学校給食ニュース

« 2000年12月 | 2001年2月 | 2001年12月 »

遺伝子組み換えのコメを子ども達には食べさせません

2001・2・19 学校給食全国集会
集会緊急アピール

遺伝子組み換えのコメを子ども達には食べさせません

なぜ、今、遺伝子組み換えイネなのでしょうか。
遺伝子組み換え作物については、これまでもアレルギーを引き起こしたり生態系をこわす危険性などが指摘されています。
アメリカでは、飼料用として認められ、食用として認可されていない遺伝子組み換えトウモロコシ「スターリンク」 が加工食品に混入して大問題になっています。このスターリンクは日本では、食用としても、飼料用としても認められていないのに、 飼料や食品から相ついで検出されています。
日本では、2001年4月より、遺伝子組み換え食品の表示制度と検査制度がはじまります。しかし、安全性への不安は消えませんし、 分別や表示が本当に信じられるかどうか疑問です。
私たちはこれまで遺伝子組み換え食品に反対し、遺伝子組み換え作物の生産中止やすべての表示を求めてきました。幸いなことに、これまでのところ、 日本国内で遺伝子組み換えイネは商業生産されていません。
そして、全国で学校給食には遺伝子組み換え食品を使用しない、かわりに地場産品、国産品を使用する動きが広がっています。

ところが、日本が中心となって遺伝子組み換えイネの開発が進んでいます。すでに実験用の田んぼで栽培されているものもあります。
米は私たちの主食であり、もっとも大切な作物です。もし、遺伝子組み換えイネが日本で栽培されるようになれば、私たちは、 日本の農業さえも信じられなくなり、主食の米への不信と、食の不安を子ども達の未来に与えてしまうことになります。

遺伝子組み換えイネは、一見ふつうのイネと変わりないでしょう。
しかし、その真実は、イネでありながらイネと他の生物の遺伝子が組合わせられた人工的な生物であり、「イネのようなもの」です。 そのようなものを学校給食をはじめ、子ども達に食べさせることはできません。

私たちが、子ども達の未来のために望むのは、低迷してる国内自給率を高め、地域に根ざした地場産・国産の安心できる食べものです。

研究機関、政府、企業のみなさん、遺伝子組み換えイネの開発をただちにやめてください。
生産者のみなさん、私たちと手をつなぎ、遺伝子組み換えイネを日本で栽培させない、輸入させない運動を広げましょう。
学校給食に携わるみなさん、学校給食食材から一切の遺伝子組み換え食品を排除し、かわりに、それぞれの地域と協力して地場産品・国産品を使い、 教育としての学校給食の充実を目指しましょう。
そして、全国の市民のみなさん、子ども達と子ども達の未来のため、遺伝子組み換えイネに反対しましょう。

2001.2.19
全国学校給食集会 参加者一同
学校給食集会実行委員会

[ 01/02/19 遺伝子組み換え ]

2001年2月19日 学校給食全国集会報告 記念講演~遺伝子組み換えと学校給食

2001年2月19日 学校給食全国集会報告

■記念講演~遺伝子組み換えと学校給食■



講演:天笠啓祐さん
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表
・ジャーナリスト


 記念講演として、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表の天笠啓祐さんに、遺伝子組み換え食品の問題点を、 最新の事例や研究データに基づいてお話しいただきました。特に、現在、遺伝子組み換えイネの研究開発が日本で起きていること、 その商業的な栽培をくい止めることが、日本の農業や食に大きな意味を持つというお話がありました。講演内容をもとに、内容をまとめました。

■遺伝子組み換え作物にNO!
「遺伝子組み換え食品には、安全性の問題が大きいです。遺伝子組み換えイネがお米となって毎日学校給食に出るようになれば、とても心配です」

 遺伝子組み換え技術を含む「バイオテクノロジー」には、いい日本語訳がありません。私は「生命操作技術」と呼んでいます。 古いバイオといわれる発酵などの技術は、微生物の力を借りて味噌や醤油をつくったり、 交配を通じて品種改良したりするような自然界で起きる方法を使った技術です。それに対して、 自然では絶対起きないことをつくるのが新しいバイオ技術の特徴です。
 細胞融合によって、トマトとジャガイモの雑種がつくられました。自然界ではありえません。クローンも体細胞クローンでは、 同じ遺伝子を持つ生命体ができます。自然界では絶対に起きません。
 遺伝子組み換えも自然界では絶対に起きないことを行う技術です。人間からは人間の子どもしか生まれません。犬からは犬しか生まれません。この 「種の壁」を超えるのが遺伝子組み換え技術の特徴です。
「寒さに強い」「塩分に強い」遺伝子を入れるだけで生物を改造します。 イネに別の植物や細菌やウイルスなどの遺伝子を入れるのがイネの遺伝子組み換えです。世界的には遺伝子組み換え食品が消費者から嫌われています。 とりわけヨーロッパではまずスーパーなどの店頭でみかけることがありません。
 遺伝子組み換え食品を食べたくないという日本の消費者は8割いるという調査結果もあります。
 そのため、全体には、遺伝子組み換え作物の栽培が縮小傾向にあり、もともと開発企業であった化学・農薬メーカーは、農業部門を切り離したり、 別会社にしつつあります。
 日本では、キリンやサントリー、カゴメなどの食品メーカーが遺伝子組み換え作物を開発していましたが、食品メーカーはイメージが大切です。 雪印のように一度イメージを傷つけると大きな損害になります。そのため、キリンビールは遺伝子組み換えの日持ちトマトを開発し、 食品としての申請を出していましたが、申請を取り下げました。
 生産量が減少している原因のひとつには、日本の消費者の表示を求める運動があります。
 中国は遺伝子組み換え作物を栽培しない方針へ転換しましたが。これも、アメリカの競争力が落ちていることを見て、 日本への輸出を考えてのことです。
 一時期急速に栽培面積が増えた遺伝子組み換え作物ですが、日本や世界の消費者、市民の運動が、この動きを変えました。

