学校給食ニュース
アレルギー | カテゴリ別記事一覧 | 時系列記事一覧 | トップページ |

アトピー・アレルギー最新情報

アトピッ子地球の子ネットワークに聞きました


 学校給食現場や、子どもたちの食生活の中で、アレルギー・アトピーの問題は年々大きくなっています。各自治体や学校現場では、アレルギー・ アトピーあるいは化学物質過敏症に対して、少しずつ対応が進んでいます。しかし、その対応はまちまちで、また、 責任の所在がはっきりしない場合も多くあります。
 また、2001年3月の食品衛生法改正により、アレルギー物質の表示制度が義務づけられました。移行期間を経て、 2002年4月より表示が義務化され、さまざまな食品に新たな表示が行われています。
 この表示制度や、学校生活でのアレルギーを持つ子どもへの対応について、 アレルギー問題に10年以上取組みを続ける市民団体アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長の赤城智美さんにお話を聞きました。
(聞き手・構成:ニュース編集 学校給食ニュース02年7月掲載)


■食品のアレルギー物質表示制度について
 2001年3月の食品衛生法改正により、アレルギー物質の表示制度が義務づけられました。移行期間を経て、 2002年4月より表示が義務化され、さまざまな食品に新たな表示が行われています。
 このアレルギー物質表示について、聞きました。

(表示制度とは)
 今回の食品衛生法の改正で、4月から義務表示とされたのは、「特定原材料」と呼ばれる、次の5品目です。
「卵、乳、小麦、そば、落花生」
 これらについては、原材料だけでなく、添加物や製造工程などで一部でも使われていれば、表示しなければなりません。
 また、上記5品目に次いでアレルギー反応を起こす人の数が比較的多かったり、反応の起こり方がはげしいものを「特定原材料に準じる」として、 できるかぎり表示することを求めた次の19品目があります。
「あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、 りんご、ゼラチン」
 この表示は、遺伝子組み換え食品のように一般消費者向けだけでなく、容器包装された業務用食品や加工食品の原料にも義務づけられています。 内容は2年ごとに見直されます。

(表示制度のとらえ方)
 まず、表示制度ができたことは評価します。では、この表示が、食物アレルギー患者にとって望まれるものか、という視点でみれば、 評価は分かれます。食品衛生法の表示制度は、あくまで、消費者に健康危害を起こさないためのもの、誤って食べたことでアナフィラキシー・ ショックを起こすなどの、重篤な健康被害をひき起こすことがないようにするためのものです。
 食物アレルギー患者を定義するのは難しいのですが、たとえば、ももを食べて口がかゆくなる口腔アレルギーや、 さばを食べてじんましんが出る人は、個別の食品へのアレルギーとは思っていても、自分のことを「食物アレルギー患者」 とは思っていないと思います。ここでは、食物アレルギー患者とは、いくつかの食物に対して、即時型あるいは遅延型の反応を起こすなど、 食に対して総合的な反応を起こす場合だとしておきましょう。
 この食物アレルギー患者にとっての表示としてみれば、即時型の反応を起こす人にとっては危険表示になりますから、 一定の評価できる表示制度です。
 しかし、細かくみていけばこの24品目でいいのか、ということはあります。今回、米(こめ)は入っていません。米に反応する人は多いのですが、 1時間以内に反応を起こすという即時性でみれば、米の反応は他の食品より低くなります。
 米が入っているかどうかを判断しなければならない患者も多くいます。
 なにを優先するのか、その点で、表示対象の整理がすっきりとできているとは言えません。また、表示制度が、食品衛生法、JAS法、 景品表示法など複数の省庁にまたがっていて、混乱している点も問題です。
 もちろん、食物アレルギー患者は、すでに表示制度以前に自分が食べる食品を選んでいます。食品の安全性や内容について知識を持ち、 有機野菜など原材料にこだわり、不要な添加物は使わず、製造方法がはっきりしたものを選んでいます。そのような人たちにとって、この表示制度は、 基本的に関係ないとも言えます。なぜならば、表示制度よりも厳しい基準をそれぞれが持っているからです。
 この表示制度で、食物アレルギー患者が安心して加工食品を選ぶようになったり、食品を選べる範囲が広がったわけではありません。その点は、 患者も、そうでない人も理解しておく必要があります。

