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福岡県岡垣町の学校給食と調理員の取り組み
福岡県岡垣町の学校給食と調理員の取り組み
学校給食ニュース2002年11月号より
福岡県岡垣町は、人口約3万1千人。海も山もあり、北九州市に近いベッドタウンとして徐々に住宅地が増えています。小学校5校、
中学校2校で、学校給食は、小学校のみ、自校直営方式で行われています。中学校給食は現在行われていません。中学校給食は、
2004年度より親子方式の施設で調理は民間委託により実施される予定です。小学校給食については、
2001年末の行政改革大綱で調理の民間委託方針が出され、
退職者不補充と職種変更による調理の民間委託を2003年度から実施するとしています。
現在、民間委託中止を求める運動が広げられているところです。
岡垣町の調理員は、これまでにさまざまな取り組みをしており、その内容は注目に値するものです。
岡垣町の学校給食と調理員の取り組みについてレポートします。
●岡垣町の学校給食
岡垣町の小学校給食は、自校直営方式です。小学校5校と保育所2所に正規調理員18人が勤務しています。
小学校給食では一部パート職員も配置されています。
栄養士は、2001年まで1名でしたが2002年に1名増員され、現在2名で、小学校5校のうち食数の多い2校に配置されています。
献立は、岡垣町を含む福岡県遠賀郡で統一献立がつくられています。それを、岡垣町の栄養士、調理員らが検討し、町独自、
学校独自の要素を加えていきます。この町独自の部分や学校独自の部分には、調理員の意見が反映されます。調理場ごとの設備の違いや、学校行事、
あるいは、学校の特色によって少しずつ変えられています。
食材は、学校給食会と地元業者への発注ですが、地場のものも扱っています。
米飯給食は、週に3回で、県産米を使用。
食器は、ステンレスから陶磁器に更新されつつあります。
食器の洗浄は、手作りの廃食用油石けんを使っています。この廃食用油石けん活動については、あとで詳しく解説します。
調理員の取り組みとしては、18人中17人が自主的に調理師免許を取得しています。1名は採用後2年に満たないため、
今後取得する予定です。
日常的には、給食室からの一言を毎日給食時間に放送し、学校によっては調理員自身が放送することもあります。また、学校ごとに
「給食だより いただきまぁーす」を随時発行し、保護者に給食の内容や食の問題などについてお便りを出しています。
また、児童との手紙のやりとりや交換ノート、クラスでのふれあい給食などを行っています。給食をクラスに運ぶ際には、
今日の献立などについて子どもたちに必ず声をかけるようにしています。
試食会は、一般の試食会のほか、祖父母招待給食、児童や新入学児童を対象とした春休み、夏休み、
冬休み期間中の親子クッキング教室の実施などを行っています。
歴史的な取り組みとしては、1977年以降、調理員による給食の質の向上について取り組みがはじまりました。自校炊飯や、
ハンバーグなど加工食品の手作り、インスタント調味料の廃止、合成洗剤の追放、学校菜園の野菜を給食食材に取り入れるなど、
食の安全や給食の質の向上を調理員から働きかけ、栄養士とともに作り上げてきています。
このほか、アレルギー対応などもしています。
調理員の早川友季子さんに話を聞きました。
「岡垣町の学校給食調理員は、長い歴史の中で、ただ作るだけの調理員から、食の安全や給食の味、子どもの育ち、
環境のことまで自分たちの職務として取り組むように変わりました。この取り組みは、
他の自治体の学校給食で加工食品ではない手作りハンバーグを作っていたことを知ったときにはじまりました。私たちもできるのではないだろうか、
そこから、栄養士とも相談し、手作りハンバーグに取り組みました。今では、インスタントの調味料を使わず、だしは、昆布や鶏がらなどからとり、
カレールーも手作りしています。味付けも、その日の食材、たとえば玉葱の水分量などから分量を変えたり、暑い、寒いとか、
乾燥しているなど天候によって、また、運動会の練習で汗をたくさんかいているから、など、状況に合わせて変えるようにしています。自校調理で、
日々子どもたちを見ていて、学校の行事などもよく分かっているからできることだと思います。
私は、たまたま保育所から小学校へ移ったことがあり、そのときには、同じ子どもが保育所から小学校6年で卒業するまで、
その子どもの育ちを見ることができました。そういう経験が、給食を作る上でも子どものことを考えて取り組む上で役立っていると思います。
調理員同士、調理員と栄養士とで常に意見交換をしていますが、こんなこともあります。岡垣町は、海もあり、山もあり、住宅地もあります。