■それでも開発は進む
 それでも、遺伝子組み換え作物の栽培、食品への応用は進みます。2000年12月に、 厚生労働省の食品審査でデュポン社の高オレイン酸大豆が認められました。
 高オレイン酸大豆とは大豆の脂肪酸の割合を変え、肥満や高血圧、心臓病対策、つまり、健康食、病院食として開発されたものです。
 これまでの遺伝子組み換え作物は、除草剤耐性だったり、殺虫性のものがほとんどです。これを第一世代遺伝子組み換え作物と呼んでいます。 この第一世代遺伝子組み換えは、生産の省力化など、生産者のメリットを訴えたもので、消費者には何のメリットもありませんでした。
 ところが、この高オレイン酸大豆は消費者のメリットを追求した第二世代遺伝子組み換え作物です。
 第二世代遺伝子組み換え作物は、健康食品など付加価値をつけて消費者に受け入れられようとする意図を持っています。 これに消費者がどう反応するかが遺伝子組み換え食品のこれからに大きく影響します。

■自給を放棄した結果…
「遺伝子組み換え作物を一番食べているのは家畜。表現は悪いが、日本人は家畜の次に遺伝子組み換え作物を食べています」

 遺伝子組み換え作物の主要なものは、大豆、ナタネ、トウモロコシ、ワタです。アメリカの農業は大規模経営です。そこでつくる作物は、 食べものを作っている感じではなく、エサを作っているという感覚のように思えます。 アメリカで大豆やトウモロコシは家畜の飼料として主に使われます。また、アメリカにとって貿易の稼ぎ手は農産物、食糧である、 遺伝子組み換え作物は輸出のために作っているとも言えます。
 日本は、自動車などを輸出するために農業政策として自給を放棄しています。
 その結果、遺伝子組み換え作物が大量に入ってきました。畜産飼料のほか、食用として一番普及しているのは食用油です。大豆油、 菜種油の4割が遺伝子組み換えになっています。食用油や醤油については4月からの表示義務づけでも表示義務の対象にならないため心配です。
 遺伝子組み換え作物は家畜のエサとしてもっとも使われ、そして、日本人は、その次に遺伝子組み換え作物を食べているのです。

■危険性
「遺伝子組み換え技術の問題点は、第一世代でも第二世代でも同じです」

 遺伝子組み換えとは、他の生物の遺伝子を入れるということです。違う生物の遺伝子ですから簡単には入りません。無理矢理入れて、 無理矢理働かせています。そのため生物としては、ダメージを受けたり、変なことが起きます。最近分かったいくつかの事例です。

●大豆の収量減少
 元全米科学アカデミー農業部門委員長のベンブロック博士の報告です。
 通常の大豆と遺伝子組み換え(除草剤耐性)大豆を比較すると、収量が全米平均で5.3%減っていました。
 原因として考えられているのは、自然界から見れば遺伝子組み換え作物は不自然であり、生命として弱くなっている可能性があります。次に、 除草剤のラウンドアップを直接大豆にかけても枯れなくなりますから、気にせずにかけるようになります。それが原因かも知れません。 実際にはよく分かっていません。

●収入も減少
 アイオア州立大学の研究です。モンサントのラウンドアップ耐性大豆を作付けした場合と、 普通の大豆を作付けした場合での農家の収入についてアイオア州内の農家を調査しました。支出は除草剤耐性の省力化効果で減っています。 1エーカーあたり9ドル減りました。ところが収入も10ドル減りました。収量が減って、消費者が嫌ったため市場価格が下がりました。 差し引きすると損失が1エーカーあたり1ドル。農家にとってもメリットはないということが明らかになり、作付け面積が減少しているのです。

●予想より花粉が飛ぶ
 ある日本の有機農家がこんな実験をしたそうです。自分の田んぼから3キロメートル離れたところに黒米を植え、 どのくらい花粉が飛ぶか調べてみました。農水省などは、イネはそれほど飛ばないので数十メートルだとしていました。ところが、1俵(60キロ) の中に20粒の黒米が入っていたそうです。多い少ないはあれ、確実に飛んでいるのは事実です。
 ところで、昨年6月から有機農産物の認証制度がスタートしています。有機認証には遺伝子組み換え農産物が排除されることとなっています。もし、 花粉が飛んできたらどうするのか、農水省の役人に聞いてみました。「そういうことは想定していません」という答えです。
 日本では食品としても飼料としても認められていないスターリンク(遺伝子組み換えトウモロコシ)が日本に入り、 食品に混入していたこととが分かりました。このひとつの原因が花粉の飛散だと考えられます。
 花粉では、ヨーロッパでも2000年に大きな問題が起きました。ヨーロッパは遺伝子組み換え作物を拒否しています。そこで、 カナダから遺伝子組み換えナタネではない種子を購入しました。ところが、そのナタネの種子に遺伝子組み換えナタネが混ざっていたため、 作付けした後に刈り取ったり焼却する騒ぎになりました。これも花粉の飛散によるものです。カナダのナタネは遺伝子組み換えナタネが半分あります。 だから、純粋な非組み換えナタネをとることがとても難しいのです。 非組み換えの種子をつくっている会社はニュージーランドに移転することになりました。

●環境への影響
 ニューヨーク州立大学の研究で、殺虫性の遺伝子組み換えをしたイネから、その毒素が分泌されていることがわかりました。 殺虫性遺伝子を組み換えた植物を虫がかじると死にます。だから殺虫剤を使わなくてもよいのですが、毒素はすべての細胞にできます。そして、 根からも分泌されます。これは想定外だったそうです。環境への影響が深刻です。土中の微生物や昆虫に影響します。しかも分解されにくく、 234日も土中に残りました。
 原因については、殺虫毒素タンパク質は、トウモロコシにとっては、本来持っていない、必要ないタンパク質です。 トウモロコシにも迷惑なタンパク質だから、自ら排出しようとしているのではないかという仮説が立てられています。
 ナタネの除草剤耐性遺伝子が近縁種の雑草に広がり、除草剤をかけても死なない雑草が生まれています。
 殺虫性毒素が含まれた花粉のためにチョウの幼虫が死んでしまいました。
 殺虫性毒素の花粉を集めるためにミツバチが短寿命化したり、 殺虫性毒素を持つ植物を食べた害虫を食べるためテントウムシの短寿命化が起こったという報告もあります。

