学校給食ニュース

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2017年9月の短針

●福岡県直方市、中学校弁当併用デリバリー給食

福岡県直方市は、2017年9月より、中学校の学校給食について、家庭弁当併用のデリバリー方式で開始する。1日単位の事前予約制で弁当箱方式だが汁物がつく。献立は教育委員会の管理栄養士が作成、食材も教育委員会が調達するとしている。箸、スプーンも用意される。
予約は、インターネットとマークシート方式の併用、インターネット予約は1週間前まで変更可能であるが、マークシート方式は前月15日までに1カ月分を予約。1食300円(牛乳含む)。
弁当持参の場合、牛乳のみの予約も可能となり、牛乳も実質上選択制となっている。
アレルギー対応は特別には行わず、表示や、ナッツ類、そば、キウイを使用しないなどの対応と特定原材料の表示を行うこととなっている。

直方市の中学校給食
http://www.city.nogata.fukuoka.jp/kyoikubunka/_1214/_2003/_2466/_4252.html


●川崎市、中学校給食15000食の南部センター完成
川崎市が進めている中学校給食実施について、3つの大規模学校給食センターがPFI方式で準備されているが、南部学校給食センターが完成し、9月より22中学校での中学校給食がはじまる。食数規模は15000食。
なお川崎市では先行して、1月より2中学校が自校方式、1中学校が小学校との親子方式での学校給食を開始している。いずれも調理は委託。

学校給食センターの整備等事業(PFI)について
http://www.city.kawasaki.jp/880/category/9-11-4-0-0-0-0-0-0-0.html


●佐賀県多久市、センターで児童が調理体験

佐賀県多久市学校給食センターは、1997年から財団法人として現在は2000食の小中学校給食を実施。夏休み中には、児童を募り、センターでの調理体験などを実施している。なおセンターで米飯炊飯を行い、食器は有田焼の強化磁器。

多久市学校給食センター
http://www.taku-kyusyoku.or.jp/


●佐賀県太良町、新給食センター完成
佐賀県太良町は、学校給食センターの建替えを行っており、このほど完成、2017年9月より新センターが稼働する。小中学校焼く780食。
同町は、小中学校の給食費完全無償化を実施しており、また、「たら産うまかもん給食支援事業」でのステーキ提供などで話題となっている。

太良町学校給食センター
http://www.town.tara.lg.jp/unit/_1862.html

太良町観光情報(FB)
https://www.facebook.com/tara.kikaku.kankou/posts/1556299037765747

[ 17/09/01 紙版ニュース ]

[ 17/09/01 取材メモ・リンク ]

2017夏期学校給食学習会報告

夏期学校給食学習会報告


夏期学校給食学習会は、全国学校給食を考える会が主催して行う、学校給食に関する学習会です。食の安全、給食のあり方、合理化問題、環境、貧困など様々な学校給食を取り巻く問題について専門家や実践者の話を聞き、意見を交わす場です。全国の栄養教職員、調理員、教職員、保護者や地方議会関係者などが参加しています。今年は、2017年7月25日火曜日、東京都中央区立月島社会教育会館ホールにて開催しました。
その内容について簡単にまとめるとともに、参考資料等を紹介します。
(文責 学校給食ニュース編集責任者 牧下圭貴)

●プログラム
「学校給食で菌・ウイルスの食中毒を防ぐために」里見宏さん(健康情報研究センター)
「すべての子どもたちに学校菜園を」堀口博子さん(一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン)
「地域で育む学校給食」小櫛和子さん(富士市学校給食を考える会)
「子どもの貧困と食生活格差-学校給食の意義を考える-」鳫咲子さん(跡見学園女子大学マネージメント学部 教授)
「学校給食の課題 合理化、安全、おいしさ、手間、コスト」牧下圭貴(「学校給食ニュース」編集責任者)

●「学校給食で菌・ウイルスの食中毒を防ぐために」
里見宏さんは、長年に渡り、学校給食関係者や養護教諭に公衆衛生学の立場から、子どもたちに「教育」することと、自分たちの仕事のあり方についての視点を投げかけ続けています。学校給食についても、「やっていること、食べさせているものなどについて、子どもたちに教育として、きちんと説明できる必要がある」と繰り返し提起し、「手洗い」(洗浄)ひとつとっても、なぜそれをやるのか、手洗いすることで、菌やウイルスはどうなるのか、衛生管理基準通りにやればいいというものではなく、その意味や科学的な根拠について持っておく必要があることを説明します。
その上で、いまの衛生管理のあり方、医療現場などですすむ新しい衛生管理手法や、ノロウイルス対策に見られるような「いま分かっていること、分かっていないこと」を踏まえた対策の変化などについて説明し、新しい研究成果などを知っておく必要があります。
例えば、調理員の月2回以上の検便について、文部科学省の学校給食衛生管理基準では月2回以上、厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは月1回となっています。検便を1回増やすと食中毒が予防できるのか、検便すれば食中毒が防げるのであれば、毎日でも検便した方がいいことになります。一方で、毎日の健康チェックと月2回以上の検便をすれば調理員が調理場で給食を食べてもいいということになっていますし、食中毒が起きたときの原因特定によいということです。ということは、検便が食中毒予防ではなく、原因追及のひとつということになります。
そういうふうに「なんのため」なのかを考え、基準のあり方や給食の現場でやっていることを捉えなおすことの大切さを、里見さんは様々な研究成果や事例を踏まえて投げかけます。
また、ノロウイルス対策で塩素(次亜塩素酸ナトリウム)の過剰使用となっていることや、アルコールの効果がないといった不正確な情報が広がっていること、「手洗いさえすれば食中毒は予防できる」という誤った教育にもつながりかねないことなどを指摘し、次亜塩素酸ナトリウムは安くても人体への危険性も高く、アルコールの使用はWHOのガイドラインでも望ましいとなっていることを紹介しています。
こういったことについて、学び、考え、給食現場での対策のあり方、基準のあり方、教育のあり方について議論し、改善を繰り返していく必要があります。

里見宏さんプロフィール
里見宏
1947年生まれ。健康情報研究センター代表。公衆衛生学博士。
国立予防衛生研究所食品衛生部にて殺菌料、石油蛋白、亜硝酸塩、照射食品、食品添加物などの毒性研究を行う。
東京大学医学部の高橋晄正氏とアメリカとヨーロッパのフッ素実態調査を行う。
国立公衆衛生院疫学部客員研究員として、インフルエンザワクチンの効果、魚の脂肪とアレルギー、川崎病、タバコ、アスベスト、カドミウム、子どもの骨折、難病などの疫学調査を行う。和光大学講師、聖心女子大学講師、東京都特殊疾病実態調査委員などを歴任。
看護学校、助産師学校、保育士学校で、公衆衛生、研究の理論、情報科学などを担当。
全国学校給食を考える会顧問、照射食品反対連絡会世話人など。
主な著書として「食育!いちばんヤバイのはこどもなんだぞ」「歯医者さんでは教えてくれないフッ素の話」(ジャパンマシニスト社)、「身近にひそむ環境ホルモン・ダイオキシン」(金の星社)「学校給食教材化マニュアル」など29冊。