海に近い学校の子どもは、海の食材を使った献立の時、残食が少ないのですが、山に近い学校の子どもたちは、
山の食材を使った時の方が残食が少ないのです。住宅地の学校の子どもたちは、まんべんなく残食が出たりします。
そういう生活の違いなどもふまえて、学校ごとの給食のあり方を考えています。
地場産の給食についても、もっと取り組みたいと思います。私たちも岡垣町に住んでいますから、この辺の農家を知っていたりしています。
食材がどこの誰のものなのか、あるいは、岡垣町のものなのか、もっと遠くから来るものなのかもよく分かります。やはり、新鮮な食材の方が、
使いやすいし、安心です。学校農園のものや、地場の特産品であるビワやヒジキを給食に取り入れたりはしていますが、たとえば、
お米や野菜にしても、給食で使う分ぐらいは、岡垣町で取れています。そういう取り組みもしたいです」
●ゲストティーチャー
調理員の中には、ゲストティーチャーとして、実際に教壇に立つ例もあります。ひとつの例では、授業の一環として、
給食ででた残さを使ってたい肥づくりを行ない、野菜を育てました。たい肥を入れた野菜、入れなかった野菜で育ち具合や味を比較してみます。
これを調理員としてたい肥づくりからずっと教員とともに子どもたちに教えていきました。
また、後述する廃油石けん活動から、授業で環境とリサイクルの意識啓発のために、廃食用油を利用した石けん作りを行ない、
子どもたちからも高い関心を引き出しています。
学校の中の身近な大人として、調理員の技能・経験をうまく生かす実例です。
●廃食用油石けん活動は学校を超えて
岡垣町の学校給食では、1980年の秋まで合成洗剤を使用していました。しかし、有害性や環境問題を学習し、市販の粉石けんを導入。
その後、給食調理で出る廃食用油を活用できないかと、試行錯誤し、1985年までに手作りプリン石けんに切り替えました。
取り組みは、保育所と小学校の調理員が発案、取り組みを行ない、ステンレス食器を使用していたこと、手洗い中心だったことから、
石けんの温度や濃度などのノウハウが確立し、安定して給食食器洗浄に活用されていました。
1994年には、固形石けんをつくるための機械を岡垣町の教育委員会が2台購入し、
やはり学校給食から出た廃食用油を使って固形石けん作りがはじまりました。土曜日に交代で石けんを仕込み、
夏期休業中にラベルをつくって町のイベントで無料配布をはじめました。
1994年10月のはじめての配布で1100個を無料配布、その後、1995年には、公民館などの施設に持ち帰り用無料石けんを置きはじめ、
町民に環境問題やリサイクルへの理解を呼びかけはじめました。
石けん作りは、当初から、各地でリサイクル石けん作りを実践している方々などを招き、
定期的に学習会を開いて石けんを作る調理員の技術を高めました。
当初は、休みの土曜日をつぶしてこれらの活動をすることに抵抗のあった調理員もいましたが、リサイクルや環境への意味合い、また、
もらう人達からの感謝などを受けて、全員が交代で取り組んでいます。
町のイベントなどを通じ、町民に石けんや廃食用油の処理についてアンケートをとり、
家庭用廃食用油が燃えるごみや排水として流されている現状をふまえて、2001年7月には、
小学校の協力を得て一般家庭での廃食用油の回収をはじめました。
町を5つの小学校の校区ごとに区切り、その校区の廃食用油を小学校の調理室に持ってきてもらい、回収するという方法です。2001年は、
7月と12月に行ない、1回目が約
100リットル、2回目が150リットルの廃食用油を回収。調理員の手で固形石けんとしてよみがえりました。
廃食用油は、給食調理の現場から年間約1.5トン、その他の公共施設から320kgほど出ています。これらが石けんとなります。
一般家庭から回収された廃食用油は、すべてを石けんにできないため、リサイクル業者が無償で処理等に協力しています。
固形石けんの無料配布は、数年が経ち、定着したようです。
一般家庭からの廃食用油回収については、はじまったばかりであり、岡垣町の広報紙やホームページなどで告知を行っていますが、
まだまだこれからPRが必要です。
今のところ、これらの活動に必要な苛性ソーダや機械類などの費用は、岡垣町職員労働組合が拠出しており、また、
調理員のボランティア活動によって成り立っています。
この活動は、環境問題やリサイクルに対する町民への啓発として、あるいは廃棄物処理事業として、さらには、
岡垣町のイメージアップにつながる取り組みとして、大きな成果を上げています。
ぜひ、岡垣町の事業として位置づけ、より活発な町の活動へと広がっていくことを期待してやみません。
