学校給食ニュース

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時事情報1999年


●福岡県古賀市、遺伝子組み換え納入自粛を求める
西日本新聞99年12月10日付よると、 福岡県古賀市教委は、学校給食の安全性を配慮して納入業者に対し遺伝子組み換え食品を納入しないよう要請する方針を明らかにした。ただし、 給食費の関係上、すべてを今すぐ排除することは困難としている。(99.12.31)

●佐賀市、遺伝子組み換え食品の給食使用を禁止
日本農業新聞99年12月8日付によると、佐賀市教委は、2000年6月から遺伝子組み換え食品の給食への利用を禁止する。禁止されるのは、 2001年4月から表示が義務づけられる24食品。また、表示義務のない醤油・油についても原料の非組み換え食品化を図る。 遺伝子組み換え食品の危険性を危惧しての措置。(99.12.31)

●文部省、学校給食での遺伝子組み換え食品規制せず
薬事日報99年12月6日付によると、文部省は遺伝子組み換え食品を学校給食に使用することに関して規制する考えがないことを明らかにした。 (99.12.31)

●山梨では、2市3町で非組み換え食材使用
日本農業新聞99年10月29日付によると、 山梨県内では甲府市をはじめ2市3町の議会で学校給食食材を非遺伝子組み換えに切り替えることが採択されている。 生活クラブ生協山梨の記者会見によるもの。甲府市では、ミックスベジタブル、冷凍ジャガイモ、乾燥大豆が国産になり、味噌、醤油などは、 非組み換えである証明がある品に替わったという。食材経費上昇分は市が負担している。(99.11.21)

●宇都宮市、遺伝子組み換え食品を排除
下野新聞99年9月9日付けによると、宇都宮市の教育長は、 8日の市議会で安全性が確認されるまで原則として学校給食に遺伝子組み換え食品を使用しないとの方針を明らかにした。なお、 3年前から納入業者や製造業者に対し可能な限り非組み換え食品であることを確認して購入しているという。(99.9.29)

●スナック菓子から、未承認組み換え遺伝子
 遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーンでは、日本で市販されている6種類のコーン菓子を検査し、 そのうち5種類に遺伝子組み換えコーンが含まれていることを確認しました。さらに、そのうち3種類は、日本の農水省、 厚生省がガイドラインで承認や確認を行っていない品種のコーンが含まれていることが分かりました。
 現在、遺伝子組み換え作物については農水省と厚生省で審査や承認を行っています。農水省は、 輸入や開放系での実験や栽培などの利用について審査を行い、厚生省は、食品安全の見地から評価承認を行っています。 このいずれも行われていない遺伝子組み換え作物が、日本に輸入され、加工、販売されていたのです。
 遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーンは、回収と輸入差し止めを求めるとともに、現在の確認・審査承認では罰則を持てないため 「原則禁止の規制法」の必要を訴えています。また、表示義務化や水際での監視体制を求めています。
 この3種類とは、ハウス食品の「とんがりコーン」、湖池屋の「ポリンキーあっさり味」、ヤマザキナビスコの「プチコーン薄味」です。
 同キャンペーンでは、「遺伝子組み換え食品検査運動」を立ち上げ、検査費用を市民で出し合い、ひとつずつ様々な食品を検査するとしています。
検査運動は、1口1000円から受け付け。
郵便振替口座 00100-5-727877
口座名義   遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
通信欄に 「検査運動」と明記のこと。

問い合わせ:遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン事務局
電話:03-3711-7766 FAX:03-3715-9378(日本消費者連盟内)(99.8.8)


●非遺伝子組み換え食材導入の動き
  東京新聞99年3月16日付では、 遺伝子組み換え食品に対する学校給食の対応について特集。神奈川県藤沢市が遺伝子組み換えをしていない食品や農産物に切り替えた例を報じ、 他に神奈川県大和市、埼玉県川越市、山梨県甲府市、東京都町田市、練馬区、北海道石狩市などが取り組んでいると紹介している。 このうち大和市の例では、醤油や油などの原料費が高くなり、 給食費に換算するとひとりあたり月13円ほどのコスト増になっていることを紹介している。(99.4.1)

[ 99/12/31 遺伝子組み換え ]

有機野菜を学校給食へ 千葉県山武町

有機野菜を学校給食へ

初出記事が古いため、情報が現状と合わなくなっていることがあります。
最新の情報を別途入手してください。

 千葉県山武町は、千葉県八街市に隣接し、近年、ベッドタウンとして住宅が増え、人口も増えている農業地域です。ここで、 有機栽培の野菜を学校給食に供給している生産者グループ・JA山武睦岡支所無農薬有機部会があります。
 JA山武睦岡支所の下山久信支所長に経緯や考え方、具体的な方法をうかがいました。

 JA山武睦岡支所無農薬有機部会(部会長:石橋明さん)は、生産者55人、人参、里芋、レタス、大根をはじめ、野菜、 果物を中心に60品目以上を年間を通し、有機栽培しています。その多くは、生協や有機野菜の産直グループ、百貨店や外食産業に出荷されています。
 学校給食用として同部会は、地元の山武町給食センターと東京都小金井市にある学芸大学付属小金井小学校に野菜を届けています。
 地元の山武町給食センターが有機野菜を取り扱いをはじめたのは、1990年のことです。学校の役員をしていた農家が、 自分たちが作っている有機野菜を給食で使ってくれないかと、学校や教育委員会に働きかけたのがきっかけでした。
 現在は、使う前月の20日頃に、JAから野菜の品目や、出荷が可能な日などを学校給食センターに送り、学校給食センターでは、献立をみながら、 発注する野菜の種類、日にち、量目、届ける時間を指定します。JAでは、生産者に割り当て、生産者は、決められた日時に、 直接学校給食センターまで運んでいきます。
 4月は、白菜、大根、いちご、里芋、5月は、人参、ピーマン、大根が使われました。
「時期が限られたり、下処理に時間がかかったりしますが、試食会などを開くと、保護者からもっと使って欲しいという要望も上がり、 今後とも引き続き取り扱っていきます」と、山武町学校給食センターの栄養職員・能勢敏子さん。
「生産者も親であり、子どもが学校に通っています。だから、生産者も学校給食には気を使います。 給食センターで働く調理員さんも地元の人ですから、生産者にしても顔なじみです。地元の給食に地元の野菜を使うと、お互いの顔がよく見えます。
 千葉県の他の地域から問い合わせを受けたこともありますが、他の学校給食は基本的にお断りしています。なぜならば、有機野菜に限らず、 地元には地元の農家がいて、農業があるからです。子どもが通っている地区でその生産者のものを学校給食に届けるのでなければ、 地場の食材を使っていることにはなりません。生産者と学校が交流できるところでやることが、 生産者にも子ども達にも喜びと楽しみを生み出すのですから」と、JA山武の下山さんは、地場型の学校給食についての考えを述べられています。
 その一方で、同部会では、東京都小金井市の都立大付属小に食材を提供しています。「都市では、地場でつくるということも難しいですし、 それに都立大付属とは縁がありましたので」と下山さん。
 都立大付属中学校には、学校給食がありませんが、1年生は年に1度、泊まり込みで漁港や醤油醸造所、畑の体験を行っています。その畑が、 JA山武睦岡支所でした。その交流の積み重ねのうち、付属中では給食はないけれど、付属小にはあるのだから、と、食材提供の要請があり、以来、 付属小の給食に野菜を供給しています。

 今回は、有機農業生産者の側から給食への食材供給について取材しましたが、供給できる時期が限られることや、献立とのかねあい、 下処理など、生産者と栄養士、調理員が、お互いに話し合い、工夫する必要があるようです。その意味でも、直接生産者が給食調理場へ運べる距離が、 「地場」給食を行う上でのひとつの目安となりそうです。
 また、「地場」で野菜がつくれなくても「交流」を伴った「産直」であれば、取り組みは成功するようです。

学校給食ニュース99年6月より

 

[ 99/12/31 地場産・産直 ]

時事情報1999年 地場型を中心に

食材・地場型給食
●北海道生田原町・地場産ステーキ給食に
日本農業新聞99年12月25日付によると、 北海道網走管内生田原町にある小中学校5校350人に同町産の黒毛和種牛ステーキが給食として出された。同町産業課、 JA生田原などが地場産牛肉のアピールで行ったもの。9月のハンバーグに続いての実施。(99.12.31)

●静岡県、特産椎茸の給食利用を調査
日本食糧新聞99年12月20日付によると、静岡県は県内72市町村817校を対象にした学校給食の椎茸利用状況を調査した。その結果、 意識的に利用しているのは全体の34.7%、国内産、地元産の利用が多いが、価格面などから中国産を選ぶ学校もあった。(99.12.31)

●神奈川県藤沢市でアイガモ米給食拡大
神奈川新聞99年12月20日付によると、藤沢市教委は、同市管内のJAさがみに協力を要請し、 有機無農薬栽培のアイガモ米を学校給食に取り入れた。99年度は9校で1回、450kgの使用だが、来年度は全36校に拡大する方針。 2回の実施で3200kgを購入予定。給食の前に冊子や写真でアイガモ農法の説明を行い、児童が生産者に感想文を書くなど教育にも役立てている。 来年度は授業での見学なども計画している。(99.12.31)

●埼玉県和光市、地場産野菜の使用拡大
日本農業新聞99年12月15日付によると、 埼玉県和光市では90年7月から市内の全小中学校11校で地場産野菜の給食使用がはじまり年々拡大している。 同市の都市農業推進協議会の提言と市教委の橋渡しにより和光市農産物直売組合が有機低農薬野菜を供給。毎年2月に栄養士と組合で連絡調整を行い、 次年度の月別利用計画を立案、各生産者が給食当日の朝9時までに学校へ搬入している。また、 とうもろこしの体験学習や生産者から話を聞くなど教育にも役立てられている。(99.12.31)

●塩釜市、地場魚の家庭料理を給食に
日刊水産経済新聞99年12月6日付によると、塩釜市教委は毎年1月に行う給食まつりで保護者、生徒から募集している「わが家の自慢料理」 の入賞献立のうち、地場産魚をりようした3品を各小中学校の給食に献立として取り入れた。今後も、同様にメニューを増やすという。 (99.12.31)

●東京都国分寺市の食と環境教育
日本農業新聞99年12月3日付では、「足元見つめ~3」と題し、国分寺市の給食と収穫体験を特集している。 国分寺市は市内10校全校で給食に地場産野菜を取り入れている。また、収穫体験も全校で実施。市立第六小学校では、 市内2農家から30種類以上の野菜を直接仕入れて、11月には全体の半分の野菜が地場産で占められた。1、2年生が畑でダイコンを収穫し、後日、 サラダや浅漬けとして給食に出している。また、葉を持ち帰らせ、保護者から料理方法などのレポートをもらっている。野菜を納める農家は、 「以前は畑にいたずらをする子どもが多かったけれど、ほとんどなくなった」と語っているという。(99.12.31)

●長野県穂高町、発芽玄米を給食に取り入れる
朝日新聞99年11月29日付によると、長野県穂高町では週に1度白米に発芽玄米を3割程度混ぜて給食に出している。発芽玄米は、 玄米を発芽させたもので栄養の吸収がよくなるなどの効果が指摘されている。(99.12.31)

●北海道、JAら米飯助成
日本農業新聞99年9月16日付によると、JA北海道中央会、 ホクレンなどで構成する北海道米販売拡大委員会は本年度から1億8800万円を予算化し、小中学生米啓発事業として学校給食用の米に対する助成、 総合学習資料作成などを行う。(99.9.29)

●ナタネ栽培→学校給食→自動車燃料
朝日新聞99年9月9日付けによると、滋賀県愛東町は、「菜の花エコプロジェクト」をすすめている。町内の休耕田で菜の花を栽培し、 菜種油を学校給食用に使ったあと、その廃油を精製して公共施設の空調や自動車の燃料にする計画。昨年10月に休耕田0.3ヘクタールに植え付け、 今年6月に小学生が収穫。7リットルの燃料になった。今秋から約2ヘクタールを植え付け、来年ナタネ油として学校給食に利用。 廃油からの精製が軌道に乗れば、公用車に使い、一般への販売も計画。徐々に作付け面積も広げる予定。(99.9.29)

●北海道、地場産米の給食使用増える
 北海道新聞8月4日付によると、北海道内の学校給食で、地場産米を使用する自治体が増えている。同紙の調査では、旭川、江別、北広島、 士別の4市に加え、上川管内の東川町、上富良野町、美瑛町、空知管内の南幌町、栗山町、月形町、新十津川町、石狩管内の新篠津村、浜益村、 渡島管内の上磯町、大野町などが実施。旭川市は、不足分を近郊地域でおぎない、また、 上川町はもち米生産が中心であるため近郊の当麻町産を使用するなど、地域での取り組みもある。大きな原因は給食用政府米値引きの削減だが、 保護者の声や安全性、農業振興、地場産の消費拡大や地場産業を子ども達に知ってもらうなど、様々な効果が期待されている。(99.8.24)

●玄米まぜご飯導入
信濃毎日新聞6月16日付によると、長野県穂高町学校給食センターでは、週4、5回の米飯給食を実施しているが、6月に3回、 玄米を2~3割含む米飯を給食に出す。発芽玄米を利用し、通常の炊飯と同様に炊飯する。試食の意見をまとめて、定期的に実施するかどうかを検討。 (99.8.5)

●給食パンに道産小麦をブレンド
北海道新聞99年6月26日付によると、北海道十勝管内では本年度より同管内産小麦の「ホクシン」を給食用パンとして利用をはじめた。 ホクシンだけではパンがかためになるため、5割をホクシン、5割は輸入小麦としている。北海道学校給食会の取り組み。同会では、 状況をみて他の地域にも広げたいとしている。

●神奈川県、県産米使用
日本農業新聞7月8日付によると、神奈川県では4月より学校給食米飯に県産自主流通米を使用している。政府米への補助金が削減されたことから、 県学校給食会がJA神奈川経済連によびかけて実現したもの。品種はキヌヒカリ8割、アキニシキ2割で、全量県産という。 今年度は約2500トンを供給予定。

●群馬県、県産農産物利用促進の協議会が発足
上毛新聞99年7月6日付によると県学校給食県内産農産物等利用促進協議会が発足した。行政、農業生産団体、流通団体、学校関係者で構成される。 牛乳、卵、豚肉、米などは、県内産の利用実績が多いものの、野菜類などは生産、流通面で利用が進んでいなかった。 県産品の利用拡大や地域教育の意味からも県を上げて取り組むという。

●ご飯持参は白ごはんのみ…
99年5月24日付の河北新報によると、岩手県西根町が導入した小中学校給食のご飯持参で、その方法をめぐって混乱が起きている。西根町では、 4月に稼働した学校給食センターに炊飯設備をつくらず、主食のご飯を各家庭で持参することとした。この米飯について西根町教育委員会では、 ふりかけや味付けご飯などを禁止し、白米のみに限定。殺菌効果を考えた梅干しもだめだという。これに対し、保護者からは反対の声が上がっている。
なお、同記事では、岩手県内の久慈市、藤沢町、松尾町もご飯持参型の給食を実施しており、こちらは、ご飯に特別な制限はないとしている。 (99.6.1)

●埼玉県、地場産小麦うどんを全校に
99年4月30日付、日本農業新聞によると、埼玉県学校給食会は、99年度から全公立小中学校の学校給食に県産小麦100% でつくる地粉うどんの供給をはじめた。98年12月からの県教育委員会による県産米100%利用に続く地場農産品利用である。また、 地元産野菜などの取り組みも徐々に増えているという。これまで、うどん用の小麦は外国産だった。地粉うどんは、 やや色が黒く独特の香りはあるが好評とのこと。なお、年間供給量は、精粉ベースで約300トン、うどんにして約320万食としている。 (99.6.1)

●栃木県、県産大豆を学校給食に
99年5月8日付、日本農業新聞によると、栃木県では県産大豆の普及拡大のために、学校給食で使用する大豆に補助金を出している。これは、 県とJA中央会が輸入大豆と県産大豆の差額の一部を年額約200万円ずつ補助するもので、昨年度より開始している。大粒大豆、水煮大豆、みそ・ 豆腐・納豆への加工品という形で使用されている。本年度は、年30トン程度が利用される見通しという。
栃木県では、減反政策により転作品目として大豆の作付けが進んでいる。(99.5.15)

●長野県、県産自主流通米を学校給食へ
 信濃毎日新聞99年3月29日付によると、長野県では、4月より、学校給食に使用する米を政府米から自主流通米に切りかえる。 県を4つのブロックに分け、それぞれ地元産の米を食べてもらうという。政府米との差額は、県経済連が負担。約650校で週3回程度、 年間約2000トンの消費量になる。ただし、2000年度以降の負担について県経済連は態度を決めていないという。(99.4.23)

●愛媛県今治市、減農薬米を学校給食へ
 日本農業新聞99年4月16日付によると、愛媛県今治市では、 市内24小中学校のすべてで今年度から地元産の減農薬米を学校給食に使用している。市内の米飯給食は週3回で、米の品種はヒノヒカリ。 減農薬の内容は、除草剤1回のみで、それ以上農薬を使用した場合、学校給食用には使用しないとしている。(99.4.23)

●北海道、道産米から町産米へ
 日本農業新聞99年3月16日付では、北海道の小中学校給食に町村産米を使用する動きが広がっていることを報じている。新年度では、 10町村を超す見通し。そのうち、桧山管内今金町では、給食センターで町内産きらら398に切り替える。上川管内美瑛町では、 自校炊飯で町内産きらら398Bに切り替える予定で、町が補助を予定する。(99.4.1)

●宮城県、県産米を学校給食に
 河北新報99年3月17日付では、宮城県の県産米を学校給食に使用している動向を報じている。県、県教委、 JAなどで普及委員会をつくっているが、98年12月より自主流通米として県産ササニシキを扱い、政府米との差額分を県と市町村、 JAが負担している。現在54市町村が利用しており、99年度からはさらに4市町が加わる。(99.4.1)

●茨城県独自品種米を給食に
 日経産業新聞99年2月24日付では、茨城県と県経済連などが、県の独自開発品種米「ゆめひたち」の本格的な生産がはじまることを伝え、 その中で、98年米の販売量約1800トン中半分が県内の小中学校学校給食用に供給されることを報じている。(99.4.1)

●兵庫県、県産米の助成金開始
 神戸新聞99年3月8日付では、社説に「兵庫産のおいしい米が給食に」と題し、 学校給食が食習慣に大きな影響を与えることや郷土意識などの教育効果があることを訴え、兵庫県が今年度(99年度) よりはじめる地場産米使用の助成金制度を評価している。助成金の内容は、県産の自主流通米を使用する場合、政府米との価格差を、県が4分の1、 市町が4分の1、生産者団体が2分の1負担するというもの。(99.4.1)