健康情報研究センター
http://www.sih.jp/news/k_menu.htm

照射食品反対連絡会
https://sites.google.com/site/noshousha/home

 

●「すべての子どもたちに学校菜園を」
エディブル・スクールヤード・ジャパンは、スローフードや有機農業で知られるアリス・ウォータースさんが1995年、カリフォルニア州バークレーにある公立中学校の校庭に創設した「必修教科+栄養教育+人間形成」を柱とした学校菜園の教育プログラムです。
エディブル・スクール・ヤード代表の堀口博子さんと共同代表の西村和代さんは2006年「食育菜園 :エディブル・スクールヤード マルティン・ルーサー・キングJr中学校の挑戦」の翻訳、現地取材などを通じてこの取組みを学び、日本でも学校菜園づくりと、それを活用した教育についての取組みをはじめています。
アメリカでは、リーマンショック後、自動車産業の町、デトロイトが衰退する中、都市農園をつくる動きが始まり、サンフランシスコ、ニューヨークなどでも同様の動きがみられています。バークレーの小中学校にはすべて学校菜園があり、必修科目として菜園作りと食、五感を通じた教育活動が行われています。その背景には、1990年代に、学校が荒廃し、人種差別や経済格差、校内暴力、いじめ、健康被害、肥満や糖尿病といった問題が広がり、その根源に「食」のあり方があるのではという問いと、食生活を改善する教育は学校が担う必要についての認識があったようです。
現在、日本でも「食育」が取り組まれていますが、食を学びの中心に、ともに育てること、ともに食べること、いのちのつながりを学ぶ教育=エディブルエデュケーションという視点から考えると「食育」の概念や取組みではものたりないものを感じます。
日本では、エディブル・スクールヤード・ジャパンが多摩市の小学校において学校菜園をつくり、総合的な学習の時間を活用したり、教科(国語等)で、大豆栽培から豆腐づくりまでを行うなどの授業を行っています。
野菜や鶏の飼育(卵の採取)なども行い、キッチンクラスで料理、食べるところまでを行いますが、その際には、テーブルをクロスや花などで飾り付けを行うなど、食べる環境(食卓)を整えることも大切にしています。学校給食との連携に関しては、センター給食のためなかなか難しいようですが、これまでの取組みを複合させた学習手法として今後さらなる注目が集まると思います。

堀口博子さんプロフィール
一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン代表、菜園学習研究者。アメリカ、カリフォルニア州バークレーで生まれたエディブル・スクールヤードの取り組みを日本に紹介する『食育菜園 エディブル・スクールヤード』(家の光協会2006年)、アリス・ウォータース著『アート・オブ・シンプルフード』(小学館2012年)の翻訳編集などを手がける。
北カリフォルニアの学校菜園や菜園学習研究所などの取材を重ね、学校と地域をつなぎ、持続可能な未来のための教育手法-菜園教育をテーマに活動している。
渋谷区立中幡小学校の学校菜園プログラムづくりに関わる(2007年)。恵泉女学園大学の環境プログラム「教養教育としての生活園芸」に食育コーディネーターとして従事(2009年)、小田原のコミュニティガーデン「Yes!Garden」プロジェクトに参加(2011年)、親子参加型のガーデンプログラム「食育菜園教室」を企画、運営を担当。現在、東京都多摩市立愛和小学校のエディブル・スクールヤード・プロジェクトにプログラム・ディレクターとして活動している(2014~現在)。2014年、一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン設立。

一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン
http://www.edibleschoolyard-japan.org/


●「地域で育む学校給食」
富士市学校給食を考える会は、1987年の設立され、2017年にNPO法人ふじのくに学校給食を考える会となりました。富士市は、2008年に合併した旧富士川町の給食センター(小2、中2)を除き、小学校25校、中学校14校が自校方式での学校給食を実施しています。
富士市学校給食を考える会は、保護者、市民と、学校給食関係者、市の関係者との意見を交換しながら、自校方式を活用した教育、地場産農産物の取り入れなどに取り組んで来ました。学校給食が「生きるための能力」を養う「生きた教材」となるためには、自校直営方式の学校給食が大前提であるとする考えから、富士市の自校直営方式の学校給食を守る運動を続けながら、地域を巻き込んだ具体的な取り組みを続けています。
他市の学校給食を関係者が一緒に視察することなど、一緒に同じ経験を重ねることで課題を共有し、意識を高めていくことができます。
1990年には「富士市学校給食検討委員会」を教育委員会などとともに設立し、2006年には「富士市学校給食地場産品導入協議会」を設立、地域の関係者が一同に介することで、地場産導入の具体的なしくみづくりや調整、理解、教育などについて進めることができました。そのための公的な場づくりこそが、富士市学校給食を考える会の役割です。
長期にわたって、教育委員会、自治体等とも協力関係を結び、自校直営を守るために市民団体として緊張感を持ちながら新たな取組みを行い続けることはとても難しいことです。それを実践することで、学校給食の可能性を広げていることは、他の地域での取組みにも参考になります。富士市でも調理の民営化を完全に回避するにはいたっていないといいますが、学校給食の価値と可能性を、保護者、市民、自治体、給食関係者に示すことで、富士市の学校給食はますます充実すると思います。ぜひ参考になさってください。

小櫛和子さん プロフィール
昭和44年静岡県立富士高等学校卒業
昭和48年青山学院大学法学部卒業
昭和62年富士市学校給食を考える会 設立 代表(~平成29年4月)
平成14年静岡県学校給食ネットワーク設立  代表(現在に至る)
平成20年富士市食育推進会議委員(~平成28年)
平成20年ふじ食農体験交流協議会 設立 理事長(現在に至る)
平成24年栄養情報担当者NR取得(国立健康・栄養研究所認定)
平成26年NRからNR・サプリメントアドバイザーに移行
平成26年NPO法人日本食育インストラクター1級取得
平成26年合同会社 とれとれ富士山 設立
平成29年NPO法人ふじのくに学校給食を考える会 設立