(みんなが考えるチャンス)
 ただ、食品衛生法としては、公衆衛生的な立場から、先に触れたさばのじんましんのような多くの「食に反応している」 事例に対応している点で評価したいと思います。
 花粉症が増えていますが、この樹木花粉に反応する人が、果樹の果物(もも、りんご、キウイ、オレンジ)に反応するという相談が増えています。 また、落花生についても、ここ数年、相談が急増しています。食生活の変化でアレルギー反応を起こす食品も増えています。
 今回のアレルギー物質表示について、付け加えておきたいことは、 この表示によってこれまで使われているとは思っていなかったようなものが表示されるようになったことです。卵などは、 本当に何にでも使われていると知ることができます。この表示で、加工食品の作られ方が素人の私たちにも見えてくるようになりました。
 なぜ、シュークリームに鮭の表示があるのだろう? これは、保存料としての白子たんぱくや香料の原材料らしいのですが、不思議で、 違和感がありますよね。入れないとできないのだろうか。伝統的には使っていなかったはずなのに…、そうやって、 消費者や食品メーカーが製造方法を見直すことにつながっていけば、思わぬ表示効果があったと言えるのではないでしょうか。

(表示を読みとる教育を)
 食物アレルギー患者に対しても、そうではない人に対しても、表示を読みとり、食品を選ぶ教育があまりにされていません。 医師は患者の治療の一環として医師や栄養士、薬剤師らと協力して、情報を提供し、その情報を選ぶ力を患者に教育する必要があります。その点では、 医療分野での栄養士の役割はもっと大きくなるべきです。
 同様に、学校教育でも、食品の表示を読みとり、食品を選ぶための教育をする必要があります。
 学校給食は、教育としての位置づけがあります。アレルギーの問題は、教育の材料としてはとてもすぐれています。今、学校教育、あるいは、 学校給食でアレルギーの問題を避けすぎていると思います。
 たとえば、アレルギーを題材にこの表示の問題を考えると、とても分かりやすく社会的なしくみが見えてきます。
 この30年ほどをふりかえってみても、食品の作られ方は大きく変わり、複雑になりました。今の社会の中で、食品がどう作られ、 どのように消費しているかを知っていなければ、自分の健康や未来を守ることはできません。それを強く意識するためにも、 アレルギーの問題を活用することができます。
 BSE(狂牛病)や食品添加物の製造方法での食品回収事件なども、教育材料になります。
 今回の表示制度で、業務用でも表示されるようになっています。学校給食の食材もこれまで以上に表示が細かくなっているはずです。 それを活用して、子どもたちに、あるいは子どもを通じて保護者に対しても教育・発信することができます。
 この30年で食品の作られ方が大きく変わったように、食品の未来は今と同じではありません。どのような食のあり方を選ぶのか、それは、 私たちの選択であり、子どもたちの選択です。選択するための情報を提供し、判断する力を養うことが必要です。それが、学校教育、 学校給食の役割だと思います。
 文部科学省や厚生労働省の判断を待つのではなく、気づいた人からその取組みをやって欲しいです。教員、栄養士、調理員、だれであっても、 取組むことはできるはずです。

