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遺伝子組み換え表示制度(少しふるい)
初出記事が古いため、情報が現状と合わなくなっていることがあります。
最新の情報を別途入手してください。
農水省や厚生省は遺伝子組み換え食品がふつうの食品と内容成分は変わらない(実質的同等)として、 1996年に遺伝子組み換え食品が日本に輸入されるようになっても表示の必要性を認めませんでした。これに対して、 遺伝子組み換え食品の表示を求める市民の運動が全国に広がり、自治体の議会で表示を求める請願が数多く可決され、署名も全国から寄せられました。 その結果、まず農水省が安全性に問題はないが消費者が選択するために表示を行うとしてJAS法を改正して表示制度をはじめました。そして、 厚生省は遺伝子組み換え食品の表示を食品衛生法で行う方向で動いています。
農水省の改正JAS法による表示制度
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)が1999年7月22日に改正され、 遺伝子組み換え食品について表示することが決まりました。2000年3月31日に「遺伝子組み換えに関する表示の基準」が告示され、 表示制度がスタートしました。この表示制度は2001年4月1日以降に製造、加工、輸入、販売されるものから適用されることになっていますが、 すでに移行期間として多くの食品が対応しています。
●表示されるもの
「従来のものと組成、栄養素、用途等は同等である遺伝子組換え農産物が存在する作目(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、
綿実)に係る農産物及びこれを原材料とする加工食品であって、
加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたタンパク質が存在するもの 」については遺伝子組み換え品や不分別品を使用した場合、
表示が義務づけられます。
加工食品として対象となるのは以下の食品およびそれを主原料とした加工食品です。
豆腐・油揚げ類、凍豆腐、おから、ゆば、納豆、豆乳類、みそ、大豆煮豆、大豆缶詰・瓶詰、きな粉、大豆いり豆、大豆(調理用)、大豆粉、
大豆たん白、枝豆、大豆もやし、コーンスナック菓子、コーンスターチ、ポップコーン、冷凍・缶詰・瓶詰とうもろこし、コーンフラワー、
コーングリッツ、とうもろこし(調理用)
表示方法としては、
大豆(遺伝子組み換え不分別)
大豆(遺伝子組換えのものを分別)
大豆(遺伝子組換え)
などとなります。
●表示されないもの
「従来のものと組成、栄養素、
用途等が同等である遺伝子組換え農産物が存在する作目(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実)
に係る農産物を原材料とする加工食品であって、組み換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質が加工工程で除去・
分解等されることにより、食品中に存在していないもの」
つまり、遺伝子組み換えでできたタンパク質が分解しているから表示する必要はないとされるものは以下の通りです。これらの場合、
遺伝子組み換え品や不分別品を使用していても表示されません。また、これらを主な原材料とする食品についても同様です。
醤油、大豆油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン、コーン油、ナタネ油、綿実油、マッシュポテト、ジャガイモでんぷん、
ポテトフレーク、冷凍・缶詰・レトルトのジャガイモ製品
●組み換えではないものの表示方法
遺伝子組み換え農産物を原料とした食品で遺伝子組み換え農産物ではない原料を使用した場合、
以下の表示ができます。表示をしなくてもかまいません。なお、遺伝子組み換え品であることを表示しなくてもよいものであっても、
遺伝子組み換えでないことを表示することはできます。
表示例
大豆(遺伝子組換えでないものを分別)
大豆(遺伝子組換えでない)
●表示制度の問題点
次のような問題点があります。
(表示しなくてもいいものがある)
まず、遺伝子組み換え農産物の原料を使っていても表示しなくていい品目がたくさんあります。
遺伝子組み換え技術によりできたタンパク質が分解されているから区別がつかないという理由で表示されませんが、
消費者が遺伝子組み換え食品を選ぶ、選ばないの選択には必ずしもタンパク質が分解されているかどうか、
つまり安全性への不安だけではないと思います。社会的に、自然環境への影響を考えて、遺伝子組み換え食品を認めない消費者にとっては、
表示が必要なはずです。現状では、任意表示で遺伝子組み換えではないことが表示できますので、組み換え品ではないものを選ぶしかありません。
(分別の限界)
遺伝子組み換え農産物と組み換えでない農産物が分別されていても、途中で混入したり、
とうもろこしのように遺伝子組み換えとうもろこしの花粉によって組み換えでないとうもろこしに遺伝子汚染が起こることがあります。そのため、
大豆では混入率5%と規定され、とうもろこしでは混入率が指定されていません。つまり、遺伝子組み換えでないものを分別してあるという表示でも、
100%ではない可能性があります。
(主な原材料)
表示義務がある加工食品でも、主な原材料として重量の5%以上で、原材料の上位3品目になるものだけが義務表示になります。つまり、重量が5%
以上あっても原材料の上位3品目に入らなければ、義務表示外になってしまいます。
このJAS法による表示制度は、遺伝子組み換え品が増えるなどの変化に対応するため1年ごとに見直すとされています。 より厳しい表示制度を求めていくことが必要です。
厚生省の食品衛生法によるもの
厚生省は、これまでガイドラインとして法的な拘束力がなかった遺伝子組み換え食品の食品としての安全審査について、 2000年5月1日付で関係省令、告示を改正することで義務化しました。2001年4月1日より施行されます。これにともなって、 2000年7月13日に出された食品衛生調査会表示特別部会は、食品衛生法による遺伝子組み換え食品の表示が必要であるとの報告をまとめました。 農水省のJAS法とほぼ同じ内容になりますが、こちらは、 安全審査を受けていない遺伝子組み換え食品が食品に入らないようにするという目的が加えられています。今後、この報告に従って法案がつくられ、 改正される見通しです。この表示制度も、JAS法の表示制度と同様の問題点があります。
(学校給食ニュース2000年10月号)
[ 00/12/31 遺伝子組み換え ]
遺伝子組み換えイネの研究開発
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(はじめに)
水田での稲作は雨が多く傾斜地が多い日本でもっとも作りやすく、また自然環境を守る土地の利用方法です。また、コメは、
主食として食文化のみならず、日本の伝統文化の中心にもなっています。コメは、近年輸入自由化によって自給率が少し下がりましたが、
減反政策で強制的にコメ作りをやめさせなければならないほど、自給しやすい作物でもあります。
そのためか、日本の政府・企業には、コメの分野だけは日本が世界をリードしたいという意欲があり、日本国内で海外の農薬メーカー、
バイオメーカーなどに協力して、遺伝子組み換えイネの研究開発をすすめています。すでに、
いくつかの品種が農水省によって作付を認められています。まだ、厚生省の食品としての安全審査を受けたコメはありませんが、今後、
安全審査に申請が出される日は近いと考えられます。
イネの遺伝子組み換えは、日本にとって大きな意味を持ちます。
ひとつには、日本で遺伝子組み換え作物が栽培される可能性があります。これまでのところ、
遺伝子組み換え作物は日本で商業栽培されていないと考えられます。それが、イネの場合には省力化などの理由で栽培されるかも知れません。
国内の自然環境への影響が考えれます。そして、コメを主食にする日本人は、遺伝子組み換えの長期的な人体実験を行うことになります。
ふたつめは、海外で日本向けの遺伝子組み換えイネが栽培され、それが安い価格で日本に輸出され、その結果、日本の農業が壊滅する可能性です。
すでに、日本の農業は輸入農産物やコメの価格下落によってとても厳しくなっています。このままいけば日本の農業がだめになり、
農地が荒れ果ててしまい、水害の多発など自然環境への影響も考えられます。また、不安のある輸入食品を食べさせられてしまうようになります。
さらに、コメはまだまだ国際的な農産物ではなく、貿易量も少ない農産物です。そのため、自給的作物と言われています。
遺伝子組み換えイネによって大規模作付が行われるようになると、コメも貿易品になり、
東南アジアなどの食料を日本などの経済大国がうばってしまうことにもつながりかねません。
(どこまで開発がすすんでいるのか)
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンが2000年8月現在でまとめたリストによると、すでに多くのイネが開発されています。
(同キャンペーン資料より)
●参考資料と市民の動き
(参考資料)
「いらない! 遺伝子組み換えイネ」パンフレット
遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン発行
1冊350円送料120円大部数の場合割引あり
問い合わせ 03-3711-7766
(日本消費者連盟内、同キャンペーン事務局)
|
「FOR BIGINNERS SCIENCE 遺伝子組み換えイネ編」
(天笠啓祐著 現代書館発行 1500円)
(学校給食ニュース2000年10月号)
[ 00/12/31 BSE ]
海外の未承認とうもろこし混入事件
各種報道によると、アメリカのメキシカンファストフード「タコベル」ブランドのタコス用シェルに、
アメリカ政府が家畜飼料用のみ承認している遺伝子組み換え殺虫性トウモロコシが原料として混入していました。これは、
アメリカの環境保護団体が民間の研究所に調査を依頼し、その結果分かったもので、米環境保護局(EPA)と食品医薬品局(FDA)
も調査にのりだしました。
その結果、フィリップ・モリス社の傘下にあるクラフト・フーズがタコベルブランドで小売店販売しているものに混入していることを、
同社も独自に調査して確認しました。そして、全面回収を行っています。同商品はペプシコ社の子会社、サブリタス・メキシカリ社が製造したもので、
原料はトウモロコシ粉大手のアズテカ・ミル社が製造していたことがわかっています。
また、ファストフードチェーン「タコベル」は、小売り用のクラフト・
フーズ社商品とタコベル社の商品は製造方法が異なるとして回収はしないことにしています。ただ、今後仕入先を変えることも表明しました。
この殺虫性トウモロコシは、人間が消化分解しにくいタンパク質があり、
アメリカでは人間への安全性が確保できていないとして人間の食用に認められていません。1988年にアメリカで飼料用に承認されて、
「スターリンク」の商標でアベンティスSAが開発、販売しています。
クラフト・フーズ社は、回収にあたり、EPAに対し、食用が認められない作物の栽培を承認すべきではないなどの提言を提出しました。また、
アベンティスSA社も、種子の販売を食用として認められるまで中止する措置を発表しています。
なお、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンニュース39号によると、この遺伝子組み換えとうもろこしは、
同キャンペーンが国内で入手し検査を行った畜産飼料のなかにも存在していたとのことです。さらに、同キャンペーンと政府当局の担当者との懇談で、
「日本では食品としての確認も近い」という発言があったと報じています。
(学校給食ニュース2000年10月号)
追記:
さらに、国内でも一部この未承認とうもろこしが食品として流通していることが判明しています。(00年11月1日)
[ 00/12/31 遺伝子組み換え ]
時事情報2000年
●仙台市、遺伝子組み換え食品不使用方針
河北新報01年2月20日付によると、
仙台市教育委員会は、市立学校の給食食材に遺伝子組み換え食品を原則として使用しない方針を決めた。表示義務の24品は非組み換え品を使用し、
表示義務外の品目も可能な限り非組み換え品にするとしている。(01.03.05)
●上田市、非遺伝子組み換えの規格策定
信濃毎日新聞00年8月31日付によると、
長野県上田市教育委員会は、全国の異物混入多発や遺伝子組み換えを排除し、国産品を原則とするなどの方針で、学校給食向け食材納入規格をまとめ、
公表した。穀類や野菜など176品目に納入基準を明文化。安全性を重視したとして、豆腐類の大豆は国産、肉類加工品は保存料、合成着色料、
化学調味料を使わない、果実類は農薬散布の少ないものなどと明記。また、地場産食材指定もキノコ類などで行っている。(00.10.05)
●学校給食用油、コメ・ヒマワリ増加
食品新聞00年6月30日付によると、遺伝子組み換え食品を避ける動きから、学校給食の調理用油にコメ油やヒマワリ油を採用する例が増えている。
神奈川県川崎市は、4月から従来の大豆油をコメ油に切り替えた。遺伝子組み換え大豆を避ける安全性を重視するため。メーカー側も対応をはじめ、
コメ油大手のボーソーが積極的に学校給食への導入を進めている。また、日清製油がヒマワリ油を学校給食用に発売し、
ホーネンが学校給食用コメ油を発売するなどの動きもある。(00.7.10)
●名古屋で遺伝子組み換え食品を使用せず
中日新聞00年5月27日付によると、名古屋市教育委員会は食材調達機関に対し、学校給食用食材に遺伝子組み換え食品を使用しないよう指示し、
実施されている。対象は、農水省の表示義務対象となった食品であり、表示義務のない大豆油などは対象外となっている。(00.6.16)
●札幌市、非組み換え大豆へ
北海道新聞00年3月2日付けによると、札幌市は、新学期より遺伝子組み換え大豆を豆腐類から排除する。また、油、醤油なども将来変更する方針。
これにあわせ、給食費の保護者負担は年間170円値上げされる。(00.3.29)
●新潟県上越市、遺伝子組み換え使用せず
新潟日報00年3月15日付によると、
上越市は市内の小中学校食材に遺伝子組み換え食品を使用しない方針を決めた。油を米ぬか油に、醤油、豆腐などは原料を変更する。この結果、
2000年度より、年間700万円ほど費用がかかるが、予算を計上し、増額分を全額市で負担する。(00.3.29)
●長崎県、遺伝子組み換え食品の使用なし
長崎新聞00年1月19日付によると、長崎県学校給食会は、同会購入の大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、
トマト主原料の食品には遺伝子組み換え食品が使われていないことを確認したという。ただし、カナダ産フレンチポテトは調査中。なお、九州・
沖縄の各県学校給食会では遺伝子組み換え食品の使用禁止を申し合わせている。(00.3.29)
●岡山、広島、香川の遺伝子組み換え食材対応
山陽新聞00年2月21日付けは、岡山、広島、香川3県の学校給食における遺伝子組み換え食材への対応についてまとめている。
高松市学校給食会は、97年度より輸入大豆の味噌、
大豆とトウモロコシの加工品について輸入業者による非組み換え作物証明付きのものに切り替えた。
観音寺市給食センターも、99年より同様の対応をしている。
岡山県学校給食会は、実態調査中で、その後方針を決めるとしている。
広島県では、遺伝子組み換え作物の表示を求め、市町村に情報を公開するとしている。広島県学校給食会からは、
納入業者に使用中止を強くは言えないとの声もある。(00.3.29)
●山梨県上野原町、非組み換えの給食
山梨日々新聞99年12月17日付によると、山梨県上野原町は、2000年度より6小学校を対象にセンター方式での学校給食が実施される。
このセンター給食で、遺伝子組み換えでない食材をできるだけ使う方針を示した。同町では自校方式の3校で、
主に地元農産物を使った学校給食を行っている。。(00.2.26)
●松本市、非組み換えの給食
信濃毎日新聞99年12月15日付によると、松本市教育委員会は12月定例市議会で、小中学校、
保育園の給食に安全性が確認されるまで遺伝子組み換え表示のある食材は購入しないとの方針を示した。。(00.2.26)
●新潟県の遺伝子組み換え食材利用状況
新潟日報99年12月8日付けは、
県議会での報告として新潟県内の学校給食における遺伝子組み換え食品使用について報じた。教育委員会の99年10月調査によると、
県内112市町村中84市町村が「購入しない」「できるだけ購入しない」と回答している。「購入する」が6、検討中が17、無回答が5。
(00.1.27)
●北海道の遺伝子組み換え食材利用状況
北海道新聞00年1月14日付は、
北海道内の学校給食で遺伝子組み換え食材の取り扱いについてまとめた。それによると、使わない方針が人口10万人を超える道内10市中6市
(帯広、小樽、苫小牧、江別、北見、室蘭)、使う方針が4市(札幌、旭川、函館、釧路)となる。なお、
使用する4市は国の安全確認を根拠にしているが、札幌市などでは方針を見直す動きもある。(00.1.27)
[ 00/12/31 遺伝子組み換え ]
牛乳について考える1
学校給食に関する出来事で2000年にもっとも新聞などをにぎわせたのは、「牛乳」 についてでした。雪印乳業の食中毒事件以降、注目を集めた牛乳。静岡県の函南町にある函南東部農協の牛乳処理工場に協力していただき、 牛乳の基本的な知識を整理しました。
【牛乳と牛乳のようなもの】
白い飲みもの、牛乳。学校給食で出されているのは「牛乳」です。雪印乳業の食中毒事件で最初に問題になったのは「低脂肪乳」でした。 これは「牛乳」ではありません。牛乳と牛乳・乳製品を使った飲みもののについては、 厚生省の乳等省令や公正競争規約で種類の定義が決められています。
牛乳(成分無調整牛乳)…牛からしぼった生乳を加熱殺菌しただけのものです。なお、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8% 以上というきまりがあります。
部分脱脂乳…生乳の乳脂肪分を遠心分離器で一部分とりのぞきます。脂肪分が牛乳より少ないですが、カルシウム、 タンパク質などの成分はほとんど牛乳と同じになります。
加工乳…濃厚牛乳や低脂肪乳などの商品名で売られています。生乳、牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、バターなどの乳製品が原料で、 牛乳に比べて乳脂肪分をふやしたり、乳脂肪分を減らすなどの加工処理が行われます。無脂乳固形分8%以上というきまりがあります。
乳飲料…コーヒー牛乳やフルーツ牛乳などの商品があります。生乳や牛乳、乳製品を主原料にして、乳製品以外のものを加えたものです。 なかには、カルシウムやビタミン、鉄分などを加え、見た目に白い牛乳のような乳飲料もあります。乳固形分3%以上というきまりがあります。
では、「牛乳」という商品名(表現)は定義上の「牛乳」だけに認められているのでしょうか。不思議なことに、乳脂肪分3%以上、
無脂乳固形分8%以上で、生乳が50%以上含まれていれば加工乳や乳飲料でも商品名に「牛乳」とつけるることができます。また、
コーヒー牛乳などの「色物」乳飲料については、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上であれば、生乳が50%入っていなくても商品名に「牛乳」
の文字が使えます。
また、「ミルク」「乳」の文字については、乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上で使えることになっています。(公正競争規約)
なお、これらの表示は、製品に必ず記載されています。「種類」のところにあたりますので、スーパーなどでいろんな製品を見比べてみてください。
●脱脂粉乳+バター+水=牛乳?
生乳から水分を抜き取ったものが「全粉乳」、生乳から脂肪分を取りわけ、水分を抜き取ったものが「脱脂粉乳」です。じゃあ、
全粉乳を水に溶いたり、脱脂粉乳と乳脂肪の固まりであるバター、それに水を加えたら牛乳になるのでしょうか。
牛乳は、牛の乳を搾ったものを加熱殺菌しただけのもので、水や添加物を加えると、牛乳ではなくなります。
このように脱脂粉乳+バター+水でできたものは「還元乳」と呼ばれます。
果汁の飲み物には、搾っただけの「ストレート」と、一度濃縮させたものを水で戻した「濃縮果汁還元」の2種類があります。しかし、牛乳の場合、
この「還元乳」を「牛乳」や「成分無調整乳」として販売すれば、処罰の対象になります。かつて全酪連のいわゆる「水増し牛乳」事件は、
まさしく生乳に粉乳と水を加えて調整していたもので大きな事件になりました。
その一方で、加工乳や乳飲料の中には、「牛乳」「ミルク」などの表示はないものの、あたかも牛乳のように販売されているものがあります。
学校給食に使用される「牛乳」は、加工乳や乳飲料でないため、基本的には本物の「牛乳」として安心できますが、
家庭などでこれらの牛乳のような飲みものを飲むことはあろうかと思います。牛乳と牛乳のようなものの違いについて知っておくことは大切です。
【牛乳の殺菌方法】
●殺菌方法
牛乳は牛の乳です。もともとは、母牛が子牛に直接飲ませるもの。
搾りだしてしばらくしてから飲むことは本来の自然状態ではありえません。だから、搾りだしてから時間とともに少しずつ品質は劣化します。
牛乳は栄養たっぷりの液体です。それは細菌にとっても栄養がたっぷりということです。乳酸菌のようないい菌も、
食中毒を起こすような菌も繁殖しやすい液体です。そこで、牛乳については、
まず原料の生乳について総菌数1ミリリットルあたり400万以下の基準があり、また、殺菌後は5万以下になるように食品衛生法にもとづいた
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で定められています。また、殺菌方法についても「62~65度で30分間加熱殺菌するか、
またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」と定められています。そして、
殺菌後は1ミリリットル中に5万以下の菌になることが求められます。
牛乳の殺菌方法は、大きく4つの方法があります。その中で、日本でもっとも多く採用されているのは超高温短時間殺菌法(UHT)です。
低温保持殺菌法(LTLT)…いわゆる低温殺菌で、62~65度・30分の殺菌を行います。
高温保持殺菌法(HTLT)…75度以上・15分以上で殺菌を行います。
高温短時間法(HTST)…72度以上・15秒以上の殺菌。世界的に一般的な方法です。72度15秒が主流ですが、80~85度・
10~15秒の殺菌方法もあります。
超高温短時間殺菌法(UHT)…日本で一般的な方法です。120~130度・2秒の殺菌をします。150度・1秒の殺菌もみられます。
●ホモジナイズ
この殺菌の前処理として、均一化(ホモジナイズ)を行うことがあります。
生乳には脂肪の粒が入っています。これを脂肪球といいます。生乳を静かに容器に入れて置いておくと、やがて上の方にクリームの層ができます。
ホモジナイズとは、この脂肪球をこわして小さくする工程で、これによってできた牛乳は置いていてもクリームが浮き上がったりしない、
均一なものになります。
超高温短時間殺菌の牛乳の場合には、必ず、この処理をしてあります。これは、均一化することで、牛乳の殺菌処理がやりやすくなるからです。
一方、低温殺菌の場合、ホモジナイズをしてあるものとしていないものがあります。ホモジナイズをしない理由に、
できる限り生乳に近い状態でパック詰め(瓶詰め)して届けるという目的があります。また、ホモジナイズをしない牛乳は、殺菌してあっても、
静かに容器に置いておけば、クリームが浮き上がり、上の方は濃い牛乳、下の方はあっさりした牛乳になるため、
使い分けなどもできるというメリットがあります。そのかわり、飲むためだけならば、
よく振ってから飲まなければ場所によって味が違うことになります。
●殺菌方法による栄養の違い
日本で一般的なUHTと近年増えつつあるLTLTについて比べてみると成分的な差はありません。
しかし、高温をかけるUHTの方は、カルシウムやタンパク質が熱変成を起こすことが知られています。また、ビタミン類は、
UHTの方が10~20%ほど少なくなります。
●殺菌方法による味の違い
日本で一般的な超高温殺菌の味に慣れていると、はじめて低温殺菌牛乳を飲んだとき「あっさりしている」「コクがない」
という感想を持つ人が多いようです。これは、高温殺菌の牛乳には色が変わるほどではなくても高温のためにいわゆる「コゲ」臭が牛乳につき、
これがコクとして感じられるのではないかと言われています。低温殺菌の方が、もとの生乳により近く、本来の風味があります。
●なぜ日本でUHTが主流なのか
もともと牛乳を飲む習慣がなかったところに牛乳の文化が導入され、また、栄養改善の目的で牛乳の飲用が進められた経緯があります。そのため、
かつては衛生管理上、生乳の品質に不安があり、より滅菌に近いUHTを殺菌方法として採用したようです。また、UHTの方が、
短時間に連続して大量に処理できるため乳業メーカーの経済性からもUHTが選ばれてきたと考えられます。
一方、世界的には低温殺菌が主流ですが、これは、背景に牛乳の文化があると考えられます。よく刺身にたとえられますが、
刺身を熱で殺菌して食べることはありません。それと同様に、牛乳はより搾りたてに近い状態で飲んだ方がおいしく、
最低限の加熱にとどめて風味を損なわないようにしたいという考えに根ざしているようです。
【牛乳の衛生問題】
牛乳の安全性、衛生面については、大きくふたつに分けて考えられます。ひとつは、酪農家が牛を育て、乳を搾り、牛乳工場に運ばれるまで。
もうひとつは、牛乳工場で殺菌などの処理をして容器に詰め、販売し、消費者が飲むまでです。
まず、搾って牛乳工場に運ばれるまでですが、生乳の受け入れにあたっては、乳等省令をもとに、細菌数の確認、乳脂肪分など成分の確認、そして、
抗生物質反応の確認をします。抗生物質の反応を検査するのは、牛の体調が悪く投薬をしたときなど、
投薬終了後3日間は乳を出荷しないことになっていますが、牛の乳は毎日朝晩搾りますので、万が一混入することのないようにするためです。
これは酪農家ごと、搾るたびに調べています。
次に、殺菌後の検査ですが、脂肪分、無脂固形分や細菌数、大腸菌群の有無について確認します。また、官能検査として風味を確かめます。
なお、この細菌数の検査には約18時間ほどかかるため、製造後早くても翌日にしか店頭に並ぶことはありません。学校給食の牛乳でも同様で、
パック詰めした翌日、細菌数検査が終わってから配送されます。
牛乳そのもので衛生上問題になるケースとしては、保管や配送などの際に温度管理が適切ではなく、温度が高くなって菌が繁殖し、
乳酸発酵で酸味がしたり、そのほかの菌で異臭がする場合が考えられます。また、瓶などの場合で、洗浄時の塩素が残留し、
牛乳ににおいが移って異臭が起こるなどの事例がありました。
なお、牛乳についての衛生基準は他の食品よりもはるかに厳しく、生乳段階、殺菌後の段階で菌数、抗生物質などの検査が毎日行われています。
牛乳・乳製品の事故が起こるたびに、酪農家が「自分たちは衛生面をきちんとしているのに、どうして工場などでこのようなことが起こるのか」
と怒りを見せますが、これは、生乳段階で抗生物質反応などが発見されると、単に買い取りを拒否されるだけでなく、損害賠償を要求されるなど、
厳しい衛生管理を求められており、それに対応している自信があるからです。ですから、牛乳は、牛乳工場での「ごまかし」
や配送時の温度管理ミスなどがない限り、基本的には安全性が高い食品です。
【牛乳加工場見学】
●丹那牛乳~函南東部農協
函南東部農協は静岡県函南町丹那にあります。この周辺は丹那盆地として標高が高く、土地がやせているため野菜や米、
果物などの生産に適していません。そのため古くから酪農が盛んで100年を超える歴史を持っています。函南東部農協の生産物は、牛乳・
乳製品が中心になっています。
今回、「丹那牛乳」を生産する函南東部農協に取材をお願いしたのは、
牛乳処理工場が低温殺菌と日本で一般的な超高温殺菌の両方を取り扱っていることと、生産者と近く、消費者団体との古くからの付き合いがあり、
取材の目的をお話しして快諾していただけたためです。お話しは、製造部長の橋本正雄さんにうかがいました。
まず、はじめに取材先の函南東部農協牛乳処理工場(以下、丹那牛乳)について紹介しましょう。
丹那牛乳の工場は、函南町の丹那盆地の中心部に位置します。丹那盆地は、温暖な静岡県の中では標高が高く、土地がやせているため、
古くから野菜や果物などの農作物よりも酪農がさかんでした。酪農の歴史は古く100年を超えるといいます。現在、
丹那盆地には45軒ほどの酪農家がいます。丹那牛乳は、1955年(昭和30年)に創業しました。
それまで酪農家は大手の乳業メーカーなどに生乳を販売していましたが、買ってくれるときと買ってくれないときがあったため、
生産者団体である農協で生産者が中心となって自分たちの生乳を自分たちで加工して安定的に販売するためにできたといいます。また、
1981年に消費者団体から低温殺菌牛乳を作って欲しいとの要望があり、取り組みをはじめました。
学校給食については、現在県内東部を中心に133校に直接配送しています。給食センター方式の学校でも、
牛乳だけは直接学校に配送しているとのこと。そのため、給食センター方式の方が配送先が多くなり、
実際には学校給食関連だけで140カ所以上に配送しています。この学校給食用牛乳は、いずれも紙パックの製品で、低温殺菌ではありません。
丹那牛乳は、消費者との交流もあり、見学会が行われます。その回数は、小学校の社会科見学を含め年間約150回!