●群馬県、県産米の差額補填
 上毛新聞99年2月24日付によると、群馬県教委が、99年度から県産米の使用を決めた。あわせて、 県産の自主流通米が政府米より高くなった際、県教委が差額を補填する補助事業をはじめる。米の購入窓口である県学校給食会に対し、 最高2千万円を限度に行う。(99.4.1)

●新潟県黒川村、無償備蓄米で米粉めん
 日本農業新聞99年3月7日付によると、黒川村では、政府備蓄米の無償交付を受けて、米粉めんをつくり小中学校の給食に出した。 「学校給食等用政府備蓄米交付要領」では、給食本体、試食、料理講習での交付を認めており、今回は、米粉加工品にもその枠を広げたもの。 (99.4.1)

食材・関連事項
●米飯国費助成廃止とご飯給食~愛媛県
愛媛新聞99年11月29日付は、国の米飯給食用助成廃止について愛媛県の動向を特集している。財団法人愛媛県学校給食会は、従来、 国から年間約2000万円の業務委託費を受け取っており、これが消滅する。また、 助成を受けるために各市町村の教育委員会は同会を通じて米を注文していたが、助成がなくなるため必ずしも同会を通す必要がなくなる。一方、 西条市、今治市、北宇和郡三間町は、地元産の米を給食に供給し、経費増分を市や町が負担している。これらの動きが県内にも広がりつつある。 (99.12.31)

●米飯国費助成廃止とご飯給食~福島県
福島民友99年11月21日付は、国の米飯給食用助成廃止について福島県の動向を特集している。岩瀬村では、 10月末に来年度からのご飯のみ弁当持参を保護者に通達、説明不足との声があがっている。福島市、いわき市、会津若松市、会津高田町、 会津本郷町、北会津村などでは、値上げの方針。新鶴村は村負担を継続する。郡山市では、地場産米を使い、米の価格幅の中で負担分を吸収する方針。 (99.12.31)

●政府米、学校給食には新米のみ
日本農業新聞99年11月13日付けによると、食糧庁は99年産の新米も学校給食用などに限定し、古米は備蓄米などへと振り分ける。 (99.11.21)

●学校給食用牛乳の補助金見直しへ
日本農業新聞99年7月26日付によると、農水省の乳製品・加工原料乳制度等検討委員会は、学校給食用牛乳の補助金制度見直し案をまとめた。 従来の一律補助から、地域条件ごとの補助へ転換する見通し。また、入札制度の導入、HACCPの早期導入などを提言している。(99.8.5)

●牛乳補助金削減案
 毎日新聞99年3月4日付他各紙によると、自由民主党の農林部会合同会議は「新たな酪農・乳業対策大綱」をまとめ、 この中に学校給食牛乳補助金を2000年に見直すことを盛り込んだ。(99.4.1)

●ご飯の持参を求める、岩手県西根町
 日本農業新聞99年3月16日付によると、岩手県西根町教委は、9小中学校で行っている週4回の米飯給食について、新年度から児童・ 生徒に持参させることを決めた。4月から稼働する給食センターに炊飯釜がないことと設備費用がかかること、さらに、 国の値引き販売がなくなることを理由にしている。保護者らが人口の1割近い約1700人の署名を集め、米飯提供継続を求める陳情を提出したが、 町教委で不採択になっている。(99.4.1)


●栃木県で干瓢の無償提供
 99年1月8日付の食品新聞によると、栃木県干瓢商業協同組合は、県内の小中学校、定時制高校約300校に、合計640kgの干瓢を無償提供。 今年で3年目となる。(学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 地場産・産直 ]

時事情報 1999年 環境関係ほか

●神奈川県で養豚業者が給食残さなどを飼料化
流通サービス新聞99年12月14日付けによると、神奈川嫌悪養豚農家3社は学校などの給食残さを飼料化する事業をはじめる。農業法人を設立し、 風力や太陽光などのエネルギーを利用した発酵プラントを開発、契約農家で飼料を利用する。かながわ異業種交流センターが支援する。。 (99.12.31)

●愛知県などの生ごみ処理機の動向
中日新聞99年12月11日付けは、ごみを見に行こう「給食に生ごみ処理機」と題し、学校現場での生ごみ処理機について特集している。 それによると、名古屋市では、ごみ減量施策の一環として99年に市内28小学校へ生ごみ処理機を導入した。また、 名古屋市名東区の引山小学校では「引山エコワールド事業」の一環で先行して生ごみ処理機を導入、たい肥作りや環境教育に役立てている。 春日井市では、センター給食だが、市内37校中20校に処理機を導入した。食べ残しなどをたい肥化するもので、環境教育がねらい。 福井県武生市は、家庭用処理機を教育教材として全校に導入。岐阜県安八町では給食センターに導入し、ごみ減量と有機栽培推進に活用している。。 (99.12.31)

●広島市内、給食残菜の堆肥化すすむ
中国新聞99年10月5日付によると、広島市内の小学校で、給食残菜などを堆肥にかえる装置の導入がすすみ、109校中20校が導入している。 できあがった堆肥は、授業での栽培や下段、植木の肥料、PTAなどへの無料配布を行っている。(99.10.23)

●広島県で生ごみ堆肥化が広がる
99年5月16日付の中国新聞によると、広島県内の小中学校で、学校給食から出る生ごみを堆肥化する取り組みが広がっている。 4年前から取り組みをはじめ、徐々に生ごみ発酵処理機の導入を進めている。ダイオキシン対策のため、学校の焼却炉が使えなくなり、 学校からでるごみを減らすことを目的にはじまった。この取り組みをきっかけに、堆肥を活用して、地域の農業に利用してもらったり、 学校田で堆肥を利用したりと、地域交流や環境教育にも活用がはじまっている。広島市では、 将来的に学校給食を実施する市内116校すべてに生ごみ発酵処理機を導入するとしている。(99.6.1)

●給食廃油からカラー印刷インク
 日経産業新聞99年3月24日付では、凸版印刷が植物性廃油を使いカラー印刷用インクとして再生する技術を開発したと報じている。 学校給食や外食産業などの廃油を対象としている。(99.4.1)

 

[ 99/12/31 環境関係 ]

事例 T・Tによる牛乳の栄養指導

●事例 T・Tによる牛乳の栄養指導

99年夏の学習会で事例報告をお願いした三重県松阪市学校栄養職員の牧戸悦子さんから、 事例報告に関連した資料をいただきました。ありがとうございました。

第一学年 学級指導学習指導案

場所  第一学年教室
指導者 教諭
    学校栄養職員


1、題材 牛乳を飲もう

2、 目標 牛乳には骨や歯を作ったり丈夫にしたりするカルシウムが多く含まれていることを知り、 進んで飲むようにする。

3、指導にあたって
(1)題材について
 国民栄養調査の結果では、毎年のように日本人のカルシウム不足を指摘している。また、虫歯や骨折等、 カルシウム不足の因果関係が取り上げられている。このようなことから、本題材にある「牛乳を毎日なぜ飲むのか」という素朴な疑問に気づかせ、 牛乳に含まれる栄養素が骨や歯をつくることを自分自身の体作りや健康の維持という視点でとらえることができるよう考えさせたい。
(2)指導について
 給食に毎日でてくるものを思い出させ、その中の飲み物について取りあげる。そして、なぜ毎日牛乳が出てくるのか疑問を持たせた後、 1年生の児童にも興味や関心がもてるように、牛乳の絵を書いた布、 牛乳とジュースのカルシウムを比較した骨の絵や腹話術人形を使って気づかせようと考えている。また、牛乳だけではなく、 牛乳からできる乳製品等もカルシウムがたくさん含まれていることを知らせたい。
 また、近年には、牛乳アレルギーの児童が増加しているので、該当している児童への配慮が必要であると考えなければならない。 牛乳の代用食品として、カルシウム面では小魚類や海草類があげられることも伝えたい。

4、展開

学習活動
指導形態
指導形態
T1の留意点
T2の留意点
*学校栄養職員(給食の先生)について知る。 学校栄養職員の紹介をする。
*毎日給食に出てくる飲み物を発表する。 毎日の給食を思い出させる。
*なぜ、毎日給食に牛乳が出てくるのか発表する。
 ・栄養がある。
 ・体が大きくなる。
 ・骨が強くなる。
発表者をあてる カードをはる
*牛乳にはカルシウムがたくさん含まれていることを知り、その働きについて知る。
 ・骨や歯を強くする。
 ・心臓がうまく働く。
 ・血を止める。
 ・イライラをおさえる。
牛乳の絵をはりカルシウムという言葉を理解させる。
児童の意見と比較する。
*オレンジジュースとカルシウムの含まれる量を比較する。 カルシウムの量をカードではる。
カルシウムの数を数えさせる。
*牛乳からできている食品を知る。
 ・チーズ
 ・ヨーグルト
 ・バターなど
牛乳の絵を見せながら、牛乳からできている食品を理解させる。
*牛乳が大変美味しい飲み物であることに気づく。
*牛乳が成長のためには大変大切であることに気づく。
牛乳を飲まず嫌いの、腹話術人形を登場させ、牛乳が大変美味しい飲み物であることに気づかせる。
*カルシウムが多い牛乳の代用食品を考えて発表する。 牛乳の代用食品を考えさせる。
*本時の学習で分かったことを発表させる。 本時の学習内容を考えさせる
*学校栄養職員(給食の先生)に、礼を言う。 学校栄養職員に礼を言わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


5、授業を終えて
 児童は、毎日給食に出てくる牛乳という身近な食品を取り上げたため、意欲的に取り組めたようである。腹話術人形を用いたり、 牛乳のカルシウムの含有量を骨の本数で視覚に訴えることができてよかった。また、牛乳に含まれるカルシウムの多さを実感でき、 オレンジジュースの飲み物とも比較することができた。
 学級担任と学校栄養職員と連携を取りながらのT・T実践ということで、専門性を生かした、食に関する指導面では学校栄養職員、 児童への働きかけなどは学級担任と役割分担したので、授業は比較的順調に進めることができたように思われる。
 また、本時の学習内容を記憶している児童も数人おり、学校栄養職員に「牛乳飲んどるよ」とか「今日の給食美味しかった」などの言葉かけもあり、 食に関する興味や関心が持たれるようになったようにも思われる。

[ 99/12/31 食教育 ]

時事情報1999年 食教育関係

●宗教上の配慮中止
 毎日新聞8月19日付によると、三重県津市の小学校では、イスラム教徒のバングラディッシュ人児童向けに、給食で豚肉が使われる際、 他の肉で代用する特別食を2年間続けたが、この春から急に取りやめた。三重県教委を交え、市教委と児童の両親との間で話し合いが続く。 (99/8/24)

●石川県、栄養士が教科指導
 北国新聞99年4月16日付によると、石川県教育委員会は、今年度から学校栄養職員が校長の申請に応じて特別非常勤講師として登録され、家庭、 社会、保険、総合学習などの時間に教壇に立ち指導するシステムを導入。当初はチームティーチングを行い、その後栄養士単独で教科指導を行う予定。 (99/4/23)

 

[ 99/12/31 食教育 ]

時事情報 その他もろもろ 1999年

●平成12年度の文部省、給食関係予算要求
日本食糧新聞99年10月29日付によると、平成12年度の学校給食関係概算要求額は、154億6098万円となった。前年比0.9%減。 増えたのは、食に関する指導・衛生管理の充実として、シンポジウムや調査研究費用である。また、健康教育の推進に関する調査研究なども増加対象。 減少したのは、児童生徒減少にともなう栄養職員の減少による研修費、また、給食費補助や施設整備などが削減されている。(99.11.21)

●公文書開示請求と学校給食
中日新聞99年7月24日付によると、愛知県は98年度の公文書公開制度運用状況をまとめた。その中では、 県政一般に続いて教育関係の請求が多く見られた。学校給食の使用食器材質調査表なども請求があったという。

●日本人の栄養所要量改定
日本経済新聞6月28日付によると、厚生省公衆衛生審議会は、「日本人の栄養所要量」第六次改定案をまとめた。 エネルギー摂取量の区分を引き下げる、過剰栄養摂取での健康被害が考えられるものに対して許容上限値を定めるなどの改定を含む。来年度より適用。

●学校の環境基準見直し
産経新聞99年6月22日付によると、文部省は、学校環境衛生の基準を見直すため、日本学校保健会に検討を委託し、3年かけて議論をまとめる。 新築建材などに含まれる化学物質による疾駆ハウス症候群が増えていることをうけての措置。

●厚生省、O157・食中毒関連情報

厚生省は、同省のホームページにおいて、O157・食中毒関連情報を定期的に発表しています。学校給食とは限りませんが、 食中毒やO157の発生動向を知る情報源です。(4月1日)

●牛乳補助はどうなる、酪農・乳業対策大綱より

農林水産省は、99年3月に「新たな酪農・乳業対策大綱」を発表しました。その中で、学校給食への供給については、

1:学校給食への牛乳の供給は、牛乳消費の定着・拡大を促進し、酪農・乳業の安定的発展を図る上で重要であるほか、児童・生徒の体位・ 体力の向上にも資するものであることから、引き続きその推進を図ることが必要である。
2:しかしながら学校給食用牛乳供給対策については供給事業者が固定的であり供給価格が割高であること、 実質的に零細補助となっていること等の批判があるため、そのあり方を見直し、競争条件の整備等により、速やかに効率的な実施方式に転換する。

としています。なお、2000年度より、実施方式を改めるとしています。具体的にどのようなものになるかは分かりませんが、 米と同様に現在行われている補助の削減が十分に予想されます。(4月1日)

 

[ 99/12/31 その他 ]

合理化通知

 学校給食調理の民間委託については、1981年7月の臨時行政調査会第一次答申ではじめて触れられ、2年後の1983年3月、 臨時行政調査会第五次答申、1984年7月の臨時行政改革推進審議会意見書、9月の総務庁勧告が出され、 それを受けた形で1985年1月21日に文部省体育局長から各都道府県教育委員会教育長あてに「学校給食業務の運営の合理化について」 が通達されます。これが、「合理化通知」通達です。


学校給食業務の運営の合理化について

 学校給食は、児童生徒の心身の健全な発達に資し、かつ、国民の食生活の改善に寄与することを目的とし、 学校教育活動の一環として実施されており、わが国の学校生活に不可欠のものとして定着しているところでありますが、その業務の運営については、 臨時行政調査会、臨時行政改革推進審議会及び総務庁から合理化の必要性が指摘されているところであります。
 ついては、今後、各設置者が下記事項に留意の上、地域の実情等に応じた適切な方法により運営の合理化を推進するよう、 貴管下の市町村教育委員会等に対し指導及び周知徹底を願います。



1 学校給食業務の運営については、学校給食が学校教育活動の一環として実施されていることにかんがみ、これを円滑に行うことを基本とすること。
また、合理化の実施については、学校給食の質の低下を招くことのないよう十分配慮すること。

2 地域の実情等に応じ、パートタイム職員の活用、共同調理場方式、民間委託等の方法により、 人件費等の経営経費の適正化を図る必要があること。

3 設置者が、学校給食業務の合理化を図るため、パートタイム職員の活用、共同調理場方式、民間委託を行う場合は、 次の点に留意して実施すること。

(1) パートタイム職員の活用
ア パートタイム職員の勤務日数及び1日の勤務時間は、常勤の職員のそれと明確に異なるものとすること。
イ パートタイム職員に対しては、必要に応じて適切な研修を行うこと。

(2) 共同調理場の採用
ア パートタイム職員の活用を図るとともに、調理員の稼働の効率を高めること。
イ 近代的な施設設備を導入し、衛生管理及び労働安全の面に配慮しつつ調理工程の合理化を図ること。

(3) 民間委託の実施
ア 献立の作成は、設置者が直接責任をもって実施すべきものであるから、委託の対象にしないこと。
イ 物資の購入、調理業務等における衛生、安全の確保については、設置者の意向を十分反映できるような管理体制を設けること。
ウ 設置者が必要と認めた場合、委託者に対して資料の提出を求めたり立入検査をする等、運営改善のための措置がとれるよう契約書に明記すること。
エ 受託者の選定は、学校給食の趣旨を十分理解し、円滑な実施に協力する者であることの確認を得て行うこと。

4 昭和35年12月14日付け体育局長通知「学校給食に従事する職員の定数確保および身分安定について」 において示した学校給食調理員の配置基準は、その後における共同調理場の普及、施設設備の近代化、 パートタイム職員の増加等により現時の学校給食の実状に合致しない点もみられるので、設置者においては、 地域や調理場等の状況に応じて弾力的に運用すること。

5 昭和46年4月8日付け体育局長通知「学校給食の食事内容について」のうち4-(1)については、学校給食法第6条(経費の負担) の趣旨に基づき、学校給食の調理の原則を示したものであって、学校給食業務の民間委託を禁ずるものではないこと。

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 その後も、1986年6月に臨時行政改革推進審議会答申、1987年7月新行革審答申、1989年12月新行革審答申などで引き続き、 「合理化」が指摘されてきました。
 さらに、1994年10月に自治省が全国の自治体に対し行財政改革大綱の作成を指示し、民間委託の推進と職員の削減を求めました。これにより、 自治体は、人件費削減=民間委託という構図から学校給食調理の民間委託を進めています。


(学校給食ニュース9号 1999年2月) 

 

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

合理化通知の一端は崩れています

 1997年9月、文部省の保健体育審議会(保体審)が、保体審答申を文部大臣に行いました。病原性大腸菌O-157により、 抜本的に学校給食のあり方が再検討され、「合理化通知」ですすめられた「パート化、センター化、民間委託化」とは一線を引き、 センター化よりも自校方式が望ましいとの姿勢を打ち出す内容となっています。

保体審答申抜粋


(学校給食の今日的意義)
 学校給食は、栄養バランスのとれた食事内容、食についての衛生管理などをじかに体験しつつ、学ぶなど、食に関する指導の「生きた教材」 として活用することが可能である。こうした学校給食の活用により、 栄養管理や望ましい食生活の形成に関する家庭の教育力の活性化を図る必要がある。さらに、学校給食は、 社会全体として欠乏しているカルシウムなどの栄養摂取を確保する機会を、学齢期の児童生徒に対して用意しているという機能を果たしている。
 このような学校給食の今日的意義と機能を考えると、現在、完全給食に実施率が約六割である中学校については、 未実施市町村において積極的な取組が望まれる。

(食に関する指導体制)
 食に関する指導体制については、食に関する指導の充実を図るためにも、教育活動全体を通して行う健康教育の一環として、 食に関する専門家である学校栄養職員の積極的な協力を得て、関連教科において発達段階に沿った指導を行うとともに、 学校給食の今日的意義を踏まえて、適切な指導に取り組む必要がある。このため、教科等の特性に応じて、 学校栄養職員とティームを組んだ教育活動を推進するとともに、学校栄養職員が学級担任等の行う給食指導に計画的に協力するなど、 学校栄養職員の健康教育への一層の参画を図ることが必要である。