■学校でのアレルギー対応
(診断書がすべてではない)
 アレルギー・アトピーについて、学校給食をはじめ学校での対応を望むとき、まずは、医師の診断書をとることができれば、診断書をとり、 それを学校に提出することです。診断書がある場合なら、それを参考に、給食での除去食、代替食、あるいは、 弁当持参などの対応について話し合うときに活用できます。
 しかし、食物アレルギーの人について充分な支援ができる医師の数は全国でも限られており、アレルゲン食物を食べないよう指示していても、 医師が診断書を書いてくれないケースもあります。
 診断書がでない場合でも、保護者としては、学校に「やってほしい」ことではなく、「もし、間違って食べたら、子どもの身体がどうなるのか」 について説明文を出すことです。たとえば「卵を食べたら、6時間後におう吐が起こる」というような具体的なことです。また、家庭では、 除去食ではなく、同じものを大量に一時にとらない、多種類を少しずつ食べる「回転食」をやっている場合があります。その子どもの場合だと、 間違って給食で出されると食べてしまうことになります。家庭では量や、その際の反応を見ながら対処していますので、 家庭で食べているからといって、給食でも食べていいということにはなりません。
 保護者はそういうことを説明文で伝える必要があります。
 一方、学校側も、診断書がないからといって、アレルギー対応が必要ないと判断して欲しくありません。
 診断書がでないという電話相談があると、保護者には「担任や校長先生と基本的人権の尊重について話し合ってみて」と言います。 どの子も健やかに学校生活を過ごす権利があります。「今の状態で学校給食を食べると、子どもが健やかに学校生活を過ごせない」 ということを学校側に伝え、理解を求めます。
 保護者側も、学校側も、対処の方法を先におかないことです。対処方法はいくらでもあります。給食で代替食をつくることから、弁当持参まで、 話し合ってください。
 先ほどの表示のときに指摘しましたが、アレルギーへの対応は、目先の対応ではなく、子どもを真ん中において、広くみんなで考えて欲しいです。

(子どもが育つ場として考える)
 アレルギー対応は、クラス運営と切り離すことができません。除去食ができたからと言って、子どもが不幸になることもあります。 いじめだけでなく、「自分だけ違うものを食べている」という事実でアレルギーを持つ子どもが萎縮してしまった例もあります。
 除去食が到達点ではないことを、学校側も保護者側も分かっていなければなりません。
 アレルギーを持つことが、食べられないものがあるということが、個性であり、ひとりひとりの「個性の違い」であることをどう教育できるか、 という問題です。
 私自身の事例ですが、食物アレルギーがある子どもが小学校にあがるとき、自校式だったので校長、担任、栄養士、 調理員の方々に集まっていただき、説明して、他の子どもたちも含めて除去食を対応してくれることになりました。とてもよい状況で喜んだのですが、 食べられないのは「かわいそう」という担任の一言がきっかけでいじめがはじまり、転校することになりました。転校先はセンター方式でしたので、 食べられるものは食べる、食べられないものは残すという対応を担任にお願いし、食物アレルギーについての資料をたくさんお渡ししました。 そのときは、最初、クラスの子どもたちがめずらしがって
「食物アレルギーって、食べられないんだ」
 嫌いなものを、「先生、これ食物アレルギーだから食べなくていい?」「それは違う」
 というような状況になって、1週間もすると、「あいつは食べられないものがあるらしい」ということに落ち着き、 他の子どものめずらしがりが終わったのです。それが、すんなりできて、あとは問題なく学校生活を過ごすことができました。
 たぶん、対処のマニュアルはまだないのでしょう。しかし、食物アレルギーの子どもは「かわいそう」ではない、社会的なリスクをもつ人間であり、 社会的に対応する必要はあっても、社会の一員として、個性を持つ人間として学校も、保護者も理解し、 一緒に育つ子どもたちへも伝えることができればよいのではないでしょうか。

(化学物質過敏症)
 最近、化学物質過敏症により、除去食などの必要がある子どももいます。食物アレルギーとは違い、 農薬や生活の回りの化学合成物質に反応して症状が出ます。反応は食物に対してだけではありません。衣食住すべてに化学合成のものはあふれており、 そのあるものに反応します。
 化学物質過敏症については、よく「コップがあふれる」と表現されます。つまり、化学物質への反応性が少しずつ身体にたまり、 コップに水を入れて、ふちまでくるとあふれるように、ある時点で症状がでるのです。コップの大きさは人によって違いますし、 ストレスなどでコップにひびが入ってあふれやすくなることもあります。
 症状が出ているときに、化学物質を取り除くと、症状が軽くなります。でも、化学物質を取り除いたからといって、すでにコップは一杯ですから、 症状がでないわけではありません。化学物質過敏症は、化学物質を取り除いても症状がでるため、周囲の理解を得にくいことがあります。 食品だけでなく、ワックスをかけただけ、カーテンをクリーニングに出しただけで症状がひどくなることもあります。
 学校生活で言えば、あるときは、給食の食材で反応し、次にはワックスで、次にはカーテンで、と、症状がない人からすれば、 次から次に言っていることが違うではないか、というように聞こえることもあります。
 これは、言う方の保護者も、聞く方の学校関係者も、辛いことですが、子どもはその学校で育っていくわけですから、その子どものことを考え、 まず学校関係者には、白紙の状態で保護者から話を聞いて欲しい、そして、保護者には、もし、症状が起こったら、 どんなことになるのかをひとつずつ挙げていって欲しいと思います。全部を解決できるわけではなくても、どの問題から解決すべきか、 優先順位を決めて対処したいものです。