「2~3日に1度は誰かを案内しています。なかには、牛乳をおさめていない学校からも社会科見学したいと言われて案内することもあります」
と橋本さん。丹那牛乳には牛乳工場の各工程を2階からガラス越しに見学できるコースがつくられていて、作業中でも、衛生面に影響なく、
いつでも見学できるようにしつらえてありました。
●牛乳の距離
橋本さんに丹那牛乳の一番の特徴は何かと聞いたところ「酪農家と牛乳工場の距離がとても近いことです」との答えが返ってきました。
たしかに一番近い酪農家は牛乳工場から100メートルも離れていません。牛乳工場が盆地の中心部にあるため、
どの丹那盆地周辺のどの酪農家からも近くになるのです。
また、函南東部農協以外でも御殿場や三島、伊豆といった酪農家から生乳が届けられますが、いずれも函南町の周辺です。
先日、ある首都圏の牛乳処理工場を取材したときには、その処理工場の周辺酪農家だけではなく、
北海道をはじめ関東のいくつかの県から生乳が定期的に届けられているとのお話しでした。
それに比べれば、たしかに丹那牛乳はとても酪農家と牛乳工場の距離は本当に近いのですが、それが一番の特徴になるようなものなのでしょうか。
「牛乳は生鮮品です。新鮮な搾りたての生乳は、新鮮なうちに工場に運び入れて、新鮮なうちに製品にした方がいいのです」と橋本さん。
現在は、冷蔵技術や配送便の技術が進んだため、北海道の生乳を首都圏で殺菌し、パック詰めして出荷するなど、乳を搾ってから殺菌、
パック詰めするまでに長い距離を旅することが多くなっています。資料などを読んでいても「品質にはほとんど変化がありません」とあります。
しかし、実際には、丹那牛乳のような地域密着の場合、搾乳から殺菌までに1日か2日しか時間がかかりません。丹那牛乳の場合、
最大で1.5日ぐらいだといいます。それに対して、遠距離の場合3日以上かかることもあります。
「1ミリリットルに3万以下の一般生菌数というのが丹那牛乳の生乳受け入れの目標値です。たとえば、今日搾乳して3万だった生乳と、
3日前に搾乳して冷蔵保存し3万のままだった生乳があるとします。検査しても菌数は同じ3万です。ところが、
その菌がいる牛乳には変化が起こっています。3日間の間に、菌は分裂し、死に、老廃物を出します。毒素を出していなくても、変化は起きています。
だから、生乳が新鮮であり、殺菌までの時間が短ければ短いほどよいのです。安全性だけでなく、新しい方が風味もよいです」
と橋本さんが説明します。
さらに、「搾りたての生乳には、自己殺菌作用があります。いわゆる免疫的な効果です。免疫力の弱い生まれたばかりの子に授乳するため、
ある程度の免疫的効果があるのだとされています。ただ、生乳の場合だいたい24時間ぐらいしか効果は持続しないため、
できるだけ早くその後の殺菌をしたほうがいいのです」と、新鮮は安全につながることを強く訴えます。
余談になりますが、子牛を産んだばかりの母牛が最初に出す「初乳」は生乳として出荷せず、子牛に飲ませるそうです。というのも、
子牛に免疫力をつける意味もありますが、初乳は熱に対する抵抗性がないため、加熱すると凝固してしまうからだとか。
一口に牛の乳と言ってもいろんな性質があります。
●酪農家と牛乳工場
先に述べたとおり、丹那牛乳は酪農家が生乳の買い入れを安定させるために自らつくった加工場です。牛は毎日朝夕搾乳します。
夏には乳脂肪が少なく、冬には乳脂肪が多くなり、乳量も季節によって変化しますが、年間を通して乳は毎日出ます。
品種改良によって乳をたくさん出すようになっている乳牛は搾らなければ乳房炎などの病気にかかってしまいます。そこで、
毎日生産した量を安定的に引き取って加工することは酪農家にとって重要なことになります。
その意味で、丹那の酪農家は恵まれている方です。それでも、この25年で100戸あった酪農家は半分以下になりました。ただ、
牛の数は以前よりやや多くなっています。つまり、大規模化が進んでいるのです。大規模にならなければ経営が成り立たないようになりました。
その理由はいくつかあります。ひとつは、副収入として子牛や乳を搾らなくなった牛を肉として販売していましたが、
その価格が輸入などによって急落したことです。それにより経済的に苦しくなりました。もうひとつは、牛乳の価格です。牛乳は卵と並んで
「物価の優等生」と言われています。今では、ミネラルウォーターより安い価格で販売されることもめずらしくなくなりました。さらに、
大手乳業メーカーなどが、牛乳では利益が出せないため、加工乳や乳飲料といった原価が低い製品を積極的に販売するため、
本当の牛乳がつられて安くなっている側面もあります。牛乳の価格低下は、生乳の価格低下につながります。
ただでさえ、休みのとれない畜産業は、次第に追いつめられています。
●低温殺菌部会
丹那牛乳では、低温殺菌と一般的な超高温殺菌の牛乳を製造しています。丹那牛乳の生乳目標は生菌数1ミリリットル中3万以下ですが、
超高温殺菌の牛乳の場合、現状では5万ぐらいの生乳もあります。それでも公的な基準の総菌数400万以下よりははるかに少ない「きれいな」
生乳です。さらに、低温殺菌の場合にはより厳しい基準が決められています。ひとつには、牧草栽培のときに、農薬の除草剤をまかないこと、そして、
乳脂肪分3.6%以上、無脂乳固形分8.4%以上あり、生菌数3万以下でなければいけないことになっています。現在、
この条件を満たして低温殺菌部会に参加している生産者は12戸あります。
低温殺菌部会の使っている飼料のうち一番量が多い輸入トウモロコシについては、遺伝子組み換えでないこととポストハーベスト(収穫後)
農薬が使用されていないことが確認されたものを使っています。
もちろん、低温殺菌部会以外の生産者にも遺伝子組み換えでないもので、ポストハーベスト農薬不使用のトウモロコシを使用をすすめ、
少しずつ切り替えが進んでいます。
低温殺菌牛乳の方が、より生乳の品質に近いのは、低温殺菌牛乳そのものが消費者との話し合いの中で作られはじめたことと、酪農家が、
自然に近い、安全性のより高い状態の牛乳が欲しいという消費者の要望に積極的に応えようとしているからです。
なお、丹那牛乳では、低温殺菌の場合、殺菌後の一般生菌数は0~1ケタがふつうで時に2ケタになるそうです。一方、
超高温殺菌の場合も0~1ケタのオーダーがふつうで、3ケタが出るようなときには原因を調べるそうです。
乳等省令では5万以下であればよいとされています。一般の牛乳でも同様で、製造直後はほとんど菌が検出されることはありません。
●学校給食の牛乳
丹那牛乳の場合、133校に牛乳を配送しています。これを量に換算すると1日あたり1万2千キログラム(12トン)になります。つまり、
学校給食がある日と、給食がない日には1万2千キログラムの差が生まれます。そこで、丹那牛乳では、
牛乳などとして出荷できなかった牛乳を全粉乳にします。つまり、牛乳を乾燥させて粉にします。
もちろん、学校給食のある日、ない日の差でうまれる余り分(余乳)だけでなく、季節や日によって注文の多い少ないがあります。
年間にすると4万5千キログラム分の全粉乳となるそうです。この一部やヨーグルトなど工場でつくられる乳製品に利用されますが、多くは、
販売して、冷凍食品のグラタンやパン、お菓子、ホワイトチョコレートなどの原料になります。
大きな乳業メーカーの工場などでは、全粉乳だけでなく脂肪分を抜いた脱脂粉乳が余乳対策につくられます。脱脂粉乳の方が、
脂肪分を抜いてあるために品質の劣化が遅く、長く保存できます。
丹那牛乳では学校給食以外に返品は受け付けず、学校給食の返品分については、配送ドライバーに協力してもらい、マジックなどで分別して、
そのまま工場内の排水設備に廃棄処分しています。「安全性を考えたら、返品分は使えません。というのも、
10度以下という温度管理が徹底している保証はなく、万一病原菌などが繁殖し、毒素が生成されていたら大変なことになりますから」と、
橋本さんは語ります。
学校給食で牛乳を必要とする日と、しない日があること、消費者が季節によってたくさん牛乳を利用したり、利用しないなど消費に変動がある以上、
全粉乳や脱脂粉乳の生産は不可欠です。そして、これらを使った乳製品を作らなければ酪農家や乳業メーカーが困ることになります。つまり、
脱脂粉乳や全粉乳を使った乳製品=まがいものとするわけにはいかないのです。これは牛乳問題を考えるとき忘れてはならない視点です。
さて、丹那牛乳が学校に配送している牛乳は紙パックを使用しています。数年前までいくつかの学校では瓶を利用していたそうですが、学校側から
「瓶では重たいので」との理由で、紙パックに切り替えが要請され、今ではすべて紙パックになっています。
また、丹那牛乳の学校給食用牛乳は一般的な超高温殺菌で、低温殺菌ではありません。そこで、低温殺菌にはできないかどうか聞いてみたところ、
「今のところそのような要望はありません。量的には今の低温殺菌部会だけでなく高い品質の生乳を搾る酪農家がいるので、問題ありません。しかし、
低温殺菌用の第2工場には小さなパックを充填する機械がありません。もし、本当に要望があっても、
この追加設備にかかる費用を考えるとすぐには対応できないと思います」とのことでした。
【牛乳には個性がある】
「牛乳」と一口で言っても、牛乳と牛乳のような飲み物の違い、生産地、酪農家の違い、季節の違い、処理方法の違い、
パッケージの違いなどもあります。
酪農地帯が近くにある地域では、地場産の牛乳を飲むことができる可能性があります。
東北のある酪農地帯で、かつて、学校給食にその地域以外から来た牛乳が出されていました。そこで酪農家たちが働きかけて、
地元の牛乳工場でつくった地場の牛乳を学校給食にとりいれることができた例があります。
子ども達が学校で飲んでいる牛乳の牛はどこで育てられ、どこで処理されている牛乳でしょうか。そして、
住んでいるところから一番近い牛乳工場と一番近い酪農家はどこにあるでしょうか。
2000年の夏から秋にかけて、牛乳への不信の目が注がれました。しかし、不信の目だけでは、解決は生まれません。また、
HACCPのマークがついているから、公正のマークがついているから、では安全の根拠にならないことを、私たちは学びました。
「牛乳はどれも同じではない」「牛乳には個性がある」
さらに、「牛乳には牛乳だけでなく、牛乳のようなものまである」このことをふまえて、まず、学校給食の牛乳について調べて見ませんか。きっと、
そこから、牛乳への信頼と対話が生まれるはずです。
補足説明:
公正競争規約…景品表示法に基づき、公正取引委員会の認定を受けて、業界において設定している自主ルール。飲用乳については、
全国飲用牛乳公正取引協議会(牛乳公取協)による、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」(飲用乳表示規約)があります。
この規約などにもとづいて表示された牛乳の容器には「公正マーク」がつけられています。
品質保持期限・消費期限…かつては製造日表示でしたが、現在は品質保持期限や消費期限表示になりました。
品質保持期限は、期限が切れても急速に品質劣化が進まない品に用いられ、消費期限は、
期限が切れたら急速に品質劣化が進む品に用いられることになっています。一般的に低温殺菌牛乳の消費期限が製造後5日、
超高温殺菌牛乳の品質保持期限が製造後8日ぐらいです。丹那牛乳の場合、低温殺菌牛乳で消費期限7日(製造日を含む)、
超高温殺菌牛乳で品質保持期限8日としています。
近年、強い殺菌や容器の滅菌によって品質保持期限を12~14日ほど長くした牛乳も一部で売られています。
これとは別に常温保持可能なLL(ロングライフ)牛乳というのもあり、こちらは、製造後4カ月は品質が保たれるとされています。しかし、
殺菌方法などで牛乳の風味や栄養に問題があるため、このLL牛乳導入時には大きな反対運動が起きました。
[ 00/12/31 牛乳 ]
牛乳について考える2
2000年の6月末~7月に起きた戦後最大の食中毒事件である雪印乳業乳製品食中毒の経緯と学校給食にもたらした影響について特集します。 この事件は、雪印乳業大阪工場の低脂肪乳など乳飲料、乳製品が黄色ブドウ球菌の毒素エンテロトキシンに汚染されていて、 それ飲んだ15000人近い人が食中毒症状になったというものです。幸い、学校給食で使われているのは低脂肪乳などの乳飲料ではなく牛乳であり、 これによる食中毒はありませんでした。しかし、その後の雪印に対する不信や工場操業停止などで学校給食現場にも混乱が生じ、影響を受けました。 また、牛乳、乳製品に対しての不安感がうまれました。そこで、牛乳、乳製品についての基本的なまとめを行い、その上で、 事件についてまとめることとしました。
●雪印乳業食中毒事件事件の経緯
2000年6月27日午前、大阪市の保健所に雪印の低脂肪乳を飲んだ5歳の男児が食中毒症状を起こしたと連絡が入りました。同じ頃に、
雪印にも和歌山市で子ども3人が食中毒症状を起こしたとの連絡が入りました。その後、大阪市、兵庫県西宮市などで同様の報告が相次ぎます。
6月28日午後、大阪市が雪印大阪工場に立ち入り検査し、原因不明のまま低脂肪乳の製造販売自粛と原因の追及、
品質保持期限が7月2日までの製品の回収を指示します。
6月29日朝、雪印は、7月5日付までの製品の回収を決定します。
6月29日午前に、大阪市は自主回収だけでなく社告、店頭表示を求めます。これに対する雪印の回答が遅れた上、
雪印が午後2時に公表したいと大阪市の保健所に伝えたところ、今度は保健所側が発表のタイミングを揃えて欲しいと要請。結局午後4時頃に大阪市、
雪印から食中毒の発生が公表されました。
その後、食中毒の被害報告が相次ぎ、最終的に厚生省と大阪市の原因究明合同専門家会議の最終報告書では、13420人
(厚生省9月21日発表時14894名)の被害者が食中毒症状に苦しみました。
雪印大阪工場は7月2日に営業禁止処分を受けます。その後、4日に、同工場の他製品にも食中毒の可能性があるとして自主回収を指導し、
5日より同工場の全製品が回収対象になります。
7月5日、金沢市で学校給食用の雪印製生クリームで雪印大阪工場の包装に雪印多摩工場のシールが貼られていたことが分かり、
多摩工場の製品で中身に問題はありませんでしたが、対応の遅れが指摘されました。また、
雪印日野工場では貯乳タンク設置の届け出が東京都に出されておらず、洗浄記録が残っていないことを都が指摘、同タンクの使用を禁じます。
事件後近畿圏のスーパーなどではじまっていた雪印製乳製品の店頭撤去が、この出来事をきっかけに全国に波及します。
7月10日、大阪工場で返品された乳製品の再利用を行っていたり、
乳製品の成分調整を屋外で行っていたことが大阪市の調査として発表されました。
7月11日夜、雪印は全国で乳飲料などを製造する工場を一時停止し、全工場で点検作業を行った上、再開すると発表し、
12日より順次工場は操業を停止しました。
7月25日に厚生省が10工場の安全宣言を出し、その後、他工場も安全宣言が出され、操業再開、スーパーなどでの販売再開となりました。
●事件の原因
ところが、
8月18日になって北海道の雪印乳製品製造工場である大樹工場の脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌によるとみられる毒素エンテロトキシンが見つかり、
これが大阪工場で使用されて食中毒事件につながった可能性が大阪府警より出されます。
その後の調査で、大樹工場では、2000年3月31日に停電事故があり、
その際に脱脂粉乳の製造ラインで黄色ブドウ球菌が繁殖していたことが判明しました。一般生菌数が基準を超えていたにもかかわらず、
一部は脱脂粉乳として製品化されます。また、残りは再溶解されて再使用、再生品にされます。
菌は殺菌されていたものの毒素は脱脂粉乳に残っていました。そのことを工場では認識せずに、脱脂粉乳は出荷されていました。さらに、
その脱脂粉乳の一部は製造日が改ざんされ、品質保持期限が先延ばしになっていました。また、大樹工場、大阪工場ともに脱脂粉乳の入荷、
出荷の記録があいまいだったり、記入されていない、間違ってつけられているなどずさんなものになっていました。
担当者の証言もあいまいなものだったと報じられています。
その結果、大阪工場を捜査した大阪府警も当初、低脂肪乳の原料がどこから来たのか、いつのものなのかなどが分からず、
配送業者の伝票などを頼りに大樹工場に行き着き、毒素を検出するまでに約1カ月が過ぎていました。また、雪印、北海道の調査でも、
3月31日の停電による製品の調査は行われておらず、大樹工場は問題ないとして操業を続けていました。
これにより大阪府警は、業務上過失傷害容疑で雪印本社などの強制捜査に乗り出します。そして、前社長を含め関係者を、
対応の遅れによる被害の拡大と、毒素生成原因となった大樹工場の責任により業務上過失致傷容疑で書類送検する方針です。
12月20日、厚生省と大阪市の原因究明合同専門家会議は最終報告を発表、食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌の発生・
増殖は北海道の大樹工場で起こり、毒素エンテロトキシンが脱脂粉乳に残っていたことが大阪工場製乳製品での食中毒につながったとしました。また、
大阪工場については、衛生管理、運営の問題を指摘しつつも、食中毒原因からははずしました。
12月22日、厚生省・大阪市の最終報告を受けて雪印は社内調査報告を発表します。ここでは、
7月3日までには大樹工場製脱脂粉乳の入荷を確認していたこと、
社内の分析センターでエンテロトキシンの調査をしたが4月10日付大樹工場製脱脂粉乳からの検出ができなかったこと、
この時点で停電事故と再溶解により製品使用を分析センターが把握していなかったために詳細な調査を行わなかったことが、
原因判明を遅らせる結果につながったとしました。また、「事故直後の対応において、社内の情報伝達・確認に手間取ったこと、
原因が不明であることにとらわれ、既に販売されお客様の手元にある製品にまで考えが至らなかったこと、保健所の要請の履行のみを考え、
社告掲載以外の告知手段に思い至らなかったことなどにより、結果として、製品の回収とお客様への告知の間にずれが生じてしまい、
多くのお客様に非常な苦痛を生じさせてしまった」として社内体制の不備を指摘しました。
●食品事故には情報公開を
今回の食中毒事件でもっとも問題とされたのは事故発生後の責任者らの対応のまずさでした。初期にもっとも必要な告知・
回収の遅れが食中毒の規模拡大につながりました。さらに、原因究明への熱意が見られませんでした。
経営などへの影響を最小限におさえようとする意識が先に働き、さらに、
HACCPなど衛生管理には自信があるという過信が正しい原因究明までに無用な混乱をまねきました。
学校給食関係でいえば、1998年3月に学校給食で出された冷凍ケーキによるサルモネラ菌の食中毒がありました。このときは、
1159人が被害にあっています。3月12日、13日に東京都昭島市で発生、その後、16日、17日に神奈川県秦野市、相模原市、岩手県宮守村、
さらには、18日に福井県武生市で発生するという事故がありました。これはいずれも1社が3月頭に製造したもので、
情報の伝達が早ければ食べさせないなどの対応ができ、後半の事故は防げたはずです。
食中毒などの食品事故は、決して起こしてはならないものですが、絶対起こらないものではありません。
起こさないための万全の対策は常に必要ですが、合わせて、万が一起こったときにどのような対応をとるべきか、事前に準備しておくことも必要です。
事故が起こってから対応方法を検討していては被害は拡大します。食品事故が起こったときの対応を話し合ったからといって、
衛生管理がきちんとしていないことにはなりません。むしろ、衛生管理をきちんとすればするほど、万が一の対応についてもきちんとすべきです。
もし、食品事故への対応方法を定期的に確認していない調理場、学校、教育委員会がありましたら、
定期的な確認に取り組んでいただきたいものです。
●学校給食への影響
2000年夏、雪印食中毒事件は学校給食にも大きな影響を与えました。1学期の終わり、雪印大阪工場製牛乳からの変更、
雪印製牛乳からの変更を余儀なくされたり、また、雪印製乳製品を使わないために献立の変更を行ったりしました。他社の牛乳に変えたところ、
異臭さわぎが起きたというところもありました。
特に、大阪市都島区内9小学校、1定時制高校では次々に牛乳メーカーが変わる事態になりました。6月までは雪印乳業大阪工場の牛乳を使用し、
雪印大阪工場の食中毒事件を受けて、7月1日より、森永乳業近畿工場(兵庫県西宮市)の牛乳に切りかえました。7月12日、
その牛乳で異味異臭が発生します。洗浄時の次亜塩素ナトリウムが残っていた可能性がありました。13日は、急きょミカンジュースで対応します。
13日午後1時頃、大阪市教委は京阪牛乳(大阪府寝屋川市)への変更を決定しますが、
京阪牛乳で製造された1リットル入りパック牛乳から酸味などの異味苦情が発生し、13日に自主回収をはじめました。その結果、午後3時頃、
大阪府から大阪市教委に京阪牛乳の配送ができなくなったと連絡が入ります。同日中に、大阪市のいかるが牛乳への切り替えが決まり、
14日よりいかるが牛乳になりましたが、3日目の配送となる18日、いかるが牛乳製造の乳酸菌飲料について異味異臭がするとの苦情があり、
大阪市教委は学校給食への牛乳納入自粛を要請。その結果、18日は市販のお茶などが出され、1学期の給食を終えました。
このケースをはじめ、様々な対応が全国で行われ、雪印以外の食品事故などもあって、総じて牛乳への不信が広がりました。
学校給食と牛乳に関わる事例を新聞等から拾い出しました。
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6月
6月30日、大阪府、奈良県は、3日より雪印乳業大阪工場製学校給食用牛乳を森永乳業近畿工場に変更した。合計で1日約39000本。なお、
30日の給食は、雪印側の申し入れで雪印乳業神戸工場分が納入されていた。兵庫県は、3日より雪印乳業神戸工場の供給分を共新乳業、
森永乳業近畿工場に変更する。1日約66000本。(日本食糧新聞)
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7月
7月1日、大阪府は、雪印乳業大阪工場の牛乳を使用していた大阪市、吹田市など58校で他社製に変更した。(毎日新聞)
7月4日、愛媛県松山市、雪印製乳製品の使用を見合わせ。(愛媛新聞)
7月5日、京都市は給食用牛乳を雪印製から他社製に切りかえた。(京都新聞)
7月5日、石川県金沢市で雪印乳業製生クリームのパックに、製造工場多摩工場のシールが貼られ、下から大阪工場の文字が出てきた。 小学校の栄養士から報告を受けた市教委は、中央給食センターと6小学校で生クリームを使ったカレースパゲッティを中止、急きょ献立を変更。 調理が終わっていたところでは、献立が減った。中身は多摩工場製で、発注が増えたためパッケージが間に合わずシール対応した。 金沢市教委は不信を示し、雪印製品の使用を見合わせるという。(朝日新聞)
7月5日、石川県学校給食会は、雪印乳業北陸工場の牛乳を使用している県内30校について、使用継続する。各校には、 大阪工場製の乳製品が使用されていないか注意を呼びかけた。(北國新聞)
7月5日、神戸市教委は6日より市内177校の給食で雪印の乳製品使用を取りやめることを決定。牛乳は他社製品を使用していた。 (産経新聞)
7月5日、大阪府は、雪印乳業の全製品を対象に、大阪市が雪印乳業大阪工場に対する営業禁止処分を解除するまで使用中止を決定した。 学校給食や売店などでの納入をしないよう各業者に指示。(朝日新聞)
7月5日、大阪府池田市は3日にさかのぼり1年間、豊中市は3カ月、雪印乳業を指名停止にした。(日経新聞)
7月5日、京都府教委は、府立学校の給食、売店などで雪印乳業製品の販売中止を決めた。奈良県は、 雪印乳業大阪工場に出していた学校給食用牛乳の供給事業者資格を取り消した。(朝日新聞)
7月5日、京都市教委は、新たにチーズ、ヨーグルトなど8品目について雪印製品の使用中止を決めた。(産経新聞)
7月6日、東京都教委は、日野工場製の牛乳を使用していた調布市、町田市、日野市、狛江市、多摩市、稲城市、
国立市と都立学校の6校の合計175校に当日より牛乳を使用しないよう通知。対象は約68000人分。(日経新聞)
町田市第一小学校では、当日牛乳抜きとなり、週内は水筒持参させることを決めた。多摩市では、
7日から紙パック入りウーロン茶を出すことを決めた。(朝日新聞)
多摩市では、13日、リンゴジュースが配られた。(日本農業新聞)
補助金の関係で対応が難しいとの声があり、後日、他社製牛乳でも補助金がつけられることとなった。
7月6日、千葉県学校給食会は同日夜、1200の公立校、80の給食センターに当面雪印製品を使わないよう連絡した。(読売新聞)
7月6日、宮城県教委は県立の25校に対して、雪印乳業大阪工場の製品混入可能性があるチーズ、ヨーグルトを使用しないよう通達。 宮城県石巻市は30校での雪印製乳製品の使用中止を決めた。(河北新報)
7月6日、愛知県教委、名古屋市教委は、雪印乳業名古屋工場の牛乳をこれまで通り使用することを決定した。 名古屋市の立ち入り調査結果を受けて。(中日新聞)
7月7日、大阪府は、府と関連施設すべてで雪印製品を使わないことを決めた。京都市は、市の競争入札から3カ月排除。(読売新聞)
7月7日、宮城県仙台市、学校給食で雪印の乳製品使用を中止するよう指示。神奈川県では川崎市など17市町村が使用を中止した。 (産経新聞)
7月7日、秋田市は週明けの10日から雪印の乳製品使用を中止する。チーズ、バター、マーガリン。(日本農業新聞)
7月7日、千葉県野田市、松戸市は雪印乳業野田工場の牛乳を当面学校給食で使用しないことを決めた。 千葉県の立ち入り調査で安全性が確認されたが、不安感を重視。(東京新聞)
7月7日、神奈川県教委は、雪印乳業大阪工場、日野工場製の乳製品を給食に使用しないよう市町村教委に通知。(東京新聞)
県学校給食会によると、横浜市、川崎市に150校で雪印乳業厚木工場の牛乳を使用。県の立ち入り検査を待って対応を決めるとしている。
相模原市教委は、雪印製マーガリン、粉チーズを使用しないよう通知。逗子市は、多摩工場のバター、チーズを6日から他社製に切りかえ。
津久井町教委は4日から製品使用を中止している。(神奈川新聞)
7月7日、富山県では、富山市、高岡市、黒部市をはじめ17市町村で雪印乳業の乳製品使用を中止した。なお、 同県の学校給食用牛乳は県内業者が製造している。
7月7日、同日現在、北海道では、北海道内の2400校中、900校が雪印乳業製牛乳を使用しているが、 札幌市が4日に行った札幌工場の検査で異常がないことなどから、他業者への変更をしない方針。(北海道新聞)
7月7日、北九州市教委は、145の学校に雪印乳業の全製品を使用しないよう通知した。牛乳は別の業者のもの。
7月8日、雪印乳業大阪工場の乳製品による集団食中毒などを受け、学校給食の雪印離れが進んでいる。毎日新聞の調査で、 47都道府県中24都府県は学校給食などから雪印製品を排除する方向にある。(毎日新聞)
7月10日、山梨県甲府市では、同日より雪印乳業製学校給食牛乳を他社に切りかえた。12校が対象。(山梨日日新聞)
