートタイマーへの切りかえ、
調理業務の民間業者への委託=労務費の縮減、政府補助金の縮減、受益者負担の推進です。
学校給食の共同調理場方式(センター化)や民間委託は、85年以前にもありましたが、「合理化」通知の後、
急速に全国の自治体が取り組みはじめました。
さらに1994年10月には、自治省が全国の地方自治体に対して、各分野の民間委託推進、
職員削減の行革大綱を1年以内にまとめるよう通知しました。そして、全国の自治体では行財政改革大綱を作成することとなり、
学校給食調理が職員削減対象のひとつとしてクローズアップされました。
この行財政改革は、主に人件費削減を重視しており、いかにして職員数を削減するかということばかりが議論されています。そのため、
住民サービス、福祉、教育の充実という自治体行政の基本的な目的が後退しかねません。行政の無駄をなくし、コストを抑えることは必要ですが、
結果的に失うものが大きくては、本当の「合理化」とは言えません。学校給食調理の民間委託は、子どもたちの食教育にとって失うものが多すぎます。
教育的視点抜きの議論
民間委託は、行財政改革、合理化という視点からすすめられます。学校給食の民間委託を検討する行政・議会の多くは、
「調理員は年間190日しか働いていない」とか、「忙しいのは給食の準備を行う数時間」という学校給食調理現場を無視した論点から、パート化や、
民間委託は「学校給食の質を変えずに経費節減できる方法」だという説明を繰り返します。
このような自治体・議会の進め方があるため、一般的には民間委託問題はあたかも調理員の問題として捉えられがちですが、実際には、「合理化」
の代償として、直接、間接的に子どもたちに影響が生じてきます。学校給食は教育の中で重要な位置を占めるべきですが、
今日の給食はそのような位置を占めているのか、疑問です。
学校給食法においても、「教育の目的を実現するために」
日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと
学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと、
食生活の合理化、栄養の改善、および健康の増進を図ること、
食料の生産、配分、および消費について正しい理解に導くこと、
という目標が定められています。
子どもたちの食教育は、保護者、栄養職員、調理員、教職員を含んだ地域全体が、密接なコミュニケーションをもって取り組む必要があります。
そのことを理解することで、民間委託問題が、調理員のみならず、保護者、栄養職員、
教職員を含んだ地域全体の問題であることがはっきりしてきます。民間委託をはじめとする「合理化」の問題は、他の学校給食運動と同じく、
子どもたちの食教育にとって、何がもっとも配慮された方法、方向であるかという視点を中心におくことが、運動を形づくる上で大切なことです。
最新の情報を別途入手してください。
(学校給食ニュース0号 1998年2月)
[ 98/12/31 委託・合理化 ]
石けん・合成洗剤について はじめに
はじめに
合成洗剤から石けんに切り替える運動は、全国で実を結び、自校方式、センター方式を問わず、多くの事例が生まれました。しかし、
合成洗剤を使用している調理場は今もたくさんあります。
中には、合成洗剤を使っていることを意識せずに使われていることも、残念ながらあります。それは、調理員、栄養士、保護者、
地域が合成洗剤や石けんについてあまり考えてこなかった結果です。そして、調理員の手荒れや健康被害をもたらし、
食器などに残留して子どもたちの将来をそこない、自然環境を汚染しています。
さて、合成洗剤は、石けんと異なり、高度な化学工場で製造される自然状態では通常ほとんど存在しない化学物質です。また、
多くの助剤が使われています。そして、自然界に流れ、人や自然環境に少なからぬ問題を与えています。また、安全性に対する問題が指摘されると、
別の成分が登場し、さらにその安全性が問われるイタチゴッコが続いています。
何かに似ていると思いませんか。
今、大きな社会問題になっているポリカーボネート製食器は、プラスチック製品です。プラスチックもまた、高度な化学工場で製造され、
自然状態ではほとんど存在しない化学物質で、多くの添加物が使われ、人や自然に問題を引き起こしています。
学校給食とプラスチックの大きな関わりは食器です。最初はポリプロピレンに使われていた酸化防止剤BHTの溶出を問題にしました。すると、
メラミン製食器が登場しましたが、今度はホルムアルデヒドの溶出が起こりました。そして、
安全性の高いと言われたポリカーボネート製食器は環境ホルモン(内分泌かく乱物質)のビスフェノールAが溶出しています。
学校給食現場における合成洗剤問題とプラスチック食器問題は、とてもよく似ています。
プラスチック食器が問題になっている今だからこそ、あらためて、合成洗剤について考えてみませんか。
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
汚れが落ちるしくみ
石けんも合成洗剤も、食器の汚れを落とすしくみはまったく同じです。石けんや合成洗剤などをまとめて「界面活性剤」といいます。
水には水同士、油には油同士でまとまる性質があります。界面活性剤は、水になじむ部分と油になじむ(水をはねつける)部分でできています。
そして、水と油が接しているところに作用して、本来は混ざらない水と油が混ざりやすくなるようにします。
その状態で食器をこすったりすると汚れが表面から水に溶け出し、汚れが落ちるのです。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
民間委託を問う!