岡垣町の保育所、小学校の調理員の取り組みは、自発的に子どものことを考えた給食の安全性や教育としての可能性を追求し、さらには、
石けん作りと使用、啓発といった、調理現場から生まれる生活に密着した環境対策事業を行うなど、直営調理員であり、
公務員である可能性を十二分に活かしている活動です。
これだけの取り組みをしているにもかかわらず、やはり、調理の民間委託という話が出てきます。
仮に調理の民間委託によりコストが削減できたとしても、これだけの取り組みと、
将来の可能性を失うのは岡垣町とそこで育つ子どもたちにとって実に惜しまれることではないでしょうか。
岡垣町の調理の民間委託化と中学校給食の自校直営での実現に向けた動きの今後に注目したいと思います。
他地域での調理員、栄養士らの取り組みの実例、あるいは、民間委託化との関わりについて、皆様からの情報をお待ちしております。
(学校給食ニュース2002年11月号より)
[ 2002年12月31日 ]
学童保育所での給食実施 福岡県穂波町
学校給食全国集会 結果報告
2002年2月25日開催しました
事例発表:学童保育所での給食実施について
福岡県穂波町職員労組書記長 森田雪(もりたきよむ)さん
穂波町で昨年とりくみました、学童保育所における給食の実施についてご報告させていただきます。私は単位組合で役員をしていますが、
現場の個別事例は分かりません。それを前提にお聞きください。2002年3月末で国・地方の債務が666兆円になります。
近年の長引く不況で国や地方自治体の財政も破綻に近づいています。財政の硬直化が年々深刻になる一方で、行政に対する住民の要望は複雑化、
多様化し、行財政に対する住民の関心も強まっています。穂波町においても同様です。穂波町は、福岡市・北九州市までそれぞれ車で40分、
人口約27000人、町立小学校5校、中学校2校あります。小学校5校全校で学童保育所を設置しています。給食は小中ともに直営・自校方式です。
調理員は正職員19名に臨時職員がいます。
財政面からみて、今日人件費が問題にされています。とりわけ、学校給食の夏休み、冬休み、春休みの3期の問題がクローズアップされています。
そのような状況下、町当局はすでに民間委託した学校給食調理場の視察やセンター化に向けた見学が行われています。
私は、以前議会事務局におり、労組として議員さん達との人脈があります。
議員さんから民間委託や給食センターについて教育委員会のあらゆる会議での話題が多く、各委員も関心を持っていると教えて頂きました。行政が、
現実として人件費をコストという観点から施策の議論をしがちになっています。
夏休みの問題については、労組としても以前から課題にしていました。近年厳しくなった公務員をとりまく環境で、
学校給食現場がまっさきに問題になります。そこで、この指摘を受け、教育委員会や住民の皆さんにきちんと提案できることをしようと議論しました。
その中で、3つの方法が検討されました。
1:町立保育所の調理を手伝う
2:老人向け配食サービスの調理を手伝う
3:学童保育所の夏休み期間に給食を実施する
これらを検討しましたが、町立保育所、老人向け配食サービスについては、夏休み以外は対応できないため、
学童保育所の案にしぼって考えることにしました。
現業職員全員に集まっていただき、これについて説明しました。
まず、学童保育所がフルタイム実施されている時期と学校が休みで給食調理業務を行なわない時期は当然一致します。そしてこのことの実施は、
住民福祉の向上につながります。さらに、調理員が各校で対応でき、本来の業務ができます。
この提案に対しては、現場では新たな業務が増えることに対する異論もありましたが、結果的には賛成の声が多く、実行することとしました。
この提案に先立って、組合として学童保育所の実態を調査しました。すると、私たちが考えていたように、
手作りの弁当を持ってくる子どももいますが、ほか弁、パン、カップラーメンを持ってくる子どももいました。中には何も持ってこず、
学童の先生がみかねて何かつくったり、パンを買って渡すというような実態が浮かびました。
この実態と調理員の賛成を得て、町当局に提案しました。提案は、1999年です。それから、2001年まで当局は回答を引きのばし、
まったく後ろ向きの姿勢でした。組合としては実現を願い、福岡県の自治労県本部に問い合わせをしました。全国初かなと思っておりましたが、
もちろん、そうはいかず、先進地の照会依頼をしましたところ、九州にはなく、山口県萩市が実施されていたため、
2001年2月27日に視察に行きました。
萩市では、私が頭で思い描いていたそのものが実践されていました。この学童保育所での給食実施については、保護者、子ども達からも好評であり、
穂波町での実施に自信をつけることができました。