7月10日、東京都教育庁は、雪印乳業日野工場の製品を工場が供給体制を整え次第、学校給食に使用再開することを決定。 実質的には2学期からとなる。都衛生局の衛生確認を受けて。(毎日新聞)
7月11日、協同乳業あづみ野工場は長野県内の9小中学校から風味が違うとの苦情を受け、製造ラインを止めた。12日から自主回収も行う。
同社では、殺菌時のこげ臭が原因ではとしている。食中毒菌の検出はなく、体調の異常の訴えはなかった。(日本農業新聞)
長野県上田市、佐久市など2市3町の10校で協同乳業あづみ野工場の牛乳に紙パック製牛乳に異味異臭を訴える騒ぎがあった。
各学校では他社の牛乳に変更するなど対処。(読売新聞)
7月12日、愛媛県下で雪印乳業製乳製品を使用していた17市町村は同日までに使用の見合わせを決めた。(愛媛新聞)
7月12日、雪印乳業札幌工場の操業停止を受けて、北海道教委は、12日から1学期終了まで雪印製牛乳を使用しないと決定。 12日は牛乳抜きとなる。道内の学校給食用牛乳のうち雪印乳業のシェアは約35%、2376校中905校にのぼる。(北海道新聞)
7月12日、雪印乳業札幌工場の操業停止を受けて、札幌市内の小中学校中3分の1を超える119校で牛乳が出されなかった。 学校などでは冷やしうどんの汁を増やすなどの対応をした。のどに食事がつまる、物足りないなどの児童の声。 13日の代替もできないことを札幌市教委が各校に通知したのは午後5時過ぎのため、水筒での飲み物持参などの対応は遅れがちとなった。 (北海道新聞)
7月12日、香川県高松市教委は、雪印乳業高松工場の操業停止を受けて、市内17校に配送された牛乳約9000本を返品し、 お茶を出すことにした。13日から他社製(読売新聞)。
7月12日、山梨県畜産課は、学校給食に雪印製牛乳を使用していた県内28市町村111校中、 22市町村97校が12日までに他社製品に切りかえたことを確認。残りの6市町村14校も数日中に切りかえる計画。(山梨日日新聞)
7月12日、雪印乳業仙台工場操業停止について仙台市教委に代替品の仲介とそれまでの生産継続を申し出。(河北新報)
7月12日、名古屋市教委、雪印乳業名古屋工場操業停止を受けて12日用に納入された牛乳を約4万本を返品。小学校55校、中学校20校、 養護学校1校で、当日牛乳は出なかった。13日以降、他社製品を代替する予定。同日、雪印製アイスクリーム、 チーズ等が出る予定だった献立の学校は中止。雪印製バター、生クリームを使用したコーンクリームスープの献立は、非常用レトルト食品に。日進市、 豊川市、新城市、鳳来町、一宮町の計136校も12日より牛乳を中止。返品した。県教委の指示。新城市では、缶のお茶を出した。(中日新聞)
7月12日、岐阜県教委では、牛乳は県内に工場を持つ牛乳を使用しているが、乳製品については、食中毒発生以来、 雪印からの購入を控えている。三重県教委では、県内の業者の牛乳を使用。乳製品は、 使用していた3校に安全性が確認されるまで使用中止を指示した。(中日新聞)
7月12日、石川県教委は、雪印乳業北陸工場の操業停止を受けて、12日から牛乳使用を見合わせ、ジュースや他社製品の手配をした。 同工場は、小松市、加賀市、松任市など県内30校に納入していた。(北國新聞)
7月12日、広島県教委は、雪印乳業広島工場の操業停止を受けて、広島市、尾道市、 廿日市市および7町65校の給食で13日分から他社の牛乳とすることを決めた。12日分はそのまま使用。廿日市市のみ12日分を返品し、 各校でお茶を購入するなどの対応をした。(中国新聞)
7月12日、鹿児島県教委は、雪印乳業都城工場の操業停止を受けて、末吉町、大隅町の11校の牛乳について、13日分まで使用し、 14日より他社に切りかえることを検討している。(南日本新聞)
7月12日、福岡県教委は、雪印乳業福岡工場の操業停止を受けて、福岡市、前原市、二丈町、
志摩町など県内113校で同工場の牛乳を使用しているため、12日からの対応に追われた。(西日本新聞)
前原市前原小学校では、地元産オレンジジュースを給食にだし、13日は水筒持参、14日から代替牛乳となる。(西日本新聞)
7月12日、熊本県学校給食納入協同組合によると、県内の学校給食では、雪印製品の扱いはないとしている(熊本日日新聞)
7月12日、神奈川県教委は、雪印乳業厚木工場の操業停止を受けて、横浜市、川崎市など県内157校での同工場製牛乳使用中止を決めた。 約8万本分を代替する。(神奈川新聞)
7月12日、東京都教育庁は、雪印乳業東京工場の操業停止を受けて、文京区、足立区、中央区、 北区および都立学校の251校での同工場製牛乳使用中止を決めた。対象は82000人。(読売新聞)
7月12日、森永乳業近畿工場が学校給食用に製造したビン牛乳について、兵庫県川西市、大阪府吹田市、 奈良県内小中学校5校から味がおかしいなどの苦情があった。(日本食糧新聞)
7月13日、森永乳業近畿工場製学校給食用牛乳の異味異臭で午前中までに大阪府吹田市の2小学校で計35人が下痢や腹痛を訴え、
2人が欠席した。(日本経済新聞)
腹痛などを訴えた児童生徒は134人にのぼった。川西市教委が緑台中学校の被害を調べたところ、異常を感じたのは94人、
うち64人が腹痛や吐き気を訴え、5人が13日に欠席した。吹田市吹田東小学校では、51人が腹痛や下痢などを訴え、2人が欠席。
吹田第六小学校では19人が腹痛などを訴えた。(朝日新聞)
川西市の緑台中学校は家庭から弁当などを持参し、牛乳だけを給食に出すミルク給食。(読売新聞)
この他、高槻市清水小学校、奈良県黒滝村黒滝中学校で薬のような臭いがするとの訴えがあった(読売新聞)
奈良県山添村西豊小では、教員10人、児童35人のうち教員ひとりが異臭に気づき、牛乳を飲ませずに回収した。(朝日新聞)
7月13日、森永乳業近畿工場は、12日製造の一般家庭用ビン牛乳も13日朝から自主回収をはじめた。
13日の出荷見送りと製造休止を行った。前日の学校給食用ビン牛乳異味苦情について、西宮保健所と原因調査をしている。
今のところ異常は見つかっていない。(日本食糧新聞)
学校給食用、宅配用を合わせビン牛乳計約20万本が出荷中止、ライン停止となる。(日本経済新聞)
西宮市保健所は、原因物質は殺菌用の次亜塩素酸ナトリウムの可能性が高いと発表。(日本農業新聞)
同社は、ビンの殺菌工程で次亜塩素酸ナトリウムが内部に残った、殺菌済みのビンを入れるプラスチックケースの表面に次亜塩素酸ナトリウムが残り、
ビンやフタに付着したなどの可能性を示唆した。(朝日新聞)
同社は、学校給食用として兵庫県、奈良県、大阪府の約148000本を供給している。
雪印乳業の食中毒事件以降は1日約40000本近く増えていた。(読売新聞)
対象となる学校は465校、そのうち81校が雪印乳業からの振替分。(朝日新聞)
7月13日、兵庫県芦屋市では、森永乳業近畿工場製牛乳の異臭事故を受け、13日より、1学期中の牛乳を取りやめ、 13日からお茶を湧かして配った。(読売新聞)
7月13日、大阪府は森永乳業近畿工場に、1学期中の学校給食への牛乳供給を自粛するよう指示した。 府教委は市町村教委に同様の指示を出した。(朝日新聞)
7月13日、兵庫県川西市では、森永乳業近畿工場製牛乳の異臭事故を受け、13日より市内24校の給食で1学期中の牛乳使用を取りやめた。 小学校ではお茶を水筒で持たせるなどの対応をした。(朝日新聞)
7月13日、森永乳業近畿工場の牛乳を学校給食に使用していた大阪府東大阪市は、他社製の乳酸菌飲料に急きょ切りかえ、 5校分4400本を用意した。児童からは牛乳の方が甘くなくてのどが乾かないなどの声が聞かれた。(朝日新聞)
7月13日、森永乳業近畿工場の牛乳を学校給食に使用していた大阪府高槻市では、市教委が愛媛県のメーカーと交渉し、14日以降、 オレンジジュースの供給を決めた。(読売新聞)
7月13日、大阪府寝屋川市の京阪牛乳製造の牛乳(6日製造、13日本質保持期限)を飲んだ消費者から酸味などの異味苦情を受けた同社は、 学校給食用牛乳約20000本の出荷を14日から自粛する。また、自主回収も行った。なお、食中毒症状などはなかった(毎日新聞)
7月13日、雪印乳業東京工場から牛乳の供給を受けていた文京区、足立区、中央区、北区はそれぞれ他社製品に切りかえて給食を実施した。 文京区は独自に11日に中止を決め、13日は、31校中13校へ他社製牛乳が供給された。学校によっては、 麦茶などを入れた水筒持参を決めたところもある。足立区は、12日から牛乳供給を中止。14日に全校が他社製となった。中央区は、 森永牛乳に切りかえたが近畿工場の異臭さわぎもあり、水筒でのお茶などの持参をさせた上で牛乳給食を実施した。(東京新聞)
7月13日、名古屋市内の給食では、76校が12日に続き13日も牛乳なしの給食となった。14日から他社製となる。(中日新聞)
7月14日、宮城県は名取市の宮酪乳業の立ち入り調査で、一部の出荷前加工乳を再利用して製品化していたことが分かり、 再利用しないよう厳重注意した。宮酪乳業は、14日より雪印乳業仙台工場の代替メーカーとして、 宮城県内2市5町108校に牛乳を供給しはじめたばかり。県教委は、牛乳のラインとは異なるとして使用継続を決めた。 学校現場では不安と不信の声がある。(河北新報)
7月14日、森永乳業近畿工場の学校給食用牛乳異臭問題で、西宮保健所は大腸菌、一般細菌の検査の結果、いずれも問題なしと発表した。 (産経新聞)
7月18日、兵庫県神戸工場の辞退を受け、兵庫県では、 県内で使用していた学校給食用牛乳を2学期も引き続き他社製で代替していくことを確認した。(神戸新聞)
7月18日、大阪市のいかるが牛乳の乳酸菌飲料について異味異臭がすると苦情があったことに関連し、
大阪市教委などの要請を受け入れて同社は学校給食への牛乳納入を自粛した。大阪市83校、
堺市のほぼ半数が1学期最後の給食で別業者の牛乳などに切りかえられた。約61000本。市教委などは「自粛要請は保護者らの感情に配慮」
したとしている。(朝日新聞)
大阪市都島区内9小学校などでは、7月に入り雪印乳業→森永乳業近畿工場→京阪牛乳(配送は結局なし)
→いかるが牛乳と異味異臭さわぎなどで3度も納入先が変わり、いかるが牛乳は2日間でストップ。最終日は市販のお茶などとなった。(読売新聞)
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8月
8月7日、宮城県は、2、3学期の牛乳供給業者に雪印乳業仙台工場も選定した。雪印は、仙台市の一部、多賀城市、柴田郡4町、利府町、
松島町の113校に牛乳を供給することになる。仙台市教委は、学校給食のチーズやバターなど乳製品について、雪印製品の使用中止を解除した。
(河北新報)
8月25日、神奈川県は横浜市、川崎市の157校で使用していた雪印乳業の牛乳を学校給食に使用しないことを決めた。 雪印側から供給辞退の申し入れがあったため。なお、夏休み前も操業停止を受けて他社製品を使用した。(産経新聞)
8月25日、山梨県では28市町村111校が雪印乳業茅野工場製牛乳を使用していた。2学期より雪印乳業に戻すことを申し合わせていたが、 甲府市教委、勝沼町教委などは使用中止の継続を検討している。(山梨日日新聞)
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9月
9月4日、東京都は、雪印製牛乳を使用していた都内174校について、2学期も他社製を使用する。大阪市でも他社製品を継続。
乳製品についても排除の動き。北海道では、雪印製牛乳を学校給食に使用。地元の要望などを受け。(日本農業新聞)
9月4日、雪印乳業静岡工場は学校給食用に県内124校分1日5万本の牛乳生産が再開した。再開の前に工場幹部が全校をまわった。 (静岡新聞)
9月4日、岡山県は、県下147校の学校給食で雪印乳業岡山工場製の牛乳使用を再開した。 香川県は県下22校の学校給食で雪印乳業高松工場製の牛乳使用を再開した。広島県は3市7町で雪印乳業の牛乳を使用していたが、 そのうち2町13校のみが、雪印製牛乳を再開した。大阪府、奈良県、京都府、兵庫県、滋賀県、徳島県は雪印製から他社製に切りかえたまま。 (中国新聞)
9月28日、雪印乳業高松工場製造の学校給食用ビン入り牛乳を飲んだ児童生徒らかがいつもより味が濃いなどの風味の異常を訴えた。
中学生数人が胃腸の異常を訴えたが、因果関係は不明。同工場の牛乳は、高松市15校のほか、香川県三木町の学校給食、
四国内の宅配牛乳として使われている。同工場では自主回収し、28日分の出荷を見合わせ、29日は製造を中止した。
高松市保健所の同日の検査では問題がなかった。香川県衛生研究所に食中毒菌、乳酸菌の検査を依頼した。(毎日新聞)
高松市教委調べで、小学校4校、中学校2校の計22人が腹痛や吐き気を訴えた。因果関係は不明としている。高松市保健所は、
農薬などの毒物が検出されなかったと発表。(山陽新聞)
9月29日、雪印乳業高松工場は、学校給食用ビン入り牛乳の異常風味について、原料乳の循環冷却過程が通常より長く、 また泡が発生したために脂肪の酸化がすすんだためと発表した。(産経新聞)
9月29日、高松市と香川県三木町の小中学校22校は、牛乳の代替として紙パック入りのお茶などを使用した。(山陽新聞)
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12月
12月12日、大阪府吹田市、富田林市、太子町の12校で協同乳業大阪工場(吹田市)
の学校給食用ビン入り牛乳を飲んだ児童らから塩素臭などの異臭の訴えがあった。
吹田保健所は次亜塩素酸ナトリウムがビンに残っていた可能性があるとみている。同工場は、大阪府内2市2町1村、
京都市内の学校に約37000本を納入しているが原因判明まで出荷を停止する。工場では、
運搬用木製荷台の一部が新品でこの臭いかもしれないと話している。(毎日新聞)
腹痛などの症状はなかった。吹田市教委では、19学級597人が牛乳を飲む、または口をつけた。180人は教員の指示で残した。
富田林市学校給食センターによると、ふたの上のプラスチック周辺からかすかな消毒臭がしたという。茨城保健所が立ち入り調査している。
(読売新聞)
●牛乳と学校での飲みもの
学校給食の牛乳は、ごはん給食、パン給食を問わず、学校給食献立の中心をなしています。
牛乳の栄養バランスから学校給食では必ずと言っていいほど牛乳が出されています。献立によって牛乳を出したり出さなかったりするという学校、
地域はほとんどありません。
栄養バランスの良さ、カルシウムの豊富さとして牛乳は高い評価を受けています。
その一方で、ごはん給食が増える中、牛乳が合わないのではという声もあります。また、アレルギー・
アトピーなどで牛乳が飲めない子どももいます。
牛乳については、もうひとつ、学校生活の中で水道水以外の飲みものという特徴もあります。給食の味噌汁やスープのような汁物を除けば、
学校生活で子どもが飲める水分は牛乳、水道水しかありません。水道水の水質や安全性の問題を指摘する市民団体もあります。
朝日新聞2000年3月29日付の連載記事「モノわかりのいい話」では、「米飯給食に牛乳どうして?」と題し、
米飯給食と牛乳の組み合わせについて問題提起しています。記事の中で、米飯給食の和食献立を紹介した上で、
そこに牛乳が組み合わせる不自然さを指摘しながら、文部省学校健康教育課の金田調査官は「カルシウムの必要から牛乳ははずせない」
「日本には古来、飛鳥なべなど牛乳の乳を利用した献立もあり、米と牛乳の取り合わせがそんなにおかしいとも思えない」との見解を紹介しています。
そして、牛乳以外の飲みものの事例としてお茶どころ静岡市で学校給食に温かいお茶を出しているところがあり、子ども達に喜ばれている反面、
牛乳が大量に残るなどの問題があること、
学校給食実施基準で牛乳を他の時間に配るなどの対処ができないため対応に苦慮していることを紹介しています。
今回の雪印食中毒事件に関わる学校給食現場の中には、念のためお茶を入れた水筒を持参させたり、
お茶を出すなどの緊急的な対応をとったところもあります。
牛乳には牛乳のすばらしさがあり、学校給食での牛乳の価値は大切にしながらも、学校給食と牛乳、あるいは、学校の中での飲みもの、
水分摂取についても考えていくことが大切ではないかと思います。
皆様のご意見や学校、調理場での対応についてのご報告をお待ちしております。
[ 00/12/31 牛乳 ]
時事情報2000年 地場型を中心に
●千葉県君津市で、試食会
日本農業新聞00年12月16日付によると、千葉県君津市の南子安調理場で12月11日、農家、パン会社、農業委員会、JA、栄養士、
市議らが参加した試食会が行われた。生産者からは、地場野菜の拡大などについて意見が出された。(00.12.24)
●愛媛県今治市で、無農薬野菜を給食に
日本農業新聞00年12月4日付によると、昨年から米飯をすべて地場産減農薬米に切りかえた愛媛県今治市で新たな取り組みがはじまった。
定年退職者らによる「今治市学校給食無農薬野菜生産研究会」が発足し、このほどタマネギの定植を行った。給食センターなどの理解を得ながら、
地場産の無農薬野菜を学校給食に導入するための取り組みをすすめる予定。ジャガイモ、ニンジン、サトイモ、ネギ、
ほうれん草などを栽培するという。(00.12.24)
●秋田市、地場産野菜中心の実験
秋田魁新聞00年11月14日付によると、秋田市では、市内61の小中学校で、メニューのほとんどに地場産野菜を使った給食を実験的に行った。
白神酵母のパン、地場産の米から作ったきりたんぽ、野菜やイカなども地場産とした。
給食では食材の由来や栽培などについて校内放送などで児童に紹介したという。来年度も実施するかどうかは今後検討。(00.12.24)
●新潟県高柳町の地場型給食
日本農業新聞00年11月23日付は、特集「食の遺産」の中で、新潟県高柳町立高柳小学校の地場型給食をまとめている。全児童71名、
12年前に完全米飯給食に切りかえ、地場産コシヒカリを使用している。政府米との差額は町が負担。野菜は、
地元JAを窓口に6戸の農家が伝統品種などの野菜を無農薬で栽培。伝統品種には長ニンジン、糸ウリなどがある。毎週金曜日は郷土食として、
のっぺい、ぜんまい煮、きりざい、すいとん、きのこ汁なども提供している。(00.12.08)
●佐賀県で4種類のコメ給食
日本農業新聞00年11月16日付によると、佐賀県米消費拡大推進協議会が県内全小中学校を対象に、佐賀県産コシヒカリ、あこがれ、ぴかいち、
ヒノヒカリを味わってもらうための助成を行った。コシヒカリ、ぴかいちについては購入費を助成、また、
パンフレットを使って県産米をPRしている。(00.12.08)
●高知県梼原町、棚田米使用
高知新聞00年10月28日付によると、高知県高岡郡梼原町では、地元の棚田で栽培したコシヒカリを給食に使用している。また、
一部の学校では地元有機栽培グループによるジャガイモやニンジン、タマネギを使用している。(00.12.08)
●高知県「地産地消」協議会設置
日本農業新聞00年11月9日付によると、高知県農林水産部流通園芸課、南国市教育委員会事務局、栄養士、小学校教諭、県農村女性地域リーダー、
農家、JA高知中央会の関係者が集まり「高知県地産地消推進協議会」を設置した。米をはじめとする学校給食の地場産取り扱いの拡大をめざすほか、
情報の提供などを行う。また、学校給食の自校炊飯をめざすという。(00.11.20)
●北海道瀬棚町、地場産米を使用
日本農業新聞00年11月4日付によると、
北海道瀬棚町は00年12月より町内の小中学校4校の給食に地場産無農薬アイガモ栽培米のほしのゆめを使用する。(00.11.20)
●埼玉県、学校給食使用の味噌を県産に
日本農業新聞00年11月2日付によると、埼玉県学校給食会は、
11月より県内の公立小中学校給食に県内産大豆と米でつくった味噌の供給をはじめた。みそは、原料の大豆と米をJA埼玉県経済連を通して購入し、
地元業者が加工したものを学校給食会が買い上げて各市町村に販売する。今回は、大豆が県産「白光」米が「朝の光」を使用。大豆は今後
「タチナガハ」にかわるという。埼玉県では、地場産に力を入れ、これまでに、米、うどん、納豆、パン、ソーセージなどを県内産にしている。
(00.11.20)
●宮城県、地場産使用を拡大へ
日本農業新聞00年11月1日付によると、宮城県は地場産食材の利用拡大を目指した本格的な検討を開始した。
県産業経済部と教育庁が連携して学校をはじめ家庭、地域での地場産品消費を拡大するための方策をとるとしている。(00.11.20)
●墨田区、高畠町と交流で給食米使用
日本農業新聞00年10月30日付によると、山形県高畠町と東京都墨田区は町ぐるみでの交流を20年ほど前から行っている。
夏休みや冬休みのホームステイなど子ども達の交流もさかん。この交流により、00年6月より、墨田区の42校中29校が高畠産「はえぬき」
を学校給食に使用しはじめた。(00.11.20)
●岐阜県中津川市で地場食材
日本農業新聞00年10月14日付によると、JAひがしみのの女性グループ・
アグリウーマン中津川給食部会の18人が中津川市学校給食栄養士会の要望に応え、地場野菜の供給をはじめた。
今年はサツマイモとサトイモを市内4センターと5校に納入する。(00.10.27)
●長野県北御牧村で村内大豆をすべて豆腐に
日本農業新聞00年10月17日付によると、JA女性部などが中心となっている北御牧村味の会は、村内産の約20トンの大豆をすべて買い取り、
豆腐加工場をつくって毎日豆腐を製造、販売している。学校給食にも利用されている。(00.10.27)
●岩手のオール地場産品の日
日本農業新聞00年9月27日付によると、岩手県のオール地場産品学校給食の日は、花巻地方振興局管内4市町の全小中学校で、9月28日、
10月24日に行う。9月28日は、市町ごとに地域の食材を利用し、花巻市は花巻そばひっつみ、大迫町は神楽の里ご飯(雑穀入り)、
石鳥谷町は杜氏の里ご飯(麦入り)、東和町はまほろばの里ご飯(雑穀入り)など。
10月24日は和食料理人として知られる中村孝明氏のメニューによる統一献立。(00.10.05)
●六甲地区で学校給食への食材生産
神戸新聞00年9月14日付によると、JA兵庫六甲と関係機関の協議の結果、学校給食向けの食材生産に取り組む。
手始めは年間を通して利用するタマネギを管内全体で栽培する。同農協は、2000年4月に神戸阪神間の9農協が合併して誕生した。
組合員を対象に行った合併前のアンケートで、学校給食への地元農産物供給への希望が高く、重点的に取り組みを開始。
栽培を希望するのは女性や高齢者。取り組む市町村では、三田市が2001年6月~12月にタマネギを利用、さらに、
市内ですでに供給がはじまっているジャガイモ、ニンジン、大根などの栽培面積を拡大する。(00.10.05)
●地場型給食の特集
『現代農業』00年9月号(農文協発行月刊誌)では、「学校給食に地元野菜を届ける」と題して約30ページの特集記事を掲載した。内容は、
栄養士の視点から東京都日野市の自校方式での地場型給食についての報告、
山形県南陽市の地場型給食に納入する3つのグループの納入方法や取り組みの詳細、価格の決め方などについてのレポート、
富山県砺波市の学校給食センターに野菜を供給するとなみ野農産物生産グループ協議会の報告である。いずれも、
地場野菜を学校給食に取り入れるために、生産者、栄養士、調理員、学校、行政、地域が行うべき問題点や具体的な方法をくわしく説明しており、
これから、地場型給食に取り組もうと考える地域、生産者、栄養士、調理員にとって、非常に役に立つ内容となっている。
現代農業のホームページは以下のアドレス。なお、このアドレスから、バックナンバー2000/9号を開くと、レポートのひとつが読めます。
http://www.ruralnet.or.jp/gn/index.html
(00.9.19)
●宮崎県、全県で県産米使用
日本農業新聞00年9月2日付によると、宮崎県では県内のすべての小中学校で県産米コシヒカリを供給した。9月1日の2学期初日から新米を導入。
早場米地域であることを子ども達に説明したという。この米は、JA宮崎経済連から宮崎県学校給食会に卸されている。(00.9.19)
●JAグループ99年のまとめ
日本農業新聞00年9月10日付によると、学校給食への地場農産物の供給について99年度は前年より16多い314JAが取り組んだ。
JA全中のまとめ。(00.9.19)
●千葉県白子町、町内産新米を使用
日本農業新聞00年9月7日付によると、千葉県白子町では92年から地場産のコシヒカリやトマト、キュウリ、
タマネギなどの地場産野菜を使用している。同町はセンター給食で、小学校3校、中学校1校、1300食を調理。新米は従来10月以降の供給だが、
給食初日の9月4日には、収穫したばかりの新米を特別に供給した。(00.9.19)
●高知県安芸市、地場産米拡大
高知新聞00年8月18日付によると、安芸市内の給食実施校では、地場産米コシヒカリを2学期から導入する。また、
2001年からは地元産米を使った手作り味噌も導入する。取り組みをするのは、安芸市の小学校11校、中学校4校中、
学校給食実施校の4小学校1中学校。いずれも自校式で、先行した学校で田植えや収穫の体験などを通し好評のため、
給食実施全校で実施することになった。さらに、米飯給食回数も週3回を4回に増やす。また、農業改良普及センターと栄養士、
調理員らが9月に味噌を仕込み、来年2月から学校給食に使用する。(00.9.19)
●兵庫県、県産米100%に
神戸新聞00年7月13日付によると、兵庫県内で米飯給食をしている84市町はすべて県産自主流通米を使用している。また、
県が指定する県内産自主流通米を導入すれば政府米との差額を助成する「ひょうごのおいしいごはん給食推進事業」を57の市町が実施している。
地場産米の導入もすすみ、神戸市や篠山市をはじめ、30の市町が域内の米を学校給食に利用している。(00.8.5)
●三重県で食材の予約共同購入
日本農業新聞00年7月12日付によると、JA三重中央新予約共同購入委員会の呼びかけにより、4小学校が、小麦、でんぷん、パン粉、
砂糖の4品目を年間予約して調達するというもの。小麦粉などは国産品。(00.8.5)
●島根県木次町の地場型給食
日本農業新聞00年7月27日付によると、島根県木次町では、木次町学校給食野菜生産グループがあり、
町の学校給食センター1330食の半分の野菜を供給している。このグループは、1993年に発足し、53人、平均年齢71歳。
農薬をできるだけ使わず、給食センターの要望を受けて栽培品目を選んである。また、メンバーは学校を訪ねて子ども達とともに給食を食べ、
地域と子ども達の交流を進めている。(00.8.5)
●ホクレン、冷凍野菜の供給伸びる
日本農業新聞00年7月25日付によると、北海道内に12の冷凍野菜工場を持つホクレンでは、学校給食向けや外食向けの取り扱いが拡大している。
国産や減農薬への対応、半加工などが指示されているという。減農薬品は、ポテト、枝豆、ニンジン、タマネギ、カボチャ。また、
タマネギをみじん切りにして炒めたものも需要が多いという。(00.8.5)
●花巻地方で食材すべて地元産の日
河北新報00年6月20日付けによると、岩手県花巻地方振興局は、地場産品学校給食利用拡大事業として、管区内にある花巻、石鳥谷、東和、
大迫の1市3町の全小中学校を対象に、オール地場産品給食の日への助成を行う。年度内に、数回行い、