●人間への影響
 基本的に生物の毒はタンパク質やそれが小さくなったものです。 除草剤に強いタンパク質や殺虫性のタンパク質が食べるところを含めたすべての細胞にできるわけです。それを私たちは、 食べつづけることになります。
 アレルギーの可能性もあります。アレルギーもタンパク質が原因で起こるわけです。だから、厚生労働省の安全性評価では不十分です。 遺伝子組み換え食品そのものの毒性やアレルギー性に関して動物実験をまったくしていません。その前に人間に食べさせています。
 また、抗生物質耐性菌が広がる可能性もあります。 遺伝子組み換えがうまくいっているかどうかを調べるために抗生物質耐性遺伝子が組み込まれています。この遺伝子が腸内細菌に移ったら、 いざというときに抗生物質が効かないということがあるかも知れません。
 さらに、除草剤耐性大豆とラウンドアップの組み合わせが危険とのドイツでの研究があります。 大豆にはもともと微量のホルモンかく乱作用物質があります。 除草剤ラウンドアップを除草剤耐性大豆にかけるとその物質が増加するという研究結果があります。
 イギリスでは、動物実験で、免疫低下、内臓障害が起こったという研究もあります。これは、イギリス政府が依頼し、 プシュタイ教授が中心になって進めた研究です。

■遺伝子組み換えイネと日本
「すでに日本でもいくつかの遺伝子組み換えイネの作付けが認められています。食品としての申請は消費者の動向次第です」

 今、日本の企業はイネの開発を進めています。農水省や関連の機関と共同で開発しています。日本は農水省が遺伝子組み換えイネに積極的で、 日本企業、多国籍企業と共同で研究開発しています。
 実は、日本では国内での遺伝子組み換え作物の栽培はされていませんが、花についてはすでに遺伝子組み換え品種が栽培されています。それは、 サントリーの青いカーネーションです。
 そして、イネについても、栽培については認められた遺伝子組み換え品種がいくつもあります。ただし、 食品として厚生労働省への申請はされていません。日本の消費者が受け入れなければ申請しても意味がないと考えられているからです。
 日本で開発されて作付けが認可された遺伝子組み換えイネの中には、 アメリカで生産して日本に輸出することを前提とした除草剤耐性品種もありますが、ほとんどは、日本での作付けを考えた品種です。
 また、日本たばこ産業の関連会社であるオリノバでは、酒米を遺伝子組み換えコシヒカリで開発しています。 このほか、 愛知農業試験場とモンサント社が共同で開発した除草剤耐性の地元品種「祭り晴」 などは作付けが認められたら食品として申請される可能性があります。
 さらに、全農が開発しているヒトラクトフェリン遺伝子導入・鉄分増量イネというのがあります。ヒトラクトフェリンとは、 母乳に含まれる殺菌成分タンパク質のことです。最初はこれをイネに作らせて、医薬品として販売しようと考えたようですが、 この米をそのまま健康食品として使おうと考え直したようです。さらに、ヒトラクトフェリンには鉄分と強い結合力があるということで、 鉄分強化として健康食品として売り込もうとしています。これは第二世代遺伝子組み換え作物の典型です。これに、消費者、 生産者が抵抗できるかというのが今後の問題です。
 さて、この作付けが農水省に認められるまでにはいくつかのステップがあります。しかし、それがいい加減なものだという一例を示します。
 電力中研が、鉄分増量イネを開発しています。大豆の遺伝子で鉄分と結合力の強いタンパク質があるのでそれを組み込んだものです。
 さきに、同じタンパク質でつくられた鉄分増量レタスの実験もしていました。 このレタスについて分析すると通常よりもマグネシウムの量が増えていました。その原因はよく分かりません。さらに、 レタスを植えた土のあとにブロッコリーを植えたら、通常よりも大きくなりました。これも原因はよく分かりません。それでも、 安全性は確認されているということで次のステップにいきました。なぜ起きたか原因を追及しないままに「誤差の範囲」として進んでしまうのです。

 このほか、イネにトウモロコシの遺伝子を入れる研究が盛んに行われています。トウモロコシは光合成の活動が活発で成長も早いため、 その遺伝子を入れると成長の早いイネができます。さらに米粒が大きくなります。そういう開発も盛んです。 遺伝子組み換え食品に対して世界的にNOという風潮が高まっているのに研究開発は盛んです。そこが解せません。

■国産自給率を高める運動が必要
 スターリンク事件は、アメリカで作付けされると日本で承認されるされないに関わらず日本に入って来るという教訓になりました。これは、 日本が食糧自給を放棄した結果です。
 遺伝子組み換えを排除するためには、輸入食料に依存しない体制が必要です。国産自給率を高める運動が大切ということです。 学校給食でみなさんが取り組んでいるように地産地消を増やすことが一番の近道でしょう。
 これが、遺伝子組み換え食物を減らしていく大きな力になります。

 ヨーロッパで遺伝子組み換え食品を拒否した背景には、疑わしきは使わないという予防原則があるからです。 安全か危険か疑わしいならば使わないという考え方がヨーロッパでは確立されています。しかし、この予防原則は、本来は日本で確立されるべきです。 4大公害裁判がありました。この判決の中で予防原則が打ち出されています。安全か危険か分からない状態で放っておくことがよくないとしています。 ところが、現実の日本では疑わしきは食べさせるとなっています。