これをふまえて当局と再度交渉し、町長の同意を得て実施への方向が決まりました。実施を具体化するためにアンケートをとるよう当局に要請し、
学童保育所利用の保護者に意見を求めたところ、8割前後の保護者から希望がよせられました。
2001年6月議会で、町長が表明、補正予算が提出され、可決されました。
これをうけて、調理員との具体的な協議に入り、中学校調理員を含めたローテーションを組むこと、調理器具の購入は必要最小限とし、調理室、
家庭科室の器具を使うこと。メニューは過去の評判がよかったものの中から調理員が選び、できる限り手作りする。
検食と保存は通常の学校給食と同様にする。料金は1食250円を目標として、米飯で行う。パン、牛乳は使用しない。
1週間ごとに給食日数の希望をとり、料金は前払い、取り消しは認めない。余剰金がでたら返還する。今年度(2001年度)実施期間は、
夏休み初日の7月21日から8月31日のうち土日、盆前後、研修日を除いた23日間とすることを決めました。
5校のうち、2001年に実現できたのは2カ所です。これにかかった補正予算は、追加の器具など約25万円で済みました。なお、
食費の250円は、萩市の例を参考にしました。
食材の購入は、調理員が自分たちで買い出しに行きました。
1校は、余裕教室、もう1校は別棟で学童保育を行っており、給食は余裕教室にて提供しました。
実施結果ですが、250円に対し、131円で実施することができました。残金は全額還付しました。これを踏まえて、町当局に申し入れし、
来年度以降の実施と未実施校中2校の実施に向けて、今回給食を実施した2ヶ所の保護者へのアンケートをとるよう求めました。なお、
残る1校は改築中です。実施したが学童保育所の保護者へのアンケートはほとんどが高い評価を示していました。
子どもは6~7割が好評でした。食べ残しはまったくありませんでした。通常の学校給食とは違い、学童保育は、
評判のよかったものをメニューにしたこと、通常の学校給食では量の関係で冷凍食品を使うこともありますが、
できるだけ手作りしたことがこのような結果になったと思います。
また、当初弁当を持ってきた子どもも、まわりが給食を食べているため、親にせがんで給食を食べたいとして、
ほとんど給食を選択するようになりました。
今回の取り組みでは、学童保育所の設置背景が、従来からの共働き家庭だけでなく、不況による新たな共働き家庭の増加と女性の社会進出、
母子家庭、父子家庭の増加があります。子ども達を取り巻く社会不安も増加しており、家庭や地域の子育て機能が低下しているからこそ、
学童保育所の必要性があると思います。
本来であれば、夏休みぐらいは母親がつくる弁当を持ってきて食べるということが理想だろうと思います。しかし、現実は、
弁当を持ってきている子どもが多いとは言えません。理想と現実には差があります。
そこに学童保育所での給食提供の役割があったのではないかと思います。
今回の学童保育給食は、より手作りのものを提供した結果、食べ残しがなくて好評だったということがありました。これは、
コストを抑える民間委託、あるいは、一カ所で何千食もつくる給食センターの合理性など、食べ残しを増やす「効率・簡素化・コスト論」ではなく、
「自治体直営による自校方式」をめざすべきだという一定の方向性を示されたのではないかと考えます。
今回の実施は夏休みだけですが、冬休み、春休みについても要望があれば対応を考えようと思っています。もちろん、現場の声も大切です。
冬休みは年末年始を除くと実効性がなく難しいかと思っており、春休みが今後の課題です。
今後は、全カ所実施とともに、地場農産物を活用し生産者と連携したり、保護者と子ども達とのふれあいクッキング、昼食などを実施し、
多様な食育効果を検討する必要があると思います。
■質問:鳥取県米子市、2001年夏よりなかよし学級という学童保育をはじめました。米子市は学校給食センター方式ですが、 食器をどうするかということで、弁当箱で作っています。穂波町では食器をどうされたのでしょうか。また、調理員の方の感想などを教えてください。 米子市では、最初反対もありましたが、やってみたら調理員もやりがいを感じ、やってよかったという意見も多くありました。
●答え:食器は、学校給食用のものを使いました。材質は、アルマイトです。感想ですが、最初は反対意見がありました。協議を重ね、 危機感をもって取り組みました。その結果、配膳等で子どもと直接ふれあえ、おいしかったという子どもの言葉を聞いて、 やってよかったと思っています。(穂波町の調理員が回答)
■質問:千葉県柏市からです。事前のアンケートはしましたか?学童保育給食の実施について結果の反応で、 子どもが6~7割評価ということですが、残りはどうでしたか?