食材費が割高になった部分を県が一定額補助する。主食はコメ以外でも、ひっつみ、雑穀献立で可。野菜、豆腐、
味噌なども地場産品とするよう求めている。なお、東和町では、すでに平成10年度より、地場産米を使用しており、
割高部分を町と農協が3分の1ずつ助成している。(00.7.10)
●九州県下の地場型給食を特集
西日本新聞00年6月19日付は、九州各県の地場型給食特集記事を掲載。
福岡県宗像市は小学校給食を1998年から段階的に自校方式に切り替えている。この98年から地場型給食がはじまり、
現在では小学校11校中4校で使う3割を地元の農産物直売所「かのこの里」が供給している。年間の納入額は約200万円だが、
学校給食で使われていることが生産者の励みになり、生産者は前日収穫ではなく当日の朝に収穫し、午前8時半までには調理場に届けるなど、
積極的に協力している。栽培は無農薬野菜中心。さらに、今年2学期より生産者を先生にした食農授業が企画されている。
大分県臼杵市は、センターで9月から地場型野菜を導入。給食用野菜畑1.6ヘクタールを減農薬栽培してもらうため、市が生産者を募集、
16人の生産者が計画作付けをはじめた。給食の約5割をまかないたいとしている。「給食畑の野菜・生産者名」の看板が畑には立てられる。
なお、失敗例もあり、福岡県那珂川町では96年から7校3500食分の野菜の3割を地場産野菜で供給したが、
献立に合わせた食材を揃えるのが難しいことや、規格の問題、7校への早朝配達など物流の問題で挫折、2年で中止された。
このほかの事例
福岡県前原市(自校式)では、5~7割の野菜を地場産で供給。
福岡県志摩町(自校式)では、野菜40品目の7割を地場産で供給。
福岡県夜須町(センター)では、地場の女性グループが野菜を3~5割供給。
佐賀県千代田町(センター)では、コメ、菱の実、アスパラガスなどを地場で利用。
長崎県大村市(センター)では、牛乳が地場産のもの。
熊本県矢部町(自校)では、地場の減農薬米を使用。
宮崎県綾町(自校)では、有機生産グループの野菜を5割ほど利用。
鹿児島県溝辺町(センター)では、野菜の5割が地場産。(00.7.10)
●新潟県黒川村、学校給食に米粉パン
日経流通新聞00年5月25日付によると、新潟県黒川村は学校給食に米粉パン、麺を導入した。村内4校に継続的に導入する。
米粉パンや麺も米加工食品として政府備蓄米の無償交付対象になることから、導入。また、米の粉末化は、県食品研究センターが開発し、黒川村が県、
国の補助事業として98年に設備を稼働させている。(00.6.16)
●国産大豆の普及拡大
日本農業新聞00年6月4日付によれば、国産大豆は遺伝子組み換えされていないため徐々に関連商品が増えるなどの人気が高まっている。
学校給食では、JA茨城県経済連が県産のタチナガハを冷凍水煮し、同県の学校給食会が月2トンを使用。JA埼玉県経済連も、
県産のタチナガハを使い、学校給食会やメーカーとともに納豆を開発している。(00.6.16)
●千葉県の4市町に地場産米
日本農業新聞00年5月18日付によると、千葉県のJA山武郡市は、管内の東金市、大網白里町、成東町、
山武町の小中学校31校に地場産米ふさおとめを供給する指定を受けた。低温保管し、注文ごとに精米するという。予定出荷量は年間144トン。
(00.5.27)
●千葉県成田市の地場給食
日本農業新聞00年4月26日付によると、千葉県成田市では、学校給食センターと農家グループが地域循環型農業を行っている。
市の学校給食センターから出る残さや量販店がコンポストにした残さを農家グループ「かんらん車」が引き取り、
たい肥にして無農薬栽培で野菜を栽培。年間40種類を栽培し、JA成田市を通して学校給食用に出荷している。一部は量販店に販売している。
市はたい肥センターの建設を計画、また、JAも支援すると表明している。(00.5.09)
●群馬県高崎市の地場型給食
日本農業新聞00年4月20日付では、群馬県の学校給食での県産品使用促進について、高崎市の事例を紹介している。高崎市では、市立小中学校、
幼稚園、養護学校がすべて自校式で、栄養士も各校に配置されている。53校中41校が県産の農産物を使用している。
中居小学校では近くの農家2軒から野菜を直接仕入れしている。直接なので価格も安く、また、子ども達の関心も高い。
親からも反応が返ってくるようになったと、効果を紹介している。(00.5.09)
●東京府中市で地場産米
日本農業新聞00年5月2日付によると、東京都府中市では、98年から学校給食に地元産米を使用している。年間使用量は全体の2割弱。
98年度は3トン、99年度は5.3トン。給食センター方式の29校を対処に、JAと学校給食会が生産者の意向をまとめて契約している。
値段が安く、味もよいとの評価が高まっている。(00.5.09)
●ニセコ、地場型への取り組み
北海道新聞4月22日付によると、北海道ニセコ町学校給食センターは、4月以降、米をニセコ産減農薬ほしのゆめに切り替えた。また、
地場産品を増やす取り組みを続けている。低農薬のジャガイモ、トマト、放し飼いの鶏卵、ハチミツなどを使用。また、
宗谷産のカスベやタコなども利用している。遺伝子組み換え食品は排除しているという。同センターは、
幼稚園から高校まで630食余分をつくっている。(00.4.30)
●高知県南国市、農協と米を直接売買
高知新聞00年3月8日付によると、中山間地の地場産米で自校炊飯を行っている南国市では、2000年度より、
政府補助がなくなったことをきっかけに、農協から学校給食会を経由して購入する形式から、農協から直接購入する形式に改めた。これにより、
中間マージンを生産者に還元できるという。農協は、これに合わせ学校給食米生産部会を設立し、給食米の安定供給を図るという。(00.4.30)
●大分県臼杵市、給食畑計画
大分合同新聞00年2月8日付によると、臼杵市は、建設中の小中学校給食センターの2000年9月稼働に合わせ、「給食畑」計画を実行する。
学校給食有機農産物供給支援事業として、JA大分のぞみ除せ威武の農家直売出荷者協議会のメンバーの働きかけて実現した。
最大約1.6ヘクタールの畑で17品目の野菜を生産し、センターの年間必要野菜の半分をまかなうとしている。畑には「給食畑の野菜」
の看板を立て、収穫体験や見学、生産者との交流を行うことにしている。(00.04.08)
●秋田県、県産食材の給食普及事業
日本農業新聞00年3月19日付によると、秋田県は、2000年度より「子供たちの給食に秋田の食材を」推進対策事業を行い、
当初予算案に286万円を計上した。秋田県では97年度より学校給食の県産品割合を野菜、果物、肉類など36品目について調査してきたが、
98年度の調査で野菜12品目の県産品割合が平均16%となっているため、野菜12品目について2010年度に2倍の32%
まで県産割合を引き上げる目標を立てた。関係団体らと推進会議を発足し、3市町村をモデルに事業を行う。また、
農家や食材業者が授業を行うなどの試みにも取り組むとしている。(00.04.08)
●群馬県、学校給食県産品使用運動
上毛新聞00年3月15日付によると、群馬県は、学校給食に県産品を積極的に使用することや農業体験学習のモデル校を選ぶなどの
「食と農と県民運動」を展開する。県内35の市町村に、農業生産者団体、流通団体、学校給食関係、行政関係者らで構成する競技会の設置を求め、
設置の補助を行う。ここでは、具体的な学校給食向け県産品の生産流通の検討・調整を行う。また、県内5小学校を食農教育モデル校に選定し、
生産者、改良普及センターOBなどを派遣し、農作業や農産加工などの体験学習を支援する。(00.3.29)
●酒田市亀城小、各国料理を給食で
山形新聞00年1月25日付によると、山形県酒田市亀城小学校では、学校給食週間にちなみ、ポルトガル、メキシコ、ベルギー、ロシア、
日本の各国料理を日替わりで学校給食に供した。世界の食文化を知り、日本食の良さを認識させるのが目的という。(00.3.29)
●和光市の地場給食
日経流通新聞00年3月7日付は、地産地消への挑戦という特集の中で、和光市の地場型給食を紹介している。埼玉県和光市では、
90年より地元農家の求めに応じ、市教委と栄養士会が地場農産物の取り扱いをはじめた。当初は、ニンジン、タマネギの2種類であったが、
2000年度では16種類に増加している。毎年1月に市、栄養士、生産者の三者が話し合い、利用品目や量を決め、栄養士が献立をたて、
それに合わせて生産者が指定された農産物を毎日学校に運んでいる。(00.3.29)
●岐阜県富加町の地場給食
日本農業新聞00年2月10日付によると、給食週間にあわせ富加小学校ではふるさと給食会を毎年行っている。
児童とともに農家などが地場産品をつかった和食献立を食べて交流するというもの。献立は、黒米おこわ、黒米せんべい、
地場豚を使用したトンカツなど。 (00.2.26)
●岡山県下の地場給食
山陽新聞00年2月13日付によると、岡山県下で地場産の米や野菜を取り入れる学校給食が増えている。
保護者の要望や地元農業振興などの狙いから各自治体とも積極的な導入を試みている。具体的には、米が灘崎町、玉野市、船穂町、哲西町、倉敷市、
総社市など4市13町で地場産を指定。船穂町では農業公社の有機栽培ヒノヒカリを使用。哲西町ではほうれん草や大根などを有機栽培し、
野菜全体の7割程度を地場産にしている。倉敷市は、有機栽培キウイを導入。岡山市でも利用促進の提言がされている。(00.2.26)
●鹿児島郡吉田町で学校田栽培
南日本新聞99年12月5日付によると、鹿児島県吉田町の吉田小学校では毎年学校田でもち米を栽培。今年は赤米にも挑戦した。全児童で田植え、
稲刈り、脱穀を行った。12月3日、給食センターで赤米入りご飯として調理され、町内の7小中学校を含めてこのご飯を味わった。
(00.1.27)
●群馬県館林市で、学校田米を使ったふれあい給食
上毛新聞99年12月1日付によると、館林第九小学校では児童が学校田で栽培した米を使って自分たちで調理し、
お年寄りらとふれあい給食を楽しんだ。(00.1.27)
●兵庫県青垣町の父母による味噌汁給食
神戸新聞99年12月2日付は、
兵庫県氷上郡青垣町の芦田小学校で30年以上前から続く味噌汁給食が今年も12月1日よりはじまったことを伝えた。
学校給食がない芦田小学校で12月から2月末まで保護者が交代で調理をする。豚汁、カレー、シチューが出されるという。
児童数の減少で調理者当番が厳しいため現在は週に3回。同町のほかの3小学校でも3学期に行われる。食材は、
町内産の野菜や学校農園の野菜が使われている。(00.1.27)
●長野県本城村の地場型給食
信濃毎日新聞99年11月26日付は、
長野県東筑摩郡本城村の本城小学校の給食が99年度から自校方式に切り替わり食材に地域のお年寄りがピーマンを届けたり、
児童が採った栽培きのこや栽培した大根を利用している事例を紹介している。(00.1.27)
●熊本県の地場型給食
熊本日日新聞00年1月1日付けは、熊本県内の地場型給食についてまとめている。県内で地場産のコメを学校給食に使用している自治体は12町村
(昨年末現在)。上益城郡清和村の清和小では、昭和62年に村内産里芋を導入し、週に1度利用している。
平成10年からはコメも週に3回地場産を取り入れている。村内の生産者からの要望と、新鮮さ、安心、
子どもが地域の農業を知るきっかけにもなっている。八代郡竜北町では生産者が不定期にレンコン、イチゴ、ナシなどを贈ったり、
格安で提供している。宇土市でも給食センターに無農薬栽培の生産者からジャガイモ60kgが届けられた。熊本市でも、ナス、ピーマン、
春キャベツなどを取り入れるべく生産者団体らと協議を続けている。(00.1.27)
[ 00/12/31 地場産・産直 ]
千葉県市川市の学校給食の実状 調理員の取り組み報告
1.
はじめに
本校は、市川市の北部中央に位置し、東京のベッドタウンとして栄え、人口も増えている。しかし、農家もわずかだが残っており、
そのわずかな畑に囲まれた、のどかな環境に置かれている学校である。調理形態は小学校550食、中学校550食を調理する親子方式で、
栄養士1名、調理師1名、調理員6名、パート職員2名で、市川市内の給食調理規模としては、大きい学校である。
私たち調理員は、常に子供達の命を預かっているという意識を持って、安全でおいしい給食を提供できるよう調理している。
おふくろの味ではないが、子供達が将来、大人になって「この味、懐かしい給食の味、もう一度食べてみたい」というくらい、
心に残る給食をと心がけて、日々努力を重ねている。でも、食べてもらうだけでは、子供達の心に通じないのではないかと考え、
まず開かれた給食室をめざして、行動してみることにした。
給食室というと、同じ学校にありながら、大きな鉄の扉の向こう側といった別枠という感じではないだろうか。調理員の顔も子供達は
「どこかでみたことのある顔」という印象でしかない。しかし、本校に異動して5年、子供達とふれあえる給食室をめざして、学校教育の中で、
私たち調理員も、子供達の成長に関われると実感しながら働いている喜びを1年間を振り返りながら、個々に綴ってみた。
2.給食調理員と学校給食指導との関わり(開かれた給食室)
(1) 子供たちとのふれあい
(イ) 1年の始まりは、入学式である。新1年生が「学校は楽しい所」と感じてくれるよう、
その1つのイベントとして、私たち調理員の登場である。給食室で使う道具と、家庭で使う道具を比べて見せる(おたま、木ジャクシ、
泡立て機など)、「こんなに大きい道具を使うのよ」「給食はおいしいよ」「皆が来るのを待ってたよ」
と入学式の中で歓迎のあいさつに参加し、ここでまず新1年生に給食室の印象付けをする。来賓の方や校長先生のお祝いの話の時は、
モジモジしたり、あちこち向いていた新1年生も、この時は目を輝かせて私達を見つめてくれる。こんな時、学校職員としての幸せを感じ、
また懸命に給食づくりに励まなければと、心新たにする時である。
(ロ) 1学期給食終了後の1日目は、1年生の給食室探検である(生活科)。調理員7名、1クラス7班に分けてもらう。
1名の調理員が3人から4人の子供を連れ給食室を案内する。機械の種類、使い方を説明し、
実際にピューラでジャガ芋を洗いながら皮がむけるところを見せる。「おいも、くるくる回っている」「あっ、白くなってきた」「さあ、
水がはねるから少し離れてご覧、お芋が飛び出してくるよ」「こんなにきれいになった」フードカッターでキャベツを切って見せる。「スゴイ!!」
の一言。「これで、サラダのキャベツやキュウリ、人参の千切り…千切りってわかる?細長く着ることよ」「もっと切って」
などと甘えてみせたりする。「今度は何を見よう」「これこれ」ミキサーである。水を少し入れスイッチを入れる。「わぁっ」と驚きの歓声である。
「お家のと違うでしょう」「これでドレッシングソース、生クリーム、カレールーをといたりするのよ」「わっ、びっくりした」「あれは何だろう」
「知ってる、焼くの」「そー、オーブンだねえ」消毒保管庫や保冷庫の説明をするときは、衛生面(O-157)の話もした。回転釜を触ったり、
大きい水槽を見て、「お風呂みたい、何人入れるかなあ」などとそれは楽しく穏やかである。
子供たちと私たち調理員の心の触れ合いができた時である。給食時間近くなると、なんとなくいい匂いがしてくるけど、どんなところで、
どんな人達が作っているんだろうとまでは子供たちは考えていない。今まで外で会っても知らん顔をしていた子供も「新海さん」
と名前を覚えていてくれる。これが、私たち調理員にとっては、とても嬉しいのである。
この触れ合いをとおして子供たちは食への興味と食べ物への感謝の気持ちが育っているようである。今まで残していた嫌いな物も、
「一生懸命作ってくれているんだ」と、一口でも食べてみようと、努力してくれるようである。O-157以来、
給食室へ子供達を入れることに躊躇したが、相談の結果、子供達との触れ合い、また教育的効果を優先し、探検後の清掃、
消毒にいっそう力を入れることで実施している。
(2)
地場産業の取り組み
(イ) 本校では、市川で収穫できる野菜も、積極的に献立の中に入れいている。数少なくなった、専業農家の方に協力してもらい、ジャガ芋、
長ネギ、キャベツ、筍を収穫時のみ、直接納入してもらっている。それがまた、とてもおいしく一味違うのである。そのネギの発育を、
農家の方に来てもらい、子供達に直接話をしてもらう。「生産者の顔が見える給食」というねらいからである。不揃いの野菜納入もあり、
手間もかかるがこの手間におしみはしない。また、キャベツの収穫時には、給食に使用するキャベツを2年生(担任、栄養士、調理員1名)
が畑に行き収穫させてもらった。給食に使う食材を直接収穫することにより、
農家の方の苦労を知り食べるだけでなく食材への興味も持てたようである。
(ロ)最近の子供達は、食物の原形を知らない。洗ったり、焼いたりすれば食べられると思っている。そこで、
旬の食材を子供達に提供していけるよう、大野の農家の方から筍を直接納入してもらった。そして、筍ご飯の登場である。
前日に米糠で茹でておき、朝一番で下処理する。次に、調理にかかる際、筍の皮をよくむき、前日の切り落とした頭の部分と一緒に、
ビニール袋に入れ、1口メモと一緒に各クラスに配布する。クラスでは、その現物を見せながら担任が説明する。また、6月、7月は、
1年生に給食で使う絹さやのすじとりや、枝豆を枝から取ったり、とうもろこしの皮をむくなど、生活科との関連でお手伝いしてもらう。
作業が終わると「おいしく料理してください。お願いします」と子供達から手渡される。「ご苦労様、おいしく作るよ」と受け取る。
そんな時の子供達の可愛さといったら、私たち調理員にとって何よりの活力である。
(ハ) 市川には海もある。行徳の海苔である。これも地場産業のひとつだそうだ。私も市川に住んで20数年になるが、はじめて知ったことである。
この収穫時が給食週間と重なる。給食週間では、児童の給食集会に私も参加し、子供達の質問などを受ける。「どんなところに気をつけて作るのか?」
「給食の食材で、市川でとれる物は何か?」「仕事はどんなところが大変ですか?」などである。
関連教科として3年生は行徳の漁師の方に来ていただき、昔ながらの海苔すき体験を行う。そして、給食室では海苔の佃煮作りに挑戦である。
海苔は行徳の漁場より直接納入される。配送は市の農水産課の職員がしてくださる。作り方は、(1)紙すきをする容量で少しずつきれいに洗う。
(2)水切りをしておき釜でからいりする。(3)水分がほぼなくなったところへ、合わせ調味料を加え、煮続ける。(4)
なんとなくねっとりとしてくるまで、焦げないよう火加減に注意を払いながら、約1時間煮上げていく。はじめて生海苔を使い調理することで、
一時はどうなることと思ったが、「案ずるより、生むがやすし」の諺のとおり、真剣に挑戦した結果、とても美味しい海苔の佃煮ができあがった。
私たち調理員の満足の一瞬である。そして、食材を実際扱っている私たち調理員も、生海苔がどんなものか、
またどんな調理方法があるのか知ることができた。
地場産業を取り入れた給食は、子供達に地域への関心、食べることへの関心を植えつけることができる。このように、
学校と地域が一体となり子供達を育てていくことはこれからの教育の目指すところである。
(3)調理実習に参加
(イ) 4年生グリーンスクールの豚汁作りのリハーサルである。家庭科室で7つの調理テーブルに分かれて、
調理員が1名ずつ付く。
(1)野菜の切り方、(2)炒めるときの順番、(3)だしのとり方、など、子供達になるべくやらせるように豚汁作りの指導である。
(ロ) 5年生のおやつ作り。白玉作りの指導である。白玉粉をねって、白玉を作り、きな粉、ごまを付ける。
子供達に教えながらこちらも楽しんでしまう。飽食の時代、スナック菓子などに偏りがちなおやつも、
自分の手で作り安心して食べられるおやつ作りには、食生活改善の意味があると思う。
(ハ) 6年生の親子太巻き寿司会食会では、千葉県の郷土料理である太巻き寿司の指導を家庭科室で行う。
太巻き寿司ができあがり切った時の歓声はお聞かせしたいほどである。また、
お母さん達も千葉県の郷土料理といっても巻いたことのある方は少ないようで、寿司にまかれた模様を見て感激していた。
調理実習においては、私たち調理員の腕の見せどころである。担任も調理のプロとして認めてくれており、
各学年の調理実習に関して気軽に声をかけてくれる。一緒に子供達を育てていると実感できるときである。しかし、毎日調理しているとはいえ、
子供達に指導するとなると、とても難しい。どこまで手をだしていいかととまどうことが多かった。
食教育といっても家庭が基本である。この親子太巻き寿司会食は、親も調理に参加することにより、食生活への関心が一層深まる。そして、
調理員と触れ合うことから、学校給食への理解をしていただく良い機会である。
3.その他
(1) 2年生生活科の校内郵便では大変である。給食室の郵便番号は「〒701」でポストが設けられる。
子供達からのたくさんのハガキが配達され、皆で手分けして返事を書く。「こんな美味しいごはんをはじめて食べたよ」等と書いてある。
嬉しい便りばかりである。校長先生には、枚数では負けるが、内容は私たち調理員にとって“天下一品”である。
(2) 6年生の家庭科では、子供達が担任と栄養士の指導のもと、給食の献立を考え、一番学校給食の条件にあった献立をナンバーワン献立として、
その月のメニューに取り入れる。1クラスずつナンバーワン献立になった班の子供達と、私たち調理員の打ち合わせである。子供達は、
調理工程まで考え献立を立てることで、食べるだけの側から作る側の気持ちも理解でき食生活への関心が持てたようである。
いつもは残りの多い魚料理も、6年生が考えた献立とあって、全校が驚くほど良く食べてくれる。
このナンバーワン献立で子供達の発想の豊かなことを知ることができ、その上、百合台小学校のオリジナルメニューもたくさんできる。私たち自身、
毎回、楽しみにしているところである。
まとめ
私自身、定年まで残り数カ月であるが、子供達の成長を見るたびに心も体も健やかに育って欲しいと願わずにいられない。食教育とは、
昔から親の姿を見て学ぶものである。しかし現在の状況を見ると、核家族化や女性の社会進出等でなかなか難しい状況下にある。そんな中、
学校給食の役割は重要であると自負している。
百合台小学校では、教育目標から、毎年、学年別指導目標が出され、栄養士や担任より給食指導への参画が依頼される。
このように依頼されるようになったのも、学校職員全員で子供達を育てていこうという学校の教育指針からである。また、
先生方が私たちを盛り立ててくれたからと実感する。そこで、私たち調理員は、自ら積極的に計画に参加していく姿勢を作り、
給食室ではそんな雰囲気を作り出していく努力を惜しまないようにしなければならないと、この5年間の活動を通じて痛切に感じている。これからも、
できるだけ子供達に触れ合い、食生活の大切さおよび食べることや調理することの楽しさを伝えていきたいと考える。
このように、直接子供達と触れ合うことができるのは、現在の直営の給食体制だけらこそできるのである。
安全でおいしい給食を作るのはあたりまえである。まだ学校職員である若い給食従事者には、
学校給食の調理員として積極的に学校行事や給食指導の参加を続けていただきたいと願っている。
(2000.2)
[ 00/12/31 栄養職員・調理員 ]
千葉県市川市で民間委託反対のうねり
●千葉県市川市で民間委託反対のうねり
千葉県市川市で学校給食調理の民間委託計画に対し、市民による反対の声が広がっています。この計画は、市川市の給食事業の改善計画(案)
としてまとめられたもので、磁器食器使用、ランチルームの整備、選択給食、セレクト給食、バイキング給食、カフェテリア給食、自校炊飯、
施設改善などとあわせて調理の民間委託が盛り込まれています。市川市ではこれまでも、人件費抑制や職員削減を求めてきました。そして、
新規採用を行わない形で調理員の削減をはかっており、この間、
学校給食の調理現場では栄養士と調理員が力を合わせてぎりぎりの人数で給食の質を落とさないようにしています。
今回の民間委託計画では、民間委託されていない平成11年度の退職者による人件費減分を含めた累積での人件費抑制という試算をしています。
とても分かりにくいのですが、
市側はこれにより平成12年度6校の民間委託と退職者により累積で1億3千500万円余りの経費節減になるとしています。ところが、実際は、
新規採用し、さらに、磁器食器導入に伴う人員増を入れても委託しない方が4500万円弱安上がりになるという試算もあります(市川市職員組合)。
平成12年(2000年)4月から民間委託の予定とされているのは、稲越、新井、国分、大野、宮久保、大柏の6小学校です。
99年のおわりになって市教委からの説明会を受けた対象校の保護者からは反発と不安の声が上がり、1度だけの説明では納得できないと、
12月の議会に数日での活動で4300人もの署名を集めて委託反対の請願を提出するなどの動きが起こりました。また、翌2000年1月には、
市川市の保護者による組織や労働組合、市議会議員など、関係する多方面の運動組織が「市川市学校給食の民間委託に反対する市民連絡会」を結成し、
1月20日に委託反対の市民集会を開きました。市教委をはじめ、市では4月から予定通り開始すると言っていますが、
2月の議会次第では民間委託の動きを止めらます。市川市の動きに注目が集まっています。
学校給食の民間委託に反対する市民集会アピール
「今日の給食おいしかったよ! 明日は何かなあ?楽しみだな!!」
楽しそうな子どもたちの声が聞こえる学校給食。その学校給食に関し市川市教育委員会は、10月
「市内46校の学校給食調理業務を民間委託したい。来年度は6校で順次委託に切り替えていきたい」と、明らかにしました。
学校給食とは、学校給食法第2条により「義務教育諸学校の教育目的を実現するため」と記され、
1.日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと。
2.学校生活を豊かにして、明るい社交性を養うこと。
3.食生活の合理化・栄養の改善及び健康の増進を図ること。
4.食料の生産配分及び消費について正しい理解に導くこと。
が、目標として定められています。
市川市は同法に基づき、早くから直営による完全自校方式の学校給食を行ってきており、これまで、ただの一度も食中毒等の問題を起こしておらず、
全国的にも高い評価を得ています。
教育制度の中に位置づけられている学校給食、その教育力の大きさ、環境問題に対する気配り、食の安全など、今日までの工夫と努力により、
市川市の学校給食は、教育行政における誇るべき大きな財産になっています。その学校給食を委託するとは、どういうことでしょうか?
これまでの経過の中で教育委員会は「給食の民間委託は調理業務のみで、内容は今までと変わりませんし、財政負担も少なくなります」と、
言っています。
法律違反になるので、栄養士が現場で指示できなくなる。柏市のように栄養士のきめ細かい指示に対して「それに見合う委託料をもらっていない」
との理由で、請負業者が業務を拒否、給食がストップしてしまった。など、どうして変わらないと言えるのでしょう?文部省等で、
食教育の重要性が指摘されていますが、委託により教育の一環としての学校給食が出来るのでしょうか?