(学校給食の調理体制等)
 学校給食を活用した食に関する指導を一層充実する観点から、学校栄養職員が個々の給食実施校に配置され、これにより、 児童生徒の実態や地域の実情に応じて、豊かできめ細かな食事の提供や食に関する指導が行われることが望ましい。したがって、 このような食に関する指導等が可能となるような単独校調理場方式への移行について、運営の合理化に配慮しつつ、 児童生徒の減少等に伴う共同調理場方式の経済性や合理性と比較考量しながら、検討していくことが望ましい。
 また、献立内容にしても、児童生徒が食事内容を主体的に選択して食べることを通して、食事に関する自己管理能力を育むため、 カフェテリア方式等を取り入れることが期待される。
 さらに、統一献立については、児童生徒の事態や学校の実情に応じた食事の提供を行うとともに、 食材の共同購入について衛生管理を徹底させるため、学校栄養職員が配置されていないなど特別の事情のある場合を除き、 縮小の方向で検討すべきである。

(下線、編集者による)


(学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

民間委託と職安法

 各地で自治体が発表する行財政改革大綱に含まれる調理の民間委託ですが、直営調理員と異なり、法律的な問題を抱えています。
 民間委託の場合、関係する法律として、職業安定法と労働者派遣法が関連しますが、とりわけ、職業安定法44条(労働者供給事業の禁止) が問題になります。
「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、 又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」
 給食調理という食品製造業は、労働者派遣法で認められた職種ではありません。
 調理の民間委託の場合、認められる形としては「請負」です。この職安法を前提として、 労働省通達によって請負であるためには業務指示などの管理を業者自身が行うことになっています。つまり、栄養士が、 直接民間委託の調理員に業務指示などを行えず、受託した業者が業務指示を与えることになっているのです。
 また、機械、設備、材料等も業者の責任と負担で準備することが請負の条件になっていますが、これも、問題点のひとつです。
 さらに、業者の企画や専門的技術、経験で業務を処理することになっているため、献立の問題もあります。献立については、先の「合理化通知」 通達で、委託の対象ではないと明記しており、労働省通達と文部省通達の間での矛盾点となっています。
 これらの矛盾の中で、現場に立つ栄養士はもっとも難しい立場に置かれます。
 1986年に文部省体育局長が通達した「学校栄養職員の職務内容について」では、
(栄養管理)
4 学校給食の調理、配食及び施設設備等に関し、指導、助言を行うこと。
(衛生管理)
7 調理従事員の衛生、施設設備の衛生及び食品衛生の適正を期するため、日常の点検及び指導、助言を行うこと。

 となっていますが、職安法44条から、栄養士は民間委託の業者に対して「指示書」の形で文書による献立等の指示をします。そして、 途中の「中間検査」および「出来上がり検査」によるチェック以外はできないことになっています。

初出記事が古いため、情報が現状と合わなくなっていることがあります。
最新の情報を別途入手してください。

(学校給食ニュース9号 1999年2月) 

 

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

民間委託は誰のため?

 学校給食の民間委託は、誰のため、何のために行われているのでしょうか。
 合理化、行政改革によって押し進められる民間委託は、その実、公務員の削減、人件費の抑制を第一に掲げています。しかし、 人件費を抑制した分の委託費との差額は、様々な試算はありますが、行政の中に占める支出としては決して大きな額ではありません。
 また、中長期的には委託費の方が高くなるのではないかという指摘もあり、現在、いくつかの地域で積極的に試算の取り組みがはじまっています。
 ところで、学校給食調理の民間委託問題を考えるときに、もっとも大切な視点は、他の問題と同様、子どもたちに配慮されているか、 子どもたちの食教育に役立っているかという点です。
 逆説的に言えば、もし、仮に、民間委託することが子どもたちへの配慮となる、または、子どもたちの食教育にとって工夫の余地が大きいのなら、 民間委託でもかまわないわけです。
 この点で、調理の直営方式と民間委託とを比較したとき、民間委託では、直営方式より工夫の余地が狭くなることは間違いありません。
 民間委託と直営方式を単純に比較すれば、

職業安定法44条により栄養士、教員との間でのコミュニケーションや工夫がやりにくくなります。
安い賃金などにより、パート労働者をはじめ、定着率が低くなり、安定した給食づくりには不安が残ります。
調理員の学校行事への参加などが難しくなり、学校で子どもたちに接する人の間に、明らかな格差が生まれます。
調理と学校給食に対する責任体制があいまいになる恐れがあります。

 この他にも違いはいくらでもあります。

 この民間委託と直営方式の差が明らかになるほどに、学校給食における子どもたちへの配慮と工夫が、 果たして現実の環境の中で行われているのでしょうか。
 もちろん、厳しい条件下、日々、 子どもたちのために骨身を尽くして取り組む調理員さんによって学校給食が守られていることは言うまでもありません。
 しかし、配置人員や身分保障など地域的な条件がどのようなものであっても、地域、保護者、調理員、栄養士、教員との間の連携がとれ、 子どもたちへの給食の質をよくする、食教育につなげるという面での話し合いがもたれ、公開され、交流できていなければ、 民間委託と直営の差ははっきりとしてこないことも確かです。
 これは、調理員だけの問題ではありません。調理員、栄養士、教員、保護者、地域がどのような学校給食を行ない、 どのような食教育を考えているのかという問題です。
 調理の直営を守ることが、実は、学校給食の質や工夫や食教育としての幅の広がりを守ることであることを明らかにするためには、 学校給食で行われている取り組みを見つめ直し、改善すべき点は改善し、公開していく、日々の取り組みが一番の近道のようです。
 ある調理員さんの言葉です。
「予算がない、栄養士とのコミュニケーションがうまくいかない、学校が給食に理解をしない、人が足りない…文句を言うのは誰にでもできます。 しかし、今の体制の中ででも、調理員としてできる工夫は山のようにあります。保護者も、地域も、もっと学校給食や調理員に注文していいんです。 『調理員は大変ですね』と言っていただく前に、調理員は職業として誇りを持っているはずなんです。だから、こんな学校給食がいい、 こんな工夫がなぜできないのかを言っていただき、そこからどんな学校給食にしていくのかを考えていかなければならないと思います」

(学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

長野県茅野市、石けんへ

信濃毎日新聞99年6月15日付によると、長野県茅野市は年内にも給食用食器洗浄剤を合成洗剤から粉石けんに切り替える。 自動洗浄機を使用しているところでは合成洗剤の使用を続ける。調理員の手荒れ対策や諏訪湖の汚染防止などから。(99.8.5)

 

[ 99/12/31 石けん・化学物質 ]

愛知県東海市からの報告

●愛知県東海市からの報告

99年10月16日土曜日に東海市安全で豊かな学校給食を考える会の月例会が開かれ、 そこで報告された東海市の民間委託に関する動向を報告します。
9月の上旬、東海市安全で豊かな学校給食を考える会では、9月の定例市議会を前に「学校給食の民間委託の中止を求める陳情書」を、10団体・ サークルの団体署名を添えて提出しました。
9月の下旬、その陳情書が東海市教育委員会の定例委員会に議題として取り上げられ、話し合われたそうです。結果的には否決されたものの、 私達の要望が門前払いされることなく、公式の場で議題として取り上げられたということは、一歩前進ということができるのではないかと、 会員と話し合いました。
今後の活動としては、考える会の会員を増やし、活動を広げることと、次の市議会に提出できるよう、 やはり民間委託反対の個人署名を集めることが主な活動になります。
東海市安全で豊かな学校給食を考える会

 

1999.10

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

時事情報 1999 アレルギー関係

●センターでアレルギー対応食

1月26日付の信濃毎日新聞によると、長野県松本市では、第二学校給食センターで小学生のアレルギー対応食を個別につくりはじめた。 同センターは1日1万食以上を調理している。対応は、医師の診断書がある希望者で、センター内に特別調理室を設置、卵、大豆、魚介類、油、 牛乳などのアレルギー児7名に個別対応している。肉スープを野菜スープにしたり、サラダの油を別のものにするなどして、 個別の容器に入れ配送する。
(学校給食ニュース10号 1999年3月)

●高崎のアレルギー対応

10月27日付の上毛新聞コラム「三山春秋」では、アレルギーと学校給食を取り上げている。群馬県高崎市では、 全児童の約100人にひとりとなる154名がアレルギーを持ち、弁当持参が14名、特別給食(除去食)が104名いるという(高崎市教委調べ)。 コラムでは、高崎市が単独校で全校に栄養士を配置しているために小回りがきくことを指摘し、高崎市以外にも地域をあげた配慮の必要を訴えている。
(学校給食ニュース9号 1999年2月)

●ラテックスアレルギーに注意

朝日新聞99年7月11日付では、天然ゴム (ラテックス)によるアレルギーに注意を呼びかける記事を特集している。ゴム手袋などでかゆみや腫れ、かぶれがある人が、 手術や妊娠時の検査などで使われたゴム製品により、激しいショック症状を起こすこともあるという。ごむの木に含まれるタンパク質が原因。 厚生省は3月に、医療器具によるラテックスアレルギーに対する注意を病院やメーカーに促した。しかし、家庭用品については対策が遅れている。 日本ゴム協会では、98年2月に「ラテックスアレルギーフォーラム」を発足している。 (1999年)

[ 99/12/31 アレルギー ]

東京都文京区 民間委託の方針について 栄養職員として反対

●東京都文京区

民間委託の方針
栄養職員として反対します。

以下、東京都文京区の小学校栄養職員の方から報告です。
民間委託方針について、意見・要望を区当局に挙げる機会があり、
提出した文章です。

 昨年7月から検討された文京区立学校給食のあり方検討委員会中間報告が下記の3諮問事項にそって6月3日に出され、 22日には臨時の栄養士会が召集され、学務課長の説明、7月16日には児童生徒を通してチラシの配布、19日には区の公報で特集号を組み、 区民への報告と説明会開催のお知らせ、「ご意見・ご要望をお寄せください」とありました。

1:「学校給食の多様な給食内容の充実について」では、
  ★献立の充実と給食方法の多様化。
  ★給食食器などの改善。
  ★ランチルームの整備。
   がうたわれています。

2:「栄養士等の給食従事職員の配置について」では、「今後、学校における栄養指導を真に効果的な教育活動として組織化、体系化するには、 新たな財政負担を考慮しつつ小・中学校への栄養士の全校配置をすすめることが必要です」とあります。

3:「調理業務の委託について」では、「……学校給食においても実績と信用ある民間の給食専門会社のノウハウを十分に活用することで、 これまでの区の自校単独調理方式を生かし、より効率的な給食運営をおこなうことが可能であるとの認識に達しました」「……さらに、 委託業者の選定にあたっては、保護者や教職員等学校関係者を含め、企画性・運営力・安全性・経費など多方面にわたる検討を行うことが必要です」 とあります。

 8月11日付けで、文京区立学校給食のあり方検討委員会中間報告書についての意見・要望があったらお寄せください。 と調理師始め栄養職員・学校長・共闘・給食主任に文書が送付されました。以下は、私が寄せた文書です。


民間委託にすることで本当にこどもにとっての学校給食は良くなるのでしょうか。
 その前に、「学校給食の多様な給食内容の充実について」で、○献立の充実と給食方法の多様化。○給食食器などの改善。○ランチルームの整備。 が挙げられていますが、こどものアレルギーが増加している今、環境ホルモンや遺伝子組み換え食品を排除し、石けん切り替え・ 無農薬有機農産物の使用を進めることがこどもの健康に寄与することと考えますが、お考えはいかがでしょうか。
 次に、給食運営の現状の中で関係職員の仕事の仕方や考え方に問題があり、民間委託の方向が出される要因になっていることは理解できますが、 では文京区の職員である調理師や文京区の給食運営に係わっている栄養士の意識改善に区当局がどれほど努力をされてきたのでしょうか。 区当局の責任を明確にしないまま、調理部門の民間委託化は一部であれ、 こどものために一生懸命に給食を作ってきた職員には納得のいくものではありません。
 O-157による食中毒予防対策として、文部省から出された衛生管理基準に基づいて、衛生に気を付けて調理作業が遂行されていますが、 それぞれの施設設備・食数の異なる中で、給食関係職員の経験・知識を生かし、研さんを積んで安全でおいしい・ 食教育の教材化できる給食づくりに取り組んでいる職員は少なくありません。栄養士が一方的に「指示」を出せば給食が充実・改善されるのではなく、 調理師と栄養士が知恵を出し合って作る給食が、今こどもにとって重要ではないでしょうか。「指示書」によって作られる民間委託の給食では、 将来にわたってこどもの側に立った「給食システム」と考えることはできません。
 長年、学校給食運営に係わってきた調理師には、「指示書」でマニュアル化できない多くの技能・技術が培われてます。 こどもを取り巻く社会状況の急激な変化の中で、「食」や「よりよく生きていく」 ための情報発信源として調理師を活用してゆくことが新たな行政改革として有効な手段となります。
 例えば、総合教育の中で石けんを使って食器を洗うこと・廃油を活用した石けんづくりは環境教育につながります。 大豆を育てみそやしょうゆを作ることで、食文化を知る機会となります。 学校給食を基に朝食や夕食の献立づくりのアドバイスや調理実習は地域との連携になります。無農薬・ 有機野菜を使うことで農家の人とのつながりができ、食料生産の学習に役立てることができます。 何よりも人間が一人では生きていけないことや人とのつながり・思いやりを育むことができます。 この貴重な財産をなくしてしまわない行政姿勢であってください。
 最後に、民間委託化の最大の問題点について述べます。
「給食業務の民間委託化」はどういう法律に裏付けられているのでしょうか。「労働者派遣法」は、中間搾取や強制労働を排除し、 労働者の雇用形態の民主化のために、労働者を派遣できる業務を16業務に限定しています。その中に給食業務は含まれていません。「職業安定法」 (第44条)「労働者供給事業を行うものから供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」とあり、 学校給食業務の委託は形式上「請負契約」の形を取るものの、実態としては調理業務のみを行う職員(社員) が学校調理現場に受託会社から派遣されているのと何ら変わらず、「職業安定法44条」に違反するものです。
「請負契約」とは何か。労働省通達によって請負であるためには業務指示などの管理を業者自身が行うことになっています。 栄養士が直接民間委託の調理師に業務指示など行えず、受託した業者が業務指示を与えることになっています。また、機械や設備・ 材料等も業者の責任と負担で準備することが請負の条件になっています。さらに、業者の企画や専門的技術・ 経験で業務を処理することになっているため、「献立」もこの範疇になります。
 法的には、献立作成も食材購入もできない、給食業務の民間委託化システムはこどものためにはなりません。区報ぶんきょう特集号に書かれてある 「学校栄養士が献立を作成することや学校が食材料の発注・品質の確認を行うといった基本的な枠組は変わらない…」は法的な裏付けがありません。
 給食業務の民間委託は「栄養士の業務の民間委託化」にほかなりません。学校給食を充実発展させる施策ではありません。 撤回されることをのぞみます。

文京区 五十嵐興子(栄養職員)
1999

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

大阪府堺市 報告・PTAで保護者投票 民間委託をどう考えますか?

●大阪府堺市

報告・PTAで保護者投票
民間委託をどう考えますか?

以下、大阪府堺市の向丘小学校PTA会長からのお便りです。
民間委託について、保護者の立場で真摯に考え、行動された結果を報告されています。これからの運動にとても参考になる方法です。

 初めてお便りを差し上げます。
 私は、3年前にO-157で大きな被害を出した大阪府堺市で市立向丘小学校PTA会長をしております。
 堺市では昨年10月、今後10年間で市内92の小学校の給食調理業務を順次民間委託していくという方針が突如発表され、 今年4月より第一陣17校の委託が強行されました。
 当PTAでは、当事者であり納税者であり主権者である保護者の意見が尊重されるべきであるという立場から、本年5月PTA内に 「給食特別委員会」を設置し、委員も公募して、当校の給食調理の現状や委託校での実状、民間委託のメリット・デメリットについて勉強しながら、 ニュースも発行して、保護者に関心を持ってもらうよう努力してきました。そして6月の実行委員会で、 「来年度の委託校が発表される前に自分たちの意思表示をしよう」ということで、保護者投票を行うことを決定しました。
 投票は子どもの数にかかわらず1世帯1票で、賛成・反対・保留の無記名投票とし、また「意見欄」を設けて、 自由に意見を記入してもらえるようにしました。その際保護者に配布する資料として、堺市教委の作成したパンフレットとともに、 私がたまたまインターネットで拝見した貴会のニュースの抜粋を保護者に配布させていただきました。
 投票の結果は次のとおりです。

有権者数    451名(世帯数)
投票総数    319名(投票率70.7%)
有効投票総数  318名

開票結果

賛成  24票( 7.5%) うち意見記入数 17名
反対  233票(73.3%) うち意見記入数176名
保留  61票(19.2%) うち意見記入数 42名
合計  318票      うち意見記入数235名

 このように、投票者のほぼ4人のうち3人が「反対」を表明し、保護者世帯の絶対過半数を超えました。
 私たちは、この結果を受けて7月19日、市教委に行き、当校の保護者の総意は民間委託に反対なので、それを尊重し、 来年度以降の民託導入はしないでもらいたいと申し入れました。また校長に対しても、このような結果を踏まえて努力してほしいと申し入れました。
 また、記入された意見は、どの結論かを問わず、どれもまじめに一生懸命考えていただいており、 このような取り組みをして本当によかったと思います。私達は235名全員の意見を28頁に及ぶ「意見集」にまとめ、全保護者に配布しました。
 当PTAとしましては、引き続き給食特別委員会を中心に、給食のあり方について勉強し、保護者の間で議論を積み重ねていきたいと考えています。
 なお、この保護者投票の取り組みは、8月3日付毎日新聞(関西版)の夕刊に大きく紹介していただきました。
 O-157の堺市で、ささやかではありますが、このような取り組みがなされたということを、 同じような動きのある全国の地域の仲間に紹介していただければありがたいと考え、またインターネットでお世話になった御礼も兼ねて、 ご報告をさせていただくことにした次第です。
 今後とも、よろしくお願いいたします。