●答え:事前のアンケートは、希望が7~8割。農村部では希望が少なく、住宅地では希望が多いという結果になりました。 農村部では1割程度の希望でした。アンケートの取り方や私たちの意図の問題もあったかと思います。事後のアンケートのうち、 子ども達の評価についてですが、アンケートの取り方は、「とてもおいしかった・おいしかった・ふつう・あまりおいしくなかった・ おいしくなかった」という質問で、「あまりおいしくなかった・おいしくなかった」という回答はほとんどなく、「とてもおいしかった・ おいしかった」が6~7割で、「ふつう」をいれると9割となり、通常の学校給食に比べればよかったと言えますし、 食べ残しがなかったことがそれを裏付けています。量についても聞きましたが、「多かった・ちょうどよかった・少なかった」については、 「ちょうどよかった」が6割、あとは個人差だと思います。料金については、保護者にアンケートを取り250円については、 適当だという回答が多かったです。
■質問:福岡県久留米市からです。女性の社会進出というところから考えるとすばらしい取り組みだと思います。調理員の夏休みについて、 久留米でも議員から質問があります。その意味でもこの取り組みを広げていくことが必要だと思い、手法をもっと聞きたいと思います。 予算が2校実施で25万円ということですが、3カ所増やすとこの予算は増えていくのでしょうか。また、この予算は、 必要に応じてまた組まれることがあるのでしょうか。
●答え:25万円の中身は調理器具です。大半がガスレンジの代金です。給食室の回転釜では大きすぎますので、 人数に見合う調理器具を購入しました。また、調味料、水道光熱費が予算として支出されました。人件費はかかっていません。 今後必要になる予算としては、ガスレンジなどの新規購入ぐらいでしょう。当面は、これ以上の追加予算措置はありません。 平成14年度の実施に向けて必要な予算計上がされると思います。
■質問:富山県高岡市職です。夏期休業中の清掃や補修などの作業はどのようにして対処しましたか?また、調理員何人で、 ひとりあたま何日出て、何食作りましたか?
●答え:同じ意見が調理員より出ました。組合としては8月31日まで学童給食を実施したいとしていましたが、調理員からは、
2学期前のしばらくは清掃、準備等が必要ということでした。
未実施期間としました町主催の研修日については、盆の前後が子どもの出席が少ないので、その間にしてもらうよう町に要請しました。機器整備、
清掃、準備については、ローテーションを組んで学童給食をやっているので、それ以外の人は、自分の職場の通常作業をやりました。実施校は、
なかなかたいへんでしたが、通常業務に比べれば食数が少ないので、調理時間、片づけ時間が短くて済みます。そこで、
学童給食を終えてから通常業務を行い、学期前後業務が通常3日で終わることは5日で、というように対応してもらいました。
学童給食の食数は、だいたい70食前後です。少ないと40食ぐらいでした。
■質問:長野県の調理員です。学童給食をやった場合、夏の暑い時期、万が一食中毒が起きた場合、責任はどうなるのか。また、 アレルギーなどの除去食は対応されていますか。また、通常の調理マニュアルに沿って野菜のすべて熱を通すとか、 食器の熱消毒などをやっているのでしょうか。131円という値段を出すことで、 普段の給食費が高いのではないかという問題がでるのではないかという一点。自費負担が多いため、 学童には公務員の子どもや先生の子どもしか学童にはやれないという声があるのですが、 さらにこのサービスによってサービスの不均衡があるのではないかと思いますがいかがですか?