■表示は完全ではない
 表示が4月1日からはじまりますが、表示を見ても本当には分かりません。なぜなら大半の表示が不分別となるからです。 とりわけ食用油や醤油などが対象外になります。食品のみが対象ですから、アルコール飲料、肥料、種子、飼料などは対象になりません。 遺伝子組み換え飼料を与えてつくられる卵、牛乳、畜産品には表示されることがありません。
 さらに、混入率も甘く設定されました。混入率とは、たとえば、船積みしたときに、非組み換えだけを入れたのに、 船底に組み換えが残ったりした場合の許される割合です。ヨーロッパでは1%となっていますが、日本では、大豆とトウモロコシに設定され、 それも5%と大きな格差があります。混入は避けられません。

■食べない4つの方法
・認可作物(大豆、菜種、トウモロコシ、綿)以外のものを食べる。
 食用油の選び方で、ナタネ、コーン、大豆、綿実を選ばないということですが、あまり現実的ではないかも知れません。
・国産の作物を選ぶ。
 花以外は作付けされていない。国産のものを選べば間違いありません。
・有機農業のものを選ぶ。
 外国産の場合、有機と認証されたものには遺伝子組み換えは含まれないことになっています。
・遺伝子組み換え食品を扱わないと宣言している生協、産直、小売りを選ぶ。
 これが一番現実的だと思います。

■日本で作付けされたら打つ手なし
 もし日本で遺伝子組み換えイネが作付けされたら、日本の食生活では避けようがありません。認可作物を食べないというわけにはいきません。 国産も安心でなくなります。花粉が飛んでくるので有機かどうか信頼できなくなります。こだわりの生協や産直などでも大変に困るでしょう。
 国内で遺伝子組み換えイネが作付けされるということは、遺伝子組み換え食品を避けられなくなるということと同じ意味になります。 遺伝子組み換えイネの国内作付けをなんとしてでも作付けされないように取り組むこと。もちろん、 海外で遺伝子組み換えイネを作付けして輸入されないようにもしなければいけません。
 もうひとつ、米を食べているのはアジアの国々です。アジアの稲作文化に多国籍企業が組み換え種子を販売しようとしています。 種子を支配するという動きが多国籍企業、日本企業にもあります。そして、日本企業がアジアで遺伝子組み換えイネを作付けする可能性もあります。
 すでに、日本の米の自給率も落ちつつあります。アジアでコシヒカリが作付けされたら、日本に戻ってくるのは間違いありません。 アジアの国々の人々にも売られることになるでしょう。
 遺伝子組み換えイネの問題は、日本だけでなく、稲作文化を持つアジアの大きな問題でもあるのです。

■質問
Q:作付け面積は減少に向かっているが、本当になくなるのでしょうか。やめても、 畑や回りに重大な影響があるのではないでしょうか。家庭で遺伝子組み換え大豆を買って、ちょっと庭の畑に植えたり、 豆まきで撒いたりして遺伝子組み換えのものが生えてきたりすることはないのでしょうか。

A:作付け面積は減少に向かっていますが、やめるということにはならないでしょう。日本では、ITと並んで、バイオ関係の予算が伸びています。 昨年、国家バイオテクノロジー戦略ができて、国が重点を置いています。その中で、ゲノム解析に予算がかけられています。これは、 遺伝子を特許で押さえるという考え方です。
 特許料を取得できるということです。先を見込んだ先行投資と考えられます。当然、 この特許遺伝子を組み込んだ作物の作付けが増える布石になっています。
 遺伝子組み換え作物でできた種子は次の世代どうなるでしょうか。ひとつは、遺伝子組み換え作物は、遺伝子だから遺伝し、 次の種子を蒔いたら組み換えた遺伝子も遺伝するという可能性はあります。もうひとつ、ただ、無理矢理遺伝させているので、 受精した際に組み込んだ遺伝子が脱落するという可能性もあります。そのため、遺伝子だから必ず遺伝するとは言えません。もちろん、 高い割合で遺伝すると思います。
 現実に、遺伝子組み換え作物から種子をとって次の世代を植えると、その性質が引き続くため、モンサントなどの開発企業は、厳しい管理によって、 毎年毎年種子を買わなければならないようにしています。
 ただ、大豆については、アメリカ産の大豆は、脂分が多く、豆腐や味噌、食用には向いていません。多くは油か飼料です。 食用の豆腐などは中国産の大豆が増えています。だから、遺伝子組み換え大豆を使っていないという豆腐が多いのです。

Q:飼料に遺伝子組み換えを使っているかどうか、チーズ会社などに問い合わせをしてみました。 一部に使わないとはっきりしたところもありましたが、 低温殺菌牛乳をつくっているところでも遺伝子組み換え飼料を排除できないと回答してきたところもありました。 子どもに牛乳を飲ませていってもいいのでしょうか。
Q:具体的に、反対運動を起こす、行動を起こすということで、防ぎきれない肉や牛乳ということもあります。 具体的な運動展開について聞かせてください。


A:家畜の飼料を検査すると遺伝子組み換え作物は数十パーセント含まれています。トウモロコシ、大豆、菜種、ワタが全部入ってきます。 これを使った食品が安全かどうかについては心配です。しかし、この安全性については「分かりません」。問題なのは、 安全性を確認する前に市場に流している点です。いくつかの実験を積み重ねた後で市場に出すというなら、まだ話は分かりますが、 いきなり市場に流すというのは問題です。ようやく昨年から農水省が家畜に食べさせるという実験をはじめたばかりです。 安全性確認が後から来るというのが問題です。牛乳となったとき、肉となったとき、乳製品、卵になったときどういう影響がでるのか、 まったくデータがありません。それが一番大きな問題です。
 遺伝子組み換え作物を戦略的に世界に広げたモンサントやアメリカ政府のつけが今戻ってきているといえます。
 具体的行動と言えば、今、我々は、遺伝子組み換えイネの問題に積極的に取り組んでいます。表示の問題のとき、 政府が表示をする方向に動いたのは、全国の消費者、生産者、労働組合などが動いたからです。まず、ひとつは署名運動でした。 表示を求める署名が毎回何十万と農水省、厚生省に届きました。繰り返し何十万と届くと、実に大きな影響力を持ちます。
 すでに、昨年10月に遺伝子組み換えイネに反対する十数万の署名を農水省に届けました。3月には届けようと思っています。 すでにこれも十数万の署名が届いています。
 もうひとつは、各自治体に市民派というか市民に味方する議員がたくさんいます。 全国の約半数近い自治体が表示を求める陳情や請願を採択しました。これがどんどん国会や政府に届いていきました。これが、 表示を求める原動力になりました。具体的な行動には、デモのような直接行動もあります。直接行動に参加できない方でも、署名を集めたり、 自治体に採択を求めるなど、今はなんとかして遺伝子組み換えイネを止める運動を広げていくことだと思います。