■アトピッ子地球の子ネットワーク紹介
(団体案内より)

 アトピッ子地球の子ネットワークは、アトピー・アレルギー性疾患をもつ患者とその家族を支援する団体です。
 身体とこころのバランスがとれていること。自然環境と人とが共に生き、共に豊かであること、かゆさや息ぐるしさ、 薬の副作用やリバウンドから解放されること、それはアレルギー性疾患をもった人も、アトピー性皮膚炎のある人も、ぜんそくのある人も元気な人も、 ちいさい子もおおきい子も、大人も子どもも、みんなが望んでいることです。
 さて、そのために何をしたらいいのか、ひとりひとりにできることって何だろう、そんなことを考え実行したいと考えています。
 主な活動は、会員向けや一般向けの電話相談。月刊情報誌『アトピー最前線』の発行。保健所・保育園・企業・生協・PTA・ 各種団体などへの講師派遣。夏休み親子キャンプや「夜の患者交流会(成人アトピー患者対象)」、公開講座やワーキンググループの開催。 医師や専門家と共同で、アトピー・アレルギー性疾患発症の原因や背景の調査・研究を実施し、情報の集積と発信を行っています。また、 相談業務の受託や、医療、環境、食べもの、農業、化学物質、住宅、自然、社会、女性、子どもの問題などに関わる企画の提案と実施。 出版物の制作も行っています。

・電話相談…アレルギーに関するご相談を受け、考え方の基本やくらし方をアドバイスしています。場合により、本の紹介、 各地の医師や活動団体の連絡先を紹介したりしています。
 ・会員向け 週2日間開設(祝日、8月休)
 ・一般向けのアトピーアレルギーホットラインは、毎月第3木曜・金曜の2日間(祝日、8月休)  TEL03-5414-7421 10:00~17:00
・講師派遣…スタッフが直接うかがって、アレルギーが起こるしくみ、日常生活の留意点、最近の医療動向についてお話しします。
・編集・発行の書籍(2002年7月現在)…
 『やさしくわかる アトピーの治し方』1,165円+税(永岡書店)
 『アトピッ子ダイアリー ママのふれあい日記』 420円+税(合同出版)

★会員について
 アトピッ子地球の子ネットワークの活動にご賛同いただける方は、どなたでもご入会いただけます。どうか支援ください。
「会員」とは、アトピー・アレルギー性疾患をもつ患者とその家族が対象となります。そのほかの方は、「賛助会員」または「購読会員」となります。 会員・賛助会員・購読会員の方には、月刊情報誌『アトピー最前線』を送付します。詳しくは、 アトピッ子地球の子ネットワークにお問い合わせください。
 会  員 年会費4,000円
 賛助会員 年会費 個人10,000円/1口 団体50,000円/1口
 購読会員 年会費5,000円

★アトピッ子地球の子ネットワーク事務局
 〒106-0032 東京都港区六本木4-7-14 みなとNPOハウス3F
 TEL03-5414-7421 FAX03-5414-7423
 火曜~金曜 10:00~17:00(祝日休)

[ 02/12/31 アレルギー ]


Copyright 学校給食ニュース desk@gakkyu-news.net (@を大文字にしています。半角英数の@に変更して送信ください)
Syndicate this site (XML) Powered by Movable Type 5.2.9

バナー バナーは自由にお使いください。