●答え:食中毒の問題ですが、実施にあたって内部でも外部でも指摘がありました。検食、保存食は通常の学校給食通りにやりました。 アレルギー対応は、実施していません。調理員にもプライドがあります。通常と同様に衛生面に気をつかってやりました。 131円は牛乳を提供していないことなどがあり、比較できないと思います。牛乳を提供しないことについても特別な声はありませんでした。 サービスの不均衡という声は今のところありません。
■質問:沖縄県からです。栄養士は関わっていますか?栄養士は食養構成に基づいて献立をたてます。栄養士としては、
残食がなかったというのは気になります。
給食の場合栄養価を気にするため、残量があります。また、子ども達が好きなものだけをつくるわけにもいきません。
●答え:献立作成に栄養士は関わっていません。今年度は第1年次の取り組みということもあって、メニューは子どもが好きなメニューで選び、 カロリー面などは考えないことにしました。今後より検討が必要です。
■質問:広島県東広島市職労です。学童保育への夏休み給食を当局と交渉しましたが、住民サービスの不均衡でけられてしまいました。 穂波町でも3年前に提案ということでしたが、アンケートの結果で実施されたのでしょうか。それとも、他の、 住民からの要請などがあったのでしょうか。交渉の経緯や実現への方策を教えてください。
●答え:サービスの不均衡については、そもそも学童保育所の設置は、それ自体学童保育所を利用する子、しない子があります。また、 学童保育所の給食に新たな助成があれば不均衡になるかもしれませんが、食材費は保護者負担ですし、学童保育所での給食が不均衡なら、 学童保育所の設置自体が不均衡になると考えます。町長は、夏休みぐらい親が弁当を作るべきだと難色を示してきました。 ならばなぜ夏休みぐらい親が学童保育所に預けず、面倒をみないのか、実際に学童保育所が必要になる背景を考えれば、 学童保育所の給食もその延長にあるのではないかという話をして、また、アンケートの結果をみても、支持があるということで交渉し、 合意を得ました。
■意見:世田谷区の栄養士です。この話には納得がいきません。私たちは子ども達のための学校給食の実現を目指して全国集会をやっています。 調理員の仕事の未来をどうするかという話になっているのではないかという気がします。世田谷区でも、 学校給食の調理員による保育所のお手伝いがはじまりました。調理員はほとんど休めない状況で、休んでも代替がこない状況です。 大きな仕事は夏休みしかできません。そういう時にしか休めない状況で保育所のお手伝いがはじまるというのは矛盾を感じます。 民間委託が進んでいく中で、調理員としてどう考えるかということは分かりますが、本来の学校給食を考えることが必要ではないかと思います。 地方と都市部の差はあると思いますが、学校給食を民間委託にしない方法を学校給食の面でどう考えるかということが大切ではないでしょうか。 そうでなければ、このような取り組みも、やがて民間委託になってしまうのではないかと思います。 学校給食はいかにあるべきかを考えていきたいと思います。
●答え:今の意見は当然ありました。自分たちの都合のいい理屈をつけて、子ども達を利用して身の保全をはかっているのではないかと。ただ、
基本的には労働組合としては調理員の身分を守り、民間委託とセンター化を阻止したいというのが使命だと思います。
新たな労働強化にはなっていますが、社会的にみて、調理員の夏休みの状況を説明しうるかというと難しいものもあります。この不況下、
やむをえず共働きという状況もあります。学童保育に預けざるを得ないという状況です。私自身も学童保育に子どもを預け、
安心して働けるという時期がありました。経費をかけず、住民福祉に寄与できるのであれば、出発点がどうあれやっていいのではないかと思います。
[ 2002年02月25日 ]
若者の街・原宿の学校給食 渋谷区立原宿外苑中学校
「渋谷区原宿」と聞いただけで、若者の街、ジャンクフードというイメージがあります。もちろん、この地区にも住宅があり、生活があり、
学校があります。そして、学校には給食があります。
東京都渋谷区は、全校自校直営方式です。栄養士は都基準の配置で、栄養士が配置されていない学校の場合統一献立です。
食材購入は栄養士の配置にかかわらず各校独自でやっています。調理員は、全員正規職員ですが、近年、退職者の再雇用の例もあります。
原宿外苑中学校は、原宿中学校と外苑中学校が1997年に統合されてできた学校です。統合後は外苑中学校の校舎等がそのまま使われています。
原宿外苑中学校には、栄養士は配置されていません。調理員は再雇用1名を含む6名で約360食を調理しています。
この原宿外苑中学校では、調理員が積極的に学校の職員に働きかけ、教育の一環として学校全体や地域、