向丘小学校PTA会長

1999

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

茨城県龍ヶ崎市 新設給食センター民間委託問題を考える

茨城県龍ヶ崎市

経費節減にはならないのになぜ?
新設給食センター民間委託問題を考える


龍ヶ崎市学校給食の現状
 茨城県龍ヶ崎市は、人口約7万人、小学校12校、 中学校5校があります。学校給食は、小学校1校を除く16校の約8800食を市中心部にある給食センターで実施しています。
 現在の給食センターは、1985年に操業し、現在、27人の正規調理員と16人の臨時職員で調理をしています。
 龍ヶ崎市は、首都圏のベッドタウンとして人口が増加しており、学校の新築などがあり、現状のセンターでは対応しきれないとして、 近隣に第2給食センターを建設していました。このセンターは、1999年4月より稼働し、中学校分の3500食をつくることになっており、 現在の給食センターの調理員合計43名を振り分ける形で調理を行う予定でした。
 ところが、98年11月、調理員と市当局の恒例交渉の中で、第2センターについては、調理業務を民間委託すると発表しました。 6月から検討をはじめ、10月はじめに方向を決定したとのことです。
 それにより、現在の臨時調理員16名は、3月末をもって解雇する方針となりました。

4カ月間の実施延期
 これに対し、自治労龍ヶ崎市職員労働組合は、1月末から直営の必要性を訴える請願署名をはじめ、2万を超す市民分を含む3万の署名が集まり、 市教育委員会に提出されました。しかし、2月24日の定例教育委員会で、20分程度の審議の後、不採択となりました。 傍聴した学校給食を考える市民の会メンバーは、「子ども達の教育環境を考えての議論や意見はほとんどなかった」と語っています。
  市議会分へは、市民29,114名にのぼる署名が集まり、議会へ提出されました。
 2月28日には、学校給食を考える龍ヶ崎市民の会や幼稚園長などと共同で集会を開催しています。そして、翌3月1日に市議会が開会、 民間委託予算を含む99年予算案が可決されました。
 請願については、9日に開かれた文教福祉委員会での審議となりましたが、他の案件のために審議されず、 かわりに民間委託実施を4カ月以上延期することになりました。結局、請願は不採択となり、 4カ月以上の実施延期のみが17日の市議会で決議されました。
 その結果、3月末で解雇される予定だった臨時職員16名は、4カ月間契約が延長されることになりました。

疑問の多い民間委託決定
 龍ヶ崎市が決定した第2センターの民間委託化にはいくつかの問題があります。
 まず、その決定過程に大きな問題があります。98年6月から市当局で検討し、10月に方針を出しているとしていますが、 教育委員会や学校給食センター運営委員会もこの方針を知らず、決定手続きが明らかではありません。
 行政改革の一端という、調理の民間委託で必ず持ち出される理由についても、当の行政改革懇談会で方針の報告や議論はされていません。 「市長の方針」というだけで決められているようにも見えます。
 次に、経費節減についてですが、この方針が示された98年12月市議会では、教育長が「5年後、10年後の経費節減のため」と説明し、また、 99年3月市議会では、「2、3年後の経費節減」としています。
 実際に、臨時職員16名の解雇による予算の削減は、年2,000万円であり、委託費として計上されているのは、5,225万円。これだけで、 3千万円強の負担増となります。
 民間委託は、年々委託経費が高くなったり、追加設備コストが高くなり、長期的にみて経費節減にならないことは、 すでにいくつもの地域で明らかになっています。
 それなのに、なお、委託当初から3千万のコスト増を見込んでいることに大きな疑問を感じざるを得ません。
 経費節減についての根拠がないことは、市当局自身も把握しており、民間委託する理由がどこにも見あたらないのです。
 もちろん委託業者は決まっていませんが、もし、議会で民間委託が決まった場合、市当局はどうするつもりだったのでしょうか。 すぐに決まるような状態になっていたのでしょうか?

市民の声はどこへ
 3月26日付読売新聞によれば、4カ月間の再契約を行ったある臨時職員は「市の仕打ちはひどいが、 子どもたちのことを考えると慣れた私たちが給食をつくるしかない」と語っています。一方、市長は、4カ月後には民間委託を予定通り行う方針です。
 市職員労働組合では、「センターから単独調理への移行や、カフェテリア方式の導入など、学校給食をよくしていく取り組みに対して、 今回の民間委託は逆行しています。当面は、直営維持を訴えていきたい」と引き続き運動を展開します。
 4カ月以上の延期とは、1学期中は民間委託しないということです。この期間には、市議選があり、議会もあります。
 龍ヶ崎市の市民は、今、子ども達と地域にとってどのような学校給食が望ましいか、考え、行動する時を迎えています。
 

 

(学校給食ニュース11号 1999年4月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

東京都北区

東京都北区

 98年4月から1小学校、2中学校で調理の民間委託を実施する予定です。

(学校給食ニュース0号 1998年2月)

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 東京都北区では、1998年4月から小学校1校、2中学校で調理委託が開始されました。教育委員会は、 98年11月の文教委員会において5カ年計画で全校を調理の民間委託とする方針を打ち出しています。しかし、 この方針に対しては異論が多く出されています。
 また、民間委託された学校で、調理の開始が7時30分頃から行なわれたのに対し、栄養士の勤務が8時台ということから、 食材の検収体制が整っていないという指摘や、そのためか、味のないゼリーが給食として出されたという指摘もあります。


(学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

東京都大田区

東京都大田区

 東京都大田区では、1996年から中学校の学校給食調理で民間委託がはじまりました。99年度ですべての中学校の調理が民間委託となり、 今後、小学校63校が対象になることは十分に予想されます。
 この大田区で、民間委託問題が起こってから決定するまでの過程を、当時運動に関わっていた方々の協力で、 主に区議会への陳情書をたどっていく形で紹介します。
 保護者、地域の人々が、なぜ、民間委託に反対したのか。汲み取っていただければ幸いです。資料を提供していただいた荒木規子さんからは、
「これらの陳情書が今後何らかの役に立つとすれば、それは、行政に対しての要望の方法ということではありません。 関わった者たちが望んでいるのは、民間委託に反対する人たちが、よく分からない人たちに向けて説明したり、自分自身がなんとなく、とか、 教育の一環だからとか、言葉にならない理由しか浮かばないときに読んでいただきたいということです。これらの陳情書には、 とても長い時間がかかっています。でも、自分の中に確信を持ったとき、自信をもって話すことができるようになりました。 民間委託されるということがどういうことなのか、なぜイヤなのか、それを説明できるようになる参考になれば、とてもうれしいです。 私たちが住んでいるところでは実りませんでしたが、全国で何かの役に立てるなら、こんなにうれしいことはありません」
 とのメッセージをいただいています。

 1994年11月、大田区報で学校給食調理の民間委託について説明が行われました。それ以前からも、 マスコミ報道などでこの問題を知っている人はいましたが、この区報によって様々な動きが表面化します。
 1995年2月、最初の陳情書が「大田区の学校給食を守る会」から出されました。
「この時のみんなの心情としては、経済効率だけで簡単に決められるのはおかしい。それに、保護者にも何も説明がなく、 区報だけで済ませるのは変だ。とにかく、4月からというのをやめさせたいという一点だけで集まり、出しました。だから、 ここから学校給食について取り組みをはじめた人がほとんどだったのです」

 

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大田区の学校給食を守るための陳情書

大田区議会議長殿

[陳情の趣旨]
 私たちは、大田区立の小中学校に学ぶ子どもたちの保護者です。
 現在の大田区の学校給食は、安全性を重視し、手作りを基本として、だしは鶏がらやかつを節、昆布などで丁寧にとり、カレールウも手作りです。 食器も「強化磁器食器導入5か年計画」が1991年に提案され、遅れがちながらも実施されています。 このような大田区の直営の自校方式は重要な基本であり、私たちが誇れる評価すべきところです。
 学校は単に、教科書だけによる学習の場ではなく、これからの社会に生きていくために必要な力を身につけていく場であるといえるでしょう。 多くの先生たち、養護の先生、そして給食調理員など一般の授業ではないところで働く人たちもすべて同じに、子どもたちや保護者に紹介され、 学校の一員として子どもたち、保護者に接しています。

 子どもたちが一日の大半を過ごす学校という教育の場に、4月から民間業者を入れるという今回の計画はあまりにも早急で、 理解するための時間も情報も少なく、私たち親の間には大きな混乱が生じています。
 すでに調理業務の民間委託を実施した区では、調理員の交替が目立つと聞きました。民間の調理員の多くがパートであることを考えると、 それは避けられないことでしょう。それでは経験による調理技術の向上も、子どもたちへの愛情も望むべくもありません。
 給食が教育の一環として行われているのは、食文化や食べ物の学習の場であると共に、作り手である、 永年積み重ねた経験と安定した技術を持った区の調理員さんと子どもたちの間に、感謝や思いやりの気持ちを育てる貴重な機会でもあるからです。
 こどもたちの健やかな成長を望むすべての親の願いを汲み取り、学校給食の調理業務の民間委託について、十分に時間を取って、 慎重に審議してくださることをお願い致します。

[陳情事項]
一、大田区の学校給食調理業務の民間委託について、十分時間を取って慎重な審議を望みます。
二、1995年度からの民間委託の実施を見送ってください。

1995年2月 大田区の学校給食を守る会

 

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 この陳情は採択され、1995年の導入は見送られました。その半年後、 次の議会では民間委託の導入が決まってしまうというところまできたときに、第2回目の陳情書を出しています。
「各自がなぜイヤなのかをかなり理解できたことから、反対する理由をハッキリ示さないで決定されるのはイヤだったので、 このような形で陳情書を出しました」
 この時には、5つの陳情書が出されています。そのうち4つを紹介します。

 

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大田区の学校給食を直営・自校方式のまま守っていくための陳情書

大田区議会議長殿

[陳情事項]
 学校給食の調理業務を民間委託業者に委託しないでください。

[趣旨]
 このたびの事務事業適正化計画の中の一つ、学校給食の調理業務を民間委託業者に委託しようとする提案について、これまで議会では 「経費が節減できる」「作る人が民間に代わるだけで他に変わりはない」「これまでよりも内容の充実した給食が可能だ」 「すでに実施している区では好評だ」というようなことが教育委員会から説明され、それに沿った話し合いがされていたようです。 学校給食の民間委託については、ただ目に見えるものや、すぐ目の前の経済の論理だけで決めてしまうのではなく、 公立学校の教育の一環として行う給食をどのようなものにしていくのか、どのような学校で、 子どもたちが育って欲しいと願っているのかということも十分考慮した上で審議をお願いいたします。
 2月11日付の大田区報は、「減らしたいのは『人』ではなく、『将来への不安』です」と書きました。 その将来の社会を担う子どもたちが育つ教育現場に大きな変化がもたらされることを、どのようにお考えでしょうか。民間委託されると、 給食調理室だけが分断され、学校関係者でも入っていけるのは栄養士かそれに代わる人だけになります。 さらに入っていけても直接口では指示ができないという法律も適応されるそうです。
 学校に通う子どもたちの顔が見えて、献立が作られ、発注・調理・食事・片付け・一日の反省。そしてそこに教室での授業との関わりや、 家庭とのやりとりなど、先生・調理員・栄養士・保護者等々、 子どもたちをとりまく大人たちの声が交じり合って啓発し合えてこそ学校給食だと思います。保護者も含め、学校関係者が入っていけない場所、 手の届かない場所を学校の中に作らないで下さい。
 私たちは、現在の大田区の学校給食に満足しているわけではありません。行政に望むこと、調理現場に望むこと、学校にも望み、 家庭にも期待することも沢山あります。それは大田区が提案している、民間委託すれば解決できるというものではありません。
 各分野の人たちがどのような給食を作りたいのか、どういうものを子どもたちに食べてもらいたいのかを誰もが考え、提案でき、 参加できるシステムをくずしてはなりません。学校全体が一つの責任でまとまった組織、 すなわちこれまで通りの対等な関係である直営方式だからこそできる大きく広がる可能性を、私たちは保護者として手放したくないのです。
 それは給食調理の問題だけではなく、それぞれが深く子どもたちに係わっていくことで、学校全体が心豊かに潤い、 大田の子どもたちが楽しくのびのび育っていく力になると信じているからです。
 どうぞ、経済の論理で、大切な教育現場を分断しないで下さい。
 これまでの直営方式のまま、さらに大田区の学校給食が改善され、素晴らしいものになっていくことを願ってやみません。

大田区の学校給食を守る会
平成7年9月28日

 

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大田区の直営・自校式の学校給食の存続を求める陳情書

[陳情の主旨]
 大田区は、区立小中学校の直営・自校式の給食を来年度以降も続けて行って下さい。

[陳情の理由]
 大田区は、現在、区立小中学校の給食の調理を民間業者に委託することを検討中であるといいます。これが実施された場合、給食の調理員は、 学校職員としての役割をどれ位になえるのでしょうか。
 私達は、学校給食という教育活動において「調理」はその中心的な部分にあたる、重要な教育活動である、と考えます。さらに、 保護者は憲法や教育基本法で保障されている親の権利として、この教育活動に積極的に関与できるはずだ、と考えます。
 従って、給食の現場に携わる人と親とが、給食に関して直接、具体的に話し合える関係が保障されなければなりません。これは、特定の「委員会」 や「懇談会」のような形式で親や調理員等の関係者の代表に限って行われるような話し合いを意味するのではありません。どんな親でも、 子供についてどの教職員といつでも話し合えるはずなのと同じように、どんな親でも給食についてどの調理員とも日常的に話し合え、 お互いに必要な要求は出し合える環境が理想的なのです。私達は、この理想のために今後も努力を続けていくつもりです。
 ところが、調理の民間委託が実施されれば、委託業務のあり方に関する労働基準法等に阻まれ、保護者と調理員が、管理者を間にはさまず直接に、 自由に話し合う可能性さえも失われてしまいます。
 また、学校給食法の理念である「給食を通じての人間形成」は、調理員・栄養士・教職員の協力体制なくして実現できるものではありません。 この場合も三者間に日常的に、かつ直接的に意見の交換ができなければ、協力体制は作れないのです。
 学校という教育現場で子供をとりまく職員が、対等の立場で教育について語り合え、 保護者も子供を育てる責任を強く自覚しつつ積極的にその対話に参加できる、そんな民主的な学校教育の理想像に、 理念上もそしてシステムの上からも逆行するものであると判断し、私達は、給食調理の民間委託に反対するのです。

平成7年9月28日
大田区議会議長様
陳情者 学校給食を共に学ぶ大田区の親と調理員の会

 

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学校給食の調理を民間業者に委託しないための陳情

大田区議会議長様

[趣旨]
 昨年マスコミを通して知らされた、事務事業適正化計画の中の一つである、学校給食の調理業務を民間業者に委託しようという計画案に対し、 区立小学校に子どもを通学させている私たちは、この計画案を慎重に受けとめました。
 まず、教育委員会の説明を聞き、学校側にも質問しました。なぜ、自分の子どもに関する事柄を事前に察知できなかったのでしょうか。 反省と同時に深い憤りを感じております。
 この間大田区内で学校給食の調理に携わっている方々の現状を聞いたり、すでに民間業者委託になった学校の先生や栄養士さん、 生徒のアンケートなど、私たちにできる限りの情報や資料を集め、真剣に行動し、話し合っています。
 本当に未来を担う大田の子どもたちの学校給食を考えての事であるのなら、教育委員会や学校の先生方、栄養士さんや調理員さん、 保護者を含めた中からの総合的な提案でなければならないのではないでしょうか。
 経済的合理性や結果論的大人特有のエゴイズムで学校教育を考えてはいないでしょうか。
 子どもが大人へと成長する中で、心もからだも大きく変化し、成長するのが小学校六年間と中学校三年間のあいだです。
 小さな子どもが家庭という環境から少し離れ、知識や判断力、協調性や社会性を養う大切な期間がこの九年間です。
 その中で、先生や友だちと食べる給食は、単に空腹を満たすだけの物ではなく、精神面や肉体的栄養面からみても重要な事です。 そんな大切な学校給食の場に、いくら合理的で良い事だと説明されても私たちは、どうしても納得できないのです。
 どうぞ慎重な審議をお願いします。
 小さな事かもしれませんが、私たち久原小学校では、毎年三月の卒業式の前に六年生の保護者が主催して「卒業を祝い感謝する会」 をおこなっています。五年生の時から少しずつ積み立てをして、当日はお世話になった先生方や地域の方々、栄養士さんや調理員さんなどをお招きし、 二~三時間の短い時間ですが、六年間の思い出と感謝をこめて、また、新しい世界への旅立をみんなで祝うのです。
 調和のとれた学校教育こそ、真の人間を育てる大切な要素です。どうぞ、今までの直営・自校方式のまま、ますます大田の子どもたちが、 心豊かに学校教育が受けられる事を願っております。

[陳情事項]
 学校給食の調理業務を民間委託にどうぞしないでください。

平成7年9月28日
久原小学校の給食を守る有志の会

 

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大田区の学校給食調理業務を民間業者に
委託するのをやめていただくための陳情書

大田区議会議長 殿

[陳情事項]
 大田区の学校給食調理業務の民間業者委託をやめてください。
[陳情事項]
 いま、民間業者に委託されようとしているのが、義務教育の現場の一部分だという事実を、もっと深刻に考えていただきたいのです。 マスコミその他でご存じのように、学校では、いじめ・不登校等の問題がおこり、解決の糸口さえも見つけられない情況で、 改めて教育現場の見直しが大きな世論となっています。
 それと平行するように、地球規模の環境問題に直面している現在、東京都の平成7年1月1日施行の消費生活条例では、 消費者教育を受ける権利が加えられました。これは一般消費者はもちろん、学校教育の中での消費者教育も含まれていると考えて良い訳です。 平成5年度に出された大田区の環境公害対策会議の答申書の中でも、学校教育における環境学習の必要性があげられています。
 こういった将来を見据えた学校教育を実現していくことが望まれているこの時期に、 短期的な経済効率のみを理由にした業者委託がいかに時代に逆行したものであるかを考えていただきたいのです。 業者委託は言わば教育現場の分業化です。学校教育は教師と生徒だけで成り立つものではありません。また、 いく種類かの課目を覚え込むだけのものでもないと思います。教師や生徒・保護者・ 各種の専門の業務に従事する人々がお互いに関係を結びあいながら、子供達が将来社会の一員として十分に責任を果たし、 権利を主張できる大人へと成長するのを見守り育てていく場としてあるべきだと思うのです。
 給食は食べられればいいのだと決めつけ、満足な身分保障もされないパート労働者に頼った業者に任せて安く上げる、 といったことが実行されてしまえば、消費者教育・環境教育を云々したり、いじめをなくし思いやりを育てようなどと言っても、 教育現場の中に大きな矛盾を抱え込んでしまうことになります。
 現在の給食について具体的に改善してほしいことや、現在進行中の改善事項などはたくさんありますが、行政が直接管理運営する形のままで、 保護者や教師と話し合いながら、より良い形の給食に変えていくのが最善の方法だと思います。教育を分業化しないでください。

