学校給食ニュース
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栄養士の民間委託について

学校給食全国集会 結果報告
2002年2月25日開催しました


事例発表:栄養士の民間委託について
福島県福島市御山小学校栄養士 遠藤幸子(えんどうこうこ)さん


 福島県内の各地区で調理が民間委託化されていますが、栄養士も民間委託されている現状の報告に来ました。福島県のある市で、 栄養士のいない単独校に来年度4月から民間の栄養士を委託する予定があるといいます。 委託を受けるのは市内の学校給食調理を請け負う委託業者です。栄養士のいないそれぞれの単独校では、学校給食の献立作成、 発注業務等は養護教諭が行っていました。栄養士がいる単独校で参考資料として献立を配布していたこともあります。 養護教諭側からこれらの業務を軽減し、養護教諭本来の業務に力を入れたいという強い要望がずいぶん以前からありました。市の教育委員会では、 昨今の行政政策、定数管理の中で、栄養士の配置は困難であり、現在調理業務を委託している業者に献立の作成等を依頼することにした、といいます。 この方式の場合、民間業者の栄養士がひとり各学校を訪問し、調理員の指導を行うとともに、 各学校の移行にもとづいてそれぞれの学校に合った献立を作る、各学校の人数にあった発注量の計算をする、 給食関係帳簿の作成といった仕事をします。食材の調達については、各学校が現在契約している地元の商店から購入するなど、 今まで通りの方法をとります。
 これらの業務については、県費の他の学校の栄養士が民間の栄養士に指導するという形になり、 県費の栄養士が市の教育委員会から依頼を受けました。
 このことについて、私たちが懸念していることは、ひとつ目に、学校給食は教育の一環であり、 そこに営利追求の立場にある民間業者が雇用する栄養士が入ったとしたら食材の鮮度や安全性の確認が十分にできるのだろうか、問題が多い。 ふたつ目に、たとえフルタイムの採用であっても栄養士のいない学校現場における調理指導などができるかどうか、疑問である。三つ目、 民間の栄養士は直営の栄養士のように様々な情報が届かない。たとえば、文部科学省からの通達は届かないし、研修会などへの参加はどう扱うのか。 4つ目、食中毒や事故が起こったときの責任問題はどうなっているのか。これについては、献立の責任は学校長、 発注関係は養護教諭の責任と明確にされました。5つ目、今のところ各学校ごとにあった献立を作成すると言っていますが、やがては共同献立、 共同購入の段階に行き、委託業者の販売している商品を扱うこととなり、委託業者の利潤追求目的の成果を上げるようになるのではなかろうか。 というような様々な問題が上げられます。
 この話を聞いて、私も勉強不足であり、日教組前栄養職員部長の関根美智子さんに相談しました。1985年1月21日、文部省体育局局長発 「学校給食業務の運営の合理化通知」3の(3)民間委託の実施の中で、「献立の作成は、 設置者が直接責任をもって実施するものであるから委託の対象にしないこと」とあります。福島県教組栄養職員部部長の籏野梨恵子を中心として、 県交渉で話し合いを持ちましたが、明確な回答は得られませんでした。
 一方で、今、栄養士のいない単独校で調理員委託の学校の先生から話を聞くと、極端な例だと思いますが、 「ちくわの天ぷらがひとり4本も出て食べきれなかった」「ひじきの煮物が出たが、長ひじきが切られていなかったため、 うどんのように長いひじきの煮物が出てきた」「給食ができあがらず、2時頃給食を食べた」などと、びっくりするような話をします。 そんなに困っているのであれば、そのことを直接調理員に言ったらどうですかと私が言ったところ、「学校の人ではなく、委託会社の人だから、 同じ職場にいても交流がまったくなく、しゃべる機会もない」と言うのです。
 学校に県費の栄養士がいれば、職員間の橋渡しができますが、 委託のデメリットと栄養士がいないデメリットはこういうところにもあらわれてきます。
 今、お話しした一連の経緯を私が聞いたときから、いろいろと考えました。私たちは一体何のために給食を作っているのだろうか、 私自身も毎日の仕事の中で、衛生管理の徹底や献立の多様化、作業導線や作業工程表、温度管理といった記録しなければならない膨大な量、調理員、 先生方、職員、管理職との人間関係などの仕事をしているうちに、子ども達のためにという大事なことを忘れてしまいがちです。これは、 教育に関しても同じことが言えると思います。文部科学省側から学習塾に対して体験学習の協力要請、学力向上要請をしているのと、 学校給食の民間委託はとても似ている感じがして、大事なことを忘れてはいないでしょうか。そして、いつの間にか、 自分たちの利潤ばかりを追求してはいないでしょうか。私たちは、子ども達の今の健康、将来の健康のために給食を作って、 食教育をしているということを忘れてはいけないと思います。そのためには、私たちも健康でなければいけないし、 自分たちの仕事を守っていかなければいけないし、仕事に誇りを持ち、 学校給食民間委託化の危険性をもっと訴え続けなければいけないと強く思っています。