NPO法人ふじのくに学校給食を考える会活動日記
http://fujinokunikyusyoku.i-ra.jp/

FBページ Npo法人ふじのくに学校給食を考える会
https://www.facebook.com/fuji.kyusyoku/


●「子どもの貧困と食生活格差-学校給食の意義を考える-」
学校給食の歴史をひもとけば、もともと貧困対策の一環であったことが分かります。ただ貧困の欠食児童に「食を給う」だけでは差別や給食を食べることに心的負担を持たないですむよう配慮することから、全員給食になっていったという背景もあります。その一方で、学校給食は、法律の制定から「教育として」位置付いてきました。第2次世界大戦後の高度成長期を経て、貧困対策の側面は薄れていき、「教育」としての学校給食の位置づけ、食の安全、質の向上、地場産給食などの取組みが広がり、社会的な食についての変化を受けて「食育」の法制化なども行われるようになりました。
鳫さんには、2014年の夏期学校給食学習会でも、子どもの貧困の現状について話していただきました。この当時、学校給食費の未納問題が社会的に取り上げられるとともに、子どもの貧困率の高さや子どもの貧困に関連する報道なども増えていました。学校現場からも、朝食を食べてこない、夏休みに痩せてしまうなどの事例などの報告も増えていました。
それから3年経ち、貧困問題はますます深刻になっています。民間の子ども食堂などの取組みにも注目が集まるようになりました。
あらためて、鳫さんから現状と学校給食無償化を提言される背景などについてお話しいただきました。
まず、中学校給食に関して、実施率を含めて地域間格差が大きいこと、未実施のところで、保護者、生徒、教員、教職員での学校給食に対する期待や意識が異なること、男女の性差でも、男性が家庭弁当派が多く、女性が学校給食派が大きいといった意識の差がみられるという調査結果が示されました。
また、未納給食費については、報道などで「保護者の規範意識の問題」が主たる要因のように言われていますが、実際には払いたくても払えない保護者の潜在的な増加があることを示し、それに社会保障制度が対応しきれていないことから、学校給食費や教育関係費「無償化」などの可能性について検討する必要があるとしています。
また、給食費に関しては私会計が全国の7割近くあり、学校(長)名義での口座と会計管理が行われ、督促も学校単位となっていること、それに対し、公会計化することで自治体が督促や未納負担などができ、学校の負担を減らすことができるとして、公会計の必要性を提言されていました。
その上で、家庭の経済的な問題を、給食費、健康保険料など個別にみるのではなく、給食費の未納率は全体の0.9%、国民健康保険料の未納率が10%といったことから、給食費の未納は他の公的負担の最後になる場合が多く、複合的な情報から貧困への対策をとる方策が必要だとしています。生活保護における教育扶助と就学援助に関しても、就学援助が地方自治体の裁量による部分が大きく、社会のセーフティネットとして十分ではないことから、給食費の無償化を検討する必要があるのではないかと問いかけられます。
公立の小中学校で学習費として学校での給食費、学用品や材料費、修学旅行、通学関係、教科外のクラブ活動などの中でも、学校給食費の占める割合は最も大きくなっています。小中学校給食費の無償化に必要な財源の試算では年間5120億円とされています。
給食費の無償化については、様々な意見や議論もあります。しかし、学校給食が学校教育にとって大きな役割を持つ以上、この議論を社会的に深め、他の対策も含めて取組みを行う必要があると考えます。新著の「給食費未納 子どもの貧困と食生活格差」(光文社新書)に課題が整理されています。ぜひご一読いただき、給食費のあり方、教育費のあり方について考えてみてください。

鳫咲子さんプロフィール(書籍より)
上智大学法学部国際関係法学科卒業。筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了。博士(法学)。参議院事務局でDV法改正など国会議員の立法活動のための調査に携わる。跡見学園女子大学マネジメント学部教授(行政学)。現在は、子ども・女性の貧困等に関する調査研究を行う。著書に、『子どもの貧困と教育機会の不平等 就学援助・学校給食・母子家庭をめぐって』(明石書店)がある

給食費未納 子どもの貧困と食生活格差(光文社新書)
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039455


●「学校給食の課題 合理化、安全、おいしさ、手間、コスト」
過去1年間の学校給食ニュースなどをふまえた現状整理と課題をまとめました。トピックス1としては、中学校給食導入が第3次食育推進基本計画において、数値目標のある政策目標となったことから導入が急速に進み、その中で、自治体による施設設備の建設が不要なデリバリー方式が増加していることを紹介しました。
また、いわゆる学校給食の合理化(センター化、調理の民間委託化・パート化)において、この数年で事業者と自治体の間でのトラブルもあることとして、3つの事例を紹介しています。

2017年3月27日、大阪府高槻市に本社を置く学校給食等の調理受託会社が破産手続き。
負債総額3億2000万円。
大阪府、京都府などの公立小学校の学校給食調理、病院や市役所などの食堂調理など。
自治体の学校給食については、破産前に契約解除、別業者との契約、日本給食サービス協会の学校給食業務代行保証による代替事業者等によって実施。
京都府宇治市は小学校3校で委託。新年度に契約が残っていたことから、急きょ予算を確保、指名競争入札を実施、3校のうち1校は上限価格、1校は上限の99.8%での落札、1校は指名事業者がすべて辞退し入札不調となったことから、直営の他校から調理員の派遣と臨時職員の雇用で対応。
低価格入札による経営の悪化。

(2015年新年度直前に委託事業者が辞退)
静岡県浜松市では、学校給食調理を受託した事業者が2015年3月30日に契約辞退を行い、1学期間、3小学校、1中学校で外注弁当方式に。
2014年11月に契約した事業者が、調理スタッフが集まらないことを理由に辞退。
事業者に対しては市が違約金請求、入札参加停止措置、補正予算を組み、1学期の外注弁当委託と2学期からの調理業務委託を別途入札。

(2013年、新年度直前にデリバリー事業者が契約更新せず)
東京都狛江市の中学校給食でデリバリー方式の給食を調理受託していた事業者が、2013年2月27日に2013年度の契約更新を行わないことを伝達。4月からの中学校給食が中止。市の検証では、事業者選定上、施設設備の衛生面や経営面についての精査不足、全員喫食を予定しながら実際には選択制などを理由に。
狛江市では、公設民営の学校給食センターを建設し、2015年7月から中学校給食(完全給食)再開。その間、ミルク給食とランチサービス(あっせん事業)

また、事例研究として、京都府宮津市で導入される中学校給食の民設民営方式について紹介し、PFIとは違う新たな民間事業者との長期委託契約手法として紹介しています。

(京都府宮津市、中学校給食実施とセンター化)
京都府宮津市は、中学校給食導入と合わせて、現在自校方式の小学校給食を老朽化を理由にセンター化する。2016年7月から8月にかけて3回の「学校給食あり方懇談会」を開催、そこでセンター化についての方向をとりまとめ、11月に公募型プロポーザル方式での公募を行い、12月に事業者を決定した。2018年度2学期から中学校給食と民間委託によるセンター方式で小中学校給食を実施、さらに、従来弁当の幼稚園給食もセンターで対応することとなった。
小学校自校式 小規模校中心で6校 40食~120食と、530食。
中学校が2校弁当345
幼稚園が2園弁当85
委託契約はハーベスト社
PFIではなく、民設民営で、献立、食材が自治体という形態。