意見:3年ぐらい前から遺伝子組み換え食品を考える中部の会があり、調理員も加盟して、 署名や学校の講習会などをやってきました。名古屋市では、表示義務がされる24加工品と5つの生鮮品を学校給食に使わないと決まりました。ただ、 油はナタネです。米ぬか油に変えていきたいと思っています。名古屋の学校給食は週に2回ご飯が出ます。祭り晴れの品種が使われています。 試験場の人は受け入れがなければ申請は見合わせるという話をされていました。運動によって止めることが大切です。 一般市民の方と協力して調理員が関わっていくことが一番力強いし、手っ取り早いと思います。

 

[ 01/02/19 遺伝子組み換え ]

2001年2月19日 学校給食全国集会報告 三里四方の食材を子ども達に

2001年2月19日 学校給食全国集会報告

■三里四方の食材を子ども達に■


杉木悦子さん
日教組栄養職員部常任委員
長野県安曇村 安曇小中学校栄養士


 遺伝子組み換え食品を使わず、地場のものを使っています。ただ、遺伝子組み換えはないと思っていましたが、牛乳や乳製品、 卵製品の飼料については今日のお話を聞いて、あらためて調べてみようと思います。
 食材は、作っている人の顔を見て買うという考え方に立っています。遺伝子組み換えが入る前から、豆腐は、地元大豆を使い、 地元の豆腐屋に作ってもらっていました。献立表(別紙)にあるような無農薬、低農薬と書いたものは、 ほとんどどこの誰が作ったのか分かるようになっています。子ども達は、学校給食を通じ、食べものだけでなく、作った土地、 気候風土も学ぶのではないかと思います。
 長野県教組の栄養職員部では、学校給食の教育としての取り組みをしています。子ども達を中心にした給食について考えています。 その取り組みをこれまでに2冊の本にまとめました。
 2冊目は、「学校給食を未来へ」というタイトルです。栄養職員部のスローガンには「日本の農業を守ろう」というのがあります。 地場産のものを食べていれば子ども達は健康になり、それだけではなく、住んでいる人たちとともに食べものを考え、生きる力をつけると考え、 その実践例をまとめた本です。
 そこには、4つの事例を上げてあります。地域とともに生きる学校給食、子ども達は、土地に生きている人たちの生き方を学ぶ、 食を通しての人格形成ができ、今と将来を見つめていけると思います。

北御牧村
 栄養士が低農薬のものを欲しいという要望を母連絡会に伝え、そこから農協婦人部、生活部、青年部に呼びかけ、安全な生産者の会ができ、 学校給食用の生産物が広がりました。

長谷村
 1963年に長谷中学校の校長が、学校給食は人格形成に大事だと訴え、日本で初めてのランチルームができたところです。ここでは、 農家の女性グループ「麦わら帽子の会」が中心に地場野菜を作っています。文化祭などでも一緒に交流して食文化を伝えています。

山形小学校
 私が生まれ住んでいる村です。輸入小麦粉を調べたら、日本のものより200倍ぐらい残留農薬があるということを報道で知り、当時、 私も山形小学校にいたので、なんとか国産小麦でパンが焼けないかと考えました。土地ごとにパンにはいろんなものがあるので、 日本の小麦を使った日本のパンというのがあってもいいと考えました。そこで、 山形小学校と中学校で国産小麦を使ったパンを焼くという広がりがになりました。今も続いています。また、 低農薬野菜生産グループの女性が手間を惜しまずに野菜を届けてくれています。

小諸市
 市議会で地場のものを使うと決議しました。今は市長をはじめみんながそれを誇りに思っています。地場産の野菜は泥付きだったり、 虫が付いていたりします。調理員は大変です。そこで、輸入農産物を調べるため、横浜港まで行って調べ、 労働はきつくても地場産でがんばろうという意志を調理員自らが固めました。
 なお、地場産率は、野菜が35~40%。芋類が60~
80%、果物が12~15%、小麦粉、餅米、キビ、シメジ、エノキ、卵は100%です。5月~11月はすべて地場産でできます。
 ここは市議会の決議が広がりを助けました。
 さらにたとえば、子ども達が収穫を手伝いたいという声を出したことで、年間計画をつくり、市でバスを出してそれを応援しています。 40kgのほうれん草を収穫した中学生は、こんなに苦労したのだから、給食に残して欲しくないと声を上げます」これが教育であり、 生きる力をつけることではないかと思います。
 そして、子ども達が親や地域の大人を自慢に思う。そういうことを達成できる力が学校給食にあります。
 総合的な学習という流れがでてきましたが、こういうとりくみ、生きるとはどういうことが、日本の農業を守ることは、生活を守ることということ、 汗を流すこと、働くことを、農業を誇りに思うことだと思います。
 自給率を上げながら、自治を広げていく、命を守っていく、運動の意味で、生きる力を養っていくことになると思います。


■質問
Q:佐賀市職です。佐賀市も国産小麦パンを使うのですが、グルテンが少ない、足りないと言われ、試食のものも輸入グルテンが入っていました。 どうされましたか。
A:輸入グルテンは添加していません。国産小麦にもいろいろあります。グルテンの一番多い国産小麦でつくればいいと思います。 少しぱさぱさした食感でかめば味わい深いのが国産小麦パンの特徴かも知れません。
 実際に今使っている国産小麦だけのパンを送ります。それから、パン屋さんと製粉屋さんに配合割合やレシピなどを聞いて送ります。
 