さらに、市は財政難を理由にしていますが、行政改革と合理性・採算性の観点が強くなりすぎ、教育そのものである学校給食を切り捨て、
委託による安全面・衛生面での行政責任を曖昧にし、責任を放棄しようとしています。教育行政は、将来における先行投資と考えるべきで、
教育的観点が全くなされていません。
また、子どもを預けている保護者並びに給食調理業務に従事する職員の合意を得ないまま委託計画が進められているのも問題です。
委託予定校の説明会では、予定時間を過ぎてもなお、多くの質問がでていました。保護者の立場からすれば、今まで何の心配もなかった学校給食が、
食中毒・異物混入・給食費の値上げなどあらぬ心配があります。これでは安心して学校に通わせることは出来ません。
職員の合意についても、教育委員会の提示に対し、財政面.人員面で対案を出しているにも関わらず、委託ありきの話し合いが続いており、
合意に至っておりません。
これらの理由から、学校給食の民間委託化には根本的な問題があると、私たちは考えています。
私たちは、このような重大問題がある学校給食の民間委託提案を撤回し、市川市が食教育の一環として長い年月をかけ築きあげた、
安全でおいしい手作りの学校給食を守り発展させるために、行政が責任を持って行う自校直営方式の学校給食調理業務の堅持を強く要望します。
2000年1月20日
市川市学校給食の民間委託に反対する市民集会
[ 00/12/31 委託・合理化 ]
時事情報 2000年 環境関係ほか
●給食の容器をビンに…小学生が要望
朝日新聞00年12月18日付によると、高知県井野町の井野小学校6年2組は、環境学習で紙パックの環境への問題点を学び、
紙パックとビンの長所、短所を調べた結果、ビンのほうが何度も使えてごみが出ないとして、学校に紙パックからビンへの変更を要望した。
学校側は難色を示したが、下級生に紙芝居でビンのよさをアピールしたり、紙パックを洗ってリサイクルする、
ストローを使わないなどの活動をはじめた。また、新聞への投書などによって広く知られるようになり、11月に教員による「学校環境改善委員会」
が設置された。学校では、ビンに変えるのは難しいが検討は続けるとしている。(00.12.24)
●ネパールの山村で学校給食
河北新報00年9月29日付によると、塩釜青年会議所がカトマンズ青年会議所の協力依頼に応え、ネパールカガチ村のシュリー・
バワニ小学校で学校給食をはじめるにあたり、活動基金のうち8万円を提供した。カトマンズ青年会議所では、毎月2回、食パンとミルク、果物、
卵の給食を提供している。同村では就学対象の約1600人中通学者は100人程度という。給食時には、200人弱が登校するため、
この取り組みを続けたいとしている。(00.10.27)
●学校給食残菜などで畜産
新潟日報00年10月15日付によると、長岡市の渡辺牧場は1994年から学校給食残菜などを利用し、肥育牛、豚、採卵鶏、野菜などを飼育、
栽培している。70年代には規模拡大を行ったが、その後地域循環型牧場経営に切り替えた。現在、家畜の餌の70%が、学校給食残菜、豆腐かす、
酒かすなどの食品残さを発酵させたものを使用。長岡市内の21校、保育所2所、事業所13カ所などから集めている。
牧場では小中学校の遠足や体験学習を受け入れている。学校給食食材に使用されているかどうかは不明。(00.10.27)
●秋田市など給食残菜は焼却
秋田魁新報00年9月4日付は、秋田県内の学校給食残菜処理についてまとめている。それによると、県内の大半は焼却処分しており、
たい肥化などは少数派。秋田市では当面焼却を続ける方針、横田氏、小坂町などはたい肥化を導入。
大館市は現在リサイクルセンター設置を構想している。(00.10.05)
●宮崎県延岡市のたい肥センター
日本農業新聞00年8月26日付によると、宮崎県延岡市では、給食残さ、家畜糞尿、魚市場の残さなどをたい肥センターで処理し、
たい肥をつくっている。このたい肥を利用して、学校給食用の地場食材も栽培され、給食に利用されている。(00.9.19)
●農水省、食べ残し調査
産経新聞00年8月9日付によると、農水省は、食べ残しの実態調査を8月10日から9月末に行い、2001年に速報をまとめるとしている。家庭、
小売店、製造業者、外食産業などでの種類別廃棄状態を調べ、日本の年間食品ロス率を推計する。平成4年の推計では、一般家庭が供給量の5.2%、
学校給食で食べ残している米やパンは4.3%という記録がある。なお、アメリカでは、97年7月の調査で、小売り、外食、
家庭での食べ残し量が純食料供給量の27%という結果がでている。(00.8.25)
●生ごみ処理機で飼料に
千葉日報00年7月5日付によると、千葉県茂原市の東郷小学校は、生ごみ処理機を導入し、学校給食の調理くず、
残菜などの生ごみ約20~30kgを発酵と乾燥で7時間かけて処理。最大容量50kg。約半分の生成量ができ、
学校で飼育している小動物のエサや植物の肥料に活用する。環境教育教材としても利用するという。学区内の希望者には配布する。(00.8.25)
●杉並区、給食残菜を建材用炭に
東京新聞00年6月7日付によれば、杉並区は学校給食の残菜などを蒸し焼きにして炭に変え、
住宅建材として利用する処理機をメーカーとともに開発し、区内の大宮中学校に設置した。1回の処理に15~20時間。1回で残菜、枯葉、
紙おむつなど50kgから2~5kg程度の炭ができるという。(00.6.16)
●高知県須崎市、生ごみ処理機を全小学校に
高知新聞00年2月23日付によると、須崎市は市内全9小学校に生ごみ処理機を導入する。給食残さをたい肥化し、学校花壇などに利用する。
(00.04.08)
●山形県立川町のたい肥生産
山形新聞00年2月18日付けによると、山形県立川町では、1988年からたい肥センターを運営し、できたたい肥は、
町内の有機米研究会らによって使用されている。この有機米は学校給食に使われており、児童は施設見学に訪れ、環境について学んでいる。
(00.3.29)
●世田谷区、給食残飯をたい肥化
読売新聞00年1月26日付によると、世田谷区は来年度中に自校式の小中学校に生ごみ処理機を導入する。年間約400トンの生ごみが処理され、
約70トンのたい肥ができるという。すでに導入した学校では、できたたい肥を協力農家に渡し、小松菜を栽培して、
学校給食に納入する試みも行われている。。(00.2.26)
●紙パックの完全回収再生使用
上毛新聞00年1月22日付によると、群馬県牛乳協業組合は、新工場稼働にあわせ学校給食用牛乳パックの回収を行い、裁断・洗浄・
乾燥させて業者に売却する設備を導入した。同組合は、県内の学校給食用牛乳で約4割のシェアを持ち、全生産量のうち8~9%
が学校給食用を占める。(00.2.26)
[ 00/12/31 環境関係 ]
問題山積の徳島市学校給食…食器・給食費
2000年2月の学校給食全国集会で、会場から徳島のふれあいコープ徳島学校給食委員会・小原伸二さんから発言があり、 徳島の学校給食の問題について報告がありました。後日、小原さんから詳しい資料をいただきました。徳島市の学校給食は、同じ県内、あるいは、 四国内と比べても、市の行政の中でずいぶんと軽視されているようです。その状況と、市民のとりくみなどについてまとめました。
■給食費問題
徳島市の給食費は、小学校が1食237円、中学校278円を保護者から徴収されています。この保護者から徴収される給食費の中から、燃料費、
市学校給食会の運営費も徴収されているため、実質的な食材費は払っている金額よりもずいぶん低くなっています。具体的には、
学校により多少の差はありますが、燃料費について平均して1食につき、小学校では約7円、中学校では約8円が保護者負担です。
市学校給食会の運営費は「管理費」として、1食につき14円42銭が、保護者負担となっています。
市学校給食会は市内の統一献立における共同購入の事務処理を行ったり、直営のパン工場で、パンを作ったり、米飯を炊いたりしています。そのため、
21人の職員の人件費等が全額保護者負担となっています。また、96年までは給食調理場の設備、
消耗品など設備費の一部を保護者負担にすることになっていました。
なお、県教職員組合栄養職員部の調査によると、徳島県50市町村で、全額公費負担となっているのは17町村、一部公費負担が14町村、
全額保護者負担となっているのが19市町村です。
燃料費について、市教職員組合と市小学校PTA連合会が議会に公費負担を求める陳情を行うなど、公費負担を求める活動が続いています。
しかし、市教育委員会では、「現在、学校給食に要する経費につきましては、その実施・運営に要する経費のうち、
学校給食の施設設備に要する経費及びこれらの修繕費、並びに学校給食に従事する職員に要する給与その他の人件費を学校の設置者の負担とし、
その他の学校給食に要する経費を児童・生徒の負担とすることが関係法令で規定をされております。給食の燃料費等につきましては、
学校給食法第6条および学校給食法施行令第2条により保護者負担とされていることから、現状では公費負担は非常に困難であると考えております」
(柏木教育長・1999年9月議会)として、負担割合の見直しを行う方針がないことを強調しています。
また、市学校給食会の運営費についても、学校給食会そのものが財団法人で、当初より保護者負担であったとして、
運営に対する補助等を見直す方針はないとしています。しかし、この学校給食会の運営については、
他の地域より高く食材を購入しているのではないかなどとの疑問が議会で質問されるなど、不透明な部分が多く残っています。
■食器問題
徳島市の食器は、アルマイト製です。ポリカーボネート食器が問題になる中で、
徳島県50市町村中、アルマイト食器のみの自治体は徳島市と小松島市の2市のみとなっています。なお、
徳島県下でPC食器を使用していたのは98年5月1日時点で28市町村ありましたが、以後変更、変更方針が相次ぎ、現在変更せず、
変更を検討していないのは2町(穴吹、藍住)のみとなっています。
これまで、アルマイト食器についても徳島市議会で議論されたり、市民などから変更の要望がありましたが、これらの声は届いていません。なお、
徳島市の食器検討委員会は、市教育委員会事務局と調理員で構成されており、栄養職員、教員、校長、保護者らは参加できない状態です。また、
同市議会に、99年6月8日に市教職員組合から「献立に子ども・保護者の意見を反映するため、献立作成委員会を開かれたものとし、
保護者等の委員参加や傍聴も検討すること」「市当局及び調理員で構成されている食器検討委員会を学校長・栄養職員・教員・
保護者代表もふくめた徳島市食器等検討委員会に変更し、開かれた発展的な委員会にすること」の2項目の「学校給食に保護者の参画を求める請願書」
が提出され、文教厚生委員会で議論されていますが、6・9・12・3月とずっと継続審議になっており、
2000年6月議会でも引き続き審議される予定です。
なお、集会以後に、3月の徳島市議会で、教育長より「新年度に小学校と中学校計4校、各1クラスを対象とし、
試験的に強化磁器を導入することにした」と答え、結果をみた上で本格実施するかどうか検討する方針を示しました。今後、
その動きが止まらないようにしていかなければなりません。
さらに、徳島市の食器問題はもうひとつ「個人ぼん」がないという問題があります。かつてはありましたが、
91年に個人ぼんの熱湯消毒が中止となり、実質的に使用されなくなりました。現在は個人ぼんがないため、小学校では各児童がナプキンを持参し、
中学校では食器、スプーンをそのまま机に置いています。衛生面、配膳の難しさなど、個人ぼんがないことによる問題が取りざたされていますが、
今のところ解決できていません。
徳島市の市民らは、食材に遺伝子組み換え食品を使用しないよう求めるなど、さまざまな働きかけを続けていますが、
当面する問題として給食費の内訳とアルマイト食器・個人ぼんの問題があり、厳しい状況に置かれています。
徳島からは、この問題について他の地域で、給食費の内訳がどうなっているのか、
とりわけ燃料費についてどうなっているのか事例が欲しいと呼びかけています。
(2000.04.27)
[ 00/12/31 運営・内容 ]
若者の街・原宿の学校給食 渋谷区立原宿外苑中学校
「渋谷区原宿」と聞いただけで、若者の街、ジャンクフードというイメージがあります。もちろん、この地区にも住宅があり、生活があり、
学校があります。そして、学校には給食があります。
東京都渋谷区は、全校自校直営方式です。栄養士は都基準の配置で、栄養士が配置されていない学校の場合統一献立です。
食材購入は栄養士の配置にかかわらず各校独自でやっています。調理員は、全員正規職員ですが、近年、退職者の再雇用の例もあります。
原宿外苑中学校は、原宿中学校と外苑中学校が1997年に統合されてできた学校です。統合後は外苑中学校の校舎等がそのまま使われています。
原宿外苑中学校には、栄養士は配置されていません。調理員は再雇用1名を含む6名で約360食を調理しています。
この原宿外苑中学校では、調理員が積極的に学校の職員に働きかけ、教育の一環として学校全体や地域、
保護者が給食を活かすため様々な取り組みをしています。
「給食だから、あれはできない、これはできないの時代を終わらせ、給食だからこそ、あれもできる、これもできる時代にしたい」
という考えの上に立ち、給食の質を高めようとしています。
■給食日誌
統合される以前の1994年から、毎日給食についての意見や感想を給食委員を中心に「給食日誌」に記入してもらい、
それに毎日返事を書く活動を続けています。「マーボーライスがおいしかった」「杏仁豆腐がおいしかった」「さかなの骨が柔らかかった」
という声や、「グレープフルーツは人気に差があった」「レタススープの具はもう少し多い方がいい」「味噌汁がちょっと辛かった」
といった意見などがあり、返事を書きながら生徒が何を考え、何を望んでいるのかが分かるようになっています。
このほか、毎月1回の給食委員会にも調理員が全員出席して、生徒と交流を深めています。
■給食室から(給食だより)
毎月、献立予定表を出していますが、その半分は、調理員からのメッセージです。
調理員の自己紹介、簡単なレシピ、箸の上手な使い方、給食日誌から声の紹介など、保護者、生徒と給食室をつないでいます。
また、「原宿外苑中学校の給食」という30分弱のビデオを作成し、
ふだん入れない給食室の調理の様子や原宿外苑中学校の給食の特徴をまとめています。
■試食会
試食会は、年に1回、毎年2月頃、保護者からの要請を受けて行い、実際に給食を食べてもらいます。出した給食の内容だけでなく、
いくつかの給食のレシピを示しながら、ダシに天然のものを使っていることや、カレールー、
ハンバーグなどをすべて手作りしていることなども紹介します。上記のビデオで実際の調理風景を教えています。そして、
その場での意見交換も給食に役立てます。実際に、98年度には、試食会で「郷土料理を出してみたらどうか」という提案があり、
4月から月に1度郷土料理を出すようにしています
■タケノコ、梅、八重桜、野菜畑
たけのこ掘りの風景
給食室横の小 さな畑で里芋掘り
原宿外苑中学校には、竹林、梅の木、八重桜の木があります。春にはタケノコを掘り、タケノコ料理を出します。
八重桜の花びらは塩漬けにして翌年の春、桜おこわになります。梅は、手作りの梅漬けにして、給食に出します。
タケノコ堀りや梅もぎなどは、ポスターを作成して、生徒に手伝いを呼びかけています。また、毎年11月には生徒も参加して芋掘りを行い、
翌日の給食に出してます。
給食室の横には小さな畑があり、ここではキヌサヤ、ラディッシュ、大葉、ミント、キュウリ、里芋などが調理員の手で栽培されています。そして、
給食に役立てられています。
いずれも量は多くありませんが、都心でも、工夫次第で「地場型給食」の考え方である、地域で、素材の生産から加工、
食べるまでを体験することが可能なことを教えています。
■独自献立
原宿外苑中学校では、栄養士が配置されていないため、統一献立となります。毎月来る統一献立を基本にしながらも、
行事や実際の残菜量などを考え、調理員が独自に献立を立てています。もちろん、カロリーや栄養素などの計算も行います。
栄養士も献立を確認しています。そして、食材の発注や給食費の計算もやっています。
そこで、原宿外苑中学校ならではの献立が生まれ、以下のような新たな工夫も生まれています。
●A定、B定~セレクト給食
原宿外苑中学校の人気献立は、
1位 A定、B定
2位 カレーライス
3位 ミートスパゲッティ
4位 オムライス
5位 太巻寿司、ジャンボいなり です。
一番人気が高いA定、B定は月に1度のセレクト給食です。A定食が肉料理、B定食が魚料理で、事前に注文をとって実施されています。 もともとは、肉にかたよりがちな食生活に少しでも魚料理を取り入れて欲しいという気持ちからはじめられました。1997年にはじまりましたが、 99年7月にはじめてB定食がA定食の数を上回りました。ちなみにA定食がチキンカツ、B定食がサーモンムニエルでした。
●リクエスト給食
生徒からアンケートをとり、リクエスト給食として実施しています。98年10月の「給食室から」では、このアンケートの結果をまとめています。
<できます>
茶碗蒸し、ドリア、オムライス、カルボナーラ、アメリカンドッグ、イタメシ、フカヒレスープ、ポテトフライ、ステーキ、ドーナツ、クレープ、
雑煮、有精卵のゆで卵、のり弁、ふろふき大根、アジの塩焼き、ラーメン、納豆、おしるこ、バイキング
<なんとかできるかな?>
キムチ、フランス料理、A定B定C定、湯豆腐、羊の肉、チーカマ、カニ汁、カエル、リゾット、焼き鳥、ペペロンチーノ
<うーんできない>
ミルフィーユ、チーズフォンデュ、京たこ焼、ツバメの巣、いかすみそうめん、もんじゃ焼き、ピザ、刺身、キムチ鍋、ペキンダック、
中国の王宮料理、おどりぐいシリーズ、うめ酒
●地域料理
試食会での意見をとりいれて、それまでも行っていた郷土料理を定期的に計画を立ててやってみました。新潟の笹寿司などは、
笹の葉を実際に新潟の方から送っていただいたりと、中身は本格的です。
●産直
リンゴは、長野県湯田中の佐藤さんご夫婦が栽培する低農薬のもの。別の地区の給食まつりでリンゴのことを知り、
職場旅行を兼ねて農場の見学をして扱っています。野菜についても、積極的に低農薬や有機栽培のものを選ぶようにしています。
●アレルギー対応
食物アレルギー、アトピーがある場合、養護教員と連携し、保護者と連絡を取りながら別献立を立てています。渋谷区全体でも、アレルギー食、
宗教食の対応はされており、特定のアレルギーの場合、別鍋で調理するなど手間を惜しまずにやっています。
■調理室からのメッセージ
同校の調理員で、渋谷区職員労働組合学校給食部会の役員をつとめる平沢さえ子さんは、あるレポートで次のように述べています。
「同じ材料でもひと工夫して目先を変えたり、ネーミングをおもしろくしただけで残菜が少なくなる。休憩室で雑談しているときにも、
テレビでこんな料理をやっていたとか、旅行に行って食べたのがおいしかったから作り方を聞いてきた、新聞や雑誌の切り抜きなど、
かしこまって考えるのでなく、たわいもない話の中から原宿外苑中のオリジナルメニューは生まれてくる。家から材料を持ってきて、
調理の合間に試作品を作ってみる。楽しみながらおいしいものをつくる。これがすべての秘訣だ。
ネーミングはつけるほうも楽しみながら、生徒をワクワクさせている。あけてびっくり花ちらし、UFOぎょうざ、花しゅうまい、
びっ栗むうしパン、宝さがしコロッケなど数えたらきりがないくらいある。
給食について様々な工夫をしてきたが、これをすべて労働強化だとか、職域を超えていると言ってしまえば、すべてはおもしろくなくなる。
確かに何もしないよりはひと手間もふた手間もかけている。しかし、その分、子ども達からも、親たちからも、
学校からも大きな反応が返ってくれば、手間のかけがえに余りあるものだ。
子ども達が目を輝かせて給食室をのぞきこんでくれれば、どんな苦労も吹き飛んでしまうと、みんなが思っている。
何よりも調理員自身が一番楽しんで、張り合いを持っている。少しずつ力を出し合い、工夫を出し合い、楽しみを分かち合っている。
学校給食を、文部省が教育の一環と位置づけていることを、調理員自身が活用していない。宝の持ち腐れ、といえる。
私の学校でもまだまだ試みの段階だし、少々無理をしている。しかし、やる気のある人たちが集まった職場なので、
チームワークで意欲的に乗り切っている。
休み時間も十分にとれないときもあるが、何か新しいことをやるときって、そんなことかまっちゃいられないくらいおもしろいと思う。
この数年間やっただけで、教員も目を向けてきた。子ども達もおおいに反応がある。PTAにもたくさん知り合いができた。
めざましくはないけれど、なにか地面の下で動きつつある気配が強い。また、他の学校にも共感を呼びつつあるはずだと思っている。
一般的に“おいしい給食を作る”といっても、グルメのおいしさや子どもの「受け」をねらったおいしさを目指すものではないと思う。
日常の食生活の一端を担っているという意味で、作り手と食べての姿がお互いに見え、人間として響きあっていくなかで作られるアジ、
決して食べ飽きないおいしさ、学校という生活の場での生活に根ざしたおいしさを目指していくべきだと思う。
教員との関係、子どもをめぐる教員との関係、教員を通じての子どもとの関係、子ども自身との関係といった、人間としての“おつき合い”
の中で培われていく味=おいしさを目指していくべきだと思う。
直営だからこそできること、おいしさとはそういうことだと思う。
そして、そのおいしさを支えているのは栄養士でもあり、学校でもあるかも知れないが、何よりも調理員であるはずだ。調理員は調理機械ではない。
標準のレシピは、季節や食材や調理方法、ちょっとした思いやりで様々な工夫や手を加える余地がある。その工夫こそが大きく味わいを支えていく。
それができるのが現場の調理員だ。
栄養士を配置し、その指示(標準・マニュアル)通りやるから、調理員が民間委託に変わっても“何一つ変わりはありません”と、
民間委託を進めるすべての当局者が口を揃えて言う。調理員の力、その人間としての子ども達へ向けた思い、学校での職員としての位置、
子ども達との人間関係といったすべてを否定するところに「調理員が学校職員である必要がない民間委託」は成り立っている。
このような当局のコスト一辺倒の論理を許さない“給食の豊かさ”“作り手と食べての顔が見える、人間として響きあえる”
給食をめざすべきではないだろうか」
調理室の見学会
(2000.06.04)
[ 00/12/31 栄養職員・調理員 ]
時事情報2000年 食教育関係
●長野県塩尻市、学校給食冊子作成
信濃毎日新聞00年11月2日付によると、塩尻市教育委員会などが「塩尻市の学校給食」とする小冊子を作成した。自校給食の利点をPRするため、
地域、学校の特色を生かした献立を各校の栄養士が立案したもの。(00.12.08)
●富山県砺波市で農業体験
北日本新聞00年7月30日付によると、砺波市庄下地区の小学生が学校給食用減農薬ニンジンの種まきを体験した。その後、草取りなども体験させ、
収穫は12月上旬。市の給食センターで調理される予定。(00.09.19)
●群馬県、総合学習で農作物栽培
上毛新聞00年4月18日付によると、群馬県では県独自の食糧自給率向上対策に基づき、食農教育モデル校支援促進事業をはじめた。
本年度は小学校5校が対象。総合学習の時間に地元の農家や県のインストラクターらが指導者となって農作物の栽培から収穫、調理までを指導する。
内容は学校、学年により様々で、トウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモ、米、コンニャクなどが選ばれている。また、県では本年度中に
「食と農に関する副読本」を全小学校に配布する。(00.06.16)
●神奈川県横須賀市のカレー給食
神奈川新聞00年4月19日付によると、横須賀市教育委員会は、「カレーの街よこすか」運動の一環として、
学校給食にカレーライスの頻度を増やすという。同市では、昨年度まで米飯給食が週1回であったが、本年度より月5回となる。それにあわせ、
カレーの頻度も月1回程度まで増やすという。なお、カレーはルーから手作りするとしている。(00.06.16)
●水の持参に自治体で対応異なる
朝日新聞大阪版00年5月22日付によると、麦茶やミネラルウォーターを水筒などに入れて学校に持参する子どもが増えている。これに対し、学校、
自治体の対応は異なっている。大阪府高槻市教育委員会は、学校の水道水に安全性の問題はないとしながら、
飲料持参について各校の対応にまかせるとしている。大阪府堺市では、市教委が小中学校に対し、
学校では生水を飲まず必要ならば家から持参するようにとの指導を行っている。岡山市では、飲料持参に対しとくに禁止はなく、
保護者に水筒などを衛生的に保つよう呼びかけている。京都府亀岡市のある小学校では、朝に湧かしたお茶を入れ、氷を入れない、凍らせない、
コップを使う、友達同士のやりとりをしない、登下校中に飲まないなどの指導をしている。京都府長岡京市のある小学校では、
給茶設備があることや水道水がおいしいことを理由に持参を認めていない。東京都練馬区では、水筒の持参はなく、問題にもしていない。
(00/05/27)
●宗教上の除去給食再開
中日新聞00年1月29日付によると、三重県津市の白塚小学校では、イスラム教徒のバングラディシュ人児童3人のために、
豚肉抜き給食を提供していたが、99年4月に市教委が中止を指示、一時中止されたが9月中に再開された。その期間、
該当の児童は弁当持参を余儀なくされた。担任の教員は、クラスメートの児童が宗教の違いによる理解などを経験し、
違う食べものに対して理解できるようになったと教育的な意義を語っている。(00/04/08)
●千葉県我孫子市で給食残菜ゼロ運動
毎日新聞00年3月31日付によると、千葉県我孫子市の市立湖北中学校で残菜ゼロ運動を行っている。動向は、一時給食が中断され、
99年に再開されていた。99年の2学期より、0のつく日を残菜ゼロの日として運動している。同校の校長は、「無理に食べさせるのではなく、
生徒の自発的なとりくみが重要」としている。この運動は、我孫子第四小学校、新木小学校などに広がっている。さらに湖北小学校をはじめ、
小中学校19校のうち14校がとりくみをはじめているという。(00/04/08)
●小学校教職員の給食牛乳観
日本農業新聞00年1月18日付は、北海道の酪農総合研究所が札幌市内の6小学校89人を対象に行ったアンケート調査を報じた。それによると、
牛乳給食の必要性を82%が認めているが、牛乳のカルシウム量などの栄養的な知識は低いことが分かった。(00/01/27)
●長崎県西彼時津町、お年寄りとのふれあい給食
長崎新聞99年12月3日付によると、西彼時津町の時津東小学校では、お年寄り80人と3年生の91人でのふれあい給食会を開いた。
食事はバイキング形式でお年寄りとペアを組んで食事を楽しんだ。(00/01/27)
[ 00/12/31 食教育 ]
時事情報 その他もろもろ 2000年
●食品標準成分表5訂版
化学工業日報00年11月24日付によると、科学技術庁長官諮問機関の資源調査会は、
日本食品標準成分表を18年ぶりに全面改定し5訂版をまとめた。収載食品数は1882食品、標準成分は36項目と4訂版より拡充した。
(00.12.08)
●学校給食実施状況等調査結果概要
文部省、1999年5月1日現在の学校給食実施状況等調査結果概要を発表。それによると、調理の民間委託は、前年比0.9%上がって9.2%に。
それにともない、調理員の実数が減り、一方で栄養士の数は増加。米飯給食については、ほぼ横ばい、微増傾向。(00.11.30)
●熊本県の塩ビ手袋使用、排除状況
熊本日々新聞00年7月16日付によると、熊本県内でも塩ビ手袋の排除は進んでいる。
熊本市内16の共同調理場中15および自校式小学校50校以上が塩ビ製手袋を使用してきたが、いずれも天然ゴム製に切り替え、学校によっては、
洗浄用の水道ホースも環境への影響を配慮して天然ゴム製に切り替えたという。(00.8.5)
●長野県、塩ビ手袋動向
信濃毎日新聞00年6月21日付は、塩ビ製手袋を学校給食調理場などで使用しないよう文部省から通達のあった6月14日以降の対応をまとめた。
松本市は、この問題が新聞に報道された6月1日に検討をはじめ、翌日にはポリエチレン製、天然ゴム製の手袋を代替品として取り寄せている。
2カ所の給食センターで順次切り替えた。長野市は「疑わしきは使わない」との方針から、6月上旬には3カ所の学校給食センターが対策を検討。
自校式の諏訪郡下諏訪町では、4小中学校で確認を行った結果、一部塩ビ製があったがほとんどはポリエチレン製を使用。
今後塩ビを使わないよう徹底させた。(00.7.10)
●調理用塩ビ手袋禁止
朝日新聞00年5月31日付によれば、厚生省は調理用塩ビ手袋の使用を禁止する方針を打ち出した。6月14日の食品衛生調査会毒性・
器具容器包装合同部会で審議し、正式決定する。塩ビ性手袋に可塑剤として使用されているフタル酸エステルが調理・
盛りつけ時にアルコールや油と触れて溶出し、食品に残留する可能性が高いことが分かったため。フタル酸エステルは、環境ホルモン
(内分泌かく乱物質)の疑いがある物質。
病原性大腸菌O-157への危惧から近年調理現場で盛りつけなどに使い捨て手袋を利用するケースが増えているが、
主にポリエチレン製と塩化ビニール製があり、ポリエチレン製よりも塩ビ製の方が柔軟性に富む。日本ゴムビニール協会では、
国内で食品用使い捨て塩ビ製手袋は製造されておらず、台湾などから輸入されている。
●農水省、給食の自給率試算
日本農業新聞00年3月20日付によると、農水省は、自民党農業基本政策小委員会に対し、学校給食の自給率試算値を示した。それによると、
米飯給食の場合、自給率は60%前後、パン給食では20%強という。学校給食の供給カロリーに占める主食の割合が半分ほどあるため、
パン給食と米飯給食での自給率に大きな差が出るという。試算は、小学校2校の1週間の給食メニューを、
農水省が開発した食糧自給率早見ソフトで算出したもの。
●政府の食生活指針
毎日新聞(インターネット)00年3月23日付によると、厚生省、農水省、文部省は、「何を、どれだけ、どのように食べたらよいのか」
具体的な目標を示す「食生活指針」を決めた。厚生省の「健康づくりのための食生活指針」の改訂に合わせ、農水省から食糧自給率向上や食文化推進、
文部省からの学校や家庭での食生活の正しい理解を求める意見を採り入れたもの。
[ 00/12/31 その他 ]
学校給食の方式
【学校給食の方式】調理場での区別
自校方式
学校内の敷地に調理場があります。調理から喫食までの時間・距離が短い。児童・生徒が調理過程に接することが可能です。
センター方式
共同調理場方式とも言います。複数の学校の給食を一括して調理し、給食時間までに配送します。 2校規模から自治体全域の小中学校20000食を一括して調理する大規模調理場まで規模は様々です。自校方式同様、自治体の運営です。また、 広域行政区で共同調理場をつくり運営することもあります。調理から喫食までの時間は、自校方式より長くなります。 自治体で必要となる調理員の数は自校方式よりも少ないことが多い。なお、センター方式はそれ自体が民間委託ではありません。
親子方式
調理場を持つ自校方式の学校が、調理場を持たない学校の給食調理も行う場合です。自校方式とセンター方式の中間形態。調理場を持つ方が「親」、 調理場を持たない方が「子」となります。一般に距離の近い学校同士で行われます。
業者弁当方式
民間業者が民間業者の施設で作って学校に届ける方式。自治体によっては「給食」 と位置づけているところと「昼食対策」等として位置づけているところがあります。「給食」と位置づけているところでも、「弁当併用」として、 自宅からの弁当と「給食」としての弁当を自由選択させているところなど、形態は様々です。
調理者の身分
調理の民間委託の問題は、誰が調理するかという問題です。調理場は、自校方式でもセンター方式でも親子方式でも、 それまでと同様に自治体が所有する設備です。調理場を民間業者のものにした場合、前項で説明したような「弁当方式」と考えます。
調理者は大きく分けて直営調理員と民間委託とに分かれます。
直営調理員
市町村など自治体の職員(公務員)です。他の公務員同様、 調理がない夏休み期間中などでも、調理場の清掃や衛生研修、他の関連業務などを行っています。
パート職員
自治体が雇用する非常勤職員です。退職者再雇用なども、賃金的には同等で、 時間単位の雇用や期間を限った雇用などの職員です。
民間委託
民間業者に調理部門を委託します。委託された民間業者は、調理場での責任者となる社員(チーフなどと呼ばれます)と、 民間業者が雇用するパート職員により調理を行います。調理は、都道府県職員である栄養士が作成した献立と指示書に基づき行われ、 中間検査を経て完成品を納品(引き取り)することで完了します。業務委託であり、人材派遣ではありません。同じ調理場で、民間委託の調理員 (社員、パートを含む)と、直営の調理員(正規、パートを含む)が、同じ調理を行うことは、法律上できません。また、栄養士も、民間委託の場合、 民間業者の責任者である社員以外に指示することはできません。指示は、責任者となる社員、管理職者に対し、 事前事後の協議および文書による指示を行うことが法的に求められます。
ちなみに、直営の調理員の場合、栄養職員との関係はもっと自由で密接なものとなります。栄養職員は、主に都道府県職員であり、 不足数を自治体で別途補うこともあり、その場合、栄養職員に都道府県職員と自治体職員がいることもあります。栄養職員は、献立を立て、 衛生管理の責任者となります。また、栄養職員が配置されていない学校では調理員が衛生管理の責任者となります。栄養職員の献立についても、 調理員と栄養職員が調理の前後、最中を通して確認、相談し、調理方法は調理員が主導的に関与します。それぞれの立場と知識・技能の上で、 相互に補完しながら学校給食をつくっています。
[ 00/12/31 運営・内容 ]
民間委託の論理と問題点
【民間委託の論理】
なぜ、全国の自治体がこぞって調理の民間委託を導入しようとしているのでしょうか。行政改革を求められた自治体は、「人件費の削減」
を行政改革の指標と目標にしています。人件費を削減する上で、学校給食調理は格好の「民間委託」しやすい業務と見なされています。そして、
学校給食調理員を削減して民間委託にすれば、「コストは削減できる」としています。
しかし、この「コスト削減」論は仮説です。もし、自治体が調理の民間委託を検討するのであれば、きちんと比較して試算結果を公表すべきです。
さらに、コストが削減されるとしても、民間委託と直営調理の利点・欠点を整理し、削減したコストに見合うかどうかを検討する必要があります。
これまでの民間委託導入では、調理員削減=民間委託導入=コスト削減とされてきました。しかし、
きちんとした試算結果や効果については公表されていません。
行政改革の必要→人件費の削減→調理業務の民間委託→コスト削減
コスト削減は仮説です
→検証されているか?