給食センターについては、近年、建替えや新設の際の大型化が進んでいます。中学校給食導入だけでなく、老朽化、市町村合併に加え、学校給食の衛生管理基準が強化されたため、自校方式で建替えを検討しても、敷地面積が従来より大幅に増えることから敷地確保ができないといった問題も出てきています。
調理の民間委託は、国が行政改革の一環として積極的に地方自治体に圧力をかけており、今後も厳しい状況が続きます。

トピックス2としては、食の安全、国産、手間、コストをキーワードに、浸透性殺虫剤であるネオニコチノイド系農薬とミツバチの被害と人間への影響についての問題と、遺伝子組み換え作物と除草剤グリホサートの問題について新しい知見などを紹介してます。
また、学校給食ニュース2015年6月号で紹介した「学校給食で使われたトルラ酵母によるアレルギーの事例」について紹介し、高度な加工食品と手作りの違いや教材化の可能性、おいしさとコストについて紹介しています。


牧下圭貴プロフィール
学校給食ニュース編集責任者。1997年から学校給食ニュースを担当。農と食の環境フォーラム代表、提携米研究会事務局長、生産者と消費者をつなぐ測定ネットワーク代表、おむすび屋「はますかむすび」店主 ほか。
主著「学校給食」「放射能汚染と学校給食」(岩波ブックレット)、「いま、日本の米になにが起きているのか」(共著、岩波ブックレット)
連絡先等
メール desk@gakkyu-news.net

(ネオニコチノイド系農薬について)
「知っていますか? 斑点米と農薬とミツバチ大量死」(米の検査規格の見直しを求める会)
http://hantenmai.sakura.ne.jp/news/n_150715-1.html

[ 17/09/01 取材メモ・リンク ]

2017年9月号です。(紙版はありません)


2017年9月号(WEB)の記事です。夏期学校給食学習会の報告を書きました。衛生管理、学校菜園と食の教育の新たな取組み、貧困と給食費や教育費、地域の中での給食運動と自治体や地域などとの連携、食の安全等の話の概要です。
短針は、この期間に目にとまった新聞記事などをふまえて、自治体等が出している情報をまとめています。
FACEBOOKコメントは、新聞記事などネット上のニュースに対してリンクを張り、コメントをするようにしています。元のニュース等は期間が終わると掲載が終了するものもあると思いますが、記事で書かれている事例に対して視点提示としてお読みいただければ幸いです。

●2017夏期学校給食学習会報告
http://gakkyu-news.net/jp/010/019/2017_5.html

●短針
http://gakkyu-news.net/jp/000/005/2017_4.html

●FACEBOOK 記事等に関するコメント
「【神戸新聞】中学給食食べ残し「最多」→「最少」 達成導いた生徒の取り組みとは(神戸新聞NEXT)」についてのコメント
https://www.facebook.com/gakkyunews/posts/860760674099777

「静岡新聞NEWS 学年費・教材費の徴収や督促、教員ら重荷 県教委が改善策検討」についてのコメント
https://www.facebook.com/gakkyunews/posts/856515841190927

「昼食15分で食べられますか? NHKニュース」についてのコメント
https://www.facebook.com/gakkyunews/posts/848159738693204

【おしらせ】

学校給食ニュースの情報と、過去のデータを、学校給食に関心をもった多くの人たちに自由に使ってもらい、学校給食、子どもの食を少しでもよくしてもらおうと、学校給食ニュースのあり方を見直しました。

過去の学校給食ニュース(PDF版)については、9月以降、一部の個人情報や著作者の再許諾が必要なものなどの見直しを行った上で、公開可能なものについて新しい号から順次過去の号を公開していきます。どうぞご活用ください。 サイト上に(会員・購読者のみ)とあっても、ダウンロード可能になります。ただし、移行期間中過去ニュースはリンク切れのものが多数があります。あらかじめご了承ください。

これまでの紙版購読者、インターネット版購読者の方は、当面、
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からダウンロードしてください。こちらは創刊号からすべて揃っています。
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以降が完了した時点(年度内を予定)でこちらの公開は終了する予定です。

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皆様からの投稿、情報提供をお待ちしております。
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(106-0032) 東京都港区六本木6-8-15 第2五月ビル2階
TEL 03-3402-8902 FAX 03-3402-5590

[ 17/09/01 最新情報 ]

2017年10月の短針

●東京都府中市、22000食のセンター稼働
東京都府中市は、2017年9月に、新しい学校給食センターを稼働はじめた。調理は小学校4コース(22校)、中学校2コース(11校)で、小学校の調理、炊飯等は民間委託。中学校の調理は直営とみられる。

府中市 給食センター新築事業
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kyoiku/kyusyokusintiku/

●神奈川県厚木市、7000食のセンター整備計画
2017年7月に「(仮称)厚木市学校給食センター整備計画」を発表した。
厚木市は、小学校給食を2001年よりセンターから単独校方式に順次切り替えている。2017年度現在、23校中17校が単独調理校となった。中学校給食は未実施だったが、2007年より空きができたセンターを活用して全13校に中学校給食を導入している。
厚木市は、センターの老朽化、児童数の減少見通し、小学校の未整備校状況等をふまえて検討し、2016年4月に「整備方針」を策定、それに沿って中学校向けの新センターを建設するためのもの。なお、小学校の未整備校6校は親子方式で整備する方針。将来的には、すでに単独校化した小学校も児童数が減少した学校は親子方式(他校からの配送)に転換する予定。
新センターは、7000食規模で2コース制。米飯施設を整備、アレルギー対応も行う。また、災害時の給食施設としての転用も想定する。

厚木市学校給食
http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/kosodatekyoiku/education/kyushoku/index.html

[ 17/09/29 取材メモ・リンク ]

神奈川県大磯町の学校給食(デリバリー方式・全員喫食)

神奈川県大磯町の中学校給食が新聞、テレビ等で広く報道されています。デリバリー弁当方式の完全給食を2016年1月から実施したところ、異物混入をはじめ、冷たいなどで、残食が多く問題視されたのです。
その後、大磯町は、9月20日に記者発表を行いました。

大磯町中学校給食について(平成29年9月20日記者発表
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/soshiki/seisaku/seisaku/tantou/H29kisyahappyou/1505973934715.html