保護者が給食を活かすため様々な取り組みをしています。
「給食だから、あれはできない、これはできないの時代を終わらせ、給食だからこそ、あれもできる、これもできる時代にしたい」
という考えの上に立ち、給食の質を高めようとしています。
■給食日誌
統合される以前の1994年から、毎日給食についての意見や感想を給食委員を中心に「給食日誌」に記入してもらい、
それに毎日返事を書く活動を続けています。「マーボーライスがおいしかった」「杏仁豆腐がおいしかった」「さかなの骨が柔らかかった」
という声や、「グレープフルーツは人気に差があった」「レタススープの具はもう少し多い方がいい」「味噌汁がちょっと辛かった」
といった意見などがあり、返事を書きながら生徒が何を考え、何を望んでいるのかが分かるようになっています。
このほか、毎月1回の給食委員会にも調理員が全員出席して、生徒と交流を深めています。
■給食室から(給食だより)
毎月、献立予定表を出していますが、その半分は、調理員からのメッセージです。
調理員の自己紹介、簡単なレシピ、箸の上手な使い方、給食日誌から声の紹介など、保護者、生徒と給食室をつないでいます。
また、「原宿外苑中学校の給食」という30分弱のビデオを作成し、
ふだん入れない給食室の調理の様子や原宿外苑中学校の給食の特徴をまとめています。
■試食会
試食会は、年に1回、毎年2月頃、保護者からの要請を受けて行い、実際に給食を食べてもらいます。出した給食の内容だけでなく、
いくつかの給食のレシピを示しながら、ダシに天然のものを使っていることや、カレールー、
ハンバーグなどをすべて手作りしていることなども紹介します。上記のビデオで実際の調理風景を教えています。そして、
その場での意見交換も給食に役立てます。実際に、98年度には、試食会で「郷土料理を出してみたらどうか」という提案があり、
4月から月に1度郷土料理を出すようにしています
■タケノコ、梅、八重桜、野菜畑
たけのこ掘りの風景
給食室横の小 さな畑で里芋掘り
原宿外苑中学校には、竹林、梅の木、八重桜の木があります。春にはタケノコを掘り、タケノコ料理を出します。
八重桜の花びらは塩漬けにして翌年の春、桜おこわになります。梅は、手作りの梅漬けにして、給食に出します。
タケノコ堀りや梅もぎなどは、ポスターを作成して、生徒に手伝いを呼びかけています。また、毎年11月には生徒も参加して芋掘りを行い、
翌日の給食に出してます。
給食室の横には小さな畑があり、ここではキヌサヤ、ラディッシュ、大葉、ミント、キュウリ、里芋などが調理員の手で栽培されています。そして、
給食に役立てられています。
いずれも量は多くありませんが、都心でも、工夫次第で「地場型給食」の考え方である、地域で、素材の生産から加工、
食べるまでを体験することが可能なことを教えています。
■独自献立
原宿外苑中学校では、栄養士が配置されていないため、統一献立となります。毎月来る統一献立を基本にしながらも、
行事や実際の残菜量などを考え、調理員が独自に献立を立てています。もちろん、カロリーや栄養素などの計算も行います。
栄養士も献立を確認しています。そして、食材の発注や給食費の計算もやっています。
そこで、原宿外苑中学校ならではの献立が生まれ、以下のような新たな工夫も生まれています。
●A定、B定~セレクト給食
原宿外苑中学校の人気献立は、
1位 A定、B定
2位 カレーライス
3位 ミートスパゲッティ
4位 オムライス
5位 太巻寿司、ジャンボいなり です。
一番人気が高いA定、B定は月に1度のセレクト給食です。A定食が肉料理、B定食が魚料理で、事前に注文をとって実施されています。 もともとは、肉にかたよりがちな食生活に少しでも魚料理を取り入れて欲しいという気持ちからはじめられました。1997年にはじまりましたが、 99年7月にはじめてB定食がA定食の数を上回りました。ちなみにA定食がチキンカツ、B定食がサーモンムニエルでした。
●リクエスト給食
生徒からアンケートをとり、リクエスト給食として実施しています。98年10月の「給食室から」では、このアンケートの結果をまとめています。
<できます>
茶碗蒸し、ドリア、オムライス、カルボナーラ、アメリカンドッグ、イタメシ、フカヒレスープ、ポテトフライ、ステーキ、ドーナツ、クレープ、
雑煮、有精卵のゆで卵、のり弁、ふろふき大根、アジの塩焼き、ラーメン、納豆、おしるこ、バイキング
<なんとかできるかな?>
キムチ、フランス料理、A定B定C定、湯豆腐、羊の肉、チーカマ、カニ汁、カエル、リゾット、焼き鳥、ペペロンチーノ
<うーんできない>
ミルフィーユ、チーズフォンデュ、京たこ焼、ツバメの巣、いかすみそうめん、もんじゃ焼き、ピザ、刺身、キムチ鍋、ペキンダック、
中国の王宮料理、おどりぐいシリーズ、うめ酒
●地域料理