1:本当に経費削減などの「合理化」になるのか?
自治体が民間委託の検討に入る段階では、その自治体における「経費節減」の具体的な試算が明確にされません。つまり、
民間委託が経費節減になるというのはあくまでも「仮説」でしかありません。仮に、モデル的な試算が出されても、単年度か、中長期的な計算か、
人件費以外のどのような項目が入っているかなど、見方によって「経費節減」効果はずいぶん異なってくるはずです。しかし、実際の「合理化」
議論では、自治体も、議員も、時には反対する側さえも、「人件費」に対して経費節減になるということを前提にしていることがあります。
本当に経費節減になるのか、経費節減のみならず、コストバランスがよいかどうか、すなわち費用対効果が優れているかどうかを、
学校給食関連予算全体の中で明確にすることが経費節減を論じる自治体の責任です。
2:食教育としての学校給食
学校給食は、子どもたちが成長期を過ごす学校における大切な食教育です。地域、伝統的な食文化を知り、適切な食生活、
食習慣のあり方を学ぶ貴重な体験となるはずです。
この学校給食の可能性を最大限に活かすためには、地域、学校の実状に応じ、栄養士、調理員、保護者、教職員を含んだ地域全体が、
密接なコミュニケーションをもち、創意工夫をこらすことが大切です。
しかし、民間委託された場合、たとえ自校方式であっても栄養士と受託業者の間には「指示書」
という形での限られたコミュニケーションしかありません。食材から後かたづけまでを通した学校給食という考え方がくずれます。
委託業者は民間企業である以上、利潤を確保することが必要であり、同じ献立、食材料、手間を直営と同じ質でできるとは考えにくく、学校給食の
「質」が変わらないという自治体の説明には説得力がありません。
3:食以外の学校運営
学校は、子どもと教職員によってのみ運営されているわけではありません。栄養士、調理員など直接学校で子どもたちと関わる大人と、
保護者をはじめとする地域の人々の参加により、子ども達は社会的な教育を受けています。学習とともに、これら社会的な教育を通して、
子どもたちは成長します。
学校運営に関わる大人たちが、常に連携して子どもに接することは、子どもたちにとってとても大切なことです。たとえば、直営・
自校式の調理員が学校行事に参加し、子ども達と交流していることで、
学校給食に対する子どもたちの関心と信頼が高まっていることなどの事例があります。
利潤を追求せざるを得ない民間委託を行うことで、これらの子どもたちへの工夫の余地が減っていきます。
4:はじめに民間委託ありき~地方行政における教育ビジョン不在
合理化通達や行財政改革の名のもとで、地方行政には「人件費」削減という観点しかないかのように見えます。はじめに民間委託ありきではなく、
地域における教育ビジョンに基づいた教育行政が必要です。地域の子ども達にとって、どのような給食がもっとも望ましいかを考え、
理想に至るための方策を打ち出すことが大切であるはずです。この視点なくして、民間委託を議論することは、行政の基本的な間違いです。
●中学校は要注意
中学校は小学校に比べ給食完全未達成の自治体が多くあります。実施されていない校区では実施要望が多く、そのため、
民間委託やセンター方式だけではなく、仕出し弁当方式(名古屋市や広島市)など、問題の多い方式で給食開始されることがあります。保護者も、
給食がないところへの導入であるため、反対しにくかったり、栄養士、調理員なども当事者として見なされないため反対しにくく、
運動の形成が困難です。
東京都小平市のように、まず、反対が少ない中学校でセンター化、民間委託方式を導入し、その後小学校への導入を図ろうとした例もあります。
学校給食が不完全な中学校を抱える地域では、この点に注意しておく必要があります。
(学校給食ニュース0号 1998年2月)
[ 98/12/31 委託・合理化 ]
界面活性剤(坂下栄さんのまとめより)
界面活性剤は、その化学的な性質から下の表のようにまとめられます。
陰イオン系…水に溶かすとかい離して界面活性作用を持つ部分がマイナスイオン。洗浄力がもっとも高く、洗剤に使用されます。
陽イオン系…水に溶かすとかい離して界面活性作用を持つ部分がプラスイオン。殺菌剤や帯電防止剤として使われます。逆性石けんもこの一種。
両性イオン系…溶液がアルカリ性のときは陰イオン系と同じ、溶液が酸性のときは陽イオン系と同じ作用を示すもの。殺菌作用として使われます。