全文を引用します。
中学校給食について
1 導入理由
「学校給食法」及び「食育基本法」に基づき、子どもたちが将来にわたって健康的な生活を送れるよう、栄養・食事の採り方などの知識や、望ましい食習慣、食をコントロールする「自己管理能力」などを身に付けることをめざす。

2 生徒全員給食の主旨
学校給食の主旨・目標である生徒の心身の健全な発達のため、教育の一環として生徒全員の給食を実施する。ただし、アレルギー等やむを得ない事情により家庭弁当持参も可とする。

3 デリバリー方式の導入理由
(1) 学校給食の主旨を保ちつつ、早期導入できる最も有効、かつ現実として可能な方法である。
(2) 初期投資額が抑えられるため、他の方式へ転換する場合でも初期投資が無駄にならず、状況に応じて柔軟な対応が可能。

4 実施方法
(1) 町栄養士が作成した献立原案に基づき、「中学校給食献立検討に関する打ち合わせ会」(町栄養士、小学校栄養教諭、中学校養護教諭、指導主事等)により献立を決定する。
(2) 町栄養士が卸売業者に食材を発注し、委託事業者に食材を納品させる。
(3) 町栄養士の指示に基づき委託事業者が食材を調理し、各校に配送する。
 
5 実施状況
給食対象人数 759人/喫食者数 723人(95.3%)/持参弁当 36人(4.7%)

6 費用等
(1) 保護者負担 4,900円/月 (食材費に充当、1食あたり350円)
(2) 町負担 257.04円/食 (調理配送等業務委託費)
      ※28年度決算見込額 33,020千円
(3) 一食あたり単価 607.04円(350円+257.04円)
 
残食問題について
1 平均残食率(H29年5月12日~7月11日) 約26.0%
最高55.29%(5月29日)/最低17.69%(5月13日)
<参考>
     学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査結果(H27年4月28日環境省)
   回答のあった約3割の市区町村の平均残食率:約6.9%

2 改善策
(1) これまでの取り組み
ア 「中学校給食献立検討に関する打ち合わせ会」での協議や委託事業者との打ち合わせによる献立の改善
イ 食物アレルギー以外でやむを得ない事情がある場合、申し出により家庭弁当の持参も可とする。

(2) これからの取り組み
ア パン食の導入
イ 変わりご飯(混ぜご飯等)の回数増
ウ ふりかけ使用の検討
エ 温かい汁物の試行
オ 家庭弁当持参の許可判断を緩和                                                  など

異物混入問題について
1.異物混入件数:84件
※件数は各学校からの報告に基づくもので、実際に確認できなかった異物等も含む。(内訳)毛髪39件、繊維14件、虫7件、衛生害虫3件、植物1件、ビニール片4件、プラスティック4件、金属片1件、その他11件

【上記のうち、形状や混入状況から工場内での混入が明らかなもの】
毛髪3件、繊維2件、虫1件、ビニール片4件、プラスティック3件、その他(他の食材)2件 計15件

2.年度別件数
(1) H27年度(H28年1月~3月):40件【うち、工場内での混入が明らかなもの 5件】
(2) H28年度:32件【うち、工場内での混入が明らかなもの 10件】
(3) H29年度(H29年4月~7月):12件【うち、工場内での混入が明らかなもの 0件】

3.その他(異物混入でないもの):11件
(1) 原料由来物質等で健康に問題ないもの(こげ、乾燥米粒、食材の変色等):8件
(2) 副菜の食数不足:1件
(3) カレー粉が溶けてなかった:1件
(4) 牛乳不配:1件

4.改善策
(1) これまでの取り組み
ア 異物の状況により、委託事業者に原因解明と再発防止を指導
イ 工場の査察と衛生管理指導

(2) これからの取り組み
ア 委託事業者に、衛生管理基準等の遵守徹底を改めて指導
イ 委託事業者に、弁当の最終点検を兼ね全食を写真に記録させる。
ウ 生徒や保護者に、調理の様子や調理場の環境等について周知を図る。
など

以上 引用終わり


新聞・テレビ等で報道され、様々な意見が出ているところですので、以下のサイトを参考に上げておきます。

学校給食ニュースより
2016.07 デリバリー給食は、学校給食の質を保てるのか? http://gakkyu-news.net/data/2016-07.pdf

2017.05 今月のトピックス あらためて学校給食調理の民間委託とは? http://gakkyu-news.net/data/2017-05.pdf

デリバリー給食が社会的に注目を集めたのは、橋下・元大阪市市長のときに、中学校給食を実施すると宣言し、デリバリー方式で導入しましたが、おかずが衛生管理の都合として摂氏10度で届けられ、カレーは冷たいレトルト、揚げ物もひんやりということがあり、関西方面ではテレビ等で大騒ぎになりました。その後、ごはんのおかわり、週1回程度の食缶での汁物、カレー等の提供などの改善がはかられ、現在は、デリバリー方式から、親子方式(小学校等からの提供)に変わりつつあります。

近年、デリバリー給食が導入された背景には、食育推進基本計画(第3期)で、中学校給食の実施目標が数値目標として入ったことで、未実施自治体に大きなプレッシャーがかかり、てっとりばやく実施する方法として、自治体が独自に施設設備を用意せず、事業者(弁当・中食・仕出し等)の設備で調理・配送する方式をとるようになったからです。学校給食法や文部科学省の指導では、献立と食材は自治体(教育委員会の栄養教職員)が作るようにされていますが、食材の選定リストをもって事業者が調達することもあります。
ちなみに、学校給食法では、いわゆる「給食費」(保護者負担)は、食材費で、設備・調理などのコストは自治体が負担することになっています。
また、弁当あっせんなどではなく、学校給食として実施する場合、学校給食実施基準、衛生管理基準が法の下に定められており、栄養価なども細かくガイドラインとして決められています。そこで、学校給食の施設設備は、それに合わせて設計、建設され、調理体制も整っていますが、それと同じことを、事業者がやるのは大変ですし、流用して行うわけですから勝手が大きく違います。

上記の学校給食ニュースで特集したように、そのため、異物混入、味の面、残食など様々な問題が起きます。

さて、大磯町ですが、以下のように、大磯町は、中学校給食導入前と、事業者決定についての情報を公開しています。
保護者とのQ&Aなども掲載してありますので、現在報道されていることと、実施前の状況について参考にしてください。

以下、大磯町ウエブサイト
中学校給食(スクールランチ)調理配送委託事業者(2017年9月21日に変更されています)
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/kosodate/kyusyoku/1447925063959.html

中学校給食
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/kosodate/kyusyoku/1435047728429.html

