東京都文京区 民間委託の方針について 栄養職員として反対
●東京都文京区
民間委託の方針
栄養職員として反対します。
以下、東京都文京区の小学校栄養職員の方から報告です。
民間委託方針について、意見・要望を区当局に挙げる機会があり、
提出した文章です。
昨年7月から検討された文京区立学校給食のあり方検討委員会中間報告が下記の3諮問事項にそって6月3日に出され、 22日には臨時の栄養士会が召集され、学務課長の説明、7月16日には児童生徒を通してチラシの配布、19日には区の公報で特集号を組み、 区民への報告と説明会開催のお知らせ、「ご意見・ご要望をお寄せください」とありました。
1:「学校給食の多様な給食内容の充実について」では、
★献立の充実と給食方法の多様化。
★給食食器などの改善。
★ランチルームの整備。
がうたわれています。
2:「栄養士等の給食従事職員の配置について」では、「今後、学校における栄養指導を真に効果的な教育活動として組織化、体系化するには、 新たな財政負担を考慮しつつ小・中学校への栄養士の全校配置をすすめることが必要です」とあります。
3:「調理業務の委託について」では、「……学校給食においても実績と信用ある民間の給食専門会社のノウハウを十分に活用することで、 これまでの区の自校単独調理方式を生かし、より効率的な給食運営をおこなうことが可能であるとの認識に達しました」「……さらに、 委託業者の選定にあたっては、保護者や教職員等学校関係者を含め、企画性・運営力・安全性・経費など多方面にわたる検討を行うことが必要です」 とあります。
8月11日付けで、文京区立学校給食のあり方検討委員会中間報告書についての意見・要望があったらお寄せください。 と調理師始め栄養職員・学校長・共闘・給食主任に文書が送付されました。以下は、私が寄せた文書です。
民間委託にすることで本当にこどもにとっての学校給食は良くなるのでしょうか。
その前に、「学校給食の多様な給食内容の充実について」で、○献立の充実と給食方法の多様化。○給食食器などの改善。○ランチルームの整備。
が挙げられていますが、こどものアレルギーが増加している今、環境ホルモンや遺伝子組み換え食品を排除し、石けん切り替え・
無農薬有機農産物の使用を進めることがこどもの健康に寄与することと考えますが、お考えはいかがでしょうか。
次に、給食運営の現状の中で関係職員の仕事の仕方や考え方に問題があり、民間委託の方向が出される要因になっていることは理解できますが、
では文京区の職員である調理師や文京区の給食運営に係わっている栄養士の意識改善に区当局がどれほど努力をされてきたのでしょうか。
区当局の責任を明確にしないまま、調理部門の民間委託化は一部であれ、
こどものために一生懸命に給食を作ってきた職員には納得のいくものではありません。
O-157による食中毒予防対策として、文部省から出された衛生管理基準に基づいて、衛生に気を付けて調理作業が遂行されていますが、
それぞれの施設設備・食数の異なる中で、給食関係職員の経験・知識を生かし、研さんを積んで安全でおいしい・
食教育の教材化できる給食づくりに取り組んでいる職員は少なくありません。栄養士が一方的に「指示」を出せば給食が充実・改善されるのではなく、
調理師と栄養士が知恵を出し合って作る給食が、今こどもにとって重要ではないでしょうか。「指示書」によって作られる民間委託の給食では、
将来にわたってこどもの側に立った「給食システム」と考えることはできません。
長年、学校給食運営に係わってきた調理師には、「指示書」でマニュアル化できない多くの技能・技術が培われてます。
こどもを取り巻く社会状況の急激な変化の中で、「食」や「よりよく生きていく」
ための情報発信源として調理師を活用してゆくことが新たな行政改革として有効な手段となります。
例えば、総合教育の中で石けんを使って食器を洗うこと・廃油を活用した石けんづくりは環境教育につながります。
大豆を育てみそやしょうゆを作ることで、食文化を知る機会となります。
学校給食を基に朝食や夕食の献立づくりのアドバイスや調理実習は地域との連携になります。無農薬・
有機野菜を使うことで農家の人とのつながりができ、食料生産の学習に役立てることができます。
何よりも人間が一人では生きていけないことや人とのつながり・思いやりを育むことができます。
この貴重な財産をなくしてしまわない行政姿勢であってください。
最後に、民間委託化の最大の問題点について述べます。
「給食業務の民間委託化」はどういう法律に裏付けられているのでしょうか。「労働者派遣法」は、中間搾取や強制労働を排除し、
労働者の雇用形態の民主化のために、労働者を派遣できる業務を16業務に限定しています。その中に給食業務は含まれていません。「職業安定法」
(第44条)「労働者供給事業を行うものから供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」とあり、
学校給食業務の委託は形式上「請負契約」の形を取るものの、実態としては調理業務のみを行う職員(社員)
が学校調理現場に受託会社から派遣されているのと何ら変わらず、「職業安定法44条」に違反するものです。
「請負契約」とは何か。労働省通達によって請負であるためには業務指示などの管理を業者自身が行うことになっています。
栄養士が直接民間委託の調理師に業務指示など行えず、受託した業者が業務指示を与えることになっています。また、機械や設備・
材料等も業者の責任と負担で準備することが請負の条件になっています。さらに、業者の企画や専門的技術・
経験で業務を処理することになっているため、「献立」もこの範疇になります。
法的には、献立作成も食材購入もできない、給食業務の民間委託化システムはこどものためにはなりません。区報ぶんきょう特集号に書かれてある
「学校栄養士が献立を作成することや学校が食材料の発注・品質の確認を行うといった基本的な枠組は変わらない…」は法的な裏付けがありません。
給食業務の民間委託は「栄養士の業務の民間委託化」にほかなりません。学校給食を充実発展させる施策ではありません。
撤回されることをのぞみます。
文京区 五十嵐興子(栄養職員)
1999
[ 99/12/31 委託・合理化 ]