→削減コストは、教育費予算や自治体予算全体のどの程度か?
→民間委託は、教育としての学校給食にとって最善の方法か?
【民間委託の問題点】
衛生管理上の問題
病原性大腸菌O-157など、従来では考えられなかった厳しい衛生管理が要求されています。また、大規模調理は、
一度食中毒を発生させれば大規模化するというリスクを負っています。学校給食についても、平成9年の保健体育審議会答申で、
食材の一括購入や統一献立、センターなど、大規模被害につながる大規模化よりも、食材の個別購入、調理場ごとの献立、
自校方式調理が望ましいことを指摘しています。また、近年、工場でつくられた加工食品による大規模食中毒事件が発生しており、
加工食品だからと言って安心できないことを改めて知らされました。
そんな中、HACCPのような徹底した衛生管理が学校給食の現場でも求められています。HACCPの是非はともかく、
一般的な衛生管理はHACCP以前の問題として必要不可欠です。とりわけ、調理者の衛生管理教育や技能の修得は必須とされています。その中で、
パート職員中心となる民間委託は直営調理員による調理よりも潜在的リスクは高いと言えます。
責任の分散による問題
学校給食についての最終的な責任は、自治体の長を筆頭に、教育委員会の責任者、学校長、センター責任者です。これは、直営であっても、
民間委託であっても変わりません。ただし、民間委託の場合、仮に何らかの事故があった場合、児童生徒への責任は自治体ですが、
自治体側は民間委託業者に対し、契約違反や衛生管理上の問題として責任を追及することになります。この責任構造の複雑化は、一方で、
衛生管理などについての曖昧さ、甘さを生む温床になりかねません。
栄養職員の業務の煩雑化
民間委託業者に対し、指示書、中間検査、
最終検査などを行うのは現場の栄養職員です。栄養職員は、調理業務や調理現場に立ち入ることができないため、
かえって衛生管理や調理が献立通りに行くよう、直営の時よりも細かな文書作成や管理を要求されます。
栄養職員に求められる食指導や学校給食を通じた教育にかけられる時間が減っていくことは避けられません。
教育への主体的な関わりの問題
合成洗剤から石けんへの切り替えや、環境ホルモン問題が出てきたときの食器改善、遺伝子組み換え食品への対応など、直営調理員は、
学校教育に携わる職員として、積極的に質の向上に取り組んでいます。また、残食などについても調理の工夫により、
残食を減らすなどの日常的な取り組みがあります。これらについて、調理部門を委託業務として請け負った民間委託業者は、責任も権限もありません。
つまり、教育としての学校給食の向上に、民間委託業者が直接関与することは考えられまん。むしろ、たとえば、
合成洗剤から石けんに切り替えるなどの場合、契約事項の変更として、委託料の値上げが必要となります。
[ 00/12/31 委託・合理化 ]
民間委託のコスト比較のしくみと経費試算表
【民間委託の導入方法】
民間委託を導入する場合、基本的には直営調理員の「退職者不補充」を行います。つまり、定年などで調理員が退職しても、新規(中途)
での新たな採用を行ないません。その上で、自校(親子)方式の場合では、退職者数に応じて、順次調理場を民間委託していきます。センターの場合、
自治体内に複数ある場合は、どちらかのセンターを先に民間委託し、ある時点で、調理員を他の職種に配置転換する形で民間委託を進めます。
ひとつしかセンターがない場合は、退職者不補充とパート化で直営調理員を減らし、ある時点で直営調理員を配置転換させ、
民間委託することになります。
下図は、自校方式での退職者不補充と民間委託導入を簡単に説明したものです。
【コスト比較の基本的な考え方について】
直営調理員と民間委託の経費試算について、考え方を示したものが下図です。
ここでは 、パート職員については考えません。また、必要調理員数、すなわち、
生徒数や学校数の変化はないとして考えています。
まず、直営の場合、退職者が10人いれば、翌年度には新規あるいは中途で新たに10人採用する必要があります。その翌年に5人退職者がいれば、
また5人を採用しなければなりません。
一方、退職者不補充しながら、民間委託する場合には、ちょうど、新規採用分の代わりに民間委託されることになります。つまり、
民間委託と直営の経費を比較する時には、退職者不補充を基本にした場合、
退職していない現職の直営調理員の給与は考えなくてもいいことになります。
つまり、
1年目ならば、
(直営)現職調理員人件費+新規採用調理員人件費
(民間)現職調理員人件費+民間委託費
2年目ならば、
(直営)現職調理員人件費+(昨年採用調理員+新規採用調理員)人件費
(民間)現職調理員人件費+民間委託費
となるからです。
(直営)-(民間)が、コスト削減部分となります。
この数字がマイナスならば、直営の方がコストが安いことになります。
『民間委託経費試算表』は、基本的にこの考え方をベースにしたものです。
ですから、この試算表を使わず、より、簡単に経費計算することも、民間委託の条件によっては可能です。
上記の考え方を踏まえて、経費試算表を利用しなくても計算できるかも知れません。
『民間委託経費試算表』は、たとえば、退職者不補充だけではなく、配置転換や、配置定数の変更など、様々な場合を想定しています。そのため、
表の計算は複雑になっています。自治体の実態にあわせ、考え方をご理解いただいた上で、部分的に利用するなど自由に工夫してご利用ください。
(学校給食民間委託の経費試算表の目的と役割)
【学校給食経費試算表】は、主に直営調理業務の人件費を5年先まで試算するためのものです。また、
民間委託業者の委託費用見通しが明らかになっていれば、5年先までの委託した場合と、直営で行った場合、移行期間の経費の比較ができます。
民間委託を導入しようとする自治体の行政は、直営調理員の人件費は高く、民間委託すると安くなるので、財政削減になると主張しています。
しかし、学校給食の運営費は、市町村の教育予算として考えられます。教育予算には、生涯教育や地域の教育活動も含みますが、
近年生涯教育などに使われる予算が増えていることは間違いありません。その教育予算全体に占める学校給食調理のコストと、
民間委託したとして得られるとされる財政削減の予想額が、はたしてどれほどのものでしょうか。
学校給食調理の民間委託の問題をコスト論で考えると、自治体の予算やその決定方法、支出方法など、
地方自治のあり方も考えさせられることになります。
この経費試算表を作成するにあたっては、
市町村や教育委員会が持っている公務員の給与表や学校別の児童数の推移予想などの情報をもらわなければなりません。なかには、
情報提供を拒否される場合もあるかも知れません。情報公開請求を行うなど、行政手続きも出てくるでしょう。
ねばり強く交渉したり、調理員の労働組合組織への協力を要請することもあるでしょう。
しかし、それを通じて、経費試算表を作成することにより、運動の幅は広がるはずです。
(学校給食民間委託の経費試算表の使い方)
数字は苦手だという人は多いでしょう。まして、
公務員の人件費計算を試算するなど、公務員であっても関わりになりたくないかも知れません。
そこで、やる気を出すために、完成した経費試算表をどう使うか、そこから考えてみましょう。
経費試算表から出てくる結果は、直営調理員の人件費(諸経費含む)について、5年先までの試算です。10年先まで伸ばすこともできます。
この計算途中では、必要となる調理員の数なども出てきます。また、正規の調理員とパート職の配置による合計額の違いも計算することができます。
もし直営のみを続けた場合で、今の正規職員とパート職の比率を変えない場合、5年後、10年後の経費はどうなるでしょうか。多くの自治体で、
子どもの数が減り、また、調理員の退職および新規採用による若返りが起こるため、人件費も横ばいか減少傾向になると思われます。つまり、
直営の場合であれば、経費を試算することはそれほど難しいことではありません。
一方、民間委託の経費ですが、これは、一言では言えません。1食いくらで請け負うのか、最低1調理場いくらで請け負うのか、
その地域では業者間の競争があるのか、ないのか。たとえば、プラスチック食器から強化磁器に変更した場合など、契約条件が変わった場合、
いくら高くなるかなど予測のつかないことがあります。
その中で、民間委託が安いという根拠は、自治体ごとにあるはずです。それを自治体の行政当局から出していただかないことには、
比較はできません。
完成した経費試算表は、行政が出してくる委託費と直営調理での年度ごとの経費を比較します。
もし委託予定費を行政が出してきたら、この経費試算表を使って、高いか安いか、どのくらいの金額が節減できるのかを議論することができます。
この試算表では、民間委託にあたって必要となる設備投資などのコストは含まれていません。当然、当初の予算は高くなるわけですが、
何年後に削減効果が出るのかなどを議論することもできます。
また、たとえば議会などでこの試算表を引き合いに出し、行政が「削減できる」とする根拠を示してもらうことも可能でしょう。もし、
「削減できる」ための根拠を出せないのであれば、民間委託=経費節減という図式は絵に描いた餅であることが分かります。
そして、民間委託=経費節減が仮説にすぎないのならば、学校給食を民間委託することの意味について、学校給食とは何か、
自治体としてどのような学校給食を実施するのかなど、本当の議論から考えることができるはずです。
つまり、この経費試算表は、民間委託を推進する行政と対等に議論するための道具になるのです。
もちろん、コストだけが民間委託か直営かを決めるものではありません。たとえ、民間委託が経費削減になるという結果であっても、それにより、
学校給食は何を失うのか、どんな問題を持つのか、民間委託によって失うものは、経費削減に見合うのかをしっかりと見極めなければなりません。
(学校給食民間委託の経費試算作成の概略)
この経費試算表は、主に民間委託によって調理員としての職場を失うことになる調理員などの労働組合が利用する場合と、保護者・
PTAなどが民間委託に反対するために利用する場合があると思います。労働組合の場合、
経費試算表を作成するために必要な情報を入手することはそれほど難しくありません。一方、市民の場合は、
ほとんどの情報を入手することは可能ですが、一部難しいものがあるかも知れません。
ただ、基本的には公開されてしかるべき情報ばかりですので、もし、窓口で情報公開を拒否された場合、
情報公開条例がある自治体では情報公開請求を行い、それでも情報がもらえない時には、条例に沿って不服審査請求などを行うことになります。
また、民間委託を計画しているところでも、委託費用の算定をしていない、あるいは、
業者から見積もりをとっていないというところが多くあると思われます。その場合、民間委託=経費節減は仮説にすぎなくなります。そこで、
具体的な数字とその根拠を出すように要求していく運動をつくることもできます。
以下、記入マニュアルの中に、情報入手方法と入手できなかったときの対処や、数字の意味などについて注釈を入れてあります。
それら注釈を参考に、経費試算表作成を通じて、運動の幅を広げてください。
経費試算表構成
|
入力上の注意
○フォーマットはマイクロソフト社のエクセル2000で作成しました。OSはウインドウズ98を使用。ウインドウズ95以上であれば、
動作します。また、エクセル97以上でも動作すると考えられます。ロータス社の123でも読み込めますが、関数などを使用しているため、
できればエクセル2000を利用してください。
○入力は黄色に色づけられているマスのみです。
○それ以外の部分は自動計算します。
○ダブルクリックすると計算式があらわれます。計算式を変更すると別のフォーマットの計算やシュミレーションの結果に影響を与えます。
独自の計算式を作成する場合以外は、計算式を変更しないでください。
○入力する前に、フォーマットの原本とは別のファイル名で保存しておかれることをおすすめします。
免 責
○本フォーマットはできる限り正確を期しておりますが、あくまで想定計算式です。実際の人件費などとは誤差を生じます。また、
今後計算式の間違いなどが見つかった場合改善に努力しますが、本フォーマット使用による一切の損害については、責任を負いません。
本フォーマット使用者は、自己責任で使用してください。
学校給食の民間委託経費試算プロジェクト事務局
〒106-0032 東京都港区六本木6-8-15
第2五月ビル2階 大地を守る会気付
全国学校給食を考える会
電話:03-3402-8902 FAX:03-3402-5590
申 請 書
以下の覚え書きに合意し、内容を遵守いたします。
学校給食調理の経費試算表CDおよびマニュアルを送付してください。
フォーマットが届き次第、同封の郵便振替用紙により、3000円を送付します。
合意覚え書き
学校給食調理の経費試算表を使用するにあたって、以下の事項に合意します。
一、試算作成のため、同じ自治体の団体内で行うコピー等をのぞき、
フォーマットおよび作成方法マニュアルの他団体等への無断配布、コピーは行いません。
一、試算は、申請した自治体についてのみ行います。
一、使用に際し、経費を水増しあるいは削減するなどの不正使用、あるいは、
フォーマット内の計算式を改変することによる、誤差以外の不正な数字改変を行いません。
一、使用に際し、フォーマットの改変を行った場合、その内容と目的について、
後日、全国学校給食を考える会事務局に報告し、他自治体における運動に協力します。
一、上記以外、入力や作成、使用方法、運動展開にかかわる感想や改善提案を、
後日、全国学校給食を考える会に報告し、フォーマットの改善や全国的な運動に寄与します。
一、以下の免責事項に合意します。
免責
○本フォーマットはできる限り正確を期しておりますが、あくまで想定計算式です。実際の人件費などとは誤差を生じます。また、
今後計算式の間違いなどが見つかった場合改善に努力しますが、本フォーマット使用による一切の損害については、責任を負いません。
本フォーマット使用者は、自己責任で使用してください。
上記の合意覚え書きに同意いたします。
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[ 00/12/31 委託・合理化 ]
学校給食調理の経費試算表について
(はじめに)
学校給食は、学校給食法に基づき、「食教育」を目的に教育として行われています。
しかし、学校給食の運営は、各市町村が独自の予算で行っています。学校給食を行う、行わないも自治体で決めることができます。
学校給食には、様々な方式があります。
調理のしくみでは、学校に調理場がある「自校方式」、学校給食センター(共同調理場)で調理し、いくつもの学校に届ける「センター方式」、
ひとつの学校に調理場があり、近くの学校の給食も合わせて調理して届ける「親子方式」、さらには、最近、
民間業者が弁当をつくって学校に持っていく「弁当方式」などがあります。
また、調理者にも「直営方式」と「民間委託方式」があります。「直営」の調理員は公務員です。「民間委託」は業者が調理を請け負う方式です。
(次ページ参照)
近年、自校方式、センター方式にかかわらず、調理業務を直営から民間委託する動きが加速しています。
これは、1985年の文部省による合理化通知や1994年の自治省による行政改革指示によるものです。
この動きに対し、全日本自治団体労働組合(自治労)、日本教職員組合(日教組)、全国学校給食を考える会、
日本消費者連盟で構成する学校給食全国集会実行委員会(四者共闘)は、学校給食の可能性をせばめるとして反対し続けてきました。
食教育としての学校給食は、多くの可能性を持っています。食材や調理を通した地域とのつながり、教科教育とのつながりを持つことができます。
2001年度から本格的に導入される総合学習で取り上げられる環境問題やリサイクル、農業といった分野とも深いかかわりを持っています。
この学校給食を、調理員、栄養士、教員、保護者、地域が一体となってそれぞれの役割を果たし、それぞれの知恵を活かすことで、
学校給食は教育としての充実をはかることができます。
すでに全国各地で地場型給食や、学校給食の教材化が進められています。
しかし、調理の民間委託は、学校教育の中で、調理を教育から引き離してしまい、調理員の持つ知恵や工夫を活かすことができなくなります。
そこで、四者共闘は調理の民間委託には反対の立場をとってきました。合わせて、食教育としての学校給食のあり方を提案し、全国で調理員、
栄養士らが取り組む実践的な教育事例を通じて、食教育の質を高める運動をしてきました。
しかし、地方自治体の財政難、景気悪化を受けて、民間委託の動きはさらに加速しています。この動きに対し、
四者共闘では民間委託の経費について、民間委託推進側が訴える「民間委託すると経費が安くなる」という点についても具体的な議論をするため、
このたび、【学校給食調理の経費試算表】を作成しました。
この経費試算表を作成することで自治体ごとの学校給食経費について理解を深め、民間委託との経費差などについて明らかにし、
地域の運動として役立てていただければ幸いです。
引き続き、以下のリンクをお読みください。
学校給食の方式
民間委託の論理と問題点
民間委託のコスト比較のしくみと経費試算表
[ 00/12/31 委託・合理化 ]
東京都八王子市~民間委託が推進中断
東京都八王子市~民間委託が推進中断
東京都八王子市は、自校方式で小学校給食を行っています。70校の小学校のうち、
2000年には4校で民間委託がはじまり7校がこれまでに民間委託されました。
これに対して、「子どもたちのための学校給食を考える会」が99年に設立され、民間委託に対して反対の声を上げ運動を続けています。
また、この民間委託導入にあわせ、「学校給食あり方検討会」が八王子市によって設置され、民間委託の検証や、
学校給食の方向性について確立することになりました。メンバーは、教育委員会、学校長、労働組合、栄養士、調理員で構成され、八王子市は、
この検討会の結論を尊重する意向を示し、非公開で検討会が1年余り続いていました。「考える会」では、この間、集会、勉強会などを開いて、
栄養士、調理員らとともに、保護者、市民が直営を求めていることを訴え続けました。
このほど、検討会の結論が市に対して出され、新しくなった八王子市の市長も同意しました。
それによると、調理の民間委託では市内70校すべてが委託されたときにコスト削減効果があらわれ、
単年度では平成36年まで委託料により負担増となることが明らかになりました。その上で、
コスト削減効果をもたらしながら直営のメリットを生かすために従来の直営正規職員のみからパート職員(臨時職員)
採用することが最も望ましいという結論になりました。つまり、調理員の退職者分を正規職員の新規採用ではなく、臨時職員にするという方法です。
これで当面の民間委託導入はなくなりました。
なお、すでに民間委託されている7校については引き続き民間委託となります。
「考える会」では、この7校も直営に戻すための運動を続けるとしています。
(学校給食ニュース 2000.3)
[ 00/12/31 委託・合理化 ]
時事情報 2000 アレルギー関係
●アレルギー表示義務化食品
朝日新聞00年7月13日付では、厚生省が加工食品の原材料表示としてごく微量でも表示を義務づける24品目を紹介した。
急性で深刻なアレルギー症状を引き起こす可能性のある品目。なお、表示義務は包装された加工食品のみに限定される。品目は次の通り/卵、牛乳、
小麦、ソバ、エビ、ピーナツ、大豆、キウイ、牛肉、チーズ、イクラ、サバ、イカ、豚肉、鶏肉、サケ、モモ、カニ、オレンジ、クルミ、ヤマイモ、
リンゴ、マツタケ、アワビ(00.9.19)
●アレルギー原因の変化
朝日新聞00年6月24日付によると、厚生省研究班は、食品アレルギーの原因食材が変化していることが分かった。従来、卵、牛乳、
大豆が三大アレルギー食品と言われてきたが、食生活の変化で乳幼児の大豆(みそ、豆腐など)を食べる機会減少により、
大豆が原因となるケースが減っているという。代わりに小麦、ソバ、エビ、ピーナッツなどが新たにアレルギー食材として浮上している。また、
重症となる例では、エビ、小麦、ソバ、キウイなどが上位に上げられている。(2000年)
[ 00/12/31 アレルギー ]
時事情報2000年 民間委託関係
●香川県牟礼町で民間委託
四国新聞00年10月6日付によると、香川県の教育長は、牟礼町の県立高松北校に併設する高松北中学校の給食を民間委託する方針を明らかにした。
同校に給食設備は建設されないが、弁当方式ではなく生徒が配膳する方式になるという。また、食材購入などについても民間業者に委託する方針。
(00.11.20)
●岡山市、PTA委託調理のその後
山陽新聞00年9月1日付は、岡山市の学校給食調理民間委託について経緯をまとめている。それによると、岡山市は、
PTA組織が調理業務を請け負うPTA委託の試行を見送り、現在の直営調理に保護者が若干名加わるPTA参画の試行を7月下旬に打ち出した。
試行対象は2校で、1校は調理員2名と保護者2名、1校は調理員2名と保護者1名とすることで、
保護者からの参加を呼びかけたが参加希望者がなかったため他の学校の保護者が臨時職員として調理に加わることになった。引き続き、
2校のPTAと協議し、保護者の参加が得られれば試行に入るとしている。また、
岡山市は一方で富士フードサービスによる民間委託の試行を2校でスタートした。試行は2001年7月までを行い、3月末までの成果を見て、
岡山市学校給食運営審議会の評価を踏まえ2001年9月の本格実施を予定している。この一連の動きに、保護者からは反対の声が根強い。
(00.10.05)
●委託業者のニチダン、ISO9002取得
日刊工業新聞00年9月6日付によると、大阪市のニチダンは委託先の守口市立土居小学校など3校で、
給食の調理から配膳までのマニュアルと工程について品質管理の国際規格ISO9002を取得した。(00.09.19)
●民間委託20%になれば…
日本食糧新聞00年7月31日付は、給食受託企業のフジ産業(株)室伏雅永社長のインタビューを掲載した。それによると、現在、
同社では60カ所の学校給食調理を受託しているが、リスクは高く、利寿が少ない。現状は「調理人の人材派遣という感じ」であるとしている。
病院給食が委託率20%を超えたころ一般的な認知を得たので、学校給食も20%台になれば、食材の納入など、
新たな展開が期待できるという見通しを示している。また、当日配送、当日調理のシステムは、忙しく、うっかりミスを招くので、
冷凍冷蔵設備の完備による前日仕込みの導入が必要としている。(00.08.25)
●新潟県新津市、調理場改築をPFIで
建設通信新聞00年8月3日付によると、新潟県新津市は、衛生管理面などで施設更新が求められている西部調理場にPFIの導入検討を進めている。
それによると、建設から運営までを民間が行い、サービスを行政が購入する方法での導入についての課題整理を行っているという。
2001年度からの事業着手を考えている。
注:PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)とは、「公共施工等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、
公共サービスの提供を民間主導で行う」(日本PFI協会)ことであり、従来の公共事業と異なり、運営や資金計画なども民間が行い、
行政がサービスを購入するというような形をとる。今後、民間委託の新たな形として浮上してくるかも知れない。(編集)(00.08.25)
●民間委託受託強化の企業
日経流通新聞00年6月1日付によれば、大新東グループのエヌ・アイ・サービスは学校給食調理の民間委託受注を強化する。現在4校の受託だが、
2001年3月期中に新規受託を10校、2002年4月には30校に増やす目標を立てた。
同社の学校給食調理受託は98年東京地区の1校がはじめであるが、退職者不補充による委託化で市場規模がふくらむとしている。
(00.06.16)
●中部、愛知で民間委託の業界組織設立
日本食糧新聞00年5月29日付によれば、配食、調理事業を行う企業により中部学校給食サービス部会、愛知学校サービス協会が設立された。
当面は任意団体だが今後法人化し、主に行政、関係団体への折衝窓口や広報、会員拡大、代行保証制度の整備などを行うという。(00.06.16)
●練馬区、学校給食調理方式を見直し
東京新聞00年4月21日付によると、練馬区は2002年までに取り組む行政改革計画をまとめ、20日に発表した。そのなかには、
「学校給食調理方式を見直す」項目が加えられている。また、人員削減を大きな柱にしている。(00.5.9)
●岡山市のPTA委託、9月から
山陽新聞00年3月15日付によると、岡山市教育委員会は、4月より予定していた学校給食の民間委託、PTA委託の試行を9月に延期した。
すでに退職者不補充を行っているため、その期間はパート職員を採用する。(00.5.9)
●中国地方の民間委託問題
中国新聞00年4月9日付は、「食教育とどう両立、中国地方に見る学校給食の民間委託」と題した記事を掲載した。広島県海田町、廿日市市に続き、
三次市、呉市、岡山県岡山市などが相次いで民間委託の方針を打ち出している。三次市では、
3月に民間委託方針に対して反対するPTAらの集会が開かれた。また、同市では現在中学校5校中1校のみが給食を実施しており、
他校の給食開始が望まれているが弁当給食になるという見通しに質の低下が懸念されている。呉市は本年度から民間委託化。
東広島市は2001年度から自校方式をセンターに変え、将来は民間委託を検討。岡山市は退職者不補充をはじめている。(00.4.30)
●千葉県野田市、第三セクター方式
千葉日報00年2月29日付によると、野田市は自校直営方式の学校給食だが、今後市と民間による第三セクター方式での民間委託を行う方針。現在、
退職者不補充を行っており、99年度は1校で全職員を臨時職員化した。2000年度にはさらに1校で全職員を臨時職員にするとしている。なお、
これらをふまえ、同市では学校給食用政府米の補助廃止に対し、補助分を市の予算に計上した。(00.4.30)
●広島県廿日市市、民間委託のトラブル
中国新聞00年3月14日付けによると、広島県廿日市市は99年4月より給食センターの民間委託を行っているが、1年間のトラブルが相次ぎ、
保護者らから不安の声が出ている。2月14日には、1小学校で1.7cmの金属片が混入する事故があった。この1年間で、
毛髪や食品包装ビニール、小バエの混入、学校への遅配、食器の汚れなど数十件の事故報告がある。しかし、センターは事故情報を公開せず、
教育委員会も苦情処理をセンターにまかせているため、情報が事故を起こした学校以外に伝わらない。議会でもこの問題は取り上げられているが、
教育長は「すべての保護者に伝えるとかえって不安や混乱を広げかねない」と答弁している。(00.3.29)
●高知県土佐山田町の民間委託
高知新聞00年2月22日付によると、高知県土佐山田町は、町立学校給食センターの調理、配送業務などを民間委託する。同センターは、