最後になりますが、「学校給食」は、教育として実施されています。「生きた教材」であり、食べることを通じ、また、その食材や献立内容等を含めて、教材として教科、学校での地域教育などに活用することが理念として求められています。食育基本法以降は、食育の柱とも位置づけられています。
その一方で、学校給食は、「教育目的」ゆえに、半強制的に食べさせるものです。ほんらい、食は個の本質的属性にも関わることですから、「食べない自由」は保証されているはずです。
そのようなものを教育に活用する以上、第一に安全であること、そして、おいしいものであることが前提です。安全でおいしい給食が出されることを信頼として、次に教育としての学校給食が成り立つのです。
デリバリー給食を行う自治体は「予算がない」ことを理由にします。学校給食は、自治体の判断で自校方式、食材の充実、献立の充実などが可能です。それは自治体の予算の使い方でもあります。小中学校の義務教育の中で、唯一といってもいいほど、自治体の特徴がでてくるものです。つまり、学校給食は自治の鏡なのです。自分たちの地域に住む子どもたちをどう育てたいのか? その事が問われます。
財政難、個人の経済的困窮(貧困の拡大)の中で、学校給食にどのくらい力を入れるのか、それを決めるのは、保護者だけでなく、市民の考え方です。
今は、大磯町が取り上げられていますが、多かれ少なかれ、他の自治体でも様々な課題があります。
これを機会に、自分の自治体の学校給食を調べてみてはいかがでしょう。

その後の報道で、大磯町は、改善策として、温かい汁物をつけるなどの対処とともに、当面、家庭弁当持参も可としました。その予算はどうするのか、配膳時間は学校カリキュラムの中で確保されるのか、気になるところですまた、弁当持参について、報道では翌日から近くが弁当持参になったとありました。デリバリー給食を完全給食として実施するとなると「全員喫食」が基本になります。その前提が崩れたことになります。教育として取り組んでいたのであれば、学校の食育計画から考え直すことも必要です。
この状況の中で、学校側の対応が変わらないとすれば、学校給食は食育として行われてきたのか、生きた教材として位置づけられてきたのか、そのことも疑問となります。
また、事業者からすれば、全員喫食を前提に契約し、受注し、その体制を組んでいることになります。突然半数になったと言われて、経営的には継続できるものではありません。そもそも、冷たい、おいしくない、異物混入が多いという状況で起きたことであり、運営を複雑化して継続してよいのか、心配になります。

[ 17/09/29 給食運営 ]

[ 17/09/29 委託・合理化 ]

食品表示が変わりました。

食品表示が変わりました。
すべての食品に産地表示が必要です。
解説と課題

2017年9月1日に、食品表示制度が変更され、「すべての加工食品に原材料の産地が表示されます」(消費者庁)となりました。これまで生鮮食品や米、一部の加工食品のみ表示義務がありました。今回、移行期間は2022年3月末までありますが、ようやくすべての食品について産地表示が行われます。2015年に食品表示制度が一元化され、食品衛生法(厚生労働省)、JAS法(農林水産省)、健康増進法(厚生労働省)で扱われてきた食品の表示制度の担当が、消費者行政窓口である消費者庁のもとで統一して扱われることになりました。その後、少しずつ表示制度が見直されており、今回は、消費者からの長年の要望だった原産地表示が広く扱われるようになります。すべての食品で産地を見て選ぶことがかなりできるようになります。

現代社会において、加工食品が生活の中に占める割合は確実に多くなっています。また、日本は食料自給率が低く、輸入食品の割合が多いのも特徴です。
その中で、学校給食では地場産、国産を食育の観点から「生きた教材」として使うことが求められています。実際に、生産者の顔が見える、地域の暮らしや社会、環境などを学ぶなど教材としての可能性は高く、安全性や信頼性の面でも望まれています。
しかし、実生活においては、輸入品、加工品を手に取ることが多くなります。学校給食を通じた食育とともに、加工食品など市販の食品を選ぶ力を身につけることも大切です。スーパーやコンビニエンスストアなどで売られている弁当やお総菜、加工食品、米、野菜、魚や肉などの生鮮品には「表示」がされています。この表示の意味を正しく知って、栄養面だけでなく、安全性、味、環境保全や地球環境の持続可能性、地域のことなど、いろんな視点から食品を選べるようになることが必要です。食品の表示については、学校でも社会でも学ぶ場はほとんどありません。「消費者の知る権利」=「消費者教育」が圧倒的に不足しています。
表示を正しく知らないと、間違った理解をしてしまうこともあります。よくある話ですが、ペットボトルのお茶などには、たいてい酸化防止剤(褐変防止)として「アスコルビン酸ナトリウム」が入っており、表示は「ビタミンC」となっています。これは、飲む人の健康に寄与するためのものではなく、製品の品質を保ち、見栄えをよくするための食品添加物です。添加がいけないということではなく、知っていないと「誤解しがち」な表示です。

でも、もし同じ価格のペットボトルのお茶で
A 原材料名:緑茶(日本)/アスコルビン酸ナトリウム
B 原材料名:緑茶(日本)/ビタミンC
と表示されていたら、どうでしょうか? このふたつはまったく同じものですが、Bを選ぶ人が多いのではないでしょうか?
分かりやすくするために「ビタミンC」と記載されているのかもしれませんが、食品メーカーは、どちらか表示を選択できるならば、当然、「ビタミンC」を選ぶと思います。
そういう消費者が正しく理解していないことを受けた「まぎらわしさ」が食品の表示にはみられることもしっかり知っておく必要があります。

そこで、今回は、新しくなる食品表示の解説とともに、いくつかの間違いやすいポイントや表示制度の問題点を明らかにしたいと思います。

■原料原産地表示の義務化
対象となる食品は、すべての加工食品ですが、外食や容器包装に入れずに販売する場合、作ったその場で販売する場合などは対象外です。また、加工食品そのものが輸入品の場合(輸入された状態で販売する場合)、原料原産地表示の対象外となります。
ただし、輸入食品の場合には、輸入元の「原産国名」の表示があります。
義務表示は、「1番多い原材料」のみです。原材料の表示方法は、全体に占める重量の割合が多い方から順番に並べることになっています。その最初に書かれる原材料のみが原料原産地の義務表示となります。
表示方法としては、国別重量別表示、製造地表示、又は表示、大括り表示の4種類が認められます。
消費者庁のパンレットを元に記載してみると