[ 01/02/19 地場産・産直 ]

市川市の民間委託と住民訴訟 学校給食全国集会報告

2001年2月19日 学校給食全国集会報告

■市川市の民間委託と住民訴訟■

植村秀樹さん 市川住民訴訟原告
流通経済大学経済学部助教授(国際政治学)、市川市在住。


■委託までの経緯
 98年に新設の妙典小学校に委託計画がありました、これは市川市職員組合との話し合いで計画撤回されます。 これについては市民はまったく知りませんでした。99年11月に妙典小学校ではない6校に民間委託通知が突然され、 はじめて市川市で調理の民間委託が計画されたことを市民、保護者が知ることになりました。
 99年12月に、委託予定の6校で教育委員会による説明会がありました。しかし、その時間は1時間で、 アルマイトから磁器食器に導入する話に大半を費やしたところもあり、民間委託についての説明は十分ではありませんでした。保護者から不信、 不満が出ます。しかも、事前に説明会への出席を申し込み、子どもの名前やクラスを名乗らせ、圧力をかける、発言しにくい状況でした。 ある学校では反対を言ってもだめだという発言さえありました。
 翌2000年1月、この不満、不信から市民が集会を開き、「市川市学校給食の民間委託に反対する市民連絡会」が結成されます。
 市川市は「広報いちかわ」で1面全面を使って調理の民間委託について説明します。また、「これからの市川市の学校給食」 というリーフレットを全保護者に配布。これからの学校給食として方針を示し、ビジョンを示したと説明しました。
 2月には、見積もりあわせで委託業者を事実上内定します。このころ、市議会がはじまりました。
 委託には賛成のある議員が、「業者が決まっているか、決まっているなら教えろ」という質問をしましたところ、 教育委員会は選定中であると答えます。ところが、その4日後、内定を受けていた業者のひとつが、パート募集のチラシを新聞に折り込み、 内定されたことを議会が知ることになります。それによって議会の賛成派からも不信の声が上がりました。 環境文教委員会では教育委員会にその場しのぎの嘘を言うなと、議長が叱責しました。しかし、市議会で予算は成立し、 4月1日に内定業者と本契約を結び、6校の委託が実施されました。
 議会では、この業者選定についての嘘の他にも、調理員の勤務時間、人件費などの数字を操作し、統計をいじったものを議会に報告、市民に伝え、 導入をはかった経緯があります。

■委託の背景と実状
 民間委託導入には、背景として85年の合理化通知があり、98年に市川市の行政改革懇話会提言があったとされています。懇話会は、 98年の12月に提言しています。ところが、最初の民間委託導入が計画された妙典小学校については98年に委託方針が出ています。 つまり提言以前のことです。
 また、懇話会の審議の過程では、行政行為を行うときに、計画段階から市民に情報の公開、透明性を高めようというのが重要なポイントでした。 ところが、実際には、密室で民間委託の計画が決められました。
「リーフレット」が言うところのビジョンについても、その前の「広報いちかわ」についても、その1年前に隣の船橋市がやったやり方、 順番と同じです。リーフレットの作り方も、猿まねにすぎません。市川市には教育についてのビジョンがないことは明らかです。
 そこで、情報公開条例を使い、5~6年さかのぼり、教育委員会の議事録公開を求めました。その中には、 学校給食のビジョンや民間委託の議論は直前までほとんどありませんでした。保護者に通知をして、委託説明するまで、 教育委員の中で話し合っていないのです。
 では、どこから出てきた話なのか、お金がない、経費を節減しよう、人件費を節減しよう、という論理から、財政のところから出てきたのです。 教育の話は二の次、三の次で、お金の話だったのです。
 経費については、市の職員組合と教育委員会は、人事課立ち会いのもと、経費のシミュレーションを行いました。それによりますと、 必ずしもそれほど大きな節減効果がある訳ではありませんでした。 そこでシミュレーションを長期的にやろうと職員組合が提言したが教育委員会は逃げてしまったと言います。
 賛成する議員からも、議会の委員会で経費の試算数字を出せという要求がありました。しかし、教育委員会はそれを無視し「長期的には安くなる」 としか言いませんでした。そこで、この経費問題は追跡していきたいと考えています。
 一方、民間委託を導入する少し前から、全小中学校に学校給食運営協議会がひっそりとできました。ほとんど誰も知りませんでした。
 委託されているところでは、学校、保護者代表、業者、教育委員会の4者で協議会を運営することになっています。これは、学校任せなので、 学校によって活動に差があります。しかし、保護者の立場からすれば、協議会が委託された学校の質を握る部分になると思っています。
 委託ははじまって1年足らずです。はっきりとは言えませんが、業者によって差があると言われています。
 委託校については、事故はすべて教育委員会に報告することにとなっています。また直営校も小さい事故でも報告するようになりました。 これも情報公開条例で内容を知ることができます。
 昨年秋までの事故報告は、ほとんど委託校です。そして、事故の多い業者とそうではない業者で差があります。 委託校で児童数の割に調理者が少ないところは事故が多いという例もあります。協議会で保護者は、人数を増やすよう要求し、 教育委員会も賛同したが、業者がいったん断りました。あとで増えたようです。
 そういう事例を見ていると、委託では業者により差があり、どうやら、 今までのように安心して任せられるということではないようだということが分かりました。市川市の直営給食は、 これまで過去40年1度も食中毒を出したことがありませんし、食材は、地元からの調達を基本に、各校に配置された栄養士が献立を立てていました。 親の立場からすると、市川市の学校給食に問題を感じていなかったのです。
 市川市では、3年間同一業者となっており、3年ごとに見積もり合わせというやり方で、業者選定をするとなっています。つまり、民間委託だと、 3年安心しても、もう一度どうなるか分からない状態がやってきます。最初だから一生懸命やっているだけかも知れないという不安もあります。
 もっとも信頼でき、安心できる「市川市」という業者から、 不安のある業者になったというのが保護者の立場から見た民間委託の最大の問題だと思います。