小学校8校、中学校2校の10校、約1900食をつくる。町では、将来的に年3000万円の負担減になるとしている。同センターでは、
1度にすべてを調理できないため、2回に分けて調理しており、温かさ、衛生面での不安が指摘されている。実際に、95年に食中毒が発生している。
民間委託見直しを求める運動も続いている。(00.3.29)
●民間委託、岡山の場合
山陽新聞は、2000年2月に3回、「変わる学校給食~岡山市の改革」との特集を組んだ。その中で、
岡山市が2000年度から民間とPTAに調理業務一部委託を試行実施することを取り上げている。また、
調理場のある学校には全校配置されている栄養士も市費栄養士を退職者不補充で削減する方針。これに対し、PTA、市民、
労働組合などから反対の声が上がっている。(00.2.26)
●長野県茅野市の民間委託
信濃毎日新聞00年1月12日付は、「県政」と題し、民間委託を特集している。
茅野市は99年4月に第三セクターによる茅野市総合サービスを設立、市内の全小中学校に調理員約60名を派遣している。市、地の商工会議所、
諏訪みどり農協の出資で、市の温泉施設管理なども手がける。(00.1.27)
●長野盲学校の給食民間委託
信濃毎日新聞00年1月14日付は、県立長野盲学校の給食調理が4月より民間委託されることを報じた。給食90食および寄宿生用の朝食、
夕食を各約40食作る施設。(00.1.27)
●香川県庵治町、県下初の民間委託検討
四国新聞99年12月7日付によると、香川県木田郡庵治町は町内の幼稚園、
小中学校の学校給食を現在の直営の給食センターから民間委託する方針を打ち出した。早ければ01年春から民間委託にするという。
老朽化した給食センターの建て替えとの選択肢として検討されるもの。保護者、学校関係者からは懸念する声が上がっている。(00.1.27)
[ 00/12/31 委託・合理化 ]
2000年発行の主な内容
【2000年 学校給食ニュース】
00.01 ダウンロード
今月のトピックス 学校給食用手袋の材質に注意を 環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の恐れあり
事例報告 T・Tによる牛乳の栄養指導
00.02 ダウンロード
今月のトピックス 千葉県市川市で民間委託反対のうねり
00.03 ダウンロード
今月のトピックス 学校給食全国集会報告その1
記念講演:学校給食が食生活に与えた影響について 根岸久子さん
00.04 ダウンロード
今月のトピックス 学校給食全国集会報告その2
現地レポート報告:民間委託反対の現場から 民間委託では学校給食が発展・充実しない
現地レポート報告:地域で生産者と消費者を結び食の安全をどう守るか 地場型学校給食や食・農教育をどうすすめるか
現地レポート報告:おにぎり給食に込められたメッセージ
00.05 ダウンロード
今月のトピックス 若者の街・原宿の学校給食 渋谷区立原宿外苑中学校
00.06 ダウンロード
緊急特集 調理・配食現場での塩ビ製手袋のすみやかな使用中止を。
環境ホルモン(内分泌かく乱物質)のフタル酸エステルが高濃度で溶出します。
00.07 ダウンロード
今月のトピックス 学校給食調理とHACCP 衛生管理について考える
トピックス 問題山積の徳島市学校給食…食器・給食費
00.09 ダウンロード
今月のトピックス 学校給食民間委託の経費試算 考え方
インターネット版から 姫路市で、PC食器導入を強行…なぜ、いまさら
00.10 ダウンロード
今月のトピックス 遺伝子組み換え食品最新情報
00.11 ダウンロード
今月のトピックス 「牛乳」について考える 1
学校給食ニュースは、四者共闘が発行母体となり、全国学校給食を考える会が発行しています。
会員の方は、内容をダウンロードすることができます。購読(会員)については、http://gakkyu-news.net/jp/000/002/post_6.html をご覧ください。
[ 00/12/31 紙版ニュース ]
時事情報2000年 主に給食運営・施設設備
●加古川市、パック米飯を廃止
新潟日報00年11月14日付によると、加古川市は、県内唯一のパック式米飯を廃止し、来年度2学期よりおひつ式に改める。
味やごみ問題の面で問題があるため、保護者などから改善を求める声が上がっていたが、23年間パック式を続けてきた。(00.12.24)
●清水市で中学校完全給食実施へ
静岡新聞00年9月22日付によると、清水市は市内市立中学校14校に来年度から2年の計画で学校給食を実施する。これまでは、
4校のみが実施され、他10校はミルク給食だった。ただし、清水市行政改革推進協議会は、校外調理委託方式を答申。市の栄養士が献立をつくり、
委託業者が調理、盛り付けして学校に配送する方式としている。(00.10.27)
●長崎県西海町、共同調理場の改築完成
長崎新聞00年8月31日付によると、長崎県西海町の学校給食調理場が老朽化に伴い新センターとなり、完成した。小学校4校、中学校2校で、
計1200食をつくる。サラダ料理専用室が設置されている。(00.10.05)
●県学校給食会の苦悩~高知県
高知新聞00年9月25日付によると、高知県学校給食会は、経営危機に陥っている。原因はいくつかあるが、
直接的にはコメなど学校給食用指定物資への政府援助打ち切りで事務費が落ちなくなったこと。
運営経費の半分以上を国からの米の事務費に依存していたという。さらに、地産地消、
地場型給食の増加により地元の産品を県学校給食会を通すことなく直接学校・教育委員会らと生産者らが取り引きするため、
マージン収入も落ちている。99年度まで約7000万円あった運営費は2000年度に5000万円以下に落ち込んでいる。同会では、
職員の給与2割カットなどを実施。高知県は、小麦粉とパンの運搬費で年間108万円を負担しているだけで、今後、
県が学校給食会への対応をどうとるのか、注目を集めている。。(00.10.05)
●高知県中村市、給食実施への検討開始
高知新聞00年7月11日付によると、中村市は、小学校給食実施にむけた市学校給食基本計画策定検討委員会を発足させた。中村市では、
18小学校中1校のみが学校給食を実施している。市教委では、数校単位の親子方式、調理の民間委託を基本に平成14年(2002年)
の試行を目指したいとしている。(00.09.19)
●佐賀県江北町で、小1、中1の給食費を全額補助
佐賀新聞00年6月23日付によると、佐賀県杵島郡江北町では、保護者の経済的負担支援を理由に、小学校1年生、
中学校2年生の学校給食費を全額補助する。対象は約200名、本年度から施行し、2学期、3学期分の655万円を補正予算で計上した。
(00.07.10)
●静岡県由比町、学校給食センター落成
静岡新聞00年4月14日付によると、静岡県由比町の由比小学校内に建設中の学校給食センターが完成した。
老朽化に伴い建て替えられていたもので、5月より稼働する。1日1100食、町内の幼稚園、小学校、中学校4校に配食する。(00.06.16)
●千葉県岬町、給食センター完成
千葉新報00年4月11日付によると、岬町学校給食センターが新年度から稼働した。町内の4小学校、1中学校に1350食を配食する。
これまでは、自校方式だったが、老朽化などによりセンター方式に移行した。食器は瀬戸物。(00.06.16)
●京都市中学校弁当給食導入準備進む
京都新聞00年4月18日付によると、京都市の中学校給食等推進委員会は、中間報告をまとめた。京都市では小学校が自校方式であり、
中学校は民間委託による弁当給食が検討されている。中間報告では、寝棺の給食実施計画を学校長が決めることや、
献立作成委員会を設置することなど小学校と同等の方式を求め、また、食教育主任を設置することを求めている。本年度の施行対象校として、
配膳室用の空き教室などの状況から6中学校を選んだ。夏休み中に冷凍庫、保温庫などを設置し、改装、ランチルームも用意するという。
施行開始予定は11月。献立は、ごはん、おかず(主催1、副菜4)の弁当に、牛乳。弁当持参か、
給食かは1カ月前にメニューを配布し選択申込みとなる。(00.06.16)
●高知県物部村、県立校が村立給食センターの給食を
高知新聞00年4月19日付によると、高知県物部村の大栃高校は本年度より同村の学校給食センターの給食を生徒に配食している。
大栃高校は従来村内の業者が食堂を経営していたが採算難で撤退。村立学校給食センターは、現在小学校1、中学校1校に約200食を配食。
過去には400食を作っており、設備に余裕があった。そのため、県と村とで対応を協議、設備を分担して設置し、導入することとなった。
食堂の頃より利用率は上がっているという。献立は小中学校と同じ。(00.06.16)
●佐賀市でセンター方式に反対する集会
毎日新聞00年5月21日付によると、佐賀市で20日に学校給食を考えるシンポジウムが開催された。
佐賀市や大和町で学校給食を自校式からセンター方式に移行する動きに反対するもの。(00.06.16)
●横浜市、中学校弁当給食全校へ
神奈川新聞0年3月28日付によると、横浜市教育委員会は、
99年9月からモデル事業として22校で行ってきた予約による中学校の弁当給食をふまえ、
全校に自動予約発券システムを導入するためのシステム構築を検討する。2000年度には検討予算として約640万円を計上。(00.05.27)
●高知市、中学校給食試行に問題
高知新聞00年3月14日付によると、高知市が本年度予定していた弁当方式による中学校給食の試行は、
委託先業者が文部省の衛生管理基準達成のために負担が大きいとして実施の見通しが立たなくなった。同市は、
市の合併以前から給食を実施していた3校をのぞく13校で中学校給食が行われていない。99年3月議会では、親子方式と民間委託弁当方式の併用、
弁当持参選択制の実施方式を表明している。なお、親子方式については、1小学校-1中学校のみが試行できる準備が整っているという。試行は未定。
(00.5.9)
●新潟市、中学給食導入方針
新潟日報00年3月7日付けによると、新潟市議会で中学校給食を導入する方針が打ち出された。現在新潟市では4校が給食を実施しており、
他の26校は牛乳給食のみ。しかし自校直営か、民間委託、センター化になるかなどで議論は続いている。(00.4.30)
●米飯給食と牛乳…
朝日新聞00年3月29日付では、連載記事「モノわかりのいい話」の最終回で「米飯給食に牛乳どうして?」と題し、
米飯給食と牛乳の組み合わせについて問題提起した。記事の中では、米飯給食の和食献立を紹介した上で、そこに牛乳が組み合わせる不自然さを指摘。
これに対し、文部省学校健康教育課の金田調査官は「カルシウムの必要から牛乳ははずせない」「日本には古来、
飛鳥なべなど牛乳の乳を利用した献立もあり、米と牛乳の取り合わせがそんなにおかしいとも思えない」としている。一方で、
静岡市のように学校給食に温かいお茶を出しているところでは、
牛乳が大量に残るなどの問題があるが学校給食実施基準で牛乳を他の時間に配るなどの対処ができないため対応に苦慮している。(00.04.0)
●全電化学校給食センター完成
日刊工業新聞00年3月24日付によると、広島県甲奴町に全電化の学校給食センターが完成した。建設費1億9100万円、1日約500食。
4月より稼働する。(00.04.0)
●都内小中学校の給食費滞納増加
東京新聞1月21日付によると、大田区、葛飾区などで、給食費の滞納者が増加傾向にある。滞納者の増加による食材費の圧迫、
食材の変更などを区側は影響として指摘している。(00.3.29)
●高知市、中学校給食試行
高知新聞00年1月16日付によると、高知市は00年度より中学校給食の試行を行う。民間業者による弁当配送方式と、
家庭からの弁当の選択を認める選択方式を中心に、小学校給食との親子方式も試行する方針。ただし、親子方式は、
小学校調理場の改修で可能なところに限られるという。「高知市の学校給食をよくする会」は、自校方式を求める一方、
弁当では教育的意義が薄いとして反対している。高知市では2000年度内の試行によりその後の導入方針を固めるとしている。(00.3.29)
●長野県松本市の給食センター移転改築
建設通信新聞00年2月25日付けによると、長野県松本市は、現在市の中心部にあるふたつの給食センターを南北に分散し建設する。
2000年度単年度で第一給食センターを移転改築する。当初、規模は小学校約12000食となる。(00.3.29)
●東広島市センター化の具体案
中国新聞00年2月4日付によると、東広島市教育委員会は、市内28の小中学校給食を今後15年かけ、
6ブロックでセンター化するという具体的方針を明らかにした。各センターとも3000食前後を計画。配送を民間委託とする予定。また、
現在79人いる直営調理員を退職者不補充により50人ほどへ削減、将来は民間委託も視野に入れるという。同市のセンター化方針については、
すでに保護者らが約8000人分の反対署名を提出している。(00.2.26)
●京都市中学校給食を選択制で
京都新聞00年1月15日付によると、京都市教育委員会の諮問機関は、中学校給食導入に関し、自由選択制を取り入れることを答申した。また、
調理室を設けず、食材調達も含めた校外調理による民間委託方式が望ましいと答申した。2000年度中に複数の学校で試験導入する方針。
(00.2.26)
●前橋市、富士見村、広域センター建設へ
上毛新聞99年12月17日付によると、群馬県前橋市と隣接する富士見村は、前橋市北部共同調理場と富士見村給食センターの老朽化に伴い、
2004年度までに統合した給食センターを共同設置することで合意した。両市町村の16校、約8000食が対象となる。(00.2.26)
●甲府市、給食費値上げ
山梨日々新聞99年12月17日付によると、甲府市は、2000年4月から学校給食費を10%前後値上げすると発表した。小学校は9.59%
の値上げで月4000円、中学校は1食270円を300円にする。理由として消費税が3%から5%に引き上げられた際に値上げしていないことと、
輸入肉の国産化、遺伝子組み換え食品不使用などによるコスト増を上げている。(00.2.26)
●岡山市、給食経費削減方針
山陽新聞99年12月25日付によると、岡山市学校給食運営審議会は、5年以内を目標に給食経費を1食あたり約3割、
200円程度削減するように求めた中間報告書を提出した。民間委託、第三セクター、多機能化、PTAによる運営などを提示している。
(00.2.26)
●佐賀県大和町で給食室廃止に反発
佐賀新聞99年12月26日付によると、佐賀県佐賀郡大和町の松梅小学校で校舎改築に伴い給食室を廃止し、
他校の給食室で作られた給食が運ばれる親子方式への変更が打ち出され、保護者らからの反発を受けている。同校の給食は、
地域の要望で昭和35年に開始され、アレルギー対応食など様々な工夫をしており、地域からも同校の給食への信頼は深いという。(00.2.15)
●山梨県双葉町、給食センター新築で決定
山梨日日新聞99年12月3日付によると、山梨県双葉町は、
現在の給食センターとは別の場所に新しい給食センターを建設するための予定地を決定し、2000年度中の着工、完成をめざす。
当初外注方式への切り替えを検討していたが、保護者からは自校式を求める声が上がり、結果的に新センター建築となった。(00.1.27)
●世田谷区八幡中学校で選択制の試み
読売新聞00年1月13日付では、給食の選択制について取り上げている。
世田谷区八幡中学校では99年12月15日に給食と弁当の選択を試行した。全校生徒214人中、弁当は126人であった。
試行の背景には2年前からの議論があり、O-157の影響で生野菜が出ないなどの保護者からの苦情や、
99年1月と10月の異物混入を受けてPTAが試験導入を求め、校長が受け入れたため。2月にも1週間程度の試行を行うという。
世田谷区教委はとまどっているという。(00.1.27)
[ 00/12/31 施設設備 ]
調理・配食現場での塩ビ製手袋のすみやかな使用中止を
調理・配食現場での塩ビ製手袋のすみやかな使用中止を
学校給食ニュース2000年1月号で環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の溶出について指摘した塩化ビニール(塩ビ・PVC)製手袋について、
厚生省が2000年6月14日、緊急措置として食品への使用を避けるよう指導を通知しました。
この問題については、1998年の夏期学校給食学習会のとき、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)
問題についてお話しいただいた日本大学生物資源科学部の片瀬隆雄教授がはじめて取り上げられました。
会場から塩ビ製手袋の安全性について質問があった際、内分泌かく乱物質が溶出している可能性については調査が必要として、
お調べいただくことになりました。これについては、翌年の1999年の夏期学校給食学習会や学会で報告していただき、
学校給食で使用されていた塩ビ製手袋3種類から内分泌かく乱物質の可能性を示すデータが出ました。詳しく調べると素材にフタル酸エステル、
アジピン酸エステルが高い濃度で含まれていることが分かりました。これと相前後して他の研究結果なども各所から発表され、
ついには厚生省が食品衛生調査会の毒性部会・器具容器包装部会合同部会の審議にかけ、冒頭のような措置をとることになりました。
環境ホルモン(内分泌かく乱物質)については、ポリカーボネート製の食器から溶出するビスフェノールAの問題を取り上げてきました。
この運動の過程で、塩ビ製手袋についても一昨年から取り上げてきましたが、やはり安全性の問題がありました。
塩ビ製手袋はとても高い濃度で溶出しています。今回の厚生省の対応は、こうした運動の成果もありとても前向きな措置と言えます。しかし、
報道によれば、使い捨ての塩ビ製手袋は国内では製造されておらず、輸入品であり、また、今回の措置では製造、販売を規制するものではありません。
学校給食の調理場をはじめ、食品加工にたずさわるすべての人々、組織、企業がすみやかに対応することが必要です。
おりしも、食中毒のリスクが高まる時期です。病原性大腸菌O-157への対応で、
素手を使わず手袋を使って配膳するというところも多いと思います。衛生管理には十分配慮しつつ、
手をきちんと洗浄して手や食器具を使用して配膳することが望ましいことです。しかし、
どうしても使い捨て手袋を使用するのであればポリエチレン製などで素材のはっきりしたものを選択するなどの対応をとることが必要です。
また、今回は、加工した食品に直接触れる手袋であり影響が大きいのですが、手袋に限らず、食品と接する塩化ビニール容器などについても、
可塑剤としてフタル酸エステルなどが使用されていることが考えられます。調理場などでもう一度点検していただきたいものです。
(2000.7)
[ 00/12/31 環境ホルモン ]
学校給食用手袋の材質に注意を
学校給食用手袋の材質に注意を
環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の恐れあり
ポリ塩化ビニル製の調理、炊事用手袋には環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と疑われている物質が大量に含まれているようです。
食中毒対策として調理時などにポリ塩化ビニル製の手袋を使う調理場も多いと思いますが、食品への移行などが心配されています。
学校給食ニュースとして、これまでの研究や問題点を整理します。
●塩ビ製手袋には大量の添加剤が使われている
98年と99年の夏期学校給食学習会で環境ホルモン問題についてお話しいただいた日本大学生物資源科学部の片瀬隆雄教授は、
学校給食手袋3種類についてエストロゲン活性を調べ、さらに手袋に含まれる化合物とその濃度を調べられました。これは、
98年の学習会のときに会場から要請があった試験です。その結果は、以下の通りです。フタル酸エステル、
アジピン酸エステルが高い濃度で含まれています。
また、国立医薬品食品衛生研究所の研究員による研究報告「ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン製品中の残存添加剤」
(食品衛生学雑誌 vol40、平成11年3月11日受理)でも、ポリ塩化ビニル製の手袋に残存する添加剤を調査しています。調査は、調理、
炊事などと用途表示された手袋4検体によって行われました(下表)。これによると4製品とも主可塑剤として24~38%のDEHP
(フタル酸ジエチルヘキシル)が含まれていることが分かりました。さらに、アジピン酸エステル類のDEHAも3.9~17%含まれています。
可塑剤の残存量は34~55%と、全体の半分近くを占めています。この量は、塩ビ製ラップフィルムよりも多く、
さらに3検体からはノニルフェノールが検出され、
滑剤のステアリルアルコールと合わせて帯電防止のために界面活性剤が使用されていることも明らかになりました。
●環境ホルモン(内分泌かく乱物質)とは
環境ホルモン(内分泌かく乱物質)についておさらいします。人間や動物の身体では様々なホルモンが生命活動や成長、
生殖に深くかかわっています。それぞれのホルモンは必要なときにだけしか出ないようになっています。もしこのホルモンがむやみに出ると、
成長や生殖機能、生命活動に大きな問題をおこすからです。ところが、人間が人工的に合成した化学物質の中には、
このホルモンと同様の働きをするものや、ホルモンの働きをおかしくするものがあります。それがいわゆる環境ホルモンです。つまり、「内分泌
(ホルモン)」を「かく乱」する「物質」です。なかでも、女性ホルモンのひとつエストロゲンと同様の働きをするものが多くあります。
エストロゲンは卵胞ホルモンで、これに似た化学物質は生殖機能をかく乱します。とりわけ胎児の段階での影響が深刻です。
身体の中のホルモンはごく微量で働いています。だから、環境ホルモンもとても微量で影響を与えます。
これまで発がん性や催奇形性など生物に対する毒性は100万分の1の濃度「ppm」の単位で考えられてきましたが、
環境ホルモンは10億分の1の濃度「ppb」や1兆分の1の濃度「ppt」のレベルで影響を与えます。そのため、
環境ホルモンが問題になったのです。
現在、世界各国の研究者や国の研究機関などでどの物質が環境ホルモン(内分泌かく乱物質)なのかをつきとめる作業が続いています。
いくつもの候補が挙げられていますが、今回ポリ塩化ビニルの手袋から検出された物質はいずれも環境ホルモンとして疑いの強いものばかりです。
以下に、今回検出された化学物質の特徴と物質名をまとめておきます。
フタル酸エステル類:プラスチックの可塑剤として使われます。とくに塩化ビニール製品に多く使われています。
塩ビ製品がやわらかいのは可塑剤のおかげです。
DEHP(フタル酸ジエチルヘキシル)
DINP(フタル酸ジイソノニル)
BBP(フタル酸ベンジルブチル)
DEP(フタル酸ジエチル)など
アジピン酸エステル類:フタル酸エステル類と同じく可塑剤として使われます。とくに塩ビ製品で耐寒性可塑剤として使われています。
DEHA(アジピン酸ジエチルヘキシル)など
ノニルフェノール:界面活性剤として使われたノニルフェノールポリエキシエチレンなどが分解されてできます。
●調理・洗浄現場で移行の可能性
98年12月7日付の毎日新聞によれば、兵庫県西宮市で学校給食用ポリプロピレン製食器から、フタル酸ジエチルへキシル(DEHP)
が溶出した問題に対し、市は原因は食器ではなく食器洗浄時の塩化ビニール製手袋であるという結論をまとめました。昨年の食器溶出調査で、
ポリプロピレン製食器から検出され、その原因を調べていましたが、食器メーカーは可塑剤を使用していないため検出されるはずはないと主張し、
状況からも塩化ビニール製の手袋から溶出した化学物質が食器に付着し、その後溶出したという可能性が高いと考えられたものです。市では、
この結論の上で、天然ゴムや酢酸ビニール製の手袋に切りかえました。
また、前出の研究報告では、調理時の使用によって可塑剤が脂肪を含む食品に移行する可能性が指摘されています。
塩ビ製品は、燃やすことでダイオキシンの発生原因となり社会問題となっています。それ以外にも、ポリカーボネート食器で環境ホルモン
(内分泌かく乱物質)のビスフェノールAが溶出されるように、塩ビ製の手袋からも様々な環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の溶出が考えられます。
学校給食調理場をはじめ家庭などでも、調理、食器洗浄などに塩ビ製手袋を使用しているかどうかあらためて確認し、代替していくことが必要です。
(学校給食ニュース00/01号)
[ 00/12/31 環境ホルモン ]
姫路市で、PC食器導入を強行
兵庫県姫路市では、アルマイト食器を使用し、ごはん給食のときには、弁当箱を持参させています。
平成7年にポリカーボネート製食器の導入を決定し、平成8年に2校、9年に10校を導入しました。そして、
平成10年度に15校の導入を決定していたものの、ポリカーボネート製食器から溶出するビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌かく乱)
物質であるとの問題が浮上し、導入が1年延期されました。しかし、その後、平成11年に15校導入し、
平成12年の2学期からあらたに15校を導入するとしています。
保護者らから反対の声が上がる中、7月14日には、姫路市教育委員会が、保護者あてに「学校給食における食器改善事業について」
と題したチラシを配り、
【国(厚生省)の「使用禁止等の措置を講じる必要はない」との結論や姫路市独自で行った詳細な溶出検査等により、安全性を充分に確認し、
平成11年度には、15校に新食器を導入しました。そして、今年度は2学期から15校への導入を計画しております。
ビスフェノールAは、「1:食器から溶け出る量はほとんどない。2:有害とされているのは極めて大量に摂取した場合である。3:
環境ホルモン物質のダイオキシンやPCBなどと違い作用は弱く体内に蓄積もしない」とのことであります。】
などとしています。
さらに、ある導入される小学校ではPTA会長名義で、PTA会員あてとして「たのしい給食のための新しい食器導入に関する経過について」
と題するチラシを配布しています。
この内容を一部抜粋すると、
【この食器の導入に関しての、国(厚生省)、姫路市、姫路市連合PTA協議会の、導入検討経過を報告させていただくことに依り、
ビスフェノールA(専門学者曰く…一部学者が「環境ホルモン」の名のもとに一括していらぬ不安と混乱をおこしたもの)に対しての、
少しでも不安要素の解消になればと思っております】
としています。
このふたつのチラシは、あたかもビスフェノールAが環境ホルモン(内分泌かく乱)物質ではなく、安全だというように書いていますが、実際には、
ビスフェノールAが環境ホルモン物質の有力候補からはずされているわけではありません。また、厚生省の「使用禁止等の措置を講じる必要はない」