非イオン系…水に溶かしてもイオンにはならない界面活性剤。起泡性があります。
また、界面活性剤は、様々な用途で使われています。
洗浄剤…洗濯用、台所用、シャンプー、歯磨き
起泡剤…洗浄用、歯磨き
乳化剤…化粧品、マヨネーズ、チョコレート
浸透剤…薬、農薬
溶化剤…化粧品
分散剤…海への油流出事故などに使用
柔軟剤…柔軟仕上げ剤
緩染剤…染料への添加、毛髪染料剤への添加
展着剤…農薬
殺菌剤…リンス剤
帯電防止剤…化繊の帯電防止
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
石けんとは
動植物油脂とアルカリ成分(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)で中和された脂肪酸エステルの総称が「石けん」です。
石けんは、原料油脂の組成によって、性質が微妙に異なってきます。例えば、ヤシ油ならば、水溶性に優れ気泡力がある石けんができますが、
洗浄力は若干劣ります。牛脂ならば、洗浄力が強く、水溶性が劣ります。このように油脂本来の性質が反映するのは、
石けんの化学組成がとても単純だからです。
石けんのにおいが気になるという話を聞きますが、石けん本来のにおいは、原料に由来します。原料を精製するとにおいはなくなっていきます。
石けんは、原料の油と苛性ソーダのみで、温度も80℃前後と家庭で、特に難しい道具もなしに作ることができます。この単純さこそが、
石けんの安全性を保証しているとも言えます。作りが単純なために分解しやすく、また、
界面活性作用もちょっとした条件の変化で失ってしまうからです。
石けんは水に溶けた時の状態がアルカリ性になり、界面活性作用を示します。汚れがひどかったり、ペーハーが変わったり、
石けん成分が薄められたりすると、簡単に分解してしまいます。これが、石けんが合成洗剤と異なる大きな違いです。
逆に、この点が石けんの難しさにもなります。使いすぎるとぬるぬるしてしまいます。また、
合成洗剤では汚れを細かい粒子にしたまま水と一緒に流される「汚れを拡散する」性質がありますが、石けんは汚れを集めてしまうため、一度、
食器や調理器具から落ちた汚れが固まって、再付着することもあります。
石けんは、水道水に含まれるカルシウムなどのミネラルによって金属石けんに変化し、界面活性作用がなくなることもあります。しかし、
ミネラル分の少ない日本の水道水ではあまり考えられません。
また、蒸留水で石けんを使用すると非常に強い界面活性作用を示します。石けんは、とても単純なつくりだけに、使う際の水や汚れ、食器の素材、
温度といった条件に洗浄力が左右されます。うまく使えば、これほど汚れが落ちる洗浄剤もありません。
自分の地域や作業の特徴にあった石けんを選び、工夫することが必要です。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
合成洗剤とは
(1)歴史
合成洗剤の歴史は短く、世界に普及してわずか半世紀強でしかありません。その歴史とともに大まかな流れを見てみましょう。
合成洗剤は、第一次世界大戦中、ドイツで開発されました。第二次世界大戦後、アメリカで油脂不足から石けんが不足し、
石油から合成洗剤を大量生産するようになりました。1951年に日本ではじめての合成洗剤(ABS)が販売され、急速に普及します。
ところが、ABSは、生分解性がとても悪く、10年後の1961年には多摩川で発泡が見られるなど目に見える汚染が広がりました。そのため、
世界各国で使用禁止になり、ソフトタイプとよばれるLASが主流になっていきます。日本でも68年に行政指導でLAS化がすすめられました。
しかし、その間にも発ガン性や免疫への影響、環境への影響が明らかにされ、62年には中性洗剤を誤飲した男性が死亡する事故も起こりました。
その後、LASの毒性や環境影響も指摘される中、アルコール系や非イオン系などの洗剤が登場したり、「天然原料」
をうたった合成洗剤が登場しますが、いずれにしても安全性と環境への影響に問題があるかその疑いがとれないものばかりです。
洗剤の界面活性成分だけでなく、製品に助剤として入れられていたトリポリリン酸塩が富栄養化の原因ではないかと社会問題になりました。