■住民監査請求から住民訴訟へ
 予算が成立したすぐ後に、地方自治法による住民監査請求を使って、市川市職員措置請求つまり、 この民間委託は違法で不当だという請求をしました。それは、棄却されました。住民監査請求が棄却されると訴訟を起こすことができます。そこで、 住民訴訟を提起したわけです。
 法的な論点としては、学校給食法2条、地方自治法234条(入札選定について)を主に取り上げています。職業安定法44条については、 現在弁護士と検討中です。
 何かできることはないかと住民監査請求、住民訴訟を起こしたわけですが、この問題が住民訴訟になじむかどうかという法律上の問題もあります。 しかし、できることは何でもやろうとはじめたわけです。
 裁判には労力と時間のほか、費用がかなり必要です。どうかぜひ裁判費用のご支援をお願いします。
 学校給食訴訟を支援する会ができましたので、できる範囲でご支援ください。

(裁判費用支援活動は終了)

問い合わせは、全国学校給食を考える会または電子メールにて学校給食ニュース宛にお願いします。

■質問
Q:民間で事故が起こった場合、民間の責任、教育委員会はどうなるでしょうか。

A:最終的には教育委員会が責任を負うと言っています。もちろん、業者も責任を負うことになると思います。

Q:住民訴訟のような同様の事例はありますか?

A:知っておられる方がいたら教えていただきたいぐらいです。たぶんないと思います。

Q:平成13年4月から中学校給食がはじまります。これが民間委託になります。住民訴訟の一番の争点を教えてください。

A:難しいところがあります。住民訴訟の性質もあり、きちんと正面に掲げるのは学校給食法になります。 手続きや職業安定法のようなものではなく、学校給食法の目的で争うことになりそうです。 住民監査請求は違法でなくても不当な支出に対してできますが、住民訴訟は、財務上の違法性がないとできません。監査請求は、たとえば、 決まっていないのに業者がチラシを配るのはけしからんというようなことも言えますが、住民訴訟では、 地方自治法などを出さなければならないと思います。

Q:大勢の人々の声が必要なので、直接請求のような方法はとれなかったのか。

A:市川市学校給食の民間委託に反対する市民連絡会では、市議会に3万を超える署名を添えて委託をやめて欲しいという陳情をやりました。 これは否決されました。これ以外にもいくつか陳情や請願が出されています。 ひとつの問題についてこれほど陳情がでるのは市川市ではめずらしいことです。賛成の陳情もありましたが。ただ、 議会では難しかったということです。

Q:市川市職労もなんらかの動きがあったと思いますが、一緒に運動を進めた経緯はありませんか。

A:それが、市川市学校給食の民間委託に反対する市民連絡会です。市の職員組合、教職員組合などの団体のほか、 保護者ら一般市民で取り組みました。

Q:妙典小の委託撤回の経緯と6校の選択理由を

A:妙典小の経緯は市職員組合との交渉なので私どもはまったく知りません。1年後に6校の民間委託の話が出たのでそのときに 「こういうことがあった」と知ることができました。妙典小を最初に上げながら、別の6校が選定されたのか、 この6校は市の中心部から少しはずれたところにあるからではないかという人もいます。周辺から、 穴を開けやすいところから選んだところではないかと思い、市民連絡会と市長や教育長との交渉の中で問いただしましたが、 きちんとした回答は得られませんでした。

Q:委託前後で食教育の面で変わったところがあるか?

A:食教育、調理員の関わり、その変化を明らかに言えるほどの情報が私の手元にはありません。ただ、ひとつだけ言えることがあります。 毎年新年度に顔写真入りで職員の紹介があります。昨年度までは調理員も全部名前と顔写真が載っていました。 委託されてからは栄養士だけになりました。調理員が身近な存在ではなくなったことだけははっきりと言えます。

(2001.2)

 

[ 01/02/19 委託・合理化 ]

2001年2月19日 学校給食全国集会報告 摂津市の民間委託を阻止

2001年2月19日 学校給食全国集会報告

■摂津市の民間委託を阻止■

前野真澄さん、小堀裕二さん
摂津市職員労働組合・調理員

■調理員としての取り組み(前野さん)
 保護者、市民、栄養士、教員、 調理員がひとつになり、民間委託をはねのけることができました。この取り組みを報告します。
 摂津市の学校給食は、加工品を使わない手作り給食です。1997年にはアルマイトから磁器食器を全校に導入しました。 米飯給食も週2回から子ども達からの増やして欲しいとの要望に応え、週3回に増やしました。アレルギー食の対応は88年からで、 無農薬野菜などの取り組みも行っています。
 調理員は、非常勤職員を導入せず正規職員43名でがんばっています。
 夏休みなどの3期中は、校庭の草取り、学校の窓の清掃、ペンキ塗りなどの学校環境をよくする業務を行っています。また、 警備員がやっていた警備業務のうち、毎日調理員が交代で職員室に座り、電話の応対などもやっています。これは、 調理員の方が学校の内情をよく知っているので警備員よりも連絡がスムーズに取れると保護者、市役所からも信頼されています。
 取り組みとして力を入れているのはふれあい料理教室と給食ポストです。
 ふれあい料理教室は、夏休み期間中に保護者と子どもとで各校1回行っています。献立は、子ども達に好評だったものを取り入れます。 家庭科室で行い、保護者には実際の給食での衛生管理についても体験してもらいます。
 給食ポストとは、各学校12校に設置しているもので保護者や児童が調理員にあてて手紙を入れます。
 味について、献立について、感想や要望があります。また、中には、好きな人ができたとか、個人的な内容のお手紙も入るようになります。 多い学校では1日に50通にもなります。
 このほか、給食については、たとえば、うどんが子ども達の配膳のあとも温かく、のびていないかを確認に行きます。 子ども達もそれに反応してくれます。5年生のあるクラスでは、調理員に一緒に食べて欲しいと呼びに来てくれます。準備しておいてくれます。 今は週に2回、教室で料理や食材などの話をしながら給食をいただいています。これが、私たちができるふれあいのひとつだと思い、 がんばっています。
 市民に対しては、給食フェアを開催しました。当日は300人の市民が参加し、 学校給食情報ネットワークの小松茂さんに給食についての講演をしてもらい、市民に試食を味わってもらってアピールしました。
 民間委託の話が出てからは、市民、保護者、栄養士、教員、調理員らによる「学校給食を考える会」ができ活動をはじめました。 2000年12月には、学校給食ニュースの牧下圭貴さんに講演してもらいました。約200人の人たちが立場をこえて議論をしました。
 これらにより、市民、保護者、教員、栄養士、調理員が一緒に民間委託に戦うことができました。