というのは、現状で、すぐに明らかな健康被害などが起こっているわけではないので、使用禁止などの行政措置を行う状況にはないということであり、
安全性が確認されたり、安全宣言が出ているわけではありません。さらに、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)は、
これまで検出が困難だったきわめて微量の量で妊娠期や長期的な暴露によって影響を受けるというものであり、これまでの急性毒性、
慢性毒性などとは違った考え方でとらえるべきものです。それを、「有害なのは大量摂取した場合」「作用は弱く体内に蓄積しない」などと、
あたかも安全のような表現をして、保護者に誤解を与えてまでも、ポリカーボネート食器を導入しようとする姫路市の意図が分かりません。
特に、兵庫県でも、ポリカーボネート製食器の導入には慎重な姿勢を示しており、
姫路市がきわだって突出した形でポリカーボネート製食器を導入する背景になにかがあるのではないか、疑問の目が注がれます。
これに対し、ポリカーボネート製食器導入に反対する保護者や市民らは、市長、教育委員会らに請願を提出したり、署名活動を行っています。
(読者からの情報を元に、編集サイドでまとめたものである 2000年)
[ 00/12/31 食器 ]
時事情報2000年
●大分県内、全市町村で非PC化
大分合同新聞00年9月4日付によると、大分県中津市が小学校給食食器をポリカーボネート製から強化磁器製に切り替えた。これにより、
大分県内全体で学校給食にポリカーボネート製食器を使用している地域がなくなった。(00.10.05)
●新潟市、複合素材食器へ移行
新潟日報00年7月22日付によると、新潟市は、従来のポリカーボネート製食器を、安全性の不安から予定より1年繰り上げて更新し、
素材を変更する。新素材は、内側がステンレス、外側がポリプロピレンとなった複合素材食器。10月下旬をめどに、36000個を用意し、
一斉に切り替える予定。なお、箸についても、樹脂製、木製が使われてきたが、樹脂製を利用していた15校も木製に切り替える。(00.9.19)
●PET樹脂の漆器食器
北国新聞00年7月26日付によると、山中漆器連合協同組合は、石川県工業試験場などと共同で、PET(ポリエチレンテフタレート)
樹脂を素材とした漆器食器を、給食用に開発した。金沢市が2学期から汁碗に使用。また、山中町、加賀市でも採用が予定されている。
(00.8.5)
●塩釜市、PC食器を廃止
河北新報00年7月25日付によると、塩釜市教育委員会は、2学期より現在使用しているPC(ポリカーボネート製)食器を中止し、
ポリプロピレン製の食器に切り替えることを決めた。8小学校、5中学校が対象で、更新費用は約1600万円。また、
強化ナイロン製のはしも導入する。(00.8.5)
●熊本の磁器食器導入
熊本日々新聞00年7月10日付は、熊本県内のふたつの自治体での磁器食器導入をまとめている。天草郡苓北町では、
98年にポリカーボネート製食器の見直しを求め、町民が地元産磁器を100セット寄贈した。2000年3月までに、町内5小学校、
3中学校で順次使用。重さや欠けるなどの課題を天草陶石研究開発推進協議会に改良依頼した。その結果、軽量化と欠けにくくすることができた。
また、建て替える共同調理場に3600万円で食器かごごと洗浄・殺菌・乾燥できる自動洗浄機を導入する。磁器食器1000組、
250万円の予算も計上した。共同調理場は11月末完成予定。天草町はメラミン製食器を使用していたが、地場の高浜焼きを97年度から導入し、
深皿、わん、小皿、どんぶりと年度ごとに順次切り替えた。総費用は約420万円。(00.8.5)
●ステンレス+ポリプロ食器
読売新聞00年7月7日付他によると、日新製鋼はエイブル、デンソンと共同で、食器の内面がステンレス、外面がポリプロピレンを利用し、
接着剤を使わずに接合した給食用食器を開発、本格的な販売に乗り出すと発表した。商品名はアネシス。(00.8.5)
●山形市学校給食センター、PCからポリプロへ
山形新聞00年3月31日付によると、山形市学校給食センターは、市内50校を対象に約24200食をつくっているが、2000年4月から、
ポリカーボネート(PC)製食器からポリプロピレン製食器に変更する。切り替え理由は「疑わしきは使用せず」とのこと。(00.4.30)
●大分県中津市、強化磁器のテスト
大分合同新聞00年3月2日付によると、3月1日、中津市北部小学校で強化磁器食器を使った試食会を開いた。児童にはおおむね好評であった。
同市は、ポリカーボネート製食器を使用しているが、98年にPTA連合などが3万人の署名を添えて切り替えを要望。検討の結果、
強化磁器の導入が決まった。早ければ2000年度9月から小学校全11校で導入される。なお、同市の給食はセンター方式。(00.4.30)
●北海道内、PC製食器173校減
北海道新聞00年3月15日付によると、北海道内の学校給食でポリカーボネート製食器を使用している学校は、99年度583校となり、
前年度より173校減った。なお、北海道教育委員会は、PC製食器の安全性や使用の是非についての指導を行っていないが、「保護者の不安解消」
のためとして、更新時にPC製以外を使用するよう呼びかけている。(00.3.29)
●山梨県上野原町、強化磁器を導入
山梨日々新聞99年12月17日付によると、山梨県上野原町の2小学校で使用されているポリカーボネート製食器を更新期である2001年度、
2002年度にあわせて強化磁器に変更する方針を示した。(00.2.26)
[ 00/12/31 食器 ]
学校給食調理とHACCP 衛生管理について考える
2000年6月末、雪印乳業の大阪工場が原因となった食中毒事件は、被害者数14000人を超え(2000年7月12日現在)、
さらに拡大しています。また、この事件調査がきっかけとなり、雪印乳業における衛生管理上の問題が明らかになり、大きな社会問題になっています。
学校給食の現場でも、雪印乳業の全牛乳処理工場・加工乳製造工場が一時自主的に閉鎖されたため、給食用の牛乳が調達できない、あるいは、
乳製品などの代替品を探さなければならなくなり、各地で混乱が起きています。牛乳のかわりに飲むヨーグルトを出したり、あるいは、
お茶を出したり、水筒持参を呼びかける学校も出ていました。
この事件で、気になったのは、雪印乳業大阪工場がHACCP認定工場であり、
HACCP認定工場だから大丈夫だという思いこみが被害の拡大の一因にもなったという点です。
その後、厚生省は、雪印乳業大阪工場のHACCP認定を取り消しました。
学校給食の調理現場では、1996年の病原性大腸菌O-157による食中毒事故をきっかけに、衛生管理についての議論が高まりました。
文部省より97年4月に「学校給食における衛生管理の改善充実及び食中毒発生の防止について」という通達が出され、
衛生マニュアルとして全国の調理場に徹底するよう指示が流されました。また、平成9年からは、
厚生省によって4つの学校給食センターと3つの自校調理場をHACCP導入調理場として試験導入し、
3年間かけて学校給食調理場におけるHACCP導入について試行されています。
HACCPの単語は、学校給食調理に関わる人にとって、聞いたことはあるものの、必ずしも身近なものではないようです。
HACCPとは何か?
HACCPを学校給食調理場に導入できるのか?
HACCPを学校給食調理に導入する意味はあるのか?
1学期が終わり、これから調理場の清掃や設備改善を迎える時期に、衛生管理について考えてみませんか?
●HACCPとは何か?
「ハサップ」や「ハセップ」と呼ばれるHACCPですが、HACCPはHazard Anaiysis and Critical
Control Pointsの略語で、危害分析(HA)と重要管理点(CCP)による衛生管理の方法です。もともとは、
絶対に食中毒を起こしてはならない宇宙飛行士の宇宙食をつくるために考えられた衛生管理ですが、その後、
アメリカでは加工食品製造や外食産業などを中心に取り入れられています。
一般的に、これまでの食品加工では、最終製品の一部を抜き取って安全性を検査する方法をとってきましたが、HACCP方式では、
食品加工の工程の中で、たとえば加熱によって食中毒菌を滅菌するなどの衛生管理上重要な工程を重点的に管理することで、
すべての最終製品の安全性を保証しようという考え方です。
HACCPのHA(危害分析)は、食中毒原因となる微生物だけではなく、魚のヒスタミンや、
混入したり製造過程で含まれる可能性のある化学物質による危害、物理的な危害も含めて、食品や製造・調理過程で含まれる可能性について原因と、
危害発生を防止する方法を分析するということです。この分析をした上で、CCP(重要管理点)を確認します。重要管理点は、
危害分析で明らかになった危害発生を防止するために管理すべき重要な工程・手順のことです。
HACCPには、7つの原則と12の手順があります。
【7つの原則】
原則1 危害分析(HA)を行い、防止対策を確認する。
原則2 重要管理点(CCP)を決定する。
原則3 重要管理点のそれぞれに適切な管理基準を定める。
原則4 重要管理点のそれぞれに管理・監視・測定方式を定める。
原則5 重要管理点ごとの修正措置、改善措置を定める。
原則6 記録保存方法を定める。
原則7 検証方法を定める。検証には、生物学的検証、化学的検証、物理的検証、官能的検証も含まれ、それぞれに基準を設定する。
【12の手順】
手順1 専門家チームを編成する。責任者が品質管理や製造管理などとともにトップダウンできるチームを作る。
手順2 対象の食品の性質などを説明する記述する。
手順3 対象の食品がどのようにな人に、どのように食べられるか仕様について記述する。
手順4 製造工程一覧図、施設の図面及び標準作業書を作成する。
手順5 製造工程一覧図を現場で確認する。
手順6 危害分析(原則1)
手順7 重要管理点設定(原則2)
手順8 管理基準設定(原則3)
手順9 モニタリング方法の設定(原則4)
手順10 改善措置の設定(原則5)
手順11 検証方法の設定(原則6)
手順12 記録の維持管理(原則7)
手順の7から12がHACCPにあたる部分です。手順の1~5は、HACCPの前提であり、一般的衛生管理プログラム(PP:
Prerequisite Program)と呼ばれるものです。ここでは、施設設備が衛生的か、設備類の洗浄・殺菌・保守などが適当か、
調理者の衛生管理や適切なトレーニングが継続的に行われているかなど、一般的に必要な衛生管理の部分です。基本的に、
この一般的衛生管理プログラムがきちんとできており、実施されていれば、HACCP方式のCCP(重要管理点)
で管理項目を少なくすることができます。逆に、どんなにHACCP方式での衛生管理を行おうとしても、
その前提である一般的な衛生管理が充分に行われていなければ、HACCP方式は機能しないということになります。
例えば、雪印乳業大阪工場での低脂肪乳(加工乳)による食中毒事件は、まだ調査中ですが、報道を見る限り、
一般的衛生管理プログラムの内容である日常的に行わなければならない設備類の洗浄工程が充分ではなかったことが原因のひとつとされています。
つまり、雪印乳業大阪工場の衛生管理の実態は、HACCP方式以前の問題であったと言えます。さらに、実際に食中毒が発生した後の対応は、
HACCP方式では、手順1の専門家チームによるトップダウンによる情報公開、
記録確認によるすみやかな事故原因の解明と改善などが求められていますが、まったく対応できなかったため、食中毒の被害を拡大し、また、
雪印乳業への信頼を大きく失う結果になりました。
●食品会社でのHACCP認証 (日本型HACCP)
近年、加工食品のパッケージに「HACCP認証工場で製造された」などの表示を見かけるようになりました。
1995年5月の食品衛生法改正により、総合衛生管理製造過程の承認制度が導入されました。
この総合衛生管理製造過程がHACCPに基づいたものです(食品衛生法第7条3)。この認証制度により、食品製造所は、
加工場ごとに厚生省の認証があればHACCP認証工場としての製造が可能になります。
一般的な食品衛生管理との違いは、一般的な製造方法の場合、製造基準の遵守や食品衛生管理者の設置義務があり、また、
できあがった製品の一部について微生物などの検査を実施します。しかし、HACCP認証を受けた場合、
HACCPによる衛生管理が優先されるため決められた製造基準通りでなくてもよくなります。さらに食品衛生管理者の設置義務も免除されます。
これは、総合衛生管理製造過程の承認を受けた製造方法ならば、製造工程全体を通じて食中毒などの危害が発生しないよう対策がとられており、
製造基準よりも安全性は高いという判断があるためです。また、製造工場への製造方法の規制緩和であるともされています。ただし、
ある会社が一括して認証をとることはできません。あくまでも、製造品目・加工場別に申請し、承認を得ることになっています。
●学校給食の衛生管理と HACCP
95年の食品衛生法改正による総合衛生管理製造過程認証の導入によって、食品製造業へのHACCP導入がはじまりました。その後、
1997年3月には厚生省の食品衛生調査会食中毒部会によって、「大規模食中毒等対策に関する検討結果」がとりまとめられ、
「大量調理施設衛生管理マニュアル」が作られました。
マニュアルの趣旨には、
「本マニュアルは、集団給食施設等における食中毒を予防するために、HACCPの概念に基づき、調理過程における重要管理事項として、
(1) 原材料受入れ及び下処理段階における管理を徹底すること。
(2) 加熱調理食品については、中心部まで十分加熱し、食中毒菌を死滅させること。
(3) 加熱調理後の食品及び非加熱調理食品の2次汚染防止を徹底すること。
(4) 食中毒菌が付着した場合に菌の増殖を防ぐため、原材料及び調理後の食品の温度管理を徹底すること。
等を示したものである。
集団給食施設等においては、衛生管理体制を確立し、これらの重要管理事項について、点検・記録を行うとともに、
必要な改善措置を講じる必要がある。また、これを遵守するため、更なる衛生知識の普及啓発に努める必要がある。
同一メニューを1回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設に適用する」
とあり、学校給食調理場も視野に入れたものです。
この「大量調理施設衛生管理マニュアル」を受けた形で、1997年4月には文部省体育局から
「学校給食における衛生管理の改善充実及び食中毒発生の防止について」の通知が出されます。「学校給食衛生管理の基準」です。
「学校給食衛生管理の基準」の問題点については、『学校給食ニュース2号(1998年5月号)』で特集しています(ホームページでも掲載)。
さらに、学校給食調理場にHACCP方式を導入しようという動きが加速しています。
食品衛生調査会常任委員会は1997年6月の「今後の食品保健行政の進め方について報告書」の中で、
「これまでの大規模食中毒が学校給食施設等の大量調理施設が原因となったことが多いことから、
これらの施設における衛生管理の強化が不可欠である。このため、
調理過程においてもHACCPの考え方を踏まえた衛生管理手法を導入することを検討し、試行的事業の結果を踏まえ、
実行可能かつ効果的な手法の開発が必要である。この場合、床面乾燥方式(ドライシステム)の調理場や一括調理後、急速冷蔵、冷蔵保存、
再加熱を行う調理方式(クックチル方式)などの新しい方法についても、その有効性の検討を踏まえ、積極的な導入を図ることを考慮すべきである。
また、これらの衛生管理手法の開発とともに、学校給食施設や病院等の給食施設について、今後、
食品衛生法による規制の導入も含めた抜本的な規制方策の検討が必要である」
としており、1997年からの3年間、7つの学校給食調理場をHACCP試験導入調理場としてHACCP計画の立案、試行、
検討を行っています。
【HACCPの導入調理場】
北海道新篠津村学校給食センター
山形県鶴岡市学校給食センター
埼玉県東松山市学校給食センター
愛知県稲沢市立稲沢中学校
兵庫県明石市立貴崎小学校
岡山県久米郡旭町立旭小学校
宮崎県清武町学校級食センター
●HACCPは必要か?
学校給食調理場の衛生管理については、HACCP方式による衛生管理手法を検討する以前ともいえる問題があります。
学校給食調理場の多くは、施設設備の改善が進んでおらず、
衛生管理上の汚染区域と非汚染区域を分ける工夫が単なる赤と黄色の線だけであったりと、現実味に乏しく、
調理現場の実態にそぐわない衛生管理指導も見受けられます。
学校給食の実施主体である地方自治体は、財政難を理由に、施設設備の根本的な改善を先延ばしにする傾向にあります。また、
直営調理員をパート化したり、調理業務の民間委託をすすめていますが、これも衛生管理では問題があります。
民間委託は少数のチーフ以外はパート労働者を使うことでコストを下げます。低賃金で厳しい労働においては、勤続期間が短くなります。
直営のパート化や調理の民間委託化は、調理者の熟練化ができません。一般的な衛生管理でも、HACCP方式の衛生管理でも、
衛生管理についての知識と技能修得は実際の調理業務だけではなく、継続して研修などを行い、繰り返し行う必要があります。
HACCP方式は衛生管理としてきわめて高度なシステムと言われますが、一方で、いくつかの問題点をかかえます。たとえば、
HACCP方式で調理された半完成の加工食品を使うようになり、地場産の野菜や卵などが「非衛生的」
として排除される動きを生む可能性があります。教育としての学校給食の質が著しく低下することになります。
「大量調理施設衛生管理マニュアル」の野菜等の保管では、中性洗剤による洗浄と次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムが規定されており、
残留化学物質の問題など、食中毒以外の心配が出てきます。成長過程にある子どもに供する学校給食だけに、
これら化学物質残留の問題は無視できません。
さらに、学校給食の調理は、他の大量調理施設と異なり、毎日、違う献立を大量につくるという特徴があります。毎日献立が違うということは、
調理ごとに重要管理点の一部が変わることになります。HACCPの導入には、適切で高度な施設設備や調理員の理解など多くの問題を抱えます。
最後に、仮にHACCPの導入=食中毒が起こらないということが誤りであることを、今回の雪印乳業大阪工場の食中毒事件が明らかにしています。
マニュアルをつくるのも人間ならば、衛生管理を行うのも人間です。
HACCPにも良い点と欠点があり、今のHACCPをそのまま学校給食調理に取り入れることは、
学校給食の教育としての幅を狭めることになりかねず、慎重な対応が必要です。しかし、食中毒を発生させない衛生管理は学校給食の前提です。
今後も、教育としての学校給食だという視点を持ちながら衛生管理について議論していく必要があります。
【参考:大量調理施設衛生管理マニュアル】(厚生省ホームページ内)
http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/0903/h0317-3.html
(学校給食ニュース 2000年7月)
[ 00/12/31 衛生管理 ]
時事情報 2000年 衛生管理・食中毒関係
●名古屋市の小学校で食中毒
新潟日報00年9月26日付によると、名古屋市守山区苗代小学校で9月25日、4人が給食を食べて腹痛を訴えた。担任が給食の
「マグロと野菜のマヨネーズかけ」から異臭がして舌がしびれたので児童に食べないよう指示したが、
すでに同クラスの36人中13人が口をつけており、4人が腹痛を訴えたという。(00.11.20)
●埼玉県朝霞市で異物混入
産経新聞00年9月26日付によると、埼玉県朝霞市の小学校で4年生の給食のパンから長さ4センチの針が1本見つかった。埼玉県学校給食会では、
99年3月頃に同様の事件が相次いだためすべての工場に金属探知器を設置し、各校の配膳室に鍵をかけるよう要請している。(00.11.20)
●大分市、主要3業者にパン・ご飯の納入停止
大分合同新聞00年9月22日付によると、学校給食の異物混入などが問題になっている件で、大分市教委は、
これまで県学校給食会の対応を見守っていたが、9月21日に、大分市の3業者に対し納入停止を指示した。
3業者はいずれも9月14日以降にも異物混入を起こしていた。現在、大分市は5業者からパンやご飯の納入を受けているが、3業者がパンで約9割、
ご飯で約6割を占めているだけに、別の業者選定などに追われている。(00.10.27)
●磐田市の異物混入、加工製造業者が原因
静岡新聞00年9月13日付によると、磐田市の学校給食で金属片が混入した問題は、調査の結果豆腐製造業者の施設で起きたものとの結論がでた。
これにより、一時中止していた学校給食センターの運営を再開した。(00.10.27)
●富士宮市、学校給食再開
静岡新聞00年9月20日付によると、学校給食による集団食中毒を発生させた富士宮市立学校給食センターに出されていた業務禁止命令が解除され、
学校給食は1週間ぶりに再開された。なお、保健所の指導に基づき、市は冷房設備の改善、
施設設備の交換などの予算措置を補正予算として計上する予定。食中毒の原因食材、原因物質は現在のところ不明のまま。(00.10.27)
●大分市内でパンの異物混入多発
西日本新聞00年9月12日付によると、
大分市内の小中学校で99年4月から2000年9月にかけて学校給食用パンなど食品製造会社5社の製品で、ゴキブリ、針金など異物混入があり、
合計34回に上っていることがわかった。また、大分市教育委員会や大分県学校給食会は、この事実を県に報告しなかった。
今回の発覚で県は事実関係の調査に乗り出した。。(00.10.05)
●福岡県の保育所でO-157
時事通信、00年9月11日付によると、福岡県朝倉郡内の保育所で園児128人、職員ら計163人中、園児38人、
職員ら2人の計42人が病原性大腸菌O-157に感染していた。下痢などの症状が出たのは9人、症状は改善した。福岡県健康対策課は、
保育所の給食が原因ではないかと調査している。(00.9.19)
●食酢殺菌で生野菜
北海道新聞00年7月3日付によると、北海道日高管区内の静内町学校給食センターは、6月中旬、4年ぶりの生野菜としてミニトマトを出した。
児童からの要望や地元の農協からの要望に応えてのこと。しかし、それ以外の生野菜・果物は衛生面を考え出せないという。また、
同管区の浦河町と新冠町では、食材を酸度3%の食酢に10分間漬けて殺菌し、水洗いして出す方法で、野菜や果物を生で出している。
ドレッシングやマヨネーズの酸味と同じ味なので、食べる際に気にならないとしている。(00.8.25)
●横浜市、製造業者未確認の食材使用
産経新聞00年8月16日付によると、横浜市では、学校給食食材を市の学校給食会に委託しているが、乾燥うどんについて、市教委、給食会とも、
製造業者を確認しないままに使用していた。乾燥うどんは、横浜刑務所で製造し、市内の食品問屋を経由、市麺業協同組合を通して、
市給食会が購入していた。製造ラベルには公共施設工場での製造となっていたが、給食会、市教委とも、未確認で、
他の食品工場には行っている食品製造工場承認基準に基づく立ち入り検査も実施していなかった。(00.8.25)
●東京都、学校給食施設も届け出制に
厚生福祉4847号、00年7月5日付によると、東京都食品衛生調査会は、
食品衛生法で保健所長の営業許可を必要としない学校などの集団給食施設についても届け出を義務化、施設や管理運営基準を定め、
改善命令や罰則規定を盛り込む条例設置などを提言した答申をまとめた。都は、関係機関と協議の上、
食品製造等取締条例改正案を2001年議会に提出する方針。(00.8.5)
●衛生管理が地場産を難しく
日本農業新聞00年7月4日付によると、宮城県角田市は、地域農協の呼びかけで週5日の完全米飯給食を70年代に実施するなど、
地域とのつながりが深いとされ、地場産農産物使用の方針も立てているが、近年の衛生管理により地場産導入が難しく、頭を痛めている。
角田市学校給食センターでは、衛生管理のため、生野菜は出さず、サラダも加熱調理している。また、果物は、
塩素消毒液に5分浸せきさせるなど規制のため、カット野菜や工場で殺菌消毒されたパックイチゴを使用しているという。そのため、
地場産の農産物使用は困難だとしている。(00.8.5)
●青森市で虫ピン混入
陸奥新報00年3月3日付によると、青森市の長島小学校で2月28日、1件の虫ピン混入が発見された。ケガはなかった。
同市の給食はセンター方式。なお、同市の小学校では、99年3月に2件、7月に1件、縫い針が混入している。(00.4.30)
●堺市O-157、市と健保組合の調停成立
朝日新聞00年4月5日付によると、96年の病原性大腸菌O-157による学校給食集団感染で医療費を給付していた3府県の健康保険組合が、
原因は市の学校給食にあるとして、市に対し約8000間年の賠償を求めていた件に対し、
堺市側が一部を除く計6300万円を組合側に支払う方針を伝えたことで調停が成立した。(00.4.30)
●滋賀県愛知川町で食中毒?
読売新聞他、00年3月18日付によると、滋賀県愛知川町立愛知川東小学校で16日夜から、おう吐、発熱、下痢などの異常を127人が訴えた。
16日の給食時をさかいに起きているが、同給食は町内の学校給食センターで調理されている。他の学校や幼稚園での報告はなく、食中毒、異物混入、
感染症など原因の特定を急いでいる。(00.04.08)
●大阪市阿倍野区で食中毒?
読売新聞00年3月18日付によると、大阪府阿倍野区市立晴明丘南小学校で17日、児童約110人が体調不良を訴え、
吐き気や下痢で74人が欠席した。全校児童が16日の給食を食べている他、
6ねんせいは15日に茶話会でサンドイッチやシュークリームなどを飲食している。食中毒、感染症の両面から調査している。(00.04.08)
●石川県田鶴浜町の食中毒
産経新聞00年2月20日付けによると、石川県田鶴浜町の田鶴浜小学校で児童67人、教員3人が下痢や吐き気などの食中毒症状を訴えた。
田鶴浜町学校給食センターでの給食を原因とみて、保健所が調べている。(00.3.29)
●福山市の集団食中毒、小型球形ウイルス
山陽新聞99年12月20日付によると、広島県環境保険センターは、99年12月に広島県福山市の1小学校、1幼稚園で発生した集団食中毒は、
小型球形ウイルス(SRSV)が原因であると断定した。冬場に多く発生しやすく、おう吐、下痢、発熱などの症状があり、
比較的軽度な食中毒原因とされる。今回の最終的な発症者は217名。親子方式の給食が原因食材であった。(00.2.26)
●厚生省、衛生管理の問題指摘
朝日新聞、読売新聞00年1月25日付によると、厚生省の学校給食施設一斉点検の結果、衛生管理の改善が進んでいないことが分かった。加熱食材、
非加熱食材、器具を洗うシンクを分けていない、センターでの配送時に温度管理ができていない、手洗い設備の不備などが指摘され、
厚生省は各都道府県に改善を指示した。(00.2.26)
[ 00/12/31 衛生管理 ]