■意見:千葉県柏市、調理員です。私たちの職場は誰のためにあるか、もう一度よく考えなければならないと思います。 確かに私たちはボランティアで仕事をしているわけではありません。労働する組合はとても大事ですし、職場がないのが一番厳しい状況です。しかし、 一方的な受け身しかできない弱い立場の子ども達が、給食を生活の一部として食べるという状況です。 子育ての中に給食がどれだけ役割を果たしているのか。
柏市でも、民間委託で、献立は直営同じ、購入は市が行い、栄養士は自校に配置されています。できばえだけでは、 直営と民間委託に差はありませんが、作る過程の状況には少しずつ差が開きます。教育を考えたときに、教育に根ざしたものかどうか、 委託か直営化のギャップがでてきます。
職場の重要性もありますが、学校給食が誰のためにあるのかを私たちは考えるべきです。
今の子ども達に欠けている部分を補えるものは何か。
今のように民間委託と共存しながら闘わなければならない状況はどういうことなのか、もういちど全国の仲間を通して、 子ども達を守っていくための給食のあり方を深く考えていく必要があります。

■質問:東京都北区からきました。北区でも民間委託が進み、来年度は8校導入されます。民間委託問題が入ったとき、 学校給食の人間は検討委員会に入っていませんでした。北区でも老人給食などをやりながら闘争してきました。民間委託が提案され、 やむなく妥結したとき、北区では栄養士数名が民間委託に反対しましたが、残りの多くの栄養士は賛成しました。 改めてできた検討委員会でも栄養士が座長になりましたが、どういうように委託業者に指示するかというような委員会になってしまいました。
初期に民間委託が導入された足立区の栄養士、台東区の栄養士と交流した中で、実際、委託業者は学校給食をやったことがなく、 栄養士が中に入らなければできないという状況がありました。逆に、対応方法を全部教えてしまった、と栄養士が反省していました。
というのも、その後、それらの業者が他の学校給食委託を受けていくようになったからです。
栄養士が民間委託化されるということですが、そこは、調理も民間委託ですか?
また、東京では、栄養士がいるところを民間委託します。正規職員だけでなく、非常勤の栄養士がいます。 栄養士がいない学校では民間委託ということはありません。

●答え:私が新採用で入ったときに、すでに調理は民間委託の学校でした。だから、そういうものだと思っていました。後から、 他の地区で民間委託になって大変だという栄養士の話を聞けば、直接調理員全員に指導ができず、キャップの人ひとりに伝え、 キャップが他の調理員に指導するということが原則だとして、コミュニケーションがとても大変だそうです。検収は栄養士が行うということで、 怪我をして松葉杖をついても学校に検収に行ったという話も聞きました。
 私自身が関わったことで感じたことは、民間委託の方でも、いろんな方がいます。給料が安いということで、これぐらいの給料しかもらわないから、 働きもこれくらい、とか、人事異動で人が交代していくうちに、そういう人が増えていき、子どものために一生懸命やろうとか、 私がお金をかせがなければ、という人は一生懸命やっていたのですが、だんだん、そうではなくなってきました。
 保障された身分がなく、プライドもなくしてしまうような民間委託はよくないと思います。
 まだ、栄養士は民間委託にはなっていません。2002年4月からです。対象は何校かあって、それを巡回することになります。 調理はすべて民間委託の学校です。

■意見:群馬県藤岡市から来ました。調理員であり、PTA会長でもあります。私も給食の民間委託についての話はずいぶん聞いてますが、 栄養士についてははじめて聞きました。自治体当局が、教育の一環として学校給食を考えているのだろうか。なんでもいいから、 給食を子ども達に食べさせればいいんだ、安ければいいんだという姿勢が見えています。このような姿勢は納得できません。 子ども達に安心しておいしい給食を出すためには、最低限、栄養士だけでも県費、自治体の職員であって欲しいです。

●答え:私もそう思います。せめて栄養士だけ、ではなく、調理員もみな委託でないほうがよいと思います。

■意見:長野県でも、栄養士ごとすべて民間委託という話がありました。そこでは、栄養士がいないところで養護教員が献立、 発注を立てていました。その話があったとき、給食の仕事をやるのは大変だが、子ども達のためだからということで、 養護教員側が断って阻止したというケースがあります。

 このほかにもたくさんのご意見をいただきました。すべてを掲載できませんが、どうぞご了承ください。
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[ 02/12/31 委託・合理化 ]


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