■民間委託阻止までの経緯
 現在の調理員の配置基準ですが、 調理員が休むときにはパート職員が入ることになっています。ただし、米飯給食のときのみで、週2回のパン給食のときは入りません。
 昨年、行財政改革で調理の民間委託が打ち出されました。10月20日のことです。そこでは、 「2001年3月31日付け退職者2人の補充は業務委託の結論を待って考えていきたい」とされていました。 11月9日の市職員組合と当局の交渉により12月中旬をめどに引き続き交渉することになっていましたが、 当局からは民間委託のどこに問題があるのかとの発言があるなど厳しい状況でした。
 調理員を中心に3万枚の個別チラシを配布し、市民にも呼びかけました。市民からも反対の声が上がり、「学校給食を考える会」が結成され、 委託反対の運動が広がりました。
 当局と市職員組合との協議は結局12月25日まで再開されませんでしたが、12月29日の年内最終回答で、「退職者2人の補充は、 これまでの学校給食調理員退職者と今回の学校給食調理員をもって補充したい。平成13年度の民間委託はしない」という回答を得ました。
 これについては、運動の成果として一定の評価をしています。しかし、引き続き市民と共に戦っていきたいと思っています。
 交渉の中では、私たちは食は教育の一環ということを主張してきました。そして、教育長に12校の給食ポストのすべての手紙を渡し、 読んでくださいとお願いしました。今後も子ども達のことを第一に考え、安全で、おいしい、そして、 ふれあえる給食に取り組んでいきたいと思います。

■今後の展望(小堀さん)
 給食ポストには、保護者からもお手紙が入ります。日頃から、できるだけ残さずに食べてと子ども達には伝えていますが、 保護者から給食を通してものを大切にする教育をしてもらっていて感謝しますというお手紙をいただいたこともありました。
 学校行事への積極的な参加は、作る人、食べる人の関係を誰が食べているのか、 誰がつくっているのかが学校の中で分かるようにという意味もあります。
 民間委託の問題があったとき、直営でなければならないのは、何かについて考えました。
 民間委託と言っても、だから質が悪いということはないと思います。本質はコスト論ではないと思います。
 なぜ、直営でなければならないのか。
 遺伝子組み換え食品や放射線照射食品など食品を取り巻く状況は刻々と変わっています。使わない、作らせない。そのような即座の対応、 いけないと分かればすぐそれを行動に起こす。言われてから対応するのではなく、常に子ども達のことを思い、 即座に対応できるようにすることが直営ならではできるのだと思います。自分自身も生きているのであり、給食問題は環境問題にも、 自分自身の足下さえ見つめ直すものになることです。それを実践するのに直営のよさがあるのではないか。そういう職員でありたいと思います。
 常に何をしなければならないのかを考えて、行動していきたいと思います。

■質問
Q:ふれあい給食は、市職だけでやっているのか。教育委員会はどう対応しているのか。食材費はどうか。講師の謝礼はどうしているのか。

A:ふれあい料理教室は、摂津市主催でやっています。調理員が中心で、学校の家庭科室を使います。子ども達、 お母さんは検便を取っていないからです。家庭科室は校長と教育委員会の了解で調理員清掃の上、使用しています。材料費は、 参加者ひとり250円の負担です。調達は給食で使っている業者にお願いしています。

司会:講師料は、3000円から10万円まで幅があります。たとえば全国学校給食を考える会からうかがうときと、 どなたかを紹介するときでも違うでしょうし、そのときごとの相談というところになるかと思います。ただ、運動でやっているときに、 「いくら出さなければ行きません」というものではないと思います。

Q:強化磁器食器導入の経過を少し教えてください。磁器食器検討委員会はどういうメンバーですか。

A:磁器食器導入については、アルマイトから強化磁器です。アルマイトは、私が小学校の頃から使っていたようなものです。 調理員との話し合いで、農水省の助成金がちょうどある時でもあり、アルミのアルツハイマーとの関連も言われたり、 熱いものが持てないというところから、調理員から教育委員会に話を持っていきました。
 検討委員会は、調理員各学校1名ずつ、教育委員会、栄養士などです。
 強化磁器については、食器かごが1クラス分を子どもが持つには重いということもあり、 子どもが食器かごを持てるように少し高くても軽いものを選びました。
 しかし、洗浄などの設備には、お金もなかったので改装できず、守口市など先進事例を見学し、できるところだけ手を加えて取り組みました。

Q:強化磁器は割れると思いますが、そのあたりのコスト面はどうでしょう。

A:磁器食器なので割れます。始業式などで、子ども達に協力をお願いします。そして、もし割れたときには、 子どもに割れた理由を一応書いてもらいます。ただ、「ケガはなかった? 今度は割らないようにしようね」と子どもと話しながら、 大事にしてもらうようにお願いします。教育委員会からは割れると予算がかかると言われますが、こればかりは、割れるものですから、 できるだけ割らないようにするだけです。

 

[ 01/02/19 委託・合理化 ]


Copyright 学校給食ニュース
desk@gakkyu-news.net(@を大文字にしています。半角英数の@に変更して送信ください)

Powered by Movable Type 5.2.9

バナー
バナーは自由にお使いください。