大田区立新宿小学校保護者
東京都大田区 ●●●●


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これらの陳情書は、すべて否決され、96年度からの民間委託が決まりました。最後は、民間委託が決まってから出した陳情書です。

 

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大田区の学校給食の民間委託に関する陳情書

大田区区議会議長 様

[陳情事項]
 教育委員会からの内容の報告・説明だけでなく、保護者も率直に意見が言える説明会を、民間委託該当校だけに限定しないで実施して下さい。

[理由]
(1) いつも区報による一方的な報告だけで「皆さんの理解と協力をお願いします」と言われても、保護者にしてみれば不安もあります。 質問したいこともあります。義務教育を受ける側の子どもたちの親は、子どもが受ける学校教育について知りたいと思っています。 子どもに関する様々な問題が山積している今、学校と家庭と地域で協力していこうと言われていますが、それはただ、 学校からの指示を実行する機関として家庭、地域があるのではありません。現状やこれからのことを、話し合い、 提案しあってこそ可能なのだと思います。
教育委員会からの一方通行で終わるのではなく、保護者の声も行政に届く対話を期待します。
(2) 4月から委託を予定されている中学校(大森東、貝塚、大森第四、田園調布、大森第七、糀谷) にはいくつかの小学校の子どもたちが行きます。委託に変わるときだけの説明であるなら、将来関わる人には説明を受ける機会がないことになります。
(3) 給食を食べるということは、学校で作られたものを、毎日体の中に入れるということです。そういう大切なことを、 たとえ調理業務だけといえども、経済効率を優先させる民間企業に委ねる不安は消せません。

1996年2月
大田区立中学校保護者有志、大田区立小学校保護者有志、大田区の学校給食を守る会


(学校給食ニュース9号 1999年2月)

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

北海道札幌市

●北海道札幌市

 札幌市では、99年度から学校給食の設備や内容改善とともに、調理の民間委託もはじまる予定です。 札幌市教委などと交渉を続けてきた札幌市役所労働組合の川野光江さんにお話を聞きました。
 札幌市では、1997年9月に学校給食運営委員会から「札幌市における学校給食の今後のあり方について」提言が出され、 学校給食を通して子どもたちが栄養や健康を意識した、自己管理能力を育てるための施設等の改善が提案されました。この内容は、 札幌市役所労働組合の調理員として支部要求してきたものを基本的に含んでいました。
 その結果、99年度から先割れスプーンを全廃し、また竹の丸箸を使用していたところに、木製の角箸、スプーン、フォークの導入が決まりました。 また、99年度から2006年度にかけて、現在のステンレス製食器2種から、強化磁器製食器5種へと切りかえることも合わせて決まりました。 さらに、給食時間を少しでも確保する意味から、教室への配膳と下膳は調理員が行うことになり、ランチルームの整備もされます。
 これに合わせて、調理員定数や調理体制についての見直しが行われ、 99年度から2003年度にかけて直営調理員の退職者不補充によって調理の民間委託がはじまり、直営の学校でも非常勤調理員の解消、 配置基準の見直しなどが行われることになっています。
 具体的には、99年度に5校(4調理場、1校は親子方式)の調理が民間委託され、5校(4調理場、1校は親子方式) が新基準での直営による改善校となります。この10校が、他校に先行して強化磁器製食器の切りかえなどが行われます。また、直営の1校は、 下処理と調理、洗浄を完全分離したドライ方式もスタートします。
 川野さんは、「学校給食の質を上げていくことが何よりも大切なことです。直営調理員としても、調理技術の向上はもとより、 調理員としての質の向上をはかる意識改革も重要な課題であることから、研修制度の充実、衛生管理体制の確保などを基本としながら、 調理員の中に職長制度を導入し、調理員としての責任をきちんと果たせるようにしたいと考えています。 ドライ方式の導入など調理員の意識改革が必要な部分もたくさんあります。調理の民間委託が併存する中で、 直営の意味を自ら考えて働くようにします」と話しています。


(学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

東京都保谷市

●東京都保谷市

 1996年5月に保谷市の行財政改革大綱が発表され、97年度から保谷小学校の給食を民間委託することになりました。 すぐに保護者などから反対の声があがり、反対運動が起こりました。96年の9月、12月に開かれた市議会では、合わせて10本の誓願、 陳情が出され、その署名数約3万名に達しました。
 この誓願は、議会の文教厚生委員会で継続審議となりました。
 97年1月に市長選が行われ、現職市長が当選。しかし、ねばり強い反対運動もあり、 3月の市議会で保谷小の民間委託予算2203万円が含まれていた当初予算は否決されました。その後、5月の臨時議会では、 業務委託費1000円を含む修正予算が可決。民間委託の97年度からの導入はなくなったかに思われました。
 ところが、97年12月の議会で、補正予算として民間委託費が追加され、また、96年から継続になっていた誓願、 陳情も文教厚生委員会で否決されてしまいます。土壇場で97年度からの民間委託が決定し、98年2月、 保谷小学校で民間委託が開始されることになってしまいました。受託したのは台東区の業者です。今後、98年度に2校、 2000年度までに1校の合計4校が予定されています。
 保谷市は、小学校11校すべてが自校方式。今回も、自校方式での調理民間委託です。

(学校給食ニュース0号 1998年2月)

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 東京都保谷市には小学校が11校あり、すべて自校方式です。保谷市では、 98年2月から保谷小学校で台東区の業者による調理民間委託がはじまりました。98年度は、2学期から2校が導入されています。
 98年2月という半端な時期に調理の民間委託がはじまった背景については、学校給食ニュース0号でもまとめましたが、おさらいしておきます。 当初97年度から委託開始予定でしたが、反対運動により、市議会で10本の請願、陳情が上げられ、署名が約3万にのぼりました。そのため、 97年3月議会で計上されていた予算は否決され、5月の臨時議会で業務委託費1000円という形で修正予算が可決。そして、 12月の議会で補正予算として民間委託費が追加され、96年から継続になっていた請願、陳情が否決されてしまいました。そのため、 98年2月から民間委託導入となったわけです。
 最初に民間委託された保谷小学校では、事前に保護者に対しての説明会が5回開かれました。委託後は、定期的に給食運営協議会が、委託業者、 学校長ら、給食主任、栄養士、PTA役員、代表委員などによって行われ、そのつど、協議会だよりが保護者に配られる形をとっています。
 98年2学期からは、碧山小と東伏見小の2校が民間委託されました。この委託校が正式に決まったのは6月で、7月にかけて保護者、 教職員向けの説明会が開かれました。
 碧山小は正規調理員定数4に対し、1人欠員で1名を非常勤、東伏見小も5名の定数に対し、正規4名、1名が非常勤という状態でした。また、 直営の8校にもそれぞれ欠員がある状態で、年度途中での異動により、直営校の定数が埋まることになったのです。
 保谷市では、正規職員の退職を待って来年度1校を民間委託とする方針です。しかし、その後のことは決まっていません。
 保谷市では、98年2月の保谷小と9月の東伏見小が同じ業者、碧山小は違う業者が受託しています。その後の評価として、保谷小は、調理内容、 調理員が子どもたちとノートで交流するなどの取り組みもあり、おおむね好評なようです。一方、同じ業者でも、東伏見小では、 委託当初に異物混入などの問題で、給食協議会や、保護者、児童の間から不安の声が上がり、早々にチーフが交替しています。
 今回、2校の民間委託化で異動対象となった調理員さんのひとり、宮岡千恵子さんにお話を伺いました。
「民間委託業者との引継は、3回ほどしました。また、職場(調理場)を引き継ぐわけですから、この夏休み期間中は例年以上に徹底して清掃し、 食器棚も、誰が見てもすぐに分かるように再整理しておきました。どのような状態でも、 子どもたちに最善の給食を出せる状態にするのが調理員としての使命だと思いますので、できる限り細かいところまで引継をしたつもりです。
 給食室を明け渡すことは調理員としてとても悲しいことです。しかし、民間の調理員に職場をとってかわられた今回のことは、 私たち直営調理員の旧態依然とした仕事ぶりに対して下されたひとつの審判ですし、 これは自分たちへ投げかけられた批判なのだと私たち調理員自身が気づかなければいけないと思いました。 保谷市で学校給食に注目が集まっている今こそ、私たちもがんばり時です。子どもたちの食教育にとって、 直営の調理員だからこそできる工夫や配慮があるんだと本当に言えるよう、日々の給食づくりに取り組んでいきます」

(学校給食ニュース9号 1999年2月) 

 

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

東京都立川市

●東京都立川市

 中学校給食が行われていなかった立川市では、保護者からの要望もあり、学校給食の実施が検討されました。95年、 導入にあたって民間業者の仕出し弁当(ランチボックス)か持参弁当の選択という方式をとるとの方針が立てられ、 学校給食が弁当形式で行われることに危惧した保護者たちによって、11月には「立川・学校給食を考える会」が結成されました。 署名活動などを通じて、試行計画の見直しや自校直営式学校給食を求めましたが、95年3月、中学校給食を弁当併用、 仕出し弁当で実施することが決定しました。
 しかし、粘り強い反対運動により試行は97年9月へと延期。97年10月より、弁当併用の仕出し弁当が試行されています。2校で実施され、 試行期間は2年。施行後も、自校式直営を求めて運動が繰り広げられています。
 この立川市が導入した仕出し弁当方式は、名古屋市や広島市などでも導入されています。

(学校給食ニュース0号 1998年2月)

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 立川市では、中学校給食を導入するにあたり、給食調理設備をつくらず、 献立を除いてはまったくの民間委託となる弁当併用仕出し弁当方式を採用し、97年10月に2校で2年間の試行を開始し1年が過ぎました。
 方法としては、生徒があらかじめプリペイドカード(ランチカード)を購入し、学校に設置された発券機で最低5日前に食べる日を申込み、 その数に合わせて業者が調理して学校に届けるしくみになっています。献立表は、前月に渡され、献立名の他に材料名と予約最終日が記されています。 主食はごはん中心で、焼きそばやスパゲッティ、ドライカレーや混ぜご飯が組まれる場合もあります。ごはんは、あたたかい状態とされ、副食 (おかず)は、食中毒対策として調理後温度を下げてあります。また、野菜類は、果物・デザートを除き加熱調理のみです。汁ものなどはつきません。 牛乳は、ミルク給食として全員に行われています。
 立川市の保護者たちでつくる学校給食を考える会では、試行前からこの方式の問題を指摘し、試行後は、 2~3カ月ごとに学校給食課中学校給食係から喫食率のデータを入手し、グラフを作成し続けています。そのグラフによると、 当初教育委員会が想定していた喫食率である70%~80%を超えることはなく、平均で50%を超えないまま低い水準で推移しています。
 立川市教育委員会は、試行3カ月後の2中学校でアンケート調査を行いました。その中で、自由記入欄には、 主に外注給食を食べている子どもたちの生の声が書きつづられています。
 「ゼリーがおいしい」「混ぜご飯がおいしい」「このまま続けて」というような声が若干ある他は、全般に否定的な意見が多く寄せられています。
 もっとも際だったのが、「味が薄い、おいしくない、まずい」などの味に関する意見で学校、 学年を問わず共通して圧倒的な数の不満が上げられていました。
 その上で、「火が通っていない」という指摘も複数あり、「正体不明なおかずが多い」「わけがわからない料理がある」や、「ご飯は温かいのに、 おかずが冷たい」「さめるとおいしくないメニューはやめたほうがいい」「おかずを温めて欲しい」 といったお弁当方式で通常の給食と同様の献立にすることの無理やおかずが冷やされていることに対する不満が目立ちます。
 さらに、「髪の毛が入っていた」「給食のなかみがでていた」「たまに石けんのような消毒の味がする」「箱がたまにきたない」 という指摘もあります。
 また、「予約システムはカードに予約した日が書かれるけど、それを食べる日の日にちを入れて欲しい」「前日に頼んだ人を言って欲しい」 「予備を用意しておいて欲しい」という、運用面の問題も上がっています。
「学校でごはんを作るといいと思う」「業者弁当でなく、給食室で作ったものが食べたい」「小学校の給食を見習って欲しい」 という願いが小学校給食を経験してきた子どもたちから上がっていることも見逃せません。

(学校給食ニュース9号 1999年2月) 

 

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

はじめに

給食食器は、その多くがふつうに家庭やレストランで使われている食器ではありません。プラスチック製やアルマイト製のものが多く使われています。 また、箸がようやく普及しましたが、それでも先割れスプーンのような、 日常では使うことのない食器がいまだに使用され続けている学校が多くあります。
どうしてふつうの食事に使う食器が使われないのでしょうか。
学校給食は教育として行なわれています。一般的に使われる食器で食べることが求められていいのではないでしょうか。
過去30年以上にわたって、学校給食の食器を子ども達が日常的に使えるものへ変えていく運動があり、成果をあげてきました。その一方で、 問題を指摘されていたアルマイト食器にかわって、安全性に不安があったり、 用途に首をかしげざるを得ないプラスチック食器の導入が急速に進んでいます。
また、1998年に入ってから「環境ホルモン(=内分泌かく乱物質)」という言葉がマスコミをにぎわし、 ポリカーボネイト製食器からのビスフェノールA溶出について不安を覚えておられる方も多いと思います。
学校給食の食器について、考え方や運動の経緯、「環境ホルモン」などの情報や事例をまとめました。

[ 99/12/31 食器 ]

時事情報1999年 民間委託関係

●大阪府島本町、請願署名の押印なしで無効
読売新聞99年12月9日付によると、大阪府島本町議会は、 島本の学校給食をより良くする会が提出した民間委託の実施見合わせを求めた請願書の署名4220人分の内、 押印のなかった4189人を請願者から除外した。議会規則によるとしている。結果的に31名の請願となった。(99.12.31)

●東京田無市・保谷市の合併で民間委託
日本経済新聞99年12月23日付によると、両市の合併協議会は、 合併にともない人件費を削減するために学校給食調理などの業務を民間委託する方針を打ち出した。 両市は2001年1月の合併方針を打ち出している。(99.12.31)

●高知県中村市、給食実施の方針
高知新聞99年9月8日付によると、高知県中村市では、現在小学校18校、中学校12校中、小学校1校だけが学校給食を実施している。市教委は、 9月7日の市議会教育民政委員会で、小学校給食実施にむけた方針を打ち出した。それによると、市内3~5カ所を拠点校とした親子方式で、調理・ 配送は民間委託の方針。早ければ13年度中の着手をめざすという。(99.10.23)

●沖縄県糸満市、民間委託について
沖縄タイムス99年8月29日付によると、学校給食を考える糸満市民の会は、糸満市が打ち出している学校給食調理の民間委託に対し、 白紙撤回を求めた。また、母親代表を入れた場での再検討を求めている。同会は、署名活動を行いすでに3000人近くが署名を行っている。 (99.10.23)

●北海道の調理員半数が非常勤
北海道新聞99年10月14日付によると、文部省が10月13日に発表した昨年5月1日現在の学校給食実施状況調査結果で、全国の公立小中学校、 共同調理員のうち25.8%が非常勤職員であるが、北海道内では半数に達している。北海道内の調理員4109人中、非常勤は2056人。 前年度比0.7%増。(99.10.23)

●神奈川県相模原市、調理の民間委託問題浮上
神奈川県相模原市では、98年12月に新行政改革大綱が策定され、その中で、給食調理業務の見直しが上げられている。相模原市職員労働組合では、 民間委託の白紙撤回を求めているが、教育委員会は「学校給食の運営方法につきましては『学校給食懇談会』の提言を踏まえ、検討する」としている。
相模原市は、小学校のみの学校給食実施で、42校の自校式調理と2つのセンター(11校分)で給食を実施。栄養職員は全校配置であり、また、 直営調理員はごくわずかな例を除いて正規職員のみとなっている。調理場での合成洗剤不使用をほぼ達成している他、 食品添加物を使わない調理に徹っしている。(99.6.1)

●広島県呉市、調理民間委託方針
 中国新聞99年2月13日付では、呉市教育委員会が、 市議会教育経済委員会調査会で2000年4月から小学校給食の調理を民間委託する方針を示したと報じている。自校方式で初年度1校を予定。 食材は市学校給食協会が発注するとしている。現在小学校は37校あり、調理員は臨時1名、嘱託2名を加えて88名。 退職者不補充により転換する方針。(99.4.1)
 

 

[ 99/12/31 委託・合理化 ]

陶磁器とアルミナについて

 陶磁器の原料となるアルミナの安全性についてご質問をいただきました。
 現段階(99/6)での事務局の考え方をまとめました。

 学校給食食器として使われるポリカーボネート製食器。そこから出るビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌かく乱物質)であり、 ごくごく微量でも長期的にみて人体や環境に影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
 そのため、全国でポリカーボネート製食器を見直す動きが出ていますが、強化磁器や地元漆器に切り替える自治体が増えています。しかし、 なかには、メラミン製やポリプロピレン製といった、ポリカーボネート同様プラスチック製食器に代替するケースもあります。
 プラスチックのメラミン製食器は、安全性に問題のあるホルムアルデヒドの溶出が考えられ、各地で大きな切り替え運動を起こしました。 ポリプロピレン製食器も、かつては、添加剤として使われていた酸化防止剤で、安全性に問題があるBHAが溶出したことがあります。現在は、 改良型ポリプロピレン製食器が使われますが、プラスチック製品そのものが、原料素材のほか、多くの添加剤をつかって作られており、 その中身がよく分かりません。また、陶磁器などにくらべて原料素材や添加剤が溶け出しやすい性質をもっています。

 それでは、陶磁器の安全性ですが、一般に陶磁器の安全性は非常に高いと考えられます。それは、 歴史的に長い期間人類が使用しているという点もありますが、成形時に1000度を超す高い温度をかけるため、 ふだん使用する温度との間に大きな差があり、素材などの溶出が考えにくいこと。また、素材が、珪素やアルミナの混合物(粘土) といったものであることからです。
 その上で、食品衛生法のもとで厚生省は、「ガラス、陶磁器、ホウロウ引き製器具容器」に対して規格を決め、 カドミウムと鉛の溶出に対する規制を行っています。
 さて、アルツハイマーとアルミニウムの関連性があるのではないかという指摘がかつて一部の研究者から出され、 WHOなどは因果関係を否定していますが、そのようなところから、 陶磁器の原料に使われるアルミナについても安全性についての疑問が出されることがあります。
 アルミナは、化学記号Al2O3で、酸化アルミニウムともいいます。自然界には珪素とともに粘土や岩石などとして多く存在しています。 アルミナは、非常に安定した物質で、酸やアルカリに溶けにくい性質をもっています。このアルミナを電気分解してアルミを生成するのですが、 陶磁器では、アルミナのまま使用します。
 陶磁器のアルミナについて溶出試験やそのデータは残念ながら見つかりませんでした。しかし、アルミナは、アルミニウム単体ではないこと、 食品など自然界中には、仮に陶磁器から溶出するとして考えられる量よりはるかに多くのアルミニウムが存在していることなどから考えて、 陶磁器に含まれるアルミナについて問題視する必要はないと考えます。