試食会での意見をとりいれて、それまでも行っていた郷土料理を定期的に計画を立ててやってみました。新潟の笹寿司などは、
笹の葉を実際に新潟の方から送っていただいたりと、中身は本格的です。
●産直
リンゴは、長野県湯田中の佐藤さんご夫婦が栽培する低農薬のもの。別の地区の給食まつりでリンゴのことを知り、
職場旅行を兼ねて農場の見学をして扱っています。野菜についても、積極的に低農薬や有機栽培のものを選ぶようにしています。
●アレルギー対応
食物アレルギー、アトピーがある場合、養護教員と連携し、保護者と連絡を取りながら別献立を立てています。渋谷区全体でも、アレルギー食、
宗教食の対応はされており、特定のアレルギーの場合、別鍋で調理するなど手間を惜しまずにやっています。
■調理室からのメッセージ
同校の調理員で、渋谷区職員労働組合学校給食部会の役員をつとめる平沢さえ子さんは、あるレポートで次のように述べています。
「同じ材料でもひと工夫して目先を変えたり、ネーミングをおもしろくしただけで残菜が少なくなる。休憩室で雑談しているときにも、
テレビでこんな料理をやっていたとか、旅行に行って食べたのがおいしかったから作り方を聞いてきた、新聞や雑誌の切り抜きなど、
かしこまって考えるのでなく、たわいもない話の中から原宿外苑中のオリジナルメニューは生まれてくる。家から材料を持ってきて、
調理の合間に試作品を作ってみる。楽しみながらおいしいものをつくる。これがすべての秘訣だ。
ネーミングはつけるほうも楽しみながら、生徒をワクワクさせている。あけてびっくり花ちらし、UFOぎょうざ、花しゅうまい、
びっ栗むうしパン、宝さがしコロッケなど数えたらきりがないくらいある。
給食について様々な工夫をしてきたが、これをすべて労働強化だとか、職域を超えていると言ってしまえば、すべてはおもしろくなくなる。
確かに何もしないよりはひと手間もふた手間もかけている。しかし、その分、子ども達からも、親たちからも、
学校からも大きな反応が返ってくれば、手間のかけがえに余りあるものだ。
子ども達が目を輝かせて給食室をのぞきこんでくれれば、どんな苦労も吹き飛んでしまうと、みんなが思っている。
何よりも調理員自身が一番楽しんで、張り合いを持っている。少しずつ力を出し合い、工夫を出し合い、楽しみを分かち合っている。
学校給食を、文部省が教育の一環と位置づけていることを、調理員自身が活用していない。宝の持ち腐れ、といえる。
私の学校でもまだまだ試みの段階だし、少々無理をしている。しかし、やる気のある人たちが集まった職場なので、
チームワークで意欲的に乗り切っている。
休み時間も十分にとれないときもあるが、何か新しいことをやるときって、そんなことかまっちゃいられないくらいおもしろいと思う。
この数年間やっただけで、教員も目を向けてきた。子ども達もおおいに反応がある。PTAにもたくさん知り合いができた。
めざましくはないけれど、なにか地面の下で動きつつある気配が強い。また、他の学校にも共感を呼びつつあるはずだと思っている。
一般的に“おいしい給食を作る”といっても、グルメのおいしさや子どもの「受け」をねらったおいしさを目指すものではないと思う。
日常の食生活の一端を担っているという意味で、作り手と食べての姿がお互いに見え、人間として響きあっていくなかで作られるアジ、
決して食べ飽きないおいしさ、学校という生活の場での生活に根ざしたおいしさを目指していくべきだと思う。
教員との関係、子どもをめぐる教員との関係、教員を通じての子どもとの関係、子ども自身との関係といった、人間としての“おつき合い”
の中で培われていく味=おいしさを目指していくべきだと思う。
直営だからこそできること、おいしさとはそういうことだと思う。
そして、そのおいしさを支えているのは栄養士でもあり、学校でもあるかも知れないが、何よりも調理員であるはずだ。調理員は調理機械ではない。
標準のレシピは、季節や食材や調理方法、ちょっとした思いやりで様々な工夫や手を加える余地がある。その工夫こそが大きく味わいを支えていく。
それができるのが現場の調理員だ。
栄養士を配置し、その指示(標準・マニュアル)通りやるから、調理員が民間委託に変わっても“何一つ変わりはありません”と、
民間委託を進めるすべての当局者が口を揃えて言う。調理員の力、その人間としての子ども達へ向けた思い、学校での職員としての位置、
子ども達との人間関係といったすべてを否定するところに「調理員が学校職員である必要がない民間委託」は成り立っている。
このような当局のコスト一辺倒の論理を許さない“給食の豊かさ”“作り手と食べての顔が見える、人間として響きあえる”
給食をめざすべきではないだろうか」
調理室の見学会
(2000.06.04)
[ 2000年12月31日 ]
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