79年に滋賀県が琵琶湖富栄養化防止条例で合成洗剤をはじめて制限します。メーカー側はすぐに無りん洗剤を発売し、以後日本ではほとんどが
「無リン」になりました。しかし、
リンの代わりに入れられたアルミノけい酸が水に溶けず下水管の目詰まりや環境汚染を引き起こしたりもしています。
このように合成洗剤の歴史は、人体と環境に対する被害の歴史でもありました。
(2)特徴
合成洗剤は、石けんと異なり石油などの原料油からアルキルベンゼンやアルファオレイン、高級アルコールなどを製造し、たとえば、
アルキルベンゼンに硫酸化剤を加えて硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和したのがLASというようになります。高温、高圧をかけてつくられるため、
合成洗剤を日常の中でつくることはできません。
合成洗剤は、それぞれに特徴が異なりますが、共通して言えるのは、石けんよりも界面活性作用が安定しているということです。石けんは、
たとえば海水中に入れると薄まることとミネラルの影響ですぐに白濁し、界面活性作用をなくします。しかし、合成洗剤は、海の水でもきれいに溶け、
生物によったり、自然の浄化作用で分解されるまでたとえ薄められても界面活性作用が残ります。
また、合成洗剤は、石けんよりも一般的にタンパク質吸着性や浸透性がすぐれ、洗い上がりの見た目の差を生んでいますが、同時に、
このタンパク質吸着性と浸透性が、人体や環境の問題を引き起こしていると言えます。
BODの調査などで、合成洗剤の種類によっては石けんの方が環境負荷が高い結果になることがありますが、界面活性作用の持続や、
分解される過程と物質を見てみると、総合的には石けんより合成洗剤の方が環境に与える影響は大きいと言えます。
(3)人体への影響
・手荒れ
合成洗剤の影響でまっさきに思い立つのが手荒れです。学校給食の調理現場でも、家庭でも手荒れの被害は深刻です。
合成洗剤のコマーシャルで常に「手荒れが減った」「手荒れしにくい」と宣伝を続けているのは、
逆に手荒れの被害が続いていることを物語っています。皮膚の被害は目に見えますが、より恐ろしいのは内臓障害です。
・内臓障害(肝臓、腎臓)
合成洗剤の特徴から合成洗剤は、口から入るよりも皮膚から入る方が身体の中に長く残留すると考えられます。合成洗剤は、石けんと異なり、
薄まってからも界面活性作用が続きます。皮膚には防御作用があり、体外から不要なものが浸透しないようになっていますが、
合成洗剤はその特徴から、皮膚を通して直接血管に浸透してしまいます。口から入れば、消化器官系=排泄系に入るため排泄しやすいですが、
皮膚を通して入った場合、血管に入り、体内を循環します。しかも、異物、毒物を分解する肝臓でも分解できないため、長く循環し、
一部は脂肪の多いところなどに滞留することになります。
そして、とりわけ肝臓・腎臓に問題を生じさせることが動物実験で分かっています。
・次世代への影響
合成洗剤は、その性質から胎盤を通過し、胎児や受精卵にも影響を与えるという研究もあります。また、
精子の減少を引き起こす可能性も指摘されています。
この他、急性毒性、慢性毒性、成長や繁殖障害など様々な問題が指摘されています。
(4)環境への影響
合成洗剤の環境への影響はとりわけ水生生物や河川・海洋の生態系にとって深刻です。濃度が濃い場合、
魚はエラに障害を起こして死んでしまいます。
また、細胞膜を通過したり、細胞膜のタンパク質を変成させる作用があるため、微生物や魚類の卵などは深刻な被害を受けます。
個々の種に悪い影響を与えるとともに河川・海洋の生態系を破壊する原因のひとつとなります。
ちなみに、石けんの場合は、先に述べたとおり、薄くなったときに界面活性力や乳化力を失うため、淡水中でも合成洗剤のような影響はなく、
ミネラル分の多い海水中ではまったく影響はありません。
なお、分解されず残った合成洗剤は、水道水として再び私たちの元にかえってきます。そして、私たちの身体に取り込まれていくのです。
食器と洗剤
合成洗剤から石けんに切り替えたとき、落ちにくさを感じる人が多くあります。特にプラスチック食器の場合、
プラスチック自体が油などの汚れとくっつきやすい性質があり、それをとるのに合成洗剤の界面活性作用などが力を発揮しやすいからです。しかし、
その一方で、合成洗剤の残留性は、残留しやすい順に、素焼き>金属、プラスチック>ガラス、陶磁器となり、