 陶磁器については、メーカーに素材やうわぐすりなどの原料と製造工程についてきちんと説明していただいた上で、 食品衛生法で指摘されているような鉛やカドミウムといった重金属に対する溶出試験が行なわれている製品であるかどうかを確認することでよいと思います。

 むしろ、導入にあたって、学校給食で使用する以上、子ども達の使いやすさや、割れたときの破片の形状、 洗浄などでの割れや欠けが起きにくいこと、耐用期間はどれくらいか、耐用期限が迫ったときに割れやすくならないかなどについて、 慎重に検討することが大切だと考えます。
(学校給食ニュース99/6号)

 

[ 99/12/31 食器 ]

1999年発行の主な内容

【1999年 学校給食ニュース】
99.2 ダウンロード
民間委託された学校給食のゆくえ

99.3 ダウンロード
99.2.23 学校給食全国集会報告
民間委託による中学校給食・中学校スクールランチ問題 名古屋市
民間委託の現場から~スライドを使って 広島県廿日市市  広島県大野町
産直自校方式学校給食の現場から 世田谷区  佐賀県
食器変更のとりくみと課題 佐賀県鳥栖市
子どもたちとの交流を深めるために~給食センターのとりくみ 山形県鶴岡市

99.4 ダウンロード
今月のトピックス 経費節減にならないのになぜ? 龍ヶ崎市の新設給食センター民間委託問題を考える

99.5 ダウンロード
今月のトピックス 質問に答えて…アルミナの安全性
最近のできごと コレール食器破損で児童、目に怪我

99.6 ダウンロード
今月のトピックス  有機野菜を学校給食へ~JA山武睦岡支所無農薬有機部会~
秋田県横手市からのよびかけ
東京都八王子市からのよびかけ

99.7 ダウンロード
今月のトピックス  学校給食への提案 牛尾保子(全国学校給食を考える会代表)

99.9 ダウンロード
今月のトピックス  宮城県の学校給食調査~塩釜市学校給食を考える会の取り組みから~
99学校給食夏期学習会報告
食中毒と照射食品―アメリカと日本の動き
ご意見 東久留米市の中学校学校給食実施

99.10 ダウンロード
今月のトピックス 堺市の向丘小学校PTA 保護者投票で民間委託の是非を問う
民間委託 東京都文京区、民間委託への疑問
投稿 堺市のO157裁判判決が示唆したもの

99.11 ダウンロード
今月のトピックス  福岡は元気!うちンげの取り組みバ 自慢しようかい

学校給食ニュースは、四者共闘が発行母体となり、全国学校給食を考える会が発行しています。
会員の方は、内容をダウンロードすることができます。購読(会員)については、http://gakkyu-news.net/jp/000/002/post_6.html をご覧ください。

[ 99/12/31 紙版ニュース ]

時事情報1999年 主に給食運営・施設設備

●名古屋市の給食費値上げと使途目的
食品新聞99年11月29日付けでは、名古屋市の小中学校給食費値上げについてまとめ、小学校で年間約4億円の増分であると指摘。 関係者の見方として、「学校給食会が国庫補助で運営を維持してきたが、行革による補助金廃止や児童数の減少により、 今後の運営が困難になっている。今回の値上げ分は、こうした運営維持の補填に使われるだけで、 供給業者に対する値上げ分の還元はほとんどないだろう」との声を紹介している。(99.12.31)

●岡山県倉敷市の給食事情
中国新聞99年11月7日付けでは、倉敷市の給食事情をまとめている。倉敷市は、小学校55校中51校、 中学校23校中8校が自校調理方式であり、統一献立にしている。約10年前から週に1度自由献立を行っており、セレクト給食、行事食、リザーブ (予約)給食などを行っている。(99.11.21)

●名古屋市、給食費値上げ
中日新聞99年11月2日付によると、名古屋市教育委員会は、2000年1月から給食費を値上げする。 月3200円を3400円~3500円とする。スクールランチの中学校は、1食240円が250円になる。値上げは91年以来9年ぶり。 (99.11.21)

●高知県中村市、給食実施の方針
高知新聞99年9月8日付によると、高知県中村市では、現在小学校18校、中学校12校中、小学校1校だけが学校給食を実施している。市教委は、 9月7日の市議会教育民政委員会で、小学校給食実施にむけた方針を打ち出した。それによると、市内3~5カ所を拠点校とした親子方式で、調理・ 配送は民間委託の方針。早ければ13年度中の着手をめざすという。

●東広島市、センター化へ
中国新聞99年6月8日付によると、広島県東広島市では、現在28の小中学校のうち22校は自校方式で学校給食を実施しているが、 市教委によりセンター化の方針が示された。今後20年間で5センターを設置するとしている。2001年に1センターを設置、 新規の小学校と既存の小学校2校で約2600食のセンターを設置する。また、将来的には民間委託を実施したいという意向を示している。

[ 99/12/31 施設設備 ]

時事情報1999年

●ビスフェノールA、成体にも影響か
北海道新聞99年12月8日付によると、ポリカーボネート樹脂からの溶出が問題視されているビスフェノールAについて、 これまで胎児や子どもへの影響が懸念されてきたが、成体でも体内の性ホルモンバランスを崩す可能性があることが分かった。酪農学園大獣医学部・ 横田博助教授らの研究によるもの。成体ラットを使った実験の結果明らかになったもので、 第2回内分泌かく乱化学物質問題に関する国際シンポジウムで発表される。(99.12.31)

●ビスフェノールAの論争
毎日新聞99年11月24日付によると、ポリカーボネートの原料で食器からの溶出などで懸念されているビスフェノールAについて、 これまでより低い濃度での影響が指摘されている。厚生省は、容器からの溶出濃度を500ppbとしているが、 その根拠は動物実験での体重1kgあたり50000マイクログラムで体重減少が見られたことによる。ところが、アメリカ・ミズーリ州立大学・ ボン・サール教授らの研究によると、 2.4マイクログラムを妊娠中のマウスに投与しただけで生まれてきたメスに性成熟が早くなるなどの影響が見られたという。業界がつくる 「ビスフェノールA安全性5社研究会」などでは、反論を用意しているが、 同教授の説が正しければこれまで以上にビスフェノールAの影響は大きいといえる。(99.12.31)

●ガラス製食器破損で目にけが、提訴
時事通信社99年12月27日付けによると、東京都足立区の小学生と両親は、給食用ガラス製食器の破片が目に当たり、視力が低下したとして、 足立区、食器の製造業者、輸入業者に対し治療費などの損害賠償請求を東京地裁に起こした。(99.12.31)

●大分県杵築市、センターで強化磁器に
大分合同新聞99年10月2日付によると、杵築市の学校給食食器がアルマイト製から強化磁器に切り替わった。保護者などの要望を受け、 市学校給食運営委員会が1996年から検討してきたもの。1日2300食をつくる給食センターでは、導入に合わせ、食器洗浄機と消毒保管庫、 食器かごを購入。総事業費約1500万円。(99.11.21)

●長野県楢川村、漆器に切り替え
朝日新聞99年10月25日付、日経産業新聞11月1日付によると、長野県楢川村では、 村内2小学校の給食用食器に地元特産の木曽漆器を使用する。1セット約2万円で、200セットを導入。汁わん、飯わん、小鉢、大皿、 中皿のセット。セイコーエプソンのデザイナーがデザインし、地元漆器職人、村給食センターの栄養士、調理員らの意見を元に、 木曽漆器工業協同組合が製品化したもの。ケヤキ製で朱色の漆を重ね塗りしてある。3年ごとに漆の塗り直しなどを行う。 「物を食べるという行為は大切なこと。漆器は手触りが良く、食器としてぴったりだ。学校給食を経済性や合理性だけで考えていいのか」 と百瀬村長のコメント。(99.11.21)

●鹿児島市、PCからステンレスへ
南日本新聞99年9月1日付によると、鹿児島市内の公立小中学校では2学期より、ポリカーボネート製食器にかえてステンレス製の食器となった。 市教委が行った食器溶出検査で、PC食器よりビスフェノールAが溶出したことをうけての措置。予算は2479万円。(99.10.23)

●香川県善通寺市、強化磁器へ
四国新聞99年9月2日、山陽新聞9月3日によると、香川県善通寺市は、2学期より、市内の全幼稚園、 小中学校でポリカーボネート製食器を強化磁器製にきりかえた。食文化の充実が理由。8幼稚園、8小学校、2中学校の約4000食分。あわせて、 市学校給食センターで食器類の自動洗浄機を導入。食器、洗浄機は業者との7年リース契約となり、リース料約1億8000万円強。 (99.10.23)

●愛知県春日井市、強化磁器へ
中日新聞99年9月4日付によると、春日井市は2学期よりしない52の小中学校でポリカーボネート製食器から強化磁器製食器にきりかえた。 汁わん2個、深皿1個を33000セット、約6500万円。また、各調理場での食器洗浄機改修や消毒保管庫の増設を行った。なお、 公立保育園では1月にきりかえをすませている。(99.10.23)

●川連漆器のモニター調査
秋田魁新報99年9月1日によると、 稲川町の秋田県漆器工業協同組合が特産の川連漆器を学校給食に導入するために行った町内2小学校対象のモニター調査結果がまとまった。児童は、 川連漆器に対し「食べやすい」などおおむね好評だが、町学校給食センターは、「厚く、運搬しにくい」「洗浄に手洗いが必要で、手間がかかる」 「傷みやすい」「加熱殺菌では漆のぬめりがでる」などの指摘があった。組合では今後も改良を続けるとしている。(99.10.23)

●食器、山梨県の動向
山梨日日新聞99年10月18日付では、山梨県内の学校給食食器について特集している。それによると、98年5月以降、 22校がポリカーボネート製食器から別の素材にきりかえた。切り替えをすすめているのは、塩山、山梨、敷島、玉穂、芦安、櫛形の6市町村、 今後きりかえる予定があるのは竜王、田富、上野原、中道の4町。(99.10.23)

●陶磁器のリサイクル
流通サービス新聞99年10月8日付によると、美濃焼の産地である岐阜県多治見市、土岐市、瑞浪市にある陶磁器メーカーや件の研究所、 試験所などで構成するグリーンライフ21は、不要の陶磁器を再利用してつくる「土色彩生」食器を開発販売。あわせて、 家庭の不要食器改修にも乗り出した。(99.10.23)

●PET樹脂漆器開発される
北国新聞99年9月23日付によると、石川県の山中漆器連合協同組合は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を素材とした漆器を開発した。 (99.10.23)

●PC食器使用率37.2%
朝日新聞99年9月21日付けによると、文部省は公立小中学校の学校給食使用食器についての調査結果を発表した。それによると、 ポリカーボネート製(PC)食器を使用しているのは、公立小中学校の32.7%、10206校である。これは、昨年調査より2339校の減少。 また、使用中の36%の市町村・組合ではPCを他の材質に切り替える予定としている。岩手、山形、福島、 鹿児島の4県は6割以上の学校がPC食器を使用、東京、三重、京都、兵庫、大分の5都府県は1割以下の使用率である。(99.9.29)

●長野県のPC切替動向
信濃毎日新聞99年9月21日付によると、県教委の調査としてこの1年間でポリカーボネート製の食器を使わなくなった学校が84校にのぼる。 県内597校のうち、5月現在でPC製食器を使用しているのが176校。前年同期より13.9%減り、29.5%となった。(99.9.29)

●奈良県斑鳩町、信楽焼強化磁器に
日本農業新聞99年9月20日付によると、奈良県斑鳩町は、小中学校5校のPC食器を信楽焼に切り替えた。大小の皿と茶碗計4種、 約3150セット。(99.9.29)

●広島県海田町、PCから強化磁器に
中国新聞99年9月11日付によると、広島県安芸郡海田町は、 2000年春より現在のポリカーボネート製食器を強化磁器に切り替える方針を決めた。町内で給食を実施している全小学校の約2000人分。 保護者や議会から安全性に対して不安と改善を求める要望が出されていた。(99.9.29)

●信楽焼きの導入
 日経流通新聞8月17日付によると、滋賀県信楽町の信楽陶器工業組合は、学校給食向け強化磁器食器を開発、販売してる。 滋賀県栗東町が町立全小中学校、幼稚園、保育園で7900セットを導入、奈良県斑鳩町が9月より全小中学校に3100セットを導入する。 (99.8.24)

●山梨県上野原町、強化磁器導入
 山梨日々新聞6月7日付によると、山梨県上野原町では、自校方式ですでに学校給食を実施する3小学校を除く町内6小学校について、 来年度給食センター方式で給食を開始するが、この食器を強化磁器にする方針。同町議会総務常任委員会が町教委に要望したもので、 町小中学校学校給食実施推進委員会も強化磁器を使用する方針で検討とのこと。(99.8.24)

●神奈川県南足柄町、PCからPP
 神奈川新聞6月8日付によると、神奈川県南足柄市は、安全性が疑わしい食器は変えるべきとして、 給食食器に使用しているポリカーボネート製の汁わんをポリプロピレン製に変える方針。(99.8.24)

●PC食器販売減、PP販売増
 産経新聞8月12日付によると、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)への不安から、学校給食食器でのポリカーボネート製品が減少し、 かわりにポリプロピレンや強化磁器などの食器が増えている。最大手、三信化工では、昨年の3-5月期に売上高25%を占めていたPC製食器が、 今年の同期には10%と大幅に減少。かわりにPP製食器の生産がフル稼働という。(99.8.24)

●ステンレス+ポリプロ
食器朝日新聞99年7月25日付他によると、日新製鋼は洋食器メーカーなど2社と共同で、内側はステンレス、 外側はポリプロピレンの給食用食器を開発した。接着剤を使わず、真空密着させているためリサイクル可能という。(99.8.5)

●手作り陶器を給食食器に
北海道新聞99年6月19日付によると、北海道美瑛町の美沢小学校(児童40名)は、地元の陶芸家の協力で児童自身が手作りの陶器食器を作った。 2学期から学校給食に使用するという。(99.8.5)

●横浜市、4年以上のPC食器使用を禁止
ポリカーボネート食器から溶出するビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌かく乱物質)であることから、 横浜市は調査委員会を設け検討を続けてきた。中間報告ではビスフェノールAの溶出が認められないとして議論の的となったが、 99年4月に発表された「横浜市学校給食用食器調査委員会」の報告書では、使用年数が4年から5年過ぎたものでは、80℃・ 30分おいたものから0.6~1.2ppbのビスフェノールAが溶出していることを明らかした。しかし、報告書は 「溶出状祝及び最近までの研究報告等の文献調査を踏まえて安全性の検討を行った結果、現時点で、 本市の学校給食でのポリカーボネート製食器の使用が児童の健康に直ちに影響を与えるとは考えられない」と結論づけている。
その上で、「日常生活における化学物質の摂取総量をできるだけ減らしていくことが大切であるという観点から、 給食で使用するポリカーポネート製食器のうち比較的高温で使用するスープ用カップで、使用年数が4年及び5年の食器については、 取り替えていくことがより望ましい」とした。
 また強化磁器などの磁器系の食器について「従来の給食用食器に比較して優れた特性を有する一方で、 アルマイトや合成樹脂製の食器に比較して重い、割れやすいといった面もあり、施設・設備面や運用面での課題も想定されることから、 現状における取組みの方策を含め、将来的な展望に立った検討が必要」としている。
 これを受けて、横浜市教育委員会は、5月21日、 スープなどを入れる食器について使用年数が4年を超えるものを磁器などに切り替えるとしている。(99.6.1)

●給食用磁器食器開発、愛知県瀬戸市
 中日新聞99年3月11日付によると、愛知県陶磁器工業協同組合が、学校給食用に軽量で丈夫な磁器を開発。瀬戸市では、市立保育園、 小中学校が98年度中に地場産の磁器食器に切り替わった。隣接の春日井市でもポリカーボネート製から強化磁器に切り替えるが、 洗浄機をそのまま使用するため、試作を重ねて深皿と椀を開発した。(99.4.1)

●食器切り替え、福島県動向
 福島民友99年2月14日付では、県内のポリカーボネート食器をはじめとする食器使用、切り替え動向をまとめている。
 福島市では、99年度の早い時期から市内70校ある小中学校全校一斉にポリカーボネート製およびポリプロピレン製食器を強化磁器に切り替える。 また、導入に伴い洗浄機などの改修も行う。現在、ポリカーボネート製が66.7%、ポリプロピレン製が33.3%あり、 更新予算総額が1億9千万円ほどとなっている。
 郡山市では、99年度の1学期から2学期にかけて、全小中学校の食器を切り替える。導入にあたっては、学校現場の意見を尊重して行われ、 今回は、小学校3校が強化磁器、他が改良型ポリプロピレン製となった。なお、次回更新時に向けては7校が施設改善の上強化磁器を導入する方針、 17校はより安全な素材に替えていく方針という。
 いわき市では、2学期より汁碗は強化磁器、皿と盆はポリプロピレン製に切り替えることが決まった。学校給食用食器検討委員会の結論だが、 強化磁器の3点セットが望ましいとしながらも、市内の9割、 40000万食以上を給食センターで作っていることから予算や設備面から強化磁器とポリプロピレンの併用となった。
 若松市では、給食実施の22小中学校中2校が強化磁器、他はアルマイト製となっている。新設小学校では、強化磁器を取り入れるが、 アルマイト使用校は予算面などから改善には時間がかかる見通し。
 双葉町では、2小学校、1中学校を98年末に一括して強化磁器に更新、また、食器洗浄機も新しく設置した。
 喜多方市では、1小学校に地元産漆器椀と箸を導入、将来は全小学校に導入する方針。漆器は塗り直しができるため、 高価格でも導入できるとしている。(99.4.1)

●食器切り替え、福井県動向
 中日新聞99年3月1日付では、福井県内にあるふたつの市の対応をまとめている。
 勝山市では、9小学校でPC製のはしを強化ナイロン樹脂のアミハード製に切り替えた。皿などは、ポリプロピレン製やメラミン製であり、 変更しない。
 大野市では、14小中学校でポリカーボネート製食器を使用、独自調査を行った結果、継続しようとなった。なお、 切り替え期にあわせての更新も検討しており、小学校2校でポリプロピレン製と強化磁器製の食器を導入した。(99.4.1)

●食器切り替え、宮城県石巻市
 河北新報99年2月18日付では、石巻市の給食食器対応を報じている。 市内全小中学校で使用しているポリカーボネート製食器からステンレスなどへの切り替えを99年度に行う。「疑わしいものは使うべきでない」 との理由から。(99.4.1)