国別重量別表示
名称 ウインナーソーセージ
原材料名 豚肉(アメリカ産、国産)、豚脂肪…

製造地表示
名称 チョコレートケーキ
原材料名 チョコレート(ベルギー製造)、小麦粉…

又は表示
名称 ウインナーソーセージ
原材料名 豚肉(アメリカ産又は国産)、豚脂肪…
※豚肉の産地は、平成○年の使用実績順

大括り表示
名称 ウインナーソーセージ
原材料名 豚肉(輸入)、豚脂肪…

一番多い原材料が生鮮食品の場合、その産地が表示されますが、3カ国以上の場合、たとえば、「豚肉(アメリカ産、国産、その他)といった表示が可能です。
この表示順も重量別なので、
A アメリカ産、国産
B 国産、アメリカ産
C 国産、アメリカ産、その他
では、国産の比率が異なり、
Aでは国産は1%~50%未満
Bでは国産は50%以上
Cではアメリカ他の輸入品よりも国産の方が多く入っているが比率は不明
となります。
これは、「又は表示」の場合も同じです。ただし、「又は表示」の場合少ない方の使用割合が5%未満の場合には例えば「アメリカ産又は国産(5%未満)」といった表示が求められます。
「大括り表示」の場合に「輸入」とあるのは、3カ国以上の輸入原料が使われていて、国産は入っていないことを意味しています。2カ国までは、又は表示か、並べての表示となります。

一番多い原材料が加工食品の場合、表示の意味はより複雑になります。
表示方法としては、その加工食品の製造地の国別重量順表示が基本で、加工食品の原料となった生鮮食品の産地を表示することも可能になります。
消費者庁のパンフレットをもとに記載してみると

製造地表示の国別重量順表示
名称 チョコレートケーキ
原材料 チョコレート(ベルギー製造)、小麦粉…

加工食品に使われた生鮮食品の産地を表示
名称 チョコレートケーキ
原材料名 チョコレート、小麦粉
原料現産地名 ガーナ(カカオ豆)、インドネシア(カカオ豆)

となります。この2つの表示は同じ商品(チョコレートケーキ)で、ガーナとインドネシアのカカオ豆を原料に、ベルギーで製造されたチョコレートを主原料とするチョコレートケーキです。ただ、どちらかを表示すればいいので、ちょっとまぎらわしいですね。

こんな例を考えてみましょう。
日常的によく食べられているだろう「食パン」を例にして考えてみます。

名称 食パン
原材料 小麦粉(国内製造)、バター…

名称 食パン
原材料 小麦粉、バター…
原料現産地名 アメリカ(小麦)

このふたつは同じ商品の表示の違いになります。
アメリカから輸入された小麦を国内の製粉業者が小麦粉にして、それを使ってパンを焼いたから、こういう表示になるのです。
この場合、原材料は「国内製造」であることは分かっても、その原料の小麦が輸入品であることは分かりません。
たとえば、ポストハーベスト農薬(収穫後農薬)が残留していることからそれを避けようとして国産小麦のパンを選ぼうと思ったら、

名称 食パン
原材料 小麦粉、バター…
原料現産地名 国内(小麦)

と表示してある食パンを探す必要があります。

でも、
名称 食パン
原材料 小麦粉(国内製造)、バター…

だと、ちょっと間違って手に取りそうです。正しい知識がないと誤解してしまうかも知れません。

このほかにも、複雑な表示の可能性として、消費者庁が示している事業者向けのQ&Aから必要部分だけを抜き出してみましょう。魚肉ソーセージ、かまぼこなどの「魚肉」の例です。

Q:原材料を「魚肉」等と括って表示している場合、原産地表示はどのようにするのですか。

A:
1 魚肉練り製品等は、冷凍魚肉すり身や鮮魚を主原材料として製造されます。冷凍魚肉すり身や鮮魚を使用し、「魚肉」等と表示した場合の表示方法は以下のとおりです。

2 鮮魚のみで製造した魚肉練り製品等の場合
《例1:原料原産地名の事項欄を設けて表示する場合》
(魚肉が全て国産の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉、でん粉、食塩、…
原料原産地名 国産(魚肉)

《例2:原材料名に併記して表示する場合》
(魚肉が全て国産の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉(国産)、でん粉、食塩、…

《例3:魚種を明記した場合》
名称 ケーシング詰特種かまぼこ
原材料名 魚肉(たら(国産)、ぐち、えそ)、種もの(チーズ)、でん粉、食塩、…

《例4:明記している魚種の全てが国産の場合》
名称 蒸しかまぼこ
原材料名 魚肉((国産)(たら、ぐち、えそ))、でん粉、食塩、…

3 冷凍魚肉すり身のみで製造した魚肉練り製品等の場合

《例5:魚肉すり身の製造地を表示する場合》
(一定期間において重量割合の順番が入れ替わる3以上の外国製造の魚肉すり身>国内製造の魚肉すり身の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉、でん粉、食塩、…
原料原産地名 外国製造、国内製造(魚肉すり身)

《例6:魚肉すり身に使用した鮮魚の産地を表示する場合》
(一定期間において重量割合の順番が入れ替わる3以上の外国産の魚類を原料とした魚肉すり身>国産の魚類を原料とした魚肉すり身の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉(輸入、国産)、でん粉、食塩、…

《例7:「魚肉」ではなく、「魚肉すり身」と原材料名表示する場合》
(一定期間において重量割合の順番が入れ替わる3以上の外国製造の魚肉すり身を使用する場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉すり身(外国製造)、でん粉、食塩、…

《例8:魚肉すり身に使用した鮮魚の産地を表示する場合》
(例7の場合で、鮮魚まで遡った産地を表示する場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉すり身(魚肉(輸入))、でん粉、食塩…

4 冷凍魚肉すり身と鮮魚を混合して製造した魚肉練り製品等の場合

《例9:魚肉すり身の製造地と鮮魚の産地を表示する場合》
(アメリカ製造の魚肉すり身>国産の鮮魚の場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉、でん粉、食塩、…
原料原産地名 アメリカ製造(魚肉すり身)、国産(たら)

《例10:鮮魚まで遡って産地を表示する場合》
(例9の場合で、鮮魚まで遡った産地を表示する場合)
名称 魚肉ソーセージ
原材料名 魚肉(アメリカ、日本)、でん粉、食塩、…

たとえば、例3の「魚肉(たら(国産)、ぐち、えそ)」は、原材料の「国産のたら」が一番多く、ぐち、えそは国産か輸入かは不明です。例4のようにすべてが国産であれば「魚肉(国産)(たら、ぐち、えそ)」という表記ができます。
数学の公式のように( )の意味を考えないといけませんね。

■これまでの原料原産地表示と新たな追加
これまでは、加工食品については26品目のみが対象品目となっていました。また、表示の基準は以下のリストの1~22までは「製品に占める重量の割合が50%以上の原材料」、23~26までは原産地対象の原材料が指定されていました。今回の改定では、以下のものは従来通りの表示方法が続けられます。