プラスチック食器を使用した際の合成洗剤の残留も気がかりです。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
用語 BOD、COD
BOD…生物化学的酸素要求量 微生物が有機物を分解するときに消費する酸素量を一定時間計測して、
有機物の量を判断します。しかし、微生物の働きが弱められたり、分解しにくい有機物の場合には、実際の有機物より数値が下がります。
石けんのBODが合成洗剤のBODより高い場合があるのは、石けんは微生物により分解されますが、合成洗剤は微生物を殺したり、弱め、また、
分解が遅いためです。
COD…
化学的酸素要求量 過マンガン酸カリや重クロム酸カリのような酸化剤を使い有機物を分解するために消費する酸素量を一定時間はかり、
有機物の量を判断します。そのため、BODよりも比較的正確な有機物量がわかります。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
表示がおかしい
洗剤は、家庭用品品質表示法(通産省管轄)、食品衛生法(厚生省管轄)、薬事法(厚生省管轄)により、表示などが定められていますが、 いずれにも問題があります。表示方法の見直しが必要です。
・薬事法(厚生省、化粧品、医薬部外品)…化粧石けん、シャンプー、洗顔フォーム、洗顔クリーム、
歯磨き類が対象になります。
どんな界面活性剤を使っているか表記する必要はありません。
表示が義務づけられているのはアレルギーを起こす恐れのある成分として厚生省が指定している「指定成分」のみです。そのため、
合成洗剤が含まれていても消費者には分かりにくい製品群になっています。
・家庭用品品質表示法(通産省、雑貨工業品)…石けん(洗濯用)、合成洗剤(洗濯用、台所用、住宅・
家具用)、洗浄剤(住宅用、その他)、漂白剤、クレンザーが対象になります。
3%以上の界面活性剤と10%以上の助剤を表示することになっています。厚生省薬事法でいう指定成分が含まれていても、10%
を超えないと表示されません。また、石けんと合成界面活性剤を配合した物を「複合石けん」としており、分かりにくさを生んでいます。
・食品衛生法(厚生省)…台所用せっけん、台所用洗剤は、
家庭用品品質表示法とともに食品衛生法の対象になります。
香料や着色料、蛍光増白剤などの使用が禁止されています。
この他、薬事法や家庭用品品質表示法適用外のものもあります。例:コンタクトレンズの洗浄剤、入歯洗浄剤、自動車洗浄剤など。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
助剤の問題点
合成洗剤には、様々な助剤(ビルダー)が入れられています。代表的なものとしてゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)、
無水硫酸ナトリウム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、蛍光増白剤、消泡剤、酵素添加剤、キレート剤などがあります。
水にとけないゼオライトや沈殿するCMCにより下水が詰まることがあります。また、食品衛生法で規制されている蛍光増白剤は、
発ガン性が指摘されている物質があります。合成洗剤の本体だけでなく、助剤にも注意する必要があります。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
「天然原料」「高級アルコール」には要注意
高級アルコール系や非イオン系の合成洗剤には、パーム油、ヤシ油、トウモロコシなどの「天然原料」を使用したものがあり、あたかも
「天然」だから安全性がすぐれているかのような宣伝がされています。しかし、
原料に天然油脂を使ってあっても製造工程と製品は立派な合成洗剤です。十分な注意が必要です。
同様に高級アルコール系の「高級」もすぐれた品質を示すようですが、この「高級」は化学的な専門用語で、
アルキル基が炭素を6個以上持っているという意味であり、一般的な「高級」の意味ではありません。
高級アルコール系のアルキル硫酸エステルナトリウム(AS)は、LASより分解性は高いですが、
タンパク質変成作用や魚毒性が強いと指摘されています。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
水質基準はひとつだけ?