●給食食器について社説
 1月31日付、南日本新聞は、社説「子らに安心して食べさせたい」を掲載。食のうるおいとして食器の価値があることと、 ポリカーボネート製食器からのビスフェノールAに対し内分泌かく乱物質への懸念から、「疑わしきは使用しない」 という前提で切り替えを提言している。また、鹿児島県内の動向として、伊集院町で98年2学期にすべて強化磁器へきりかえたこと、鹿児島市、 名瀬市、高山町が切り替えを検討していること、住用村が地元産木食器を利用、 10年以上前から強化耐熱ガラス食器を利用している住吉村などの動向を伝えている。その上で、「重いものを持ち、 注意を怠ると割れることを知るのも大事だ。それ以上に、温かみのある食器によって味わえる食事の楽しさや喜びは得がたいことだ」としている。 (学校給食ニュース10号 1999年3月)

●食器問題:福島県の動向
 2月7日付け福島民友によると、福島県内では、双葉町が強化磁器製食器に一新、いわき市は、検討委員会がポリカーボネート製食器の排除を答申、 郡山市では、切り替えの方針を市教委が打ち出している。また、会津若松市では、現状アルマイト食器であるが、 22校中の2校を強化磁器に切り替え、新設の小学校は強化磁器でスタートする。(学校給食ニュース10号 1999年3月)

●福島県双葉町、強化磁器へ
 99年1月12日付の日本工業新聞によると、福島県双葉町は、町立の小中学校3校で、 1月よりポリカーボネート製食器を強化磁器製に切りかえた。飯わん、汁わん、菜皿、カレー皿を1110セット、約1千2百万円かけて購入した。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

●高知県鳴門市、強化磁器へ
 98年9月10日付の徳島新聞によると、市議会の補正予算により、市内の幼稚園、 小中学校合計3千8百人分の食器をポリカーボネート製から強化磁器製にかえた。予算総額8百86万円円。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

●福島県喜多方市、地場産の漆器へ
 98年12月1日付の日本工業新聞によれば、福島県喜多方市では、今年1月から、 小学校給食用の汁碗と箸をポリカーボネート製から地場産漆器に順次切りかえる。会津喜多方漆器商工協同組合に発注。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

●愛媛県新居浜市、ステンレス食器へ
 98年12月2日付の愛媛新聞によれば、新居浜市は、99年1月より、小学校8校、 中学校1校で使用しているポリカーボネート製食器をステンレス製に切りかえると発表し、12月定例議会で補正予算として2百万円を計上した。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

●広島市、ステンレス食器へ
 98年12月26日付の中国新聞によれば、広島市教委は、 ポリカーボネート製食器を使用している市立小学校に対し99年4月からステンレス製に切りかえると発表。なお、市立小学校135校のうち、 102校がポリカーボネート製食器を使用しており、不使用の33校でも26校が98年2学期からポリカーボネート製食器の導入を予定していた。 この33校では、現在アルマイト製食器を使用しており、あわせて順次ステンレス製に切りかえる。(学校給食ニュース9号 1999年2月)

●秋田県稲川町、川連漆器へ
 99年1月15日付の河北新報によれば、秋田県稲川町では、98年9月より、 ポリカーボネート製食器にかえ地場産の川連漆器を給食食器として使用開始した。川連漆器工業協同組合では、塗り方や色が異なる漆器を試作し、 99年3月より各学校でモニター調査を行ない、他地域への販路拡大を模索している。(学校給食ニュース9号 1999年2月)

●愛知県春日井市、強化磁器へ
 99年1月13日付の中日新聞によれば、愛知県春日井市は、今年1月から市立保育園でポリカーボネート製食器を強化磁器に切りかえた。また、 小中学校も9月までに切りかえる方針。(学校給食ニュース9号 1999年2月)

●塩ビ手袋に問題あり
 98年12月7日付の毎日新聞によれば、兵庫県西宮市で学校給食用ポリプロピレン製食器から、フタル酸ジ-2-エチルへキシル(DEHP) が溶出した問題に対し、市は原因は食器ではなく食器洗浄時の塩化ビニール製手袋であるという結論をまとめた。フタル酸ジ-2-エチルヘキシルは、 環境ホルモン(内分泌かく乱物質)として指摘される物質。昨年の食器溶出調査で、ポリプロピレン製食器から検出されたことに注目が集まっていた。 食器メーカーは、可塑剤を使用していないため、検出されるはずはないとしており、 状況からも塩化ビニール製の手袋から溶出した化学物質が食器に付着し、その後溶出したという可能性が高い。市では、この結論の上で、 天然ゴムや酢酸ビニール製の手袋に切りかえた。(学校給食ニュース9号 1999年2月)

●東京都、PC食器からの溶出を確認
 98年12月23日付の東京新聞ほかによると、東京都衛生局は、 学校給食食器に使用されているポリカーボネート製食器からビスフェノールAがどの程度溶出しているのか、実態調査を行ない、その結果を公表した。 熱湯をもちいた場合、全検体の99.1%から溶出がみられ、平均7.8ppbとなった。
 なお、東京都では、福生市、八丈町、桧原村、新島村がポリカーボネート製食器を使用しており、新島村を除いては今年度中に切りかえる予定。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

●宮城県、PC製食品容器に問題なし
 98年12月15日付の河北新聞によれば、宮城県は市販のほ乳瓶などポリカーボネート製食品容器の溶出試験結果を公表し、 ビスフェノールAの溶出は、いずれも2.5ppbを下回り非検出だったとした。
 ちなみに、前出の東京都の給食用ポリカーボネート製食器の溶出調査では、下限をとらず0.3ppbでも検出扱いにしている。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

●石川県、PC製食器の溶出調査報告
 98年11月17日付の北国新聞によれば、石川県厚生部、県教委は、 学校給食用ポリカーボネート製食器からのビスフェノールA溶出実態調査を行なった。20検体中11検体から、 1~164ppbの溶出がみられたという。なお、石川県では、給食実施校370校中、210校でポリカーボネート製食器を使用している。 (学校給食ニュース9号 1999年2月)

 

[ 99/12/31 食器 ]

O-157による死亡、堺市に賠償命令

9月10日付朝日、日本経済新聞等によると、堺市の病原性大腸菌O-157による集団食中毒をめぐり、死亡した小学校6年女児の両親が、 堺市に対し損害賠償を求めていた訴訟の判決が9月10日に大阪地裁堺支部で言い渡された。判決は、市に対し、国や府の通達にあるように、 安全対策として加熱調理に切り替えておけばO-157を除菌できていた可能性が高く、過失があったとして約4500万円の支払いを命じた。 判決理由要旨は次の通り(読売新聞より)。
1 一、学童集団下痢症の原因
 本件学童集団下痢症の原因は、学校給食に起因するものと考える。欠席状況や喫食状況等の調査結果を総合考慮すれば、最も疑われる献立は、中・ 南地区では平成8年7月9日の冷やしうどん、北・東地区では7月8日のとり肉とレタスの甘酢和えである。 有症者の検便からO157が検出されていることからすれば、中・南地区においては、7月9日の学校給食、 そのなかでも冷やしうどんがO157に汚染されていた。
 二、女児の死亡原因
 女児は、7月9日の学校給食を喫食していること、O157感染症の潜伏期間や病状の経過等からすれば、女児は、 O157に汚染された7月9日の学校給食を喫食した結果、O157感染症に罹患し、 さらに溶血性尿毒症症候群に罹患して死亡したものと認められる。
 2、過失の推定
 一、学校給食が学校教育の一環として行われ、児童にこれを食べない自由が事実上なく、献立について選択の余地がないこと、 調理も学校側に全面的に委ねているという学校給食の特徴や、学校給食が直接体内に摂取するものであり、何らかの瑕疵があれば直ちに生命・ 身体へ影響を与える可能性があること、学校給食を喫食する児童が、抵抗力の弱い若年者であることなどからすれば、学校給食について、 児童が何らかの危険の発生を甘受すべきとする余地はなく、学校給食には、極めて高度な安全性が求められているというべきであり、 学校給食の安全性の瑕疵によって、食中毒を始めとする事故が起これば、結果的に、給食提供者の過失が強く推定される。
 二、そうだとすれば、被告が女児に提供した7月9日の学校給食は、女児に提供された時点でO157に汚染されており、その安全性に瑕疵があり、 それを喫食したことによって、女児は死亡したのであるから、学校給食の提供者である被告には過失が推定される。
 3、被告の主張
 一、これに対し、被告は、本件当時の給食行政にかかわる者として要求される知見によっても、 原告らが原因食材と主張するカイワレ大根によって不特定多数の小学校においてO157による集団食中毒が発生し、 児童などへの多数の死傷の結果が発生することを予見することはできなかったから、それを予見して、 児童の集団食中毒を防止するためにカイワレ大根を含むすべての食材を加熱すべき義務があったということはできないこと、当時、 生野菜の消毒液による洗浄は禁止されており、そのなかで、できる限り、水で4回洗うなどという手段をとっていたことなどからすれば、 被告としても、国や大阪府から受領した通知通達類をもとに相当な対策、すなわち、加熱すべき食材はすべて加熱すること、 生食野菜や流水で4回ていねいに所定の方法で洗浄すること、生食するものは喫食時間を踏まえて作業時間・ 配缶時間を遅らせることなどの指示をしていたのであるから、被告に過失はない旨主張する。
 二、無過失の主張の検討
 (1)O157は、経口でしか感染せず、また、熱に弱く、加熱により容易に死滅する性質であることからすれば、 仮に何らかの食材がO157に汚染されていたとしても、献立を加熱調理に切り替え、その加熱調理が適切に行われる限り、 学校給食が児童に提供される前に、O157を除菌できた蓋然性が極めて高い。
 (2)新聞報道や国及び大阪府からの通知通達類によれば、O157について、二次感染の恐れや水の汚染が指摘され、 それを通じて食肉類以外の食品が汚染される可能性が十分に考えられた。 平成8年5月ごろから全国的に蔓延し始めたO157による食中毒についても、その感染源もしくは感染食品はほとんど明らかになっておらず、また、 新聞報道でも、「O157はどんな食物に潜んでいるかよく分かっていない」、「感染原因が特定できない」 などと報じられたようにどの食品がO157によって汚染されているのか分からない状況であって、 食肉類さえ注意していればよいというような状況ではなかった。
 まして、岐阜市での集団食中毒の原因がおかかサラダである旨報道されており、食肉類以外の食材の汚染の可能性が現実化していた。 その当時すでに、公衆衛生の専門家の間においては、O157にクロス感染を起こす性質があることから、 すべての食材が汚染される可能性がある点について、警戒感がもたれていた。我が国を含め世界的にも、専門家の間では、ここ十年程度は、 直接肉にかかわらず、 牛糞やそれによって汚染された水などを媒介として野菜等に感染する可能性が認識されるようになってきていたことなどからすれば、 食肉類のみを警戒すればよいというような常用ではなかったし、被告の所部職員はそのように認識すべきであった。
 (3)国や大阪府からの通知通達等では、感染防止策として、加熱処理の有効性・必要性を食肉類に限定していない。ましてや、 食肉類さえ加熱処理すれば安全であるなどというような指示がされていたわけではない。また、新聞報道でも、食肉類に限らず、すべての食材に関し、 加熱処理の有効性・必要性が繰り返し報道されていた。
 (4)文部省からの依頼を受けた大阪府教育委員会のO157対策の実施状況の調査においても、「献立を加熱調理に変更したか」 という設問をして暗に献立を加熱調理に切り替えることを奨励していた。
 (5)O157は、通常の食中毒菌とは異なり、極めて少量の菌量で発症しやすいこと。まして、堺市においては、 早朝に搬入された食材を検収もしないで常温のまま長時間放置していた実情にあったから、その間にO157が増殖して、水洗いのみでは、 すべてを除菌できない可能性があり、その除菌しきれなかった菌量でも、場合によっては感染の危険性があること。そのことは、 教育行政にかかわる所部職員としては、当然考慮すべきことであり、消毒薬の使用が事実上禁止されていたのならば、それ以外の有効な対策 (加熱処理等)を考慮すべきであった。
 (6)当時、他の多くの市町村では、献立を加熱調理に切り替えており、 被告よりもはるかに規模が大きいと考えられる大阪市や京都市でさえも献立を加熱調理に切り替えていた。被告においても、本件以後、 献立を加熱調理に切り替えたことからすれば、本件当時、被告において、献立を加熱調理に切り替えることについて、 特段の支障があったとは認められない。
 (7)文部省も時期によっては、献立から生のものをはずすこと、すなわち、加熱調理に切り替えることも念頭においた通知をしていた。また、 高温多湿の時期に限定して加熱調理に切り替えても、夏休みを考慮すると短期間のことであるから、献立の工夫によって、 所要栄養量基準表及び標準食品構成表所定の基準を満たすことは十分可能である。逆に、右栄養基準等を満たすために、 学校給食に対する万全な安全対策を怠ることは本末転倒である。
 (8)学校給食は、極めて高度な安全性が求められているのだから、実施にあたっては、 最新の医学上法や食中毒事故情報などの収集を常時行うなど、最大限の注意義務が課せられている。まして、通知通達類や新聞報道によって、 平成8年は例年になく食中毒による死者数が多く、O157が全国的に流行し、その感染源が不明であり、 O157が他の食中毒菌に比べて菌数が極端に少なくても発症させ、小児が罹患しやすく、場合によっては死に至ることがあり、 現時点では溶血性尿毒症症候群については治療法がないことなどが指摘されていた。当時、学校給食については、特に厳重な注意が必要であり、 いくら注意してもしすぎるということはなかった。(注:8項目のみ読売新聞が略のため、毎日新聞より同項目と判断できるところを引用)
 三、そして、O157が経口でしか感染せず、熱に弱く、加熱により容易に死滅する性質であり、仮に、 何らかの食材がO157に汚染されていたとしても、献立を加熱調理に切り替え、その加熱調理が適切に行われる限り、 学校給食が児童に提供される前に、O157を除菌できた蓋然性が極めて高いということができることからすれば、仮に、 本件学童集団下痢症の原因食材の特定、感染ルートの特定ができなかったとしても、右の理は、何ら変わるものではない。
 4、結論
 以上の次第で、被告及び学校給食の実施管理に従事していた被告の所部職員には、不法行為(国家賠償法) における過失があるものといわざるを得ない。被告は原告らに生じた損害を賠償すべきである。
(下線部は学校給食ニュースで付けた)

 なお、原告側が損害賠償の請求根拠のひとつにしていた、PL法(製造物責任法)については判決で触れず、 従来の不法行為として自治体の責任を問う形となった。
 堺市、原告は控訴せず、判決は確定する(9月15日、読売新聞他)。(99.9.29)

 

[ 99/12/31 衛生管理 ]

堺市のO157裁判判決が示唆したもの 里見 宏(健康情報研究センター代表)

 堺市のO157食中毒事件で一人娘を亡くされた保護者が市を相手に裁判を起こしたということは聞いていました。 その判決が1999年9月10日にでました。この判決は学校給食で食中毒が起きたら誰に責任があるのかということを示しました。
 原因は0157だというけれど、どうして0157が給食に入っていたのか。なぜ6千人もの患者がでたのか。 なぜ自分たちの子どもが死ななければならなかったのか。これだけの被害が起きたのに誰にも責任がないのか。納得がいかないのは当たり前です。
 これまで給食で起きた食中毒の責任がどこにあるのかということはウヤムヤにされていたことが多いのです。 学校給食による食中毒が構造的な問題を抱えているのにそこを明確にしてこなかったから、 直接仕事にたずさわる栄養士や調理員が暗黙のうちに責められるという構図が出来上がっていました。
 しかし、今回の判決は給食で食中毒が起きたときウヤムヤにされてきた責任が明確になったことが大きな意味を持ちます。今後、 自治体は給食で事故が起きないように最善をつくさないと、今度は刑事事件として責任を問われることにすらなりかねないことになるでしょう。 この裁判は似た問題を抱える全国の学校給食に大きな影響を与えるはずです。

 O157の裁判は給食を行っている堺市(代表者の市長)を訴え、訴訟には4つの法律が根拠にされました。

(1)「債務不履行」による責任
 堺市は学校給食を食べて亡くなった女の子の命やからだの安全に注意を払う義務を負っていた。食中毒などが起こらないよう細心の注意を払い、 子どもの命やからだに被害がおよばないように万全の措置をする義務があった。ところが、当時、堺市の学校給食は、食材の一括購入を行い、 これを朝5時ころから朝8時ころにかけて、普通の2トントラックで配送し、保冷設備のない下処理室に置きぱなしにしていた。 最長約2時間50分あまりも放置し、かつ献立も加熱していないものを含むという状態で行われていた。
 6月20日には、大阪府学校給食係より「衛生的に取扱、汚染の心配のあるものは十分加熱してください」という内容の通達があり、 6月26日には大阪府教育長から堺市教育長宛に同主旨の通達がなされていた。通達に従い、食材の一括購入を是正し、 配送の際にもすべて保冷車で配送するなどの注意義務があるのに、これを怠り、漫然と従来の通りのまま給食を実施し続けた過失により、 汚染された給食を被害者に食べさせ、死亡するに至らせたものである。よって、堺市は、民法415条により、 右債務不履行による損害を賠償すべき義務がある。

(2)国家賠償法一条による責任
 教育長らは、堺市の地方公務員で、子どもに学校給食を食べさせることは、国家賠償法一条の公権力の行使になる。 学校給食の安全には万全をはかり、子どもの命やからだを保護するべき義務があるにもかかわらず、これを怠り、 食中毒を発生させて被害者を死亡させたので、国家賠償法一条に基づき、過失により生じた損害を賠償する義務がある。

(3)憲法29条3項の類推適用により損害賠償をすべき責任
 堺市は、子どもに対し、学校給食を強制して、教育目的の達成を図っていたものであるが、この実施の過程で被害者を死亡させ、 特別の犠牲を与えたのであるから、憲法29条3項の類推適用により、被害者の損害を賠償する義務がある。

(4)製造物責任法による賠償責任
 製造物の欠陥により人の命、 からだ又は財産に被害が生じた場合、製造業者が損害を賠償することを定めている法律です。学校給食をつくり、 被害者を含む児童に給食を提供していた。給食が0157に汚染されているという欠陥があった。 これにより0157に感染し死亡したので賠償する義務がある。
 この4つの法律で賠償の請求が行われました。(各法律は表1参照)