1 乾燥きのこ類、乾燥野菜及び乾燥果実
2 塩蔵したきのこ類、塩蔵野菜及び塩蔵果実
3 ゆで、又は蒸したきのこ類、野菜及び豆類並びにあん
4 異種混合したカット野菜、異種混合したカット果実その他野菜、果実及びきのこ類を異種混合したもの
5 緑茶及び緑茶飲料
6 もち
7 いりさや落花生、いり落花生、あげ落花生及びいり豆類
8 黒糖及び黒糖加工品
9 こんにゃく
10 調味した食肉
11 ゆで、又は蒸した食肉及び食用鳥卵
12 表面をあぶった食肉
13 フライ種として衣を付けた食肉
14 合挽肉その他異種混合した食肉
15 素干魚介類、塩干魚介類、煮干魚介類及びこんぶ、干のり、焼きのりその他干した海藻類
16 塩蔵魚介類及び塩蔵海藻類
17 調味した魚介類及び海藻類
18 こんぶ巻
19 ゆで、又は蒸した魚介類及び海藻類
20 表面をあぶった魚介類
21 フライ種として衣をつけた魚介類
22 4又は14に掲げるもののほか、生鮮食品を異種混合したもの
23 農産物漬物
24 野菜冷凍食品
25 うなぎ加工品
26 かつお削りぶし

さらに、このリストの27番目として、「おにぎり」が追加されました。コンビニエンスストアなどでおにぎりがたくさん売られています。この「のり(海苔)」について、原産地の表示義務が課せられました。これは、重量とは関係なく、表示対象になります。また、海苔の場合、原藻(生のり)→乾燥(干しのり)→加工(焼きのり)となりますが、この原藻の原産地が表示されます。
ただし、「唐揚げ、たくあんなどの「おかず」と一緒に容器包装に入れたものや、巻き寿司、軍艦巻き、手巻き寿司など、いわゆるお寿司に該当するもの」は表示対象外です。のりは、すでに巻かれているもの、食べるときに巻くような包装になっているもののなど、「一般的におにぎりと認識するもの」が対象になります。

■業務用加工食品
業務用加工食品の表示については、従来の考え方がとられています。
業務用加工食品は、製造業者等が、中間または消費者の最終製品となる加工食品をつくる製造業者に販売するものについては、旧基準・新基準ともに、表示が義務づけられていますが、業務用加工食品を外食事業者に販売する際には、表示の義務はありません。
これは、給食施設、レストラン、対面販売などが表示の対象外となっていることからです。
しかし、表示が消費者の選択の権利のためという本来の考え方からすれば、外食事業者が原料原産地を知っておくことは必要ではないでしょうか。

なお、学校給食の場合、多くの自治体では、加工食品の事業者から製造仕様書の提出を求め、原材料原産地、原料配合、アレルギー表示、遺伝子組み換え作物使用の有無、食品添加物、加工方法などをチェックする体制を整えています。

■原産地表示の課題
今回は加工食品の重量1位のもののみが義務表示とされましたが、任意で重量2位以下の原料原産地を表記することは可能になりました。
たとえば、「イカ入りシューマイ」の原材料に豚肉とイカが多く入っており、豚肉35%、イカ30%だとしても、原産地表示義務は「豚肉」のみになります。イカは対象になりません。せめて2位までは表示させるべきといった議論もありました。複合的な加工食品の場合の2位以下の原料原産地表示は、消費者側から要望を出していかなければ見えないということになります。
また、従来から指摘されていた課題は、今回は残されたままです。
とくに、生鮮品と加工品の区分については、消費者には分かりにくくなっています。生鮮品(農産物、畜産物、水産物)も、産地表示が必要です。
たとえば、カット野菜について、
単品のカット野菜は生鮮食品
複数の野菜をミックスしたカット野菜は加工食品
単品の挽肉は生鮮食品
あいびき肉は加工食品
単品のマグロの刺身(つま付き)は生鮮食品
複数の刺身盛りは加工食品
となります。それぞれ、区分けの理由はありますが、消費者にとっては分かりにくくなります。

■食品表示法のこれから
ここまで、原産地表示について、これからの表示と、課題の一部をまとめました。
ほかにも食品表示には様々な課題があります。最初に酸化防止剤のビタミンCの例を紹介した食品添加物の表示のあり方、遺伝子組み換え食品についても、遺伝子組み換え作物を原料としている食用油などはたんぱく質が入っていないとして表示対象外ですが、消費者の「選択する権利」からすれば全面的な表示制度が必要ですし、混入比率(5%未満)などほかにも課題があります。
また、アレルギー表示については、表示制度の意味を知らないと、原材料の中に、魚エキス(さけ、えび、かにを含む)といった表示は、アレルギー表示制度であるのに消費者側に優良誤認させることにもなりかねません。消費者側が、この表示はアレルギーに関するものという理解をもつことも必要になります。
同様に、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、保健機能食品と、新たな名称の規格が出ています。健康のため、と、いいますが、いずれもそれを表示する食品企業にとっての「付加価値」としての側面もあります。
ひとまず、すべての食品が原料原産地表示対象になったことは一歩前進ですが、複雑化する食品に対し、生活者、消費者として、食品表示をきちんと理解し、自らの食を考えることがますます大切になります。
学校において食に接するのは学校給食です。食の指導の中で、栄養教育には長年取組みが深いですが、現代社会において、表示について学ぶ機会をどのようにつくるのか、学校給食の視点からも、考え、実践していく必要があると思います。

まずは、学校給食関係者が、食品表示について改めて学んでみてはいかがでしょう。

参考資料
消費者庁 食品表示企画 http://www.caa.go.jp/foods/

知っておきたい食品の表示(消費者向け) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syoku_hyou_all.pdf

早わかり食品表示ガイド(事業者向け) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/jas_1606_all.pdf

新たな加工食品の原料原産地表示について(各種情報窓口)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/

食品表示基準一部改正のポイント(平成29年9月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170901_0008.pdf

食品表示基準について(平成29年9月1日)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0002.pdf

食品表示基準Q&A(最新版)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0016.pdf

[ 17/09/29 食の安全性 ]

食品表示について知っていますか?

今回の特集記事は、9月にスタートした新しい食品表示についてです。
大きな特徴は、すべての食品に対して、産地表示が義務づけられること。
とはいえ、課題もあります。わかりにくい点もあります。

2017年10月の記事
● 特集 食品表示が変わりました。 すべての食品に産地表示が必要です。解説と課題
● トピックス 神奈川県大磯町の学校給食(デリバリー方式・全員喫食)
● 短針 2017年10月の短針
●FACEBOOK 記事等に関するコメント
「 【京都新聞】学校給食でアレルギー対応せず 大津市、対象は千人超」についてのコメント
https://www.facebook.com/gakkyunews/posts/872196729622838

「【毎日新聞】給食費:自治体が徴収…教員の負担軽減狙い 文科省方針」についてのコメント
https://www.facebook.com/gakkyunews/posts/867322210110290



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[ 17/09/29 最新情報 ]


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