合成洗剤関係の水質基準は、わずかに陰イオン系界面活性剤のみが、水道水浄水中の水質基準として0.2mg/ リットル以下と決められています。非イオン系、陽イオン系については基準がありません。埼玉県飯能市では、 水道水から非イオン系界面活性剤が検出され、水道水が泡立つという事件が起きました。埼玉県議会は、昨年国に対し、 水質基準を設定するよう要望する意見書を採択しています。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
石けんへの第一歩を
全国には様々な形での石けん洗浄の取り組みがあります。言うまでもないことですが、石けんへの切り替えが成功するか否かは、
調理員の裁量と工夫にあります。石けん運動は、手荒れのための切り替えだけではなく、環境や子どもたちの将来を考えた行動として、栄養士、
教職員、保護者、地域を巻き込んだ運動になる可能性を持っています。と同時に、調理を民間委託ではなく、直営で行ない、
必要な人員や設備を整えることが、労働改善だけではなく、子どもたちのためになることを明らかにしてくれます。
合成洗剤から石けんへの運動は、民間委託問題、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)問題やプラスチック食器問題、また、
衛生管理の問題を浮き彫りにする大きなテーマです。
しかも、活きた教材として最適なテーマでもあります。すでに、「環境読本」をつくったり、個々の教職員の工夫によって、生活科、社会科、
理科などの授業に取り入れられている実績もあります。
石けんのことを学び、合成洗剤のことを知るところから、大きな運動の芽が育ちます。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
[ 98/12/31 石けん・化学物質 ]
石けん・合成洗剤関係の書籍紹介
『合成洗剤』
日本消費者連盟編集・発行、1985
内容は少々古いですが、合成洗剤追放運動を行なう上での基本的な論点を解説してあります。
『合成洗剤のない暮らしガイド』
日本消費者連盟編集・発行、1995
日常生活での合成洗剤と石けんについてQ&A式に分かりやすく解説。1991年に発行されたものを95年に増補改訂。
『合成洗剤は細胞を破壊する』
坂下栄著、1990、日本消費者連盟発行
三重大学医学部在職中、合成洗剤が皮ふから体内に入って大きな影響を与えることを実験を通じて明らかにされた坂下栄さんへのインタビュー。
合成洗剤の危険性について理解が広がります。
『合成洗剤は地球を汚す』
石川貞二、鈴木紀雄共著、
1989、日本消費者連盟発行
長年水環境と合成洗剤の問題について取り組みを続けられている元鳥羽市水産研究所所長の石川貞二さんと滋賀大学教授の鈴木紀雄さんが、
環境に対する合成洗剤の危険性を語ります。
『合成洗剤追放全国集会資料』
きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会、毎年発行(1991~1997を参照)
合成洗剤を追放し、石けんの使用を広めるための個人、団体などで構成された全国連絡会は、毎年1度全国集会を開催しています。今年は、
9月26日、27日の2日間、広島市で開催されました。この集会資料は、全国の運動の集大成であり、貴重な運動形成のための資料でもあります。
全国連絡会では、入会を呼びかけています。
問い合せ、申込み先…
東京都文京区本郷1-4-1 (全日本水道労働組合気付)
電話 03-3816-4132、FAX 03-3818-1430
『学校給食と洗浄作業』
自治労安全衛生対策室編、1992、
労働基準調査会発行
自治労現業局が、調理員の実態調査に基づき、合成洗剤から石けんへ切り替えるために必要な作業や設備などについて解説した1冊。
学校給食調理設備での合成洗剤問題や皮ふ障害などについても。
(学校給食ニュース6号 1998年10月)
『学校給食から「合洗」が消えた。聞いて、聞いて、私達のはなし』
この冊子は、自治労福岡市役所現業職員労働組合教委第2支部が1970年代終わりから10年をかけて、
市内140校すべての学校給食実施小学校で、合成洗剤を追放し、石けんに切り換えた歩みを記したものです。「増員なし、設備増なし、
洗浄剤の経費増なし、職場全員の合意」を条件とする職場ごとの選択制の中で、自主的な現場の工夫と強制を排した草の根的な運動展開によって、
石けんへの完全きりかえを果たしました。 学校給食現場での石けん運動に取り組まれている方々にはとても参考になります。
現在も増刷して配布されています。
この冊子は、自治労福岡市役所現業職員