 これに対して、堺市は債務不履行責任もしくは不法行為責任を主張するなら、何が原因食材を明らかにすべきだ。 カイワレ大根といっているが本当にカイワレ大根で中毒が起きたという証拠がない。また、 当時の数日間の保存食を検査したが0157は見つかっていない。厚生省がカイワレ大根が疑わしいといっているのは仮説であって、 未だに原因食材は不明になっている。食中毒の原因となった食材が特定できていない。
 また、厚生省や大阪府からの通知で0157食中毒があちらこちらで起きていることから児童が中毒を起こせば多数の死傷者がでる危険があり、 万が一起きれば大変なことになるということを予見できたというが、ハンバーグや肉の加熱はしていたし、食器の洗浄、手洗い、 野菜も流水でていねいに洗浄していたから対策は十分やられていた。 0157が大腸菌であることからカイワレ大根が0157に汚染されていることは予見できなかった。だから過失はなく、不法行為は成立しない。 だから国家賠償責任を負う必要がない。また憲法29条3項で言われるように学校給食を強制していたことはなく特別の犠牲を与えたことはない。
 製造物責任法については、給食は教育の一環として行われているのであって、実施する教育委員会は製造業者にはあたらない。 製造物責任法において、製造業者に厳格な責任が負わされる理由は、その製品の種類、企画、構造、 製造過程などを製造業者が一方的意思で決定できる立場にあるからである。しかし、学校給食は一方的意思によってこれを調理するものでなく、 学校給食法の趣旨を受けて、さらに、文部省令によってその栄養内容や使用する標準食品について細かく定められている。 一般の業者のように一方的に意思決定ができないから製造物責任法の前提となる製造業者にはあたらない。 それから0157中毒が起きたとき入手可能な世界的最高水準の科学または技術に関する知見をもってしても、 カイワレ大根が0157に汚染されていることを予見することはできなかったのだから、 市に責任があるという父母の請求には何らの理由もなく棄却されるべきである。
 この4つの争点で裁判は行われていました。(各法律は表1参照)

 裁判所は「学校給食が学校教育の一環として行われ、児童にこれを食べない自由は事実上なく、献立についても選択の余地がない。 調理も学校側に全面的にゆだねているという学校給食の特徴や、学校給食が直接体内に取り入れるものであり、何らかの瑕疵(かしと読みます:きず、 欠点、欠陥という意味です)があれば直ちに生命・身体への影響を与える可能性がある。学校給食を食べる児童が、 抵抗力の弱い若年者であることなどからすれば、学校給食について、児童が何らかの危険の発生を甘受すべきとする余地はなく、学校給食には、 極めて高度な安全性が求められている。安全性の瑕疵によって、食中毒を始めとする事故が起これば、結果的に、給食提供者の過失が強く推定される」 (判決の要旨)として4千5百万円の損害賠償を支払うよう命じました。

 この判決を堺市も認め被害者の父母に賠償金を支払う決定をしました。しかし、問題はこれからです。 学校給食で食中毒が起きたら自治体に過失があった推定できるという重い判決がでたからです。中毒を起こしたら責任は自治体にあるということです。 ですから、この判決は全国の学校給食を行っている自治体に大きなショックを与えたと思います。特に、一括購入、センター給食、 民間委託など合理化の方向に向かっていた自治体は大変だと思います。 もしこの判決が製造物責任法で賠償するような判決なら民間業者に委託しておけばその業者が賠償することになるでしょう。 ところが裁判所は製造物責任法でなく給食に責任を持つ自治体に過失があったと推定するという判決を下しました。 この判決は民間委託であろうとなかろうと自治体の責任が問われるということです。 これから自治体が何も対応しないで食中毒を起こしたら責任はもっと重いものになります。かといって、 野菜や果物まで加熱したり消毒したら食事というよりエサといったほうがぴったりするような給食になり、学校給食法の目的を達成できないどころか、 学校給食の存続そのものが問われます。まさに学校給食は正念場に立たされています。

学校給食に求めるものを変える
 学校給食の目的はお腹の減った子どもにただ食べさすためのものではありません。 じゃ何なのという声が聞こえてきそうです。学校給食法にはその目的が書かれています(学校給食ニュースホームページ「食教育」参照)。しかし、 多くの人達が今の給食を見てこれ以上何を求めたらよいのだろうかと戸惑っています。 学校給食が本当の食べる教科書として使われたことがないから戸惑っているのです。食とは何なのか。何が食べ物になるのか。 食の安全とはどうして守られているのか。食文化はどうして形作られたのか、そしてどう変っていくのか。世界の食文化と日本の違いは。食物と病気、 世界の食料の分配のアンバランスによる飢えの問題。子どもたちに教えることは山積しています。 一括購入やセンター給食が抱える問題だって教えないといけないのです。学校給食の持つ可能性は大きいのです。 公教育できちんと食べるということを教えておけば子どもたちが大人になって食べ物のことで悩むことはズーっと少なくなると思います。 赤ちゃんができ親になった人たちは尚更のことです。生きている人間は生きていくために食べ物を食べなければならないのです。まさに、 学校給食は生きるということを教える新しい教科書になる可能性を秘めているのです。そして、 その秘めている可能性を正に現実に食教育として実践しなければならないことを裁判の判決は示したのです。

表1
民法第415条[債務不履行]

 債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ
憲法第29条[財産権]
1 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
国家賠償法
第1条[公権力の行使にもとづく損害の賠償責任、求償権]
1 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、 国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
製造物責任法
第1条 この法律は、製造物の欠陥により人の生命、 身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、 もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

[ 99/12/31 衛生管理 ]

時事情報 1999年 衛生管理・食中毒関係

●15分で細菌・カビの測定
日刊工業新聞99年12月24日付によると、東京府中市のエヌ・エム・ジー社は、 食品などに付着したカビや細菌などを15分程度で測定できる簡易型の微生物測定装置を開発した。従来の培養法と異なり、 光センサーによる測定を行うもの。1台300万円。(99.12.31)

●広島県福山市で食中毒
中国新聞99年12月5日付によると、福山市の深津小学校、深津幼稚園で給食を原因とする集団食中毒が発生し、児童、 園児ら合計213人が吐き気、腹痛などの症状を発症した。3人が入院、全員快方に向かっているという。 12月2日の給食で出た献立が原因とみられる。市保健所によると、原因菌は症状から黄色ブドウ球菌、セレウス菌など5種類に絞り込まれている。 (99.12.31)

●山口で風味異常の牛乳回収
西日本新聞99年12月3日付によると、 山口県酪農農業協同組合は11月30日に製造した学校給食用牛乳と同じタンクで製造した牛乳を自主回収した。 各学校からイチゴのにおいやフルーツの味、甘いなどの指摘が相次いだことから。健康被害の訴えはないという。(99.12.31)

●堺市O157判決に関する記事
雑誌月刊EX99年12月号の「今月の判例」では、大阪府堺市のO157食中毒による児童の死亡に関する損害賠償裁判についてまとめている。 その中で、当該の判決について、現在の学校給食事業が「センター方式」を多く採用し、自校方式でも「一括購入」をしている例が多いため、 事故の発生が広範囲になりやすいと指摘し、コストの削減に対しては、生命・身体の安全についての検討を検討過程を含め情報公開し、 多くの人の意見を聞くことが必要であると指摘している。(99.12.31)

●武蔵野市私立小でおう吐、下痢
朝日新聞99年11月20日付けによると、東京都武蔵野市私立武蔵野東小学校で児童100人余りがおう吐、下痢、発熱などの症状を訴えた。 食中毒かウイルス感染の疑いで都が調査している。同小は、市内の給食業者が届ける弁当を食べているが、 同じ業者の給食を食べた他の学校や企業では症状はあらわれていない。(99.12.31)

●八王子市の幼稚園でおう吐、下痢
朝日新聞99年11月20日付によると、東京都八王子市の麻生学園南多摩幼稚園で園児、職員ら117人がおう吐、発熱、下痢などの症状を訴えた。 集団食中毒かウイルス感染の疑いがもたれている。昼食はカレーライスだった。(99.12.31)

●奈良県橿原市の水酸化ナトリウム混入事件
新聞各紙の記事をまとめると、99年12月7日、橿原市立真菅小学校の6年生のクラスで、給食のカレーライスを食べた児童4名の気分が悪くなり、 病院に運ばれた。給食前の授業で水酸化ナトリウム溶液を使用する理科の実験を行っていたが、 教師は溶液で渡すべき水酸化ナトリウムを粒状のまま児童に使用させていた。その一部8粒(1g)をひとりの児童が入手し、 被害を受けた児童の給食に混入しようとしたが、給食のカレー鍋にも混入。その結果、鍋の上部からカレーを受け取った別の3名も被害を受けた。 混入させた児童は補導、また県警は学校側の薬品管理について毒劇物取締法違反の疑いで調べている。水酸化ナトリウム(カセイソーダ) は劇物指定を受けており、成人の最小致死量1g。(99.12.31)

●名古屋市内小学校でアルミ片混入事故
中日新聞99年9月付けによると、 名古屋市の桶狭間小学校で9月29日に給食中のおひたしに野菜裁断機の機械内ふたのアルミ片が3片混入した事故が起こった。 1年生の担任教諭が自分の給食で長さ1センチ、幅、厚み1ミリ程度の糸状破片を発見し、全校放送でおひたしを食べないようにと呼びかけた。 2年生、3年生のおひたしからも同様の破片が見つかったが児童は食べる前に発見していた。 野菜を一度にたくさん入れすぎるなどの原因で裁断機の刃が内ぶたに接触したと見られている。(99.11.21)

●佐賀県肥前町でパンに針
毎日新聞99年11月16日付によると、佐賀県肥前町の立入野小で11日の給食用コッペパンから、約3センチの針が見つかり、15日、 唐津署に届け出があった。事務職員が持ち帰ったパンを食べた際に見つけたという。パンは10日製造でポリ袋に個包装されている。 (99.11.21)

●愛媛県宇摩郡土居町で大規模食中毒
 時事通信、毎日新聞、愛媛新聞などによると、愛媛県宇摩郡土居町で患者数904人(11月16日現在)の大規模な食中毒が起こった。2幼稚園、 5小学校、1中学校の児童、教職員ら904人が下痢や発熱などを訴える。県の調査では、 同町の学校給食センターがミキサーを十分滅菌せずに使用し、サルモネラ菌が調理した給食に広がったと発表した。  症状は11月8日夜からあらわれ、9、10、11日に大量の欠席者を出したにもかかわらず、 11日の朝に伊予三島保健所から食中毒の疑いを指摘されるまで給食は続行された。 同町学校給食センターは96年に新設、 約2200食を作っている。(99.11.21)

●川崎市内小学校で異物混入相次ぐ
神奈川新聞99年11月5日付によると、今年3月から11月1日までに神奈川県川崎市の市立小学校5校で計7件の異物混入があった。 うち5件が縫い針で2件が画びょう。パンやスープに入っているのを児童が見つけた。いずれもけがはない。とくに今年3件見つかり、 10月下旬に2件続いた南野川小学校では10月29日から給食を中止し、児童に弁当を持たせている。(99.11.21)

●佐賀県伊万里市、O157菌検出とセンター休業
毎日新聞99年11月18日付によると、佐賀県伊万里市の学校給食センターで調理員3名から病原性大腸菌O157が検出された。 3人とも症状はなく、児童生徒にも症状の訴えはない。3人は休職し、センターは同日から業務を自粛している。(99.11.21)

●炊飯業界でHACCP
日本農業新聞11月16日付けによると、炊飯業界では、 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法にもとづく日本炊飯協会のハセップ設備認定がはじまっている。現在、7社が認定を受けた。● color="#8080c0">(99.11.21)

●札幌市、洗い場と調理場を分離
北海道新聞99年9月29日付けによると、北海道札幌市教育委員会は、学校給食調理場を調理と食器洗浄で部屋を分離する方針を決めた。 校舎新設時や改築時に部屋を増設、調理場はドライシステムにする。現在は、今春開校した平岡緑中のみ。来年4月開校の星置中でも取り入れられる。 (99.11.21)

●広島県東広島で食中毒
中国新聞99年9月28日付によると、東広島市の市立西志和小学校で児童118人が9月23日から26日に下痢や腹痛などの食中毒症状を訴えた。 西志和小学校は自校式。(99.10.23)

●関西地区の生野菜使用進まず
東京新聞99年7月21日付は、病原性大腸菌O-157の集団感染から3年目としての特集を掲載。兵庫県、大阪府、 京都府の多くの学校給食で生野菜が出されていないことを報じた。また、果物も消毒可能なもののみという対応も多いという。(99.8.5)

●校庭のジャガイモ、食中毒に注意
西日本新聞99年7月17日付によると、福岡市東保健所、同市保健環境研究所は、ジャガイモの芽や皮などに含まれる有毒物質ソラニンについて、 子どもでは従来いわれてきた量よりも少量で中毒症状を起こす可能性があることを指摘する研究結果を発表した。また、 学校の校庭で理科の実験用などとして栽培されるジャガイモは未熟で小さなものがあり、注意が必要としている。福岡市では、 98年6月に6年生19人が食中毒を起こしたほか、99年7月にも同様の食中毒が発生している。(99.8.5)

●東大阪、大阪市の4私立幼稚園で食中毒
毎日新聞99年6月25日付によると、大阪市、東大阪市の4つの私立幼稚園で給食会社のお弁当を食べ、園児71人が食中毒を起こし、 男児2人が入院した。原因菌はサルモネラ菌。東大阪市の給食会社「村上給食」高井田工場が調理した6月7日の弁当が原因。 同工場は6月25日から5日間の営業停止。

●愛知県美和町、センターに金属探知器導入
中日新聞99年7月3日付によると、愛知県海部郡美和町では、小中学校の給食に金属片などの異物混入が相次ぐため、 5小中学校の給食をつくる町立学校給食センターに金属探知器を導入する。これまで、美和中学校で5月末にミシン針、6月はじめにプラスチック片、 6月中旬に美和小と正則小で針金状金属片とプラスチック片、6月28日に正則小で鉄製クリップが見つかっている。 町教委は2度給食を休止しているが、警察の調べで一部についてはセンターで混入したことが分かったため、金属探知器を導入することになった。

●茨城県土塔中央保育所、給食で食中毒
読売新聞99年7月4日付によると、6月24日頃から7月3日までに、茨城県守谷町の町立土塔中央保育所で、 乳幼児28人と職員7人が食中毒症状を訴えた。乳幼児らの便からサルモネラ菌が検出。症状は軽いという。県保健福祉部では、 保育所の給食が原因とみて調べている。

●製造元の衛生管理調査
北海道新聞99年7月8日付によると、札幌市教委は、市保健所、 学校給食会などと合同で市内の学校給食用加工食品メーカー10社を立ち入り調査した。食中毒防止が目的。市の食品衛生監視員、 学校栄養職員らが立ち入る。

●秋田・大潟中で食中毒
河北新報99年7月11日付によると、7月6日から8日にかけ、秋田県大潟村の大潟中学校で全校生徒100人中40人と教員2名が腹痛、下痢、 吐き気などの症状を訴えた。8人が病院で手当を受けた。2人からは病原性大腸菌を検出。大潟中では、7月5日、 6日に全校生徒参加の自然教室を田沢湖畔で行っている。県環境衛生課では、生徒らが田沢湖畔の沢水を飲んでいることからその分析をすすめる。 研修施設の食事が原因ではないとしている。

●塩釜市、独自の衛生管理マニュアル
河北新報99年7月12日付によると、塩釜市教委は、市独自の「学校給食従事者のための衛生管理マニュアル」を作成、 市内の給食関係者に配布した。塩釜市は13小中学校がすべて自校式で文部省の衛生基準では実態にそぐわないとして作成。 市の学校給食栄養士会が栄養士と調理員の検討で作成。老朽化している施設の実状にあった対応をしているという。

●和歌山で牛乳からO-157
 東京新聞99年4月2日付、朝日新聞4月10日付他によると、和歌山市内で学校給食の牛乳を感染源とする病原性大腸菌O- 157による食中毒が発生した。和歌山市保健所が4月1日に発表。それによれば、市内小学校低学年の男児1名が3月24日頃からO- 157が原因とみられる下痢などの食中毒症状となった。男児は快方に向かっている。調査の結果、3月16日、18日の牛乳からO- 157を検出した。この牛乳業者の処理施設では、食品衛生法で義務づけられている殺菌時間と温度を自動的に記録する温度計の設置がなく、 記録もないなどの問題があった。

●異物混入事件まとめ3月20日現在
 読売新聞99年3月20日では、文部省のまとめとして、針や画びょうなどの混入について報じている。 2月18日に岩手県内の小学校で起きて以来、全国20都府県で104件が発生、小学校95校、中学校9校。鹿児島27件、青森12件、愛媛9件、 岩手8件、兵庫7件となっている。うち1件のみ、児童が混入を認めたが、他は原因が特定されていない。(99.4.1)

●針混入、愛媛県
 愛媛新聞99年3月11日付では、学校給食やスーパーなどで、ぬい針の混入事件があいついで起こっていることを報じている。松山市では、 小中学校48校に1日2万個のパンを納入している業者が、金属探知器を購入し3月8日より検査をはじめたが、 初日に1中学校で混入事件が発生している。その後、松山市内の小中学校では一時的にパンをやめ、米飯に切り替わっている。市教委では、 他のふたつある給食用パン納入業者にも金属探知器の導入を要請。しかし、業者側は、製造、納入過程での混入は考えられないとして困惑している。 (99.4.1)

●針混入、岩手県
 読売新聞99年2月26日付では、県内の給食用パンなどに針が混入されたことを報じている。24日、二戸市の小学校でパンにまち針が混入。 25日、大迫町の小学校でパンにぬい針が混入。25日、岩手町の小学校でパンケーキにぬい針が混入。岩手県では、2月末より同種の事件が発生、 すでに14本の針が見つかっている。(99.4.1)

●針混入、栃木県
 読売新聞99年2月26日付によると、足利市の小学校で、パンの中にぬい針が混入していた。(99.4.1)

●針混入、神奈川県
 産経新聞99年3月5日付によると、4日、相模原市の小学校でパンの中にぬい針が混入していた。同市では、1日にもぬい針の混入があった。 4日、熊谷市の小学校でパンに木綿針が混入していた。4日、伯方町の小学校で、パンにぬい針が混入していた。(99.4.1)

●堺市、第三者機関による給食チェック
 朝日新聞99年2月17日付によると、大阪府堺市教委が99年度より「堺市学校給食・衛生管理委員会」を設置し、 第三者機関として主に学校給食の衛生管理について立ち入り調査などを行い、市教委に報告する体制をとることを決めた。(99.4.1)

●堺市、給食ミスで101人を処分
 朝日新聞99年2月20日付によると、堺市教委は、うどんにラーメン麺が混入するなどの給食関連ミスが多発していることを受け、 教育長をふくむ101人に厳重注意などを行った。市教委幹部、小学校長、教頭、栄養職員、調理員、市学校給食協会職員を対象としている。 (99.4.1)

 

[ 99/12/31 衛生